逢坂剛
 重蔵始末 アリゾナ無宿 十字路に立つ女 ノスリの巣 空白の研究 情状鑑定人 幻の祭典 百舌の叫ぶ夜 幻の翼 砕かれた鍵

『重蔵始末』

データ:

 講談社
 ¥1700
 2001/06/29

内容:
 寛政時代に学者、測量家として知られた近藤重蔵は、火盗改めの与力を拝命していたことがあった。博学多才にして豪胆沈着。若き日の重蔵が江戸の悪党たちを追う。
EGGさんの感想:
 評価 78点
 結構有名な人物らしいですが、私は知りませんでした。
重蔵の略歴はたとえばここ→http://www.gsi.go.jp/KIDS/MEMORI/kondou.htm

 逢坂さん初の時代小説だとか。筋立てはどうも、古びた捕り物帖に似てあまり感心しませんでしたが、「茄子と瓜」という話は、いいなずけを殺めた女剣士の哀れさが良く出ていて丸でした。

 文体は百舌のころの荒々しさが感じられ、江戸の考証も処女作とは思えないほど行き届いており、雰囲気も上々です。残念なのは人物がまだ立っていないこと。主人公は二十一歳ながら、すでに不惑の貫禄があって部下(それも年上の)に命令だけする。それがズバズバ的中するわけですが、なんだか「むっつり右門」や「若様侍」を読んでいるようなご都合主義の連発で楽しくありません。だれに感情移入するにせよ、この人たちにはちょっと不満。どこかで目にしましたが、逢坂さんは、重蔵の死に際まで書きたいとのこと。でも、そんなに魅力あるのかなあ。

02.5.23
『アリゾナ無宿』

データ:

 新潮社
 ¥1600
 2002/04/20発行

内容:
 1875年の夏、アリゾナの太陽がもっとも熱く焼けたその日のことは、今でもよく覚えている。私は自分の人生を大きく変える二人の男に出会ったのだった。一人はトム・B・ストーン(墓石)という名の賞金稼ぎのガンマンで、もう一人はサグワロ(サボテンの木)という背中に剣を差している黒服の男だ。
 私はやっと17になろうとしている、いまだ世間知らずの少女だったが、ある出来事をきっかけに、この二人とともに旅をすることを決心したのだ。
EGGさんの感想:
 評価 83点
 これまた珍しい、西部劇小説です。芸域が広いですね、逢坂さん。ジョン・ウェインの映画「駅馬車」のような世界です。いつもの図太い筆致でなく、乾いた空気とあっけらかんとしたユーモア、淡々とした物語が、悠然と展開されていて、これはこれで良い感じ。

 主人公の少女は孤児で、養い親がある事情でいなくなってしまったため、必死でストーンに付いていこうとします。何とか一人で生きていけるだけの処世術を身につけないことには、淫売に身を窶す羽目になりかねない、と彼女は思っているからです。この娘の素直な一生懸命さが、読んでいて楽しい。

 ストーンは偏見がなく懐が深い。(頑固だけど)彼女はそれを見ぬいて甘えているというわけなのでしょう。サグワロは記憶喪失の日本人で、居合と含み針の達人だが、ガンマンとの戦いにはいささか分が悪い。この3人のでこぼこトリオは、チームを組んだはいいが、運がなく骨折り損の仕事ばかりが続きます。

 さてこれからどうなることやら、というところで終わってしまっているので、こちらの作品こそぜひ続きを書いていただきたいものです。

02.5.23
『十字路に立つ女』

データ:

発行年  1992.5初刷り(単行本:1989.2)
発行所  講談社(文庫)
ISBN 4-06-185103-9
備考   「このミステリーがすごい’89」国内編11位

あっちゃんの感想:
僕が作品に絶対的な信頼を寄せている数少ない作家の一人が逢坂剛です。錯綜するプロット、魅力的なキャラクター、息もつかせぬストーリー展開、本書もそれら全てを兼ね備えています。特に岡坂神策と花形理絵の関係がいいですね。(ちょっとくさいぐらいですけど気にならない。)しかも僕の馴染みの深い神保町が主たる舞台というのも嬉しい。そしてラスト、岡坂と花形理絵はこれからどうなっていくのか、岡坂神策シリーズの次回作が読みたいですね。

02.6.22

『ノスリの巣』

データ:

 出版社:集英社
yobataさんの感想:
 百舌シリーズ第五弾。以前は「裏切りの日日」も含めて「公安シリーズ」と称していたような気もしますが、ま、どちらでもいいか。

 タイトルの「のすり」という漢字は、Unicodeの9D5Fに登録されています。「狂」の下に「鳥」と書いて、「のすり」と読み、鷲だか鷹だかの仲間なのだそう。

 傑作「百舌の叫ぶ夜」や「カディスの赤い星」と比べてしまうと、「まずまず」という気になってしまうのだけど、十分に楽しめた作品。
 ただ、なぜ犯人は「のすり」と名乗るのだ?無理に鳥類に、しかもマイナーな名前にするこたぁないだろ。「怪人二十面相」だって「かぶとがに」だっていいじゃんか。「百舌」の事件は終わってる訳だから、「のすり」は著者の理論でつけられたんだろうな。

02.7.5
『空白の研究』

データ:

 発行年  1987.3初刷(単:双葉社1981.9)
 発行所  集英社(文庫)
 ISBN 4-08-749195-1
あっちゃんの感想:
 逢坂の作品で呼んでいるのは長編がほとんどで短編集は「クリヴィツキー症候群」しかない。どんなもんかなと読んでみたらテクニシャンだったんですね。作者の裏をかいたつもりで読んでいたらそのまた裏,の裏があったりして本当にその技に脱帽です。表題作もすごかったけど「真実の証明」は最初の作品だっただけにどんでん返しのドミノ状態になってしまいました。また「美醜の探究」もヒッカケにまんまとはまってしまったし「嫌悪の条件」のユーモラスな中に心理的なトリックを用いていておもしろかったし「不安の分析」のブラックさも捨てがたい。そして表題作,祝田卓と李健華という迷コンビもよかったし話そのものも先が読めず楽しめました。いやあ、短編でも侮りがたし逢坂剛でした。

02.12.13
『情状鑑定人』

データ:

発行年  2004.5(単行本:1985.4)
ISBN 4-16-752-008-7

あっちゃんの感想:
 逢坂剛の作品は集英社文庫の刊行順に読んでいるのだが実は集英社文庫版の本書がなくて困っていた。文春文庫から出たのでさっそく買って読んだ。祝田卓の出てくる連作短編集かなと思ったのだが祝田が出てくるのは第1話のみだった。どの作品も逆転につぐ逆転でさすが逢坂の職人芸だと感心した。一番面白かったのは「都会の野獣」かな。

04.7.4
『幻の祭典』

データ:

 発行年  1996.5
 単行本  1993.5
 発行所  新潮社(文庫)
 ISBN 4-10-119513-7
あっちゃんの感想:
 まずはなかなか目の付け所がいい。過去と現在が交差しどちらもサスペンスにあふれる内容、ある登場人物の正体にはびっくりした。

05.1.23
『百舌の叫ぶ夜』

データ:

 発行年   1990.7
 単行本   1986.2
 ISBN  4-08-749601-5
あっちゃんの感想:
ずっと読んでみたかった作品。期待以上の作品でした。作者の仕掛けた趣向にちょっと混乱させられましたが決して悪くはありませんでした。ラストを読むと続編あるのかなという感じだったのですが実際「よみがえる百舌」が出てますからね。どのように処理されているのかも楽しみです。

05.6.19

yobataさんのres:
 「百舌の叫ぶ夜」はいいですよね〜。
 この作品が「カディスの赤い星」と同じ年に出たのはある意味スゴイことです。「カディス...」は直木賞に輝きましたが、年末のベストでは「百舌...」の方が順位が上でした(たしか、2位と4位)。
 ちなみに、「百舌の叫ぶ夜」の続編は、「幻の翼」「砕かれた鍵」「よみがえる百舌」「のすりの巣」の順番で出ています。一部では、「百舌...」以前に書かれた「裏切りの日日」を含めて「公安シリーズ」と呼ばれることもあるようです。最新の「のすりの巣」も含め、文庫化されています。

 ちょっと前のことならよく覚えてるんだよな〜

05.6.19
『幻の翼』

データ:

著者名   逢坂剛
発行年   1990.8
単行本   1988.5
発行所   集英社(文庫)
ISBN  4-028-749613-9
あっちゃんの感想:
 前作「百舌の叫ぶ夜」を読んでから時間がたっていたのでちょっと戸惑う部分もあったがよかったですよ。黒木警視あまりいいところなしでしたがその分明星部長刑事の活躍たのもしかったです。ミステリーのトリックも効いていたし相変わらずの高水準の作品でした。

06.1.4
『砕かれた鍵』

データ:

発行年   1996.3
発行所   集英社(文庫)
単行本   1992.6
ISBN  4-08-748312-6
あっちゃんの感想:
何か胸が締め付けられるような作品でした。息子と母親を同時に爆弾テロによって失った美希の思いがのしかかってくる。熱い話だった。

06.3.12

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