Two Medicine 侮るなかれ 〜 Glacier紀行2000・夏(後編) (1)
【8/31-9/1/2000】 Lower Grinnell Glacier, Dawson-Cutbank Pass Trail
【8/31-9/1/2000】 Lower Grinnell Glacier, Dawson-Cutbank Pass Trail
Day-6 (8/31) : Many Glacier, Swiftcurrent Valley、晴のち曇
〜 足休めの一日 〜
一足早く日本に帰る友人を早朝5時前にKalispell の空港に送り出したあと、 しっかりモーテルに戻り寝直す。 9時過ぎにゆっくりチェックアウトし、 ゆらゆらふらふらとGTTSを東に抜け、 昼頃に Many Glacier Campground へ。 テントを設営し、 寝袋を干しつつぼ〜っとしたり荷物の整理をしたり。 しかし歩いてしまうんだな。 貧乏症だね。
軽くいこうと思いつつ、 早いペースでまずはさっと Lower Grinnell Lake まで往復。 森が明るい。 木々の間をまばゆいコバルトブルーの Steller's Jay(ステラーカケス)が飛んでいる。 湖岸から滝と Salamander Glacier の上部が見える。 遠く断崖に目をやると、 何やら動くモノが見える。 よく目をこらすとそれは Grinnell Glacier Trail を歩く豆粒のようなハイカー達だった。 おーい、 こっちは見えるかい?
戻ってきてもまだ十分に時間があるので、 もしや Moose を見られたらの思いで Swiftcurrent Pass Trail を Redrock Falls 付近まで散策することに。 何の収穫もなくそろそろ引き返そうと思った頃、 すれ違ったハイカー曰く、 「ここから20分ほど奥のトレイル沿いにでっかい Moose がいた!」 と興奮気味。 見たい思いで小走りにトレイルを急ぐと次にすれ違ったハイカー曰く、 「そんなもん見んかったよ」 ...そりゃそうか。 相手も動物。 同じところに何十分もいるわけなし。
さて、 同じ頃、 灰色の背中をした美しい Grizzly Bear がこの付近を悠々濶歩していたそうだが、 それも結局見られず。 とはいえいきなり出会ったりするとこちらも一人、 ちょっと恐い。
夜、 Evening Campfire Program に参加。 テーマはまさに昼間見逃した Moose についての話であった。
ところで今晩テントを張っている Many Glacier C.G.は、 Foreground Campsite なので、 バーナーに限り火の使用が可。 バックカントリー用に用意してきたが今まで手がつけられなかった鮭雑炊をたべる。 やっぱりね、 うん、 温かい食事はうまいよ。 ちなみに昨日の雨程度では Fire Condition: Extremely Danger は解除されないらしい。 あんなに降ったのに...。
夕方立ちこめた暗雲は結局雨を落とすことなく夜には消え去り、 星が頭上できらめいた。
- ハイク本日分:13.4mi 計:71.5mi(114.4km)/6days
- (足休めとかいいつつ、 あとで集計してみれば、 13.4マイル(21km以上)も歩いてんじゃん...荷物は軽かったけど。)
Day-7 (9/01) : Dawson-Cutbank Pass Trail, Two Medicine、 雨のち晴
〜 高所恐怖症お断り 〜
夜明け前の Many Glacier Campground、 テントにあたる雨音で目を覚ます。 とうとう降ってしまったか。 眠れないので 5時半頃に起き、 テントの中身を全て撤収ののち、 脇に止めてある車の中に逃げ込む。 6時半、Swiftcurrent Inn 併設の Cafe が開く。 ゆっくり朝食。 嗚呼、 コーヒーがしみる。 そうこうしているうちに雨は小康状態となり、 晴れ間が顔を覗かせてきた。 ムラムラ。 歩きたいっ。
St. Mary Lake Visitor Center に寄り、 Two Medicine のバックカントリーキャンプサイト Oldman Lake "OLA" が空いているか尋ねるも、 Bear Frequenting により Oldman Lake へのトレイルは閉鎖中とのこと。 そのかわり Dawson Pass 方面は開いているそうなので、 代わりに今晩 No Name Lake Campsite "NON" を取り、 Two Medicine Area へ急ぐ。 今は晴れているが下り坂傾向。
Two Medicine 到着、 昼前には歩き始める。 森もさほど密度が濃くなく、 明るい。 たわわに生い茂る Huckleberry。 トレイル上にいくつもの新鮮なクマのフンが落ちているが、 その姿は今日一度も見ずに終わる。 そうこうしているうちに雨が降ってきた。 がっくり。 着替える。
No Name Lake Campsite にてテントを設営し、 荷を軽くしたところで頂上アタック(?)に臨む。 運のいいことにサブアルパインエリアに出る頃に青空になってきた。
そして着いたのは Continental Divide の真上。 更に Divide に沿ってトレイルは北に延びる。 すげー、 すごすぎる。 丁度、 巨大な塀の上を歩いているような感じ。 あまりにもスケールが大きすぎて写真に撮れない。
ここからトレイルは Flinsh Peak と Mt. Morgan の西壁を真横にトラヴァースし、 Cutbank Pass へと続く。
この Dawson Pass - Cutbank Pass 間は恐怖の高所トレイルだ。 一応ハイクルートにちゃんと載っている整備トレイルの一つだが、 これは半端じゃない。 なにせ氷河にざっくりえぐられたホルン(尖塔)形状の山頂から Nyack Creek の流れるU字谷の底まで一気に落ちるガレ場の斜面は、 斜度40度をゆうに超える。 そこを申しわけ程度の幅の獣道のようなトレイルが横切っている。 絶景すぎてひたすらコワい。 滑落したら1000mくらいもんどり打って止まらなんちゃうかコレ? 雨上がりの日と、 朝にうっすら雪化粧したような日、 それから風が強い日も要注意だろう。
遥か下には Oldman Lake。 ををこの風景、 これを見たかったのだよ。 と、 その時、 断崖からひょっこり顔を出したるは Mountain Goat。 あ、 逃げた、 こら、 そんなところ走るなーおい。
トレイルの上に続くガレの斜面から無数のイワツバメが一斉に飛び立つ。 雲が壁をさーっと流れ、 景色を真っ白にしたかと思うと、 いきなり真っ青な空。 頭上に見上げる Flinsh Peak、真近に迫る Mt. Morgan の褐色。
今、 この絶景はボクだけのもの。 時間が少し遅かったせいか、 朝は雨だったせいか、 自分しかいないんだもの。 空を歩いた午後。
Continental Divide から Camp Site に降りてきた頃、 ピンク色の夕暮れが西から No Name Lake の湖面を染める。 同じく夕日を観賞していた別のバックカントリーハイカー達がスコッチを振る舞ってくれる。 あまり飲めないが一杯だけいただく。 心地良く体が火照る。
- ハイク本日分:15.2mi 計:86.7mi(138.7km)/7days
A Night in the No Name Lake Campsite、 夕焼け→雨→雷雨→豪雨、 んでもって雪化粧。
〜 山の神様がお怒りだぁ 〜
その夜10時過ぎ、 テントを鳴らす激しい雨音で目を覚ます。 直後、 テントの中で目をつぶっているにも拘らず、 まぶたの中が真っ白に光り、 数秒後に轟く雷鳴。 激しく雨が叩きつける。 数秒に一回のペースでテント内全体が閃光に包まれる。 そして轟音。 そっと外を覗くと、 どうも昼間登った分水嶺、 そしてそこからすぐ横にそびえる壁に続く稜線に沿って雷が落ちまくっているようだ。 落ちると谷全体がホワイトアウトし、 キャンプ地裏の森の木々のシルエットが網膜に残像として残る。
天から降り注ぐ、 地から湧き起こるような大サラウンド状態の谷間の一角で、 乱舞する稲妻に身を縮める。 雨はますます激しくなる。 こんなんじゃとてもじゃないが眠れたもんじゃないと思いつつ、 寝袋の裾を引き上げると、いつの間にか夢の中だった。
そして迎えた朝。 雨は止んでいるようだ。 昨夜の嵐は本当に夢の中の出来事では? と思うくらいウソのように静まり返っているこの谷間、 テントからひょっこり顔を出すと「!!」
昨日登った稜線も雪化粧。 実は初めての Two Medicine、 いきなりインパクト強すぎです...
ただ、 お陰で今使っているテントの底力も確認できた。 あれだけの豪雨が叩きつけた中、 床面もほとんど水が浸みていないのが幸い。