<あ・い>
阿井渉介 愛川晶 青井夏海 赤川次郎 浅田次郎 芦原すなお 芦辺拓 飛鳥部勝則 阿刀田高 我孫子武丸 安部龍太郎 天城一 綾辻行人 鮎川哲也 有栖川有栖 泡坂妻夫 池波正太郎 伊坂幸太郎 井沢元彦 石崎幸二 石持浅海 一海知義 一海知義・筧久美子・筧文生 稲見一良 井波律子 乾くるみ 井上夢人 今邑彩 岩井志麻子 岩崎正吾

阿井渉介 風神雷神の殺人 雪花嫁の殺人 生首岬の殺人

『風神雷神の殺人』

データ:

 発行年    1999.11初刷り(初出:講談社ノベルズ1994.2)
 発行所    講談社(文庫)
 ISBN   4-06-263965-3
 シリーズ   警視庁捜査一課事件簿 2

あっちゃんの感想:
 評価:A
 読んでいる間、本当に楽しかったです。展開がどうなっていくのかわくわくしながらページをめくりました。今日、僕は免許証の更新のために会社を休んだのですが通常僕は休みの日は読書をしません。でも昨日から読み始めた本書を早く読み終えたくて読んでしまいました。自分の好みと波長が合っているというのでしょうか。不可能犯罪シリーズもそうでしたが阿井の作品を読んでいる時はとても楽しいのです。
 二つの列車事故は事故なのか殺人なのか、犯人の動機は何か、鶏の首切りの意味するものは何か、脅迫状の受取人に共通するものは何か、息もつかせないおもしろさというのは本書のためにあるようなものです。また菱谷と堀の対照的な刑事コンビ始めとして人物描写のうまさ、ドラマの重厚さもうまく解けあっています。不可能犯罪シリーズでは不可解な事件とそのトリックの落差が多少気になりましたが本書はそうした不自然さもありません。島田荘司定義の本格ミステリーの正統な書き手である阿井渉介、最近は書いているものが本格ミステリーではありませんが是非本格ミステリーの世界に戻ってきてほしいと熱望しております。

02.5.23
『雪花嫁の殺人』

データ:

 発行年  2002.1初刷り(ノベルズ:1994.3)
 ISBN 4-06-273346-3
 シリーズ 警視庁捜査一課事件簿
あっちゃんの感想:
犯人は大体見当が付く、またその動機も物語の半ばには解明される。しかしなおも残るのがそのトリック、はっきり言ってそのトリックは空前絶後、普通に考えればかなり無理がある。しかしそれが物語の中で説得力を持つのは犯人像の故でしょう。このシリーズ、派手さと言う点では「不可能犯罪シリーズ」に劣りますが人間ドラマとトリックの融合と言う点では前シリーズよりも成功しているかもしれません。

03.5.31

『生首岬の殺人』

データ:

 発行所  講談社(ノベルズ)
 ISBN 4-06-181781-7

あっちゃんの感想:
 ちょっと小粒だったかな、登場人物の情念と言うか思いは非常に強く伝わってきました。このシリーズも後2作、期待しています。

05.9.19

愛川晶
『七週間の闇』

データ:

発行年    1999.11初刷(単行本:1995.8)
発行所    講談社(文庫)
ISBN   4-06-264621-8
あっちゃんの感想:
愛川晶は1作読んだきりで読みたいと思いながら2作目を読めないでいた作家の一人でした。「化身」はよく考えられていて面白かったという記憶があります。さて本書ですがホラーとミステリーが程よくブレンドされていたと思います。また背景は今日的な問題で考えさせられました。さて以前電車に本を忘れたと書きましたがそれが本書(単行本)でした。新しく買ったのは文庫ですが単行本にはなかったエピローグがついていてちょっと得した気持ちです。(金銭的には損したけれども)エピローグがついたことによって物語もきちんと終わっているような感じを受けました。

02.7.30

青井夏海
『赤ちゃんを探せ』

データ:
山本わおさんの感想:
 NHKでドラマ化もされた助産婦さんを主役にしたお産ミステリ。面白いんだけど、やっぱり男にはそれほど興味がわく題材ではないなあと実感。

03.8.17

赤川次郎
『幽霊列車』

データ:

 発行年  1981.5初刷り
 発行所  文藝春秋(文庫)
 ISBN 4-16-726202-9
 備考   表題作:オール讀物推理小説新人賞受賞
あっちゃんの感想:評価:A
 赤川次郎のデビュー作です。「幽霊列車」はスマートな出来でした。走行中の列車から乗客が失踪するというミステリーは阿井渉介の「不可能犯罪シリーズ」など割とポピュラーなものですが「幽霊列車」はシンプルで説得力のある作品でした。「裏切られた誘拐」は見事でした。すっかりだまされてしまいました。「凍りついた太陽」もネタがわかってしまえばあっけないものですがそれを隠す手腕はいいです。「ところにより、雨」は3つの連続殺人事件が実は・・・というものでよかったです。最後の「善人村の村祭」は前4作に比べるとそんなあほなという設定でしたがあまり気になりませんでした。5作に共通するのは永井夕子の推理のプロセス、目の付け所がいいんですね。また殺人事件は起きますがラストには救いがあります。それもよかったです。赤川次郎は20作ぐらい読んでいますがどうもそれでも量産作家だからという先入観がありました。デビュー作とはいえミステリーの楽しさにあふれていた好短編集でした。

02.4.17

浅田次郎

芦原すなお
『ミミズクとオリーブ』

データ:

 発行年    2000.10
 単行本    文藝春秋1996.4
 発行所    東京創元社(文庫)
 ISBN   4-488-43001-5
あっちゃんの感想:
ユニークな作品だった、非常に好感の持てる主人公、しかしながら扱われている事件の多くは陰惨なもの、その対比が生きている。楽しみな作家である

06.1.7

芦辺拓 グラン・ギニョール城 怪人対名探偵
『グラン・ギニョール城』

データ:

 出版社:原書房
 出版日:01.12.4
 価 格:\1700
  ISBN :4-562-03462-9

あらすじ:
 グラン・ギニョール城に集った老若男女は、所有者の親族と友人、知人たち。それぞれが腹にいちもつを抱えているかのように、アマチュア探偵ナイジェルソープには映っていた。そこへ突如としてあらわれた謎の中国人、そしてやがて雷鳴とともに事件が……。
いっぽう、ところかわって森江春策は、たまたま乗り合わせた列車内で起こった怪死事件に巻き込まれていた。被害者は息を引き取る直前、たしかに言ったのだ。「グラン・ギニョール城の謎を解いて……」と。
森江はわずかなヒントと手がかりをもとに、やがて導き出されたグラン・ギニョール城へと向かうことになるのだが……。
これぞ純度100パーセント、本格探偵小説!
(表紙折り返しより)
kikuchiさんの感想:
 芦辺拓らしい凝りに凝った作品で、なかなか面白かったです。作中作を作中の探偵が推理するというのは別に珍しくもないシチュエーションですが、作と作中作と境界線が溶けてあいまいになっていく展開とか、「ホームズ」と「ワトソン」の設定とか、趣向で楽しませてくれました。で、他にも中身のない甲冑に被害者が突き落とされるトリックやら、小説的には可能だが実際には不可能なトリックを可能にするひねりも、それなりに面白かったです。他にもノックスの十戒は謎解きの重要なヒントになっているし、久生十蘭の作品がモチーフになっているし、で、芦辺らしい博覧ぶりも楽しめます。
 今までにない趣向を、と力んだ新本格は大抵失敗するものですが、まあ、大成功はしていないかもしれないが、少なくとも失敗にはなっていない、という意味で芦辺は凄いですね。

02.1.18
『怪人対名探偵』

データ:

発行年   2000.5
発行所   講談社(ノベルズ)
ISBN  4-06-182132-6
あっちゃんの感想:
江戸川乱歩好きとしては是非とも読まなくてはと思っていたが芦辺とはどうも相性が悪く今まで読まなかった。でもそれは危惧に過ぎなかった。おもしろかった。江戸川乱歩の世界を現代に甦らせたような内容ではまってしまいます。また作品全体に仕掛けられた大きな謎もうまく処理できていましたしもう少し芦辺は読んでみたくなった。

06.3.12

飛鳥部勝則 バベル消滅 バラバの方を
『バベル消滅』

データ:

 発行年   2001.8初刷(単行本:1999.8)
 発行所   角川書店(文庫)
 ISBN  4-04-358601-9
あっちゃんの感想:
 登場人物がみんな感情移入しにくくリアリティも感じなかったので読みにくかったが途中からぐっとひきつけられあの最後の章で明かされるあのトリックに驚き楽しめました。飛鳥部は自分の絵を作品の中に使うと言うだけでないいろんな素質を感じます。

04.1.6
『バラバの方を』

データ:

発行年  2002.4
発行所  徳間書店(ノベルズ)
ISBN 4-19-850559-4
あっちゃんの感想:
 凄惨な作品でしたね。どうもこの人の作品は後味がよくない、今回はもっとよくない。にも拘らず手が出てしまう。不思議な魅力を持っている作家である。

06.1.7

阿刀田高 ミステリのおきて102条 ナポレオン狂
『ミステリのおきて102条』

データ:
発行:角川書店
みーまーさんの感想:
 「これを読まずに、ミステリを語るなかれ!」という帯の謳い文句が決して大袈裟でないと思えるほどの面白さ。まな板の上の魚のうろこを包丁でそぎ落とすように、目からうろこがボロボロ落ちていきます。というこの作品は小説でなくエッセイ集なのですが。

 まず、著者の阿刀田高は短編の名手として知られているように、短編の名作ガイドとして読めます。
元来、私はあまり短編を読まないのだが、その理由は読後の満足感が少ないと感じることが多かったからだ。
ただ、60歳を過ぎたら短編を中心に読みたいと思っている。
というのは、ポックリいったときにこの世に未練を残さないようにするためである。
“読者への挑戦状”から後を読む前にポックリいったら死ぬに死ねないでしょう。短編ならその確率は少ない。
理想を言えば、安楽椅子に座って眠るようにいくことで、読みかけの本が手からポトリと落ちる。
本の題名を見ると「ホームズ、最後のあいさつ」とある、なんてね。
ぼちぼち、この本を手引きに短編の名作を収集しておこうと思っている。

「怪人二十面相は人を殺さなかった。作者の江戸川乱歩が少年たちの読み物であることを考慮して、それを避けたのは疑いない。これが一つの見識であったことも、また疑いない。」
「怪人二十面相」ってそうだったんだ。
子供の頃に読んだだけで、あまり記憶に残ってはいないんだけど。
漫画やアニメはその草創期から人の死を多く含んできていて、それは時期が戦争と重なったことや、あるいは手塚治虫が医学生の出身であったことなども原因ではあるのだろう。
それでも、かつてはその死というものの描き方にもさまざまな見識が見えたものだ。
宮崎駿は「紅の豚」で、あのストーリーで人の死なないアニメを作ったというのも、そういう見識のひとつであろう。
たしか、宮崎アニメで主人公が人を殺すのは「もののけ姫」が最初で最後なのかな。
過激な内容が氾濫するなかで、そういう見識のもとで作品を作る人が多くいてほしいと思う。
死を描くなということでなく、自分の作品がどういう人に読まれ、あるいは見られ、そのためにどう描けばよいかということを考えた表現であればと思うのである。

「ライオンが年を取り、もう獲物をつかまえることができなくなった。穴の中にこもって病気のふりをしていると、狐がやってきて中をのぞく。
『入っておいでよ。なにもしないから』
『いや、遠慮しておきます』
『どうして入ってこないんだ』
『だって....』」
このあと狐の言葉がすばらしい。
イソップ物語にあるそうで、世界で一番古い推理小説?(小説ではないだろうが)として、引きあいに出されるそうな。

他には、モチーフ(作意)とトリックの話。
小説はモチーフを持つものだが、推理小説はモチーフがなくても成立するジャンルである。
松本清張のようにモチーフ・プラス・トリックというのもあるが、クリスティやヴァン・ダインはモチーフは薄かったがソフィスティケー
ション(技巧の洗練)、トリックでうならせる見事さを持っていた。
だが昨今は、そうしたソフィスティケーションに乏しく、さりとて優れたモチーフを含むわけでもない、ただバタバタといそがしく殺人だ
けがくり返されるミステリーも散見される。
そのとおりであろう。

90パーセント目安とは、殺人を犯したとして、最後にはつかまるとしても、とりあえずは逃げおおせる確率が90パーセントくらいの感じなら、そのアイデアを作品化してよい。
60パーセントじゃ読者にバカにされ、70パーセントでも納得がいかない。
80パーセントならまあまあだが、読者の中には首をかしげるものもいるだろう。
さて、さきの「安楽椅子探偵とUFOの夜」、あれは何パーセントくらいのものだったろう。

最後に「どんでん返しというものは、ガラリと予期せぬ結末があれば、それでよいというものではない。その小説のモチーフとなるなるべき要点が....たとえば人生の厳粛な側面が、ひっくり返りながら見えて来なければ一級品とは言えない。」
至言であろう。

02.4.7
『ナポレオン狂』

データ:
くれい爺さんの感想:
 昭和54年の直木賞受賞作。
う〜ん、短編集にありがちな、優れた作品も有り、まあまあのも有り、平凡なものもある。
数としては圧倒的に平凡なものが多いのだけどね。
“怖さ”では日本推理作家協会短編賞を受賞の「来訪者」が凄い。
社会の階級の話がラストに心に残る“怖さ”を導いていて、これ一作でも賞の価値があるといえばあるか。
あとは「白い歯」の怖さもなかなかよい。
表題作の「ナポレオン狂」もまあまあなのだが、結末が読めてしまう。
あとは平凡の域を出てない。

03.11.30

我孫子武丸 人形はライブハウスで推理する 探偵映画 人形はこたつで推理する 弥勒の掌
『人形はライブハウスで推理する』

データ:

 講談社ノベルズ
 780円
 2001/08/05発行
EGGさんの感想:
 評価79点
 雑誌メフィストにポツリポツリと掲載された5作と書き下ろし1編を収録。
久し振りの再会でしたが、今までに増してほのぼの甘々路線。プロポーズらしき話が出てきて、おや、ついに結婚に踏み切る所で、このシリーズ終わっちゃうのかなあと思ったら、まだ続きそうな気配です。推理部分が弱い(あまり説得力が無い)ので、点数は低いですが、気長に次を待ちましょうか。

02.5.23
『探偵映画』

データ:

発行年   1994.7初刷(ノベルズ:1990.12)
発行所   講談社(文庫)
ISBN  4-06-185707-X 
あっちゃんの感想:
 ひゃー、「かまいたちの夜」を除けば10年ぶりくらいか、「殺戮にいたる病」が強烈すぎたので本書や「人形」シリーズは始めから敬遠していました。ただ本書を読んでみていかに予断が恐ろしいか思い知りました。殺人が起きなくても本書は立派に本格ミステリーしています。最後にあのトリックが映画でこのように使われるとは・・・傑作です。

03.12.26
『人形はこたつで推理する』

データ:

発行年  1995.6
単行本  1990
発行所  講談社(文庫)
ISBN 4-06-1859765
あっちゃんの感想:
 気に入りました。設定のユニークさはもちろんですがミステリーとしても上出来、登場人物も生き生きとしているし楽しみなシリーズです。

05.12.23
『弥勒の掌』

データ:

 出版社:文藝春秋(Honkaku Mystery Masters)
 出版日:05.4.25
 価 格:\1764
  ISBN :4-16-33810-7

あらすじ:
 高校教師、辻恭一は、家出した妻を探すうち、新興宗教「救いの御手」の存在を知る。
 刑事、蛯原はラブホテルで殺された妻の殺害犯を探し、やはり妻と関係のあった新興宗教教団「救いの御手」にたどり着く。
 教団の支部で顔を合わせた二人は、協力して教団の内情を探り始める。蛯原は早速辻の妻の居所を突き止めたのだが・・・。
kikuchiさんの感想:
 ん年ぶりの新作長編だそうです。二階堂黎人が絶賛しているという噂を聞いて読んでみました。確かに、たった一行で構図がガラリと姿を変える衝撃はたいしたものです。「殺戮にいたる病」とはまた違った種類の衝撃がありました。でも二階堂が言うような「本格」として優れているかというのには疑問、と言うか、本格として読まない方が楽しめるのではないかと思います。

 私の場合特にそうなんですが、読者というのは読みながらジャンル分けをしつつ、結末の付け方を予想していくものです。「これは犯人当てだな」とか、「これはトリック解明がメイン」だとか。で、私の場合、そういう予測をひっくり返す「意外性」がミステリを読む際の楽しみになっていたりもするので、「これは本格」、とか「これはサスペンス」とか読む前にジャンル分けをされてしまうと、楽しみが減るし、下手するとネタバラになりかねない訳ですね。

 この感想文がそのネタバラに該当しないかどうか心配(笑)。

06.1.31

安部龍太郎

『関ヶ原連判状』

データ:

 著者:安部龍太郎
 発行:新潮文庫

くれい爺さんの感想:
小説はもちろんフィクションであるが、歴史小説の場合は登場人物に歴史上に存在した人物が描かれるわけだし、歴史上の出来事もふまえて書かれている。
時代小説にしても、時代検証に耐えられるものでなければ、「こんなことあるはずがない」ということになってしまう。
安部龍太郎の「関ヶ原連判状」はこの歴史上の事実と作者のフィクションの部分が絶妙で面白い。
関ヶ原の戦いにおける東軍、西軍の動き、徳川家康と石田三成に前田利長と細川幽斎の動きを絡めて描き出す事実とフィクションの妙を堪能できる。
中でも主人公の細川幽斎が「古今伝授」を受けたという事実とそれをもとに朝廷に働きかけ関ヶ原の勢力分布に違った絵を描こうとするフィクションは、作者の発想の豊さを存分に楽しめるものである。
歴史上の人物に加え、作者の作り出した架空の人物たちもそれぞれに魅力的で、作品の質を高めている。
作品の中で忍びが使う拷問の一つが凄い。
目の玉に火薬を乗せて焼くというものだが、これは耐えられない。
読むからに熱くて痛そう。

kikuchiさんがハンドルの使用を変えたということで、小生も変えてみました。(^^;

02.4.15

天城一
『天城一の密室犯罪学教程』

データ:

 出版社:日本評論社
 価格:2940円
yobataさんの感想:
 名前はよく聞くけれども、あまり作品に触れたことのない著者の初の単行本。摩耶正の登場する短編をすべて収録。

 およそミステリとはなじみのありそうにない「日本評論社」からこの本が出た理由が、著者が本名で書いた学術書の版元だから、というのはちょっといい話。

 よく考えてみると、この作者の作品て読んだことなかったような気がする。「不思議の国の犯罪」「高天原の犯罪」なんて、高名な作品ですけどね。

 ところが、読んでみてビックリ。すげーつまらん。ミステリとして不出来とかいうよりも、エンターテイメントとしてつまらん。本格としては結構面白いと思う部分もあるのだけど、やはり難解に過ぎるような気がする。文章が極限まで削られていて、行間を読む必要があったり、摩耶の説明だけでは理解できなくて、自分で考える必要があったり。同じ作品を数度読み返したり、うまいことに自作解説がついていたりしたので、楽しめたことは楽しめたのだが。

 「密室犯罪学教程 理論編」には、密室トリックを種類別にわけて、実践編で紹介された作品の創作の課程などが記されているんですが、これを読んで思ったのは、設定から登場人物まで、密室を構成するための要素としてしか描かれていないってこと。このトリックにはこういった場所が必要で、ならば住人はこのくらいの地位の人、ってな具合。だから、できあがった作品は夾雑物のない理論剥き出しみたいになっちゃうんだろうな〜。山田風太郎と同時期にデビューしたそうだが、やはり風太郎の方が好きだな〜

04.6.18

綾辻行人 どんどん橋、落ちた 最後の記憶 暗黒館の殺人
『どんどん橋、落ちた』

データ:

 講談社ノベルズ
 ¥820
 2001/11/05ノベルズ版 第一刷 

内容:
 僕=綾辻が登場する犯人当て形式の5編を収録した短編集。
EGGさんの感想:
・「どんどん橋、落ちた」 評価 A
 「ぼうぼう森、燃えた」    A
 「意外な犯人」        B+

 ここまで行けば「究極のフーダニット」というカバーのコピーもうなずけます。(どんどん橋のみ既読)
私には当然「犯人」は当てられませんでしたが、あたるはずがない、卑怯、と文句を言う以前に、ここまで変なこと考える奴には(綾辻、キミだ!)素直に拍手してしまいます。三部作の最後「意外な犯人」ではU君(出題者)と僕(綾辻なの?)との関係も明らかになり、竹本のウロボロス的エンディングを迎えます。(これも個人的にはOK)というわけで、お気に入りの短編。しかし、短編ベスト10には入れられないなあ。…場外乱闘賞っていうのはどう?(笑)

・「フェラーリは見ていた」  B
 「伊園家の崩壊」      B−

 この2作品も、綾辻的ウロボロスではないかと思われます。
「フェラーリ」は良いとして「伊園家」は「サザエさん=磯野家」のブラックパロディ(ドラえもんのバッドエンディングと同様、ネットでずいぶん流行ったらしいですが、そういうたぐいのヤツです)なので、その中の誰が犯人であろうが、読まされるのはあまり楽しくない。私は、サザエさんなんて、そんなに好きではありませんが、それでもいい気はしませんでした。

02.4.11
『最後の記憶』

データ:

 発行年  2002.8初刷り
 発行所  角川書店
 ISBN 4-04-873399-0
あっちゃんの感想:
 綾辻の7年ぶりの長編、しかも初の長編ホラーとなれば期待しないわけにはいかない。読み終わって感じたのはまず綾辻らしい作品ということだった。記憶,狂気、殺人鬼などこれまでにも綾辻作品に出てきたモチーフだしある種の仕掛けもどういうことか予想できた。そういった意味では目新しさがないだけにちょっと不満はある。だがまあストーリー自体はうまいし人物造形もちゃんとしている。この調子で「暗黒館の殺人」を完成させてほしい。

03.4.3
『暗黒館の殺人』

データ:

発行年  2004.9
発行所  講談社(ノベルズ)
あっちゃんの感想:
 どれだけこの作品の刊行を待ったことだろう。ただ待っていた分期待が膨らみすぎて評価が辛くなってしまったきらいがある。まず同種の偶然が二つ重なっていること、これはちょっとやりすぎなような気がした。
また一種の超常現象が起きるがこれもいたずらに読者を煙に巻くだけですっきりしなかった。また大きな建物ではあるが実際の殺人事件の密室トリックはちょっと小技過ぎるような気がした。
 もちろん、この作品の最大のトリックは最後になって明かされびっくりしたがこれもシリーズだかからこそ成立するトリックといってしまえばそれまで。ちょっと厳しい感想だが決して面白くなかったわけではない。十分に楽しんだ。

04.12.5

鮎川哲也

有栖川有栖

泡坂妻夫

池波正太郎 剣客商売 十番斬り 剣客商売14 暗殺者
『剣客商売 十番斬り』
くれい爺さんの感想:
 「剣客商売」シリーズもこれで12巻目。
いつもながら思うのは、池波正太郎というのはエンタテインメントだなあということ。
藤田まことのテレビシリーズにも見慣れた感じで面白く見させてもらっているが、先日、浅田忠蔵という剣客の話をしていたが、藤田主演用に脚色がしてあった。
原作を読んでいるものにはちょっと不自然な印象を受けた。
希望を言えば藤田主演にこだわらず、もっと原作に忠実にドラマ化してほしいものだ。
シリーズの残りもだんだん少なくなってくるのは、なんか寂しいものがある。

03.3.10
『剣客商売14 暗殺者』
くれい爺さんの感想:
シリーズ14弾の特別長編。
もう特に感想といって書くこともありません。
思えば25年ほど前にテレビで加藤剛の秋山大治郎が主演で放送されて、それがなかなかよかった記憶があります。
原作を読むと、主人公は秋山大治郎でなく、父親の秋山小兵衛だったわけで、それはそれで面白い。
テレビではいま秋山小兵衛を藤田まことが演じていて、それなりに見慣れてしまっているが、イメージとしては秋山大治郎は大男で、秋山小兵衛は小男ということで、藤田まことは少々大きすぎる。
加藤剛の「剣客商売」はシリーズでは山形勲が小兵衛を演じていて、これも大きかった。
加藤剛の「剣客商売」のドラマで中村又五郎が小兵衛を演じたことがあって、これはイメージに近かった。
ちょっと耳にしたのは、池波正太郎がこの中村又五郎をイメージに小兵衛を造型したということ。
小生のイメージとしては田村高広なんだけど。
もう一つのシリーズ「鬼平犯科帖」は松本幸四郎(だいぶ前の)や萬屋錦之介も演じたけど、中村吉衛門ははまり役だろう。

05.1.31

伊坂幸太郎 オーデュボンの祈り 陽気なギャングが地球を回す

『オーデュボンの祈り』

データ:

 著 者:伊坂幸太郎
 出版社:新潮社(新潮ミステリー倶楽部)
 出版日:00.12.20
 価 格:\1700
  ISBN :4-10-602767-4
 備 考:第5回(2000年)新潮ミステリー倶楽部賞受賞作

あらすじ:
 警察から逃げる途中で気を失った伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来鎖国を続けているその孤島では、喋るカカシが島の予言者として崇められていた。翌日、カカシが死体となって発見される。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止できなかったのか? ミステリーの新時代を告げる前代未聞の怪作!
(表紙折り返しより、アンダーライン部分は本当は傍点)
kikuchiさんの感想:
 というわけで、「喋るカカシ」が登場する怪作『オーデュボンの祈り』です。最初は、未来を予見できる存在が、なぜ自分の死を予見できなかったのか、という命題がテーマの本格ミステリかと思って読んでいました。が、確かにそういうテイストがあることはあるのですが、私の基準で言うと本格ではなく、ファンタジーです。まあ、ファンタジー苦手の私でも面白く読める作品ではあったので、評価は上の方にしておきます。
 タイトルの「オーデュボン」とは、アメリカの画家、あるいは鳥類学者で、1813年にリョコウバトの群れを発見した方だそうです。リョコウバトはその当時二十億羽の群れで飛んでいくのが目撃されたにもかかわらず、1914年頃に滅亡しています。タイトルの「オーデュボンの祈り」とは、喋るカカシ、優午が言ったセリフ「この島がリョコウバトと同じ運命をたどるとすれば、私はオーデュボンのようにそれを見ているしかないでしょう」「ただ私は祈るでしょう」に由来しています。

01.7.16
『陽気なギャングが地球を回す』

データ:
 
祥伝社(ノンノベル)
 価格:838円

内容紹介:祥伝社のHPより
 成瀬(リーダー)は嘘を見抜く名人、さらに天才スリ&演説の達人、紅一点は精確な体内時計の持ち主――彼らは百発百中の銀行強盗(ギャング)だった……はずが、その日の仕事(ヤマ)に思わぬ誤算が。逃走中に、同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯と遭遇。「売上」ごと車を横取りされたのだ。奪還に動くや、仲間の息子は虐め事件に巻き込まれ、死体は出現、札付きのワルまで登場して、トラブルは連鎖した! 最後に笑うのはどっちだ!? ハイテンポな知恵比べが不況気分を吹っ飛ばす、都会派ギャング・サスペンス!
yobataさんの感想:
 新潮ミステリー倶楽部賞を獲った「オーデュボンの祈り」も読んでいなければ、その後に発表された「ラッシュライフ」も未読なので、伊坂作品は初読となります。
 某ミステリ誌で某評論家が絶賛(ちょっと気恥ずかしいほどに)していたので思わず買ってしまいました。でも、やっぱり絶賛しすぎというか、読む方(私です)も期待しすぎというか、普通の作品でした。軽妙洒脱なのは確かで、読んでいて楽しいのも間違いないのですが、やはりサプライズという面では、予想の範囲内でした。

03.3.11

井沢元彦
『猿丸幻視行』

データ:

くれい爺さんの感想:
 少年たちが片手を拳にして前へ突き出す。リーダー格の少年がその拳を一つづつ叩いていく。「いろはにほへとちりぬ、ぬすっと」、「ぬ」のところで拳を叩かれた少年が輪から抜ける。続けて「おわかよた、たんてい」、「た」のところで拳を叩かれた少年が輪から抜け、先の「ぬすっと」で抜けた少年とは別のところに立つ。残りのメンバーでまた「いろはにほへと...」と続け、少年たちは探偵組とぬすっと組に分かれ、探偵ごっこが始まる。
ゆえにそのころの小生は「いろは歌」は「いろはにほへとちりぬるおわかよた」までしか知らなかったし、ましてその意味までは知らなかった。

ずっと読みたいと思っていた。
その一番の理由は、この作品が昭和55年の江戸川乱歩賞受賞作であること。
ここで大事なのは乱歩賞受賞でなく、それが昭和55年だったということだ。
この年の応募作には島田荘司の「占星術殺人事件」があったからだ。
それが20年以上も手に取らなかったのは、小生の暗号もののミステリーに対する不安があるからだ。
暗号ものというのは、どうも作者の独断というのが強く出る作品で、読者の推理を寄せ付けないところがあるからだ。

さて、一読してその完成度の高さに驚いた。
近頃の乱歩賞には新人の習作の出来のよいもの程度の価値しか認めていないが、この作品の質の高さはたいしたもの。
どちらかというとパズルとして先鋭的でも小説としては未熟なところがあった「占星術殺人事件」に比べても質の高さとしては上回っている。
もちろん「占星術殺人事件」がその後現れる新本格派の作家たちの指標となったという作品の価値はなんら変わるものではない。
暗号に関しては非常によく考えてあるものの、やはり作者のひとりよがり的な印象をぬぐえないでいる。
例えば、講談社文庫版の151貢の「いろは歌」の中の「かきのもと」は、「いろは歌」はひらかな47文字が一つづつ使われているのだから、「かきのもと」の文字があるのはあたりまえで、「かきのもと」の「いろは歌」の中の位置に何らかの法則があると思えない。

喉につっかえていた骨がとれたような満足感である。

03.7.27

石崎幸二

『日曜日の沈黙』

データ:
 発行年  2000.12
 発行所  講談社(ノベルズ)
 ISBN 4-06-182161-X
 備考   第18回メフィスト賞受賞作

あっちゃんの感想:
 だめですねえ。ミステリーとしてはそれなりに評価しますが人物描写がねえ、あれじゃあせっかくの最後の方の事件の真相も生きてこないですよ。まあこれは好みの問題と言えばそうなんでしょうねえ。

05.8.7

石持浅海
『水の迷宮』

データ:

くれい爺さんの感想:
 帯に「胸を打つ感動と美しい謎」とある。
まず「胸を打つ感動」からいうと、たしかにラストは感動的ではあるのだが、“このラストでよかったのか”という、一抹の不安が残る。
それは論理的に間違っているというのでなく、倫理的にこれでよかったの、という疑問である。
次に「美しい謎」であるが、この美しい謎というのはなんだろう。
小生が感覚として謎を美しいと感じることがあるとすれば、それは見立て殺人に対してではなかろうか。
それは見立てという形にぴったりとはまっているという感じからであろう。
そういう印象はこの作品にはない(見立て殺人というわけではないし)。
ただ、読んでいて推理が非常に整理されて読者に提供されていて、いうなればきれいな(整理されて書かれた)ノートを見るような感じだろうか。
たしかにさまざまな推理を戦わせるような作品も面白いが、それは印象としてはある方程式を解いていく過程をすべて書き込んだうえに、間違った部分も書いてあるような乱雑なノートのような感じをうける。
この作品は、それがある程度整理されてノートに書かれているような感じなのだ。
作品としても合格点の出来栄え。

06.5.5

一海知義
『一語の辞典−風−』

データ:

くれい爺さんの感想:
半解先生の著書なので読んでみました。
“風”の中にはなぜ“虫”がいるのか、などなど。
漢字というのは歴史であり、ロマンだなあとつくづく思うのだ。
かつて宮城谷昌光の作品を読んでいて「“衛”という漢字は人が右回りに回るという意味を含んでいて、これは左手に盾を、右手に矛を持って守るということからきている」というような話が出てきた。(違っているかもしれない)
そのとき、心はその漢字が作られていった世界にいっぺんに飛んでいったような気がしたものだ。
半解先生独特の批判精神を含みながら、漢字“風”の世界に誘ってくれる。

06.5.22

一海知義・筧久美子・筧文生
『漢語の散歩道』

データ:

くれい爺さんの感想:
 今は仕事の関係で行けなくなったが、以前、半解先生の漢詩のカルチャー講座に一年ほど通った。
機会があればまた参加したいと考えている。
中国語の学習をしている小生には興味ある内容でもあるので楽しく読ませてもらった。
それにしても、この三人の老先生方の反骨精神には頭が下がります。

06.5.5

稲見一良
『男は旗』

データ:

 発行年  1996.12初刷(単行本:1994.2)
 発行所  新潮社(文庫)
 ISBN 4-10-121813-7
あっちゃんの感想:
 少々展開が級だったのが残念。描かれた時期のことを考えれば致し方ないがもっと長編として読みたかったなと思った。

03.9.16

井波律子
『中学文学の愉しき世界』
くれい爺さんの感想:
 中国の歴史や歴史上の人物、文学を語るエッセイ集。
著者は中国文学者だから、博識であることはたしか。
それだけに内容は少々マニアックな印象。
中国の歴史や文学に興味のある人にはなかなか愉しい読み物となっているが、扉を開く入門書の類とは違う。
あまり興味のない人にはしんどいかも。

03.9.23

乾くるみ
『箱の中』

データ:
 発行年   1998.12
 発行所   講談社

あっちゃんの感想:
 この本を読む直前に2冊の本を読んでいます。「虚無への供物」→「匣の中の失楽」→本書となります。前2冊は以前読んでいますし旧「エンターテイメント交差点」の方に感想も書きましたので今回は「匣の中」のみとしますが3冊続けて読むとおもしろいものです。本歌取りと言うのでしょうかねえ。特に本書は書名もそうですが「失楽」に対する思い入れが感じられます。それでいて別個の作品としての完成度も高い。「Jの神話」読んだ時は難だろうなって思いましたが昨今の評判を耳にしていますと乾くるみ侮れずという感じです。

05.10.24

井上夢人 プラスティック パワーオフ
『プラスティック』

データ:

 発行年  1994.5
 発行所  双葉社
 ISBN 4-575-23188-6
あっちゃんの感想:
事前に知っていた予備知識からは当然叙述トリックだと思っていたらあのトリックというかああいう風になっていくとは思っても見ませんでした。この作品の怖さはやはりラストでしょう。物語全てがラストの2ページに収束していくんですよね。多分こんなラストは僕初めてです。

 ただ疑問が一つあります。何故書名が「プラスチック」なんですか。僕の読み落としかもしれませんが書名を「プラスチック」とした理由がいまいち分かりません。もし支障がなければどなたか知っている方いましたら教えてください。

02.12.23

『パワー・オフ』

データ:

 発行年  1996.7初刷
 発行所  集英社
 ISBN 4-08-774199-0

あっちゃんの感想:
この本が出た当時は今更コンピュータテーマでもなかろうなんて思っていたが僕の認識、間違っていました。僕はコンピュータが進化して人間社会を襲うなんて陳腐だなよと勝手に思い込んでいました。大筋では僕の予想は間違っていませんでしたがコンピュータウィルスが猛威を奮い社会的な脅威となっている現在読むとまたリアリティがありました。また登場人物たちの立場と言うか専門家なんだけど等身大に描かれているので感情移入 しやすいし快作と言った感じでした。

03.9.6

今邑彩 繭の密室 ブラディーローズ 「裏窓」殺人事件
『繭の密室』

データ:

 発行年  1995.12初刷り
 発行所  光文社(ノベルズ)
 ISBN 4-334-07170-8
あっちゃんの感想:
あのトリックの使い方が著とせこい感じがしました。別にアンフェアとか言うことじゃないしうまい使い方なんだろうけど「せこさ」を感じました。ストーリー展開はうまいし何といっても被害者の一人の造形がいいです。今邑彩は僕とイニシャルが同じだしもっともっと読んで行きたい作家です。

02.12.23
『ブラディーローズ』

データ:

 発行年  1999.12初刷(単行本:c1990)
 発行所  東京創元社(文庫)
 ISBN 4-488-42402-3
あっちゃんの感想:
 面白かった。日記に隠されたヒント、僕は全く気がつかなかった。
それゆえにミスリードされ著者の仕掛けた罠に落ち込んでしまった。
確かに地味なことは地味、しかし本格マインドはすごく感じた。今邑はもっともっと評価されるべき作家だと思う。

03.9.28
『「裏窓」殺人事件』

データ:

発行年  1995.2
ノベルズ 1991.10
発行所  光文社(文庫)
ISBN 4-334-72005-6
あっちゃんの感想:
 やられてしまいました。見事です。サスペンスもあり登場人物の造形もいいしもちろんミステリーとしても上出来です。今邑彩の作品は今後もいろいろ読んでみたい。

02.11.10

岩井志麻子
『ぼっけえ、きょうてえ』

データ:
 出版社:角川書店
 出版日:99.10.30
 価 格:\1400
 ISBN :4-04-873194-7
 備 考:「ぼっけえ、きょうてえ」は第6回日本ホラー小説大賞受賞作、2000年山本周五郎賞受賞作。

収録作品:ぼっけえ、きょうてえ,密告函,あまぞわい,依って件の如し

あらすじ:
 ……妾の身の上を聞きたいんじゃて?
ますますもって、変わったお方じゃなぁ。
しゃあけどますますええ夢は見られんなるよ。
妾の身の上やこ聞いたら、きょうてえきょうてえ夢を見りゃあせんじゃろか。
それでもええて?そんなら話そうか……
(表紙折り返しより)
Kikuchiさんの感想:
 審査員全員べた褒めの、短編初の大賞受賞作、しかも山本周五郎賞受賞作、ということで、いやがうえにも期待が高まるわけですが、ん〜、んんん〜、同じホラー小説大賞短篇賞なら「玩具修理者」の方が凄かったかなあ。短編というと、結末とかオチが非常に重要なわけですが、それほど背筋が凍るようなラスト、というわけではなくて、まあ、収録作品はどれもそうですが、なんかオーソドックスな怪談話という感じでした。意外性を求めることに重きを置く私としては、今ひとつ。

01.11.14
あっちゃんの感想:
 ずっと読みたくてしかたなかった。その一番の理由は書名にあります。
 岡山で生まれ育った僕としては読まざるをえないじゃないですか。
 さて感想ですが期待が大きすぎて実際に読むとちょっと練って感じです。文章はうまいし引き付けられるんですがどうも僕が好きな阪東眞砂子と比べてしまうんですね。せっかく岡山を舞台にしているのだから「岡山」の独自性を出して欲しかったなと思いました。

03.10.26

岩崎正吾 風よ、緑よ、故郷よ 探偵の夏あるいは悪魔の子守歌
『風よ、緑よ、故郷よ』
くれい爺さんの感想:
 森真沙子の作品に「放課後の記憶」というミステリー作品があり、これを小生は高く評価したのだが、たぶん一般はそうではないだろう。
けっして評価が低いとは思わないが、小生ほど高くは評価していないと思う。
小生の評価は、むしろ好みといってもよく、小生はたぶんに感傷的な人間であるので、この作品の叙情性や感傷的な話が気に入ってしまったのである。
この岩崎正吾の「風よ、緑よ、故郷よ」も、15年前の中学三年のときに父が殺され、いま久しぶりに故郷へ帰ってきてその真相を突き止めようとする話で、この作品も郷愁を誘う感傷に溢れている。
で、小生の好みに合うのだが。
岩崎正吾についていえば、小生はこの文庫本の著者略歴を見るまでずっと勘違いをしていた。
この作品は“鮎川哲也と十三の謎”の一作品として1988年に発表されたものだが、「鹿の幻影」の紀田順一郎(たぶんそうだったと記憶している)は別として、有栖川有栖や宮部みゆきなどの当時では比較的若手の作家への発表の場として受け止めていたので、岩崎正吾も小生と同年代くらいと思っていたのだが、1944年の生まれと発表当時、すでに40歳を超えていたんですね。
岩崎正吾には他に「探偵の夏 あるいは悪魔の子守唄」や「探偵の秋 あるいは猥の悲劇」などがあり、この二作品は小生も読んでおり、その特徴は“本歌取り”ということがあり、なかなか楽しめもし、比較的好みの作家でもあった。
他に「探偵の冬 あるいはシャーロック・ホームズの絶望」という作品もあるらしいが、こちらは未読。
さてこの作品、小生の好みには合うのだが、最後に犯人が突然現れたような印象で、ミステリーとしては今一歩かな。
ただ、“本歌取り”の精神でみせているような彼らしいユーモアにも溢れていて、楽しくは読める。

04.11.9
『探偵の夏あるいは悪魔の子守歌』

データ:

 発行年   1990.9
 単行本   1987
 発行年   東京創元社(文庫)
 ISBN  4-488-40401-4
あっちゃんの感想:
 気になっていた作品だったがようやく読むことができた。おもしろかった。とことん横溝正史にこだわりながらパロディに終わらずちゃんと本格ミステリーとなっていたのは見事

05.12.26

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