呆冗記
呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。


輜重兵が兵隊ならば

 今年も物語が始まる。 年に1度の物語が。昨年の様子はここここに詳しい。

 新たなる上司。
 「本官は、輜重に関しては何も知らん。だから貴官が働きやすいように、一切の口は出さない」
 そう言い切る参謀長。それは、自分は何もしない事の宣言であることに気がつくのに長い時間は必要なかった。
 押し寄せる雑用が上杉を苛む。
 「何故、私が。この作業を」
 「あんた、ウチの部員じゃなかったのか? やるのは当たり前だろう。どうせ、参加部隊のリストさえ集まってないのだろう」
 そう、前提条件である、作戦参加部隊すら定まらない。
 「D−DAYまで、1週間切っているのですが。まだ、参加部隊は決まらないのですか」
 「決まらんよ。第一、作戦工程が1.5倍になったのはこちらの責任ではないしな」
 そう、嘯く、師団長達。
 宝石よりも貴重な時間は刻一刻と失われる。
 昨年度の変更可能日は容易に超えてしまった。

 3枚目のカレンダーは容易に去っていく。
 4月1日。
 「この度、こちらに配属されました高辺みなみ少尉であります」
 「エイプリル・フールではないよな」
 「はあ? 何のことでしょうか」
 アテにしていた応援人員は、右も左も解らぬド素人だった。
 「ド素人とは心外です」
 「そう言う事を言えるのがド素人なんだがな」
 例年ならば可能な新人育成も、今年は不可能に近い。

  「資料、揃いました。これで作業開始ですね」
 時間は既に一週間を切っていた。紙とPCを前にした孤独な戦いが始まる。
 「しかし、なんで、この部隊が同時に3カ所にいるんだ」
 「さあ? どうしたんでしょうね」
 止ん事無きところからの指示は矛盾だらけであった。
 「誰が、策定したんですか。これ」
 その問に答える物は誰もいない。
 「その通りに計画すればいいんだよ。戦場に立てもしない人間が、戯言抜かすんじゃない」
 そう、戦場に立つことが唯一の価値感の人間にとっては、輜重参謀など塵芥なのかも知れない。
 しかし、出来ない物は出来ない。
 「無理な物は無理です。無茶もしましょう。無謀も時には良いかもしれない。しかし、物理的に理屈に合わないことは出来ないんですよ」
 その証明のために費やされる時間。そして、許可。

  ようやく始まる戦い。のはずだった。しかし。
 「大尉殿。これって、この部隊の活動限界超えてませんか?」
 黙って策定資料を見ていたド素人が頓狂な声をあげる。
 「何、しかし、エラーは出てないぞ」
 「でも、限界を超えてますよ。これ」
 確かに彼女の言うとおり、ペーパーデータ上では人間の限界を超えていた。なのに、PC上のデータはエラーを吐き出さない。
 「なんじゃこりゃあ」
 「松田優作には似てないですよ。体型からして」
 冷静な突っ込みをかます高辺少尉。
 そんな場合ではない。
 条件が複雑すぎて、ソフトの想定を超えてしまったらしい。
 「この、ソフトでは奴らに勝てない」
 「また、懐かしいネタですね。沖田艦長ですか」
 ここまで、凄まじい状況は想定したこともなかった。これに比べれば、去年の4月に入ってからの変更など児戯にも等しい。
 「どうします」
 「やるしかないだろう」
 徒手空拳の戦いが始まる。

 「じじいは茶でもすすってろ。戦争は俺がやってやる。くたばれモンキー野郎ども。人間一度は死ぬモンだ」
 「御大のキャラクターとしたら諧謔が足りないみたいですし、ビック・モローにしては渋くないですよ。大尉殿」
 だあああ。黙れ。というか。なんで、そこまで出典を理解している。

 まあ、このように、今年も莫迦みたいな事には事欠かなかったのだ。
 しかし、ここまで頑張っても、
 「輜重兵が兵隊ならば、蜻蛉蝶々も鳥のうち(意訳)」
 という評価は非常に、へこむのであった。
 もう少し、モチベーション高めてくれても文句はないのだが。ま、いいか。何とか終わったし。(04,4,12)


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