鮎川哲也
 黒いトランク 黒い白鳥 憎悪の化石 不完全犯罪 ペトロフ事件 クイーンの色紙 人それを情死と呼ぶ 準急ながら

『黒いトランク』

データ:

 出版社:東京創元社(創元推理文庫)

 発行:講談社(現代推理小説大系10 昭和47年7月8日)
 定価:850円   古本屋にて500円で購入
 (ISBNは、なし。時代ですなぁ)
 「現代推理小説大系10」他に「危険な童話」(著:土屋隆夫)「車引殺人事件」「団十郎切腹事件」「奈落殺人事件」「加納座実説」(著:共に戸板康二)「私論・推理小説とはなにか」(著;土屋隆夫)等を収録。

あらすじ:
 汐留駅に着いたトランクは引き取り手のないまま、異臭を放っていた。警官立会いのもと開けると、中からは屍体が……
 加害者と目され、その後自殺したと思われる近松の妻は、鬼貫に助けを求めた。夫は殺人者ではないと。
 近松は鬼貫の同窓。そしてトランクの元の持ち主・膳善、トランクを仲介した蟻川も旧知の仲だった。彼らはこの事件にどう関わってくるのか……
くれい爺さんの感想:
 作品の中でも、解説でも触れられていたが、クロフツの「樽」を思い出させる。
 が、小生にとっては「樽」よりもわかりやすい作品であった。
 本格ミステリーの分類では“アリバイ崩し”に入る名作であろう。
 緻密で重厚な構成。
 二人の人間のアリバイと二つのトランクの謎が、相似あるいは対称のように組み立てられていて、作者の構成に対する意識の高さが感じられる。
 鬼貫がかつて恋した女性やかつての学友を散りばめて、ノスタルジックなロマンティシズムも加味されているが、感傷に過ぎることもなくまとまっていると思う。
 作者の鮎川哲也もいまは70歳を過ぎて、たしかkikuchiさんがおっしゃってたが、“鮎川哲也と13の謎”シリーズも鮎川哲也だけがまだということ。
 もう期待できないのでは。
 彼の作品は他に読んでないのだが、「黒い白鳥」「憎悪の化石」「りら荘事件」などが有名らしい。
 が、中心は昭和50年以前で、そのころには人気のあった鬼貫警部もいまではそんなに知られていないのかもしれない。

02.8.18
kamanoeさんの感想:
 鮎川作品は、たぶんこれが初めて。
 なるほど、これは面白い。戦後の作品だから古典とは言わないかもしれないけれど、古典感覚で読むのがきついかと思いましたが、意外と読みやすい。20年も経つと書体(字体)や段組・文字間隔・行間隔・文字の大きさ等の違いから、感覚的(視覚的)に読みづらくなると聞いたことがあるのですが、20年どころではない本作でも大丈夫。内容が良いと大丈夫ということなのでしょうか。
 トランクの移動・死体の移動・アリバイトリックと凝りに凝った作品。警察小説の面もあり、後から物理的な証拠が出てくるのはしょうがないけど、それが推理にうまく繋がっている。推理の裏付けが成され方に、ちょっと不満が残るのですが、この結末では仕方なし?。
 鬼貫も、対する膳善・蟻川も現実感を持って読ませます。(かなぁ?)

 気になるのは、年表記で西暦と年号使用が混在していること。しかも5年ずれてます。冒頭「千九百四十九年」とある。P92にトランクの製造は昭和二十三年とあるのに対し、P96で蟻川に対し「七年前にトランクを買わなかったか」と質問している。P114でまた「千九百四十九年」とあり、対してP115に手紙の日付として「昭和二十九年」とある。
 誤植でしょうか?。非常に戸惑いました。

05.2.12

自己レス>何年のこと?
 古本屋で創元推理文庫版の「黒いトランク」(復刻版?)を見かけました。こちらでは「千九百四十九年」とあり、且つトランクの購入時期についての蟻川への質問では「昨年」となってます。また、手紙(鉄道公安官からの連絡)では「昭和24年」となっていたようです。一応統一されてますね。(西暦表示と年号表示が混在しているのはそのままでしたが)

 そういえば、現代推理小説大系収録版での、蟻川への「七年前に」という質問も、おかしい。六年前にならないとおかしいのですが……

05.2.16
『黒い白鳥』
くれい爺さんの感想:
 小生は著名な作家がなくなったら、その代表作は読破しておきたくなるという読書癖がある。
 鮎川哲也は僕にそう思わせるだけの作家であったことはたしかであろう。
 元来、アリバイ崩しというジャンルにもうひとつなじめないでいるのだが、それに関しては有栖川有栖があとがきに書いていることに説得力がある。
 “「アリバイ崩しは地味で退屈」という偏見を抱いている読者は、大方が読まず嫌いなのだろう(あるいは、読んでも読めていないのだ)。”と。
 たしかに本格ミステリという分野で、フーダニットの作品に対してアリバイ崩しというのは地味な印象はある。
 が、“読めていない”というのもたしかだろう。
 また、アリバイ崩しの作品においては読者にあっといわせるほどのインパクトを与えるのは、作家のほうからすると大変なことなのかもしれない。
 その意味では、アリバイ崩しに読者を魅了するほどの作品が少ないというのもたしかであろう。
 そんな中で、鮎川哲也がアリバイ崩しの作品を多く発表していることは瞠目に値する。
 「黒い白鳥」は傑作である。
 前作の「黒いトランク」はアリバイ崩しというよりも、アリバイ、犯人の作ったトリックそのものに面白みがあって、鬼貫警部がそれを崩す過程にはそれほど面白さを感じなかった。
 が、「黒い白鳥」は鬼貫警部の発想の転換というか、思考の飛翔というか、そういうアリバイ崩しの思考の過程が面白くて読ませる。
 それからぴりりと一味加えているのが声優の登場で、彼が見破ったものとは何なのか。
 それが読者に自分も謎解きをしようという気にさせる。
 たとえそれが読者には決して×××ことであろうとも。
 こんなに面白かったアリバイ崩しの本格ミステリは読んだことがないと言いきってしまおう。
 鮎川哲也の作品は今後、「憎悪の化石」、傑作といわれる「五つの時計」を含む短編集を予定している。

03.1.26
『憎悪の化石』
くれい爺さんの感想:
これまた、非常によく考えられている。
アリバイも二種類のもので、どちらもよいが、特に最初のほうは素晴らしいもの。
アリバイを崩すきっかけでの鬼貫と旦那がドラマチックで、「どうかしましたか」「うむ、ちょっとしたことに気づいたよ」という瞬間で鬼貫が何に気づいたかを推理してみたい気分にさせる。
近々に鮎川哲也の短編集を読んでおこうと思っている。

03.2.22
『不完全犯罪』

データ:

くれい爺さんの感想:
鮎川哲也の鬼貫警部ものの短編集。
江戸川乱歩が絶賛したという「五つの時計」のトリックは見事なもの。が、他はもう一つという印象。
そも、小生は短編というのをあまり読まない。
その理由は、一つは短編というのは、とくに本格推理の短編は、トリックが命というのは当然なのだが、そのトリックが突出すると文章パズルという印象が強くなり、逆に小説としての深みを求めるとトリックの印象が薄くなるという気がしている。そのバランスの微妙さが難しい。
鬼貫ものはすでに長編を読んでいるので、キャラクターとしてはこれら短編に多くは求めないですむので、人間の描写云々はあまり気にかからない。
が、「五つの時計」以外は、トリックの印象が希薄。
ただ、「死のある風景」と「偽りの墳墓」の2作品は少し長めの作品で、これらはなかなか読ませる。
鮎川作品は「黒いトランク」「黒い白鳥」「憎悪の化石」の三長編とこの短編集を読んだが、これで一応卒業とする。

03.5.3
『ペトロフ事件』

データ:

 発行年   2001.7初刷
 発行所   光文社(文庫)
 シリーズ  鮎川哲也〔鬼貫警部事件簿〕傑作群
 ISBN  4-334-73178-3
あっちゃんの感想:
 久々の鮎川哲也だったがおもしろいことはおもしろかった。謎解きのおもしろさを味わえたような気がする。ただ巻末に載っていた時刻表が小さすぎて全然読めずアリバイ崩し自体には参加できなかったこと、でもそれでも満足できたのだから鮎川はすごい。

03.9.16
『クイーンの色紙』

データ:

 出版社:創元推理文庫
 収録作品:「秋色軽井沢」「X・X」「クイーンの色紙」「タウン・ドレスは赤い色」「鎌倉ミステリーガイド」
yobataさんの感想:
 結構小粒な感じなんだけど、すごく行き届いた作品が多いです。解説を読むと、それがよくわかります。
 作品集としての満足もさることながら、飯城勇三氏の解説がスバらしかった。久々に解説を読んで唸りました。クイーンと鮎川の比較論は首肯できる点多々あり。ただし、ネタばらしがあるので、本編読了後にどうぞ。

04.1.31
『人それを情死と呼ぶ』

データ:

 発行年    2001.7
 発行所    光文社(文庫)
 ISBN   4-334-73179-1
 シリーズ   鬼貫警部事件簿
あっちゃんの感想:
 非常によくできていたと思う。またヒロインの描き方もよかった。

04.9.20
『準急ながら』

データ:

発行年   2001.8
発行所   光文社(文庫)
ISBN  4-334-73193-7
備考    鮎川哲也コレクション
あっちゃんの感想:
 昔好きだったミステリーっていう感じがした。初めて読む作品でありながらどうしてそう感じてしまうのか。解くべき謎と解かれていく過程がきちんと書かれているからミステリーを読んでいるという満足感があるのかな。

05.11.10

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