越境ハイク 〜 Glacier紀行2000・夏(前編) (3)
【8/28-30/2000】 Cross Border Trekking thru Waterton Valley
【8/28-30/2000】 Cross Border Trekking thru Waterton Valley
Day-3 (8/28) : Waterton - Stoney Indian Lake Trail、晴
〜 静かなるキャンプ 〜
今日から2泊3日でバックカントリーハイク。 朝、 モーテルの電子レンジを使い、 ゴハンものを温め柔かくしザックに詰める。 フリーズドライ麻婆をコーヒーメーカーの湯で戻し、 タッパに詰める。 これは昼飯用。
9:00過ぎ、 Waterton Visitor Center にて予約していた Backcountry Camp Permission を発行してもらう。 今回Waterton(Canada)側から入山するものの、 歩くルート自体は Glacier National Park (USA)内で、 キャンプサイトも全てGlacier側の管理下であるが、 Waterton-Glacier間のVisitor Center同士で連絡を取ってもらい、 許可証を発行してもらった。 7分程度のヴィデオを見せられる。 短い割に内容が盛り沢山で、 いきおい英語も速いが、 事前に Backcountry Camp Guide を熟読していると理解も楽。
Waterton Town Site でバナナを買おうと思ったが、 ない。 仕方なく洋ナシとプラムを買うが、 プラムは熟し過ぎていたのか、 ハイク中にドロドロに潰れてしまった。
10:00am出航のボートに乗り込む。 Upper Waterton Lake をボートで Goat Haunt まで南下。 快晴、 風強し。
Goat Haunt("GOA")着。 一応ここは既にアメリカなので、 カナダ側から入った我々はここでレンジャーにパスポートを見せる。 でもこれってちょっと見て「Good Luck!」と言われるだけなので、 これ忘れてもナンの問題も起こらないような。
いざ出発...の前に荷物置いて Rainbow Falls を見に行くも、 大したことなし。
出発。 Waterton からの南下ルート、 森の中を歩く。 Kootenai Lakes は森の中の浅い湖で山に湛えられた風景がキレイ。 特に西側の稜線がマッシヴ。 ここはMooseもよく現れるらしい。 湖沿いでランチ。 ゴハンに麻婆かけて食う。 冷たいがうまい。
Wood Pecker(キツツキ)が幹をすさまじい勢いで叩いている。 頭バカにならんのかいな。 脳細胞死んでくぞー。
Kootenai Lakes から Stoney Indian Pass Trail 分岐までの1時間2.4miは軽い登り下りの続く静かな森林トレイルで、 こんなの全然キツくないハズだが、 我々ここが今日一番ツラい時間帯で、 5分が30分くらいに感じる。 バックパックが重く重くのしかかる。
分岐を越えると Stoney Indian Lakes Campground ("STO") まで一気に登るルートになるため、 勾配がキツくなるのだが、 一番ツラい時間が過ぎ去った我々は今は気分がハイ状態、 さっきよりむしろ順調に歩が進む。
Creek 沿い、 低灌木と下草のトレイルから見上げる Stoney Indian Peaks の山々が神々しい。 フイに勾配が緩くなり、 5分後、 Lakeに到着。
夕食は冷たいゴハンに生味噌ずいを塗りつけて食べる。 とにかく今は何でもうまいが、 ふと我に返るとけっこう侘しい。 ああ、 火が使いたい。 サンドイッチでも持ってくりゃ良かった。 まぁ、 ちょい味濃いがなかなかイケる。
クマ対策のため、 ポールに食料を引っ掛ける作業。 これがけっこうムズカシイ。
7:45pm、 まだ西日で明るいが、 明日、 Stoney Indian Passへの早朝アタックに備え、 寝る。 おやすみ。
- ハイク本日分:10.1mi 計:28.7mi(45.9km)/3days
Day-4 (8/29) : Stoney Indian Pass - Fifty Mtn - Goat Haunt、晴のち曇
〜 歩き過ぎ。 〜
6:00過ぎ起床。 同行者ウォッチによれば、 気温は4℃とか。 まだ薄暗い中、 テントをそのままに、 Stoney Indian Passへ早朝アタック。 グググッと登り、 30分ほどで到着。 雪渓をたたえた Stoney Indian の山々が美しい。 朝日が頂をオレンジ色に染め始める。 これがバックカントリーキャンプの醍醐味。
朝日のあとキャンプサイトまで降り、 朝飯。 例によって生みそずいを塗った冷たいゴハン。 同じキャンプサイトにいた30代中盤くらいの女性ハイカーは、 夏はカリフォルニアからGlacierに来て、 1ヶ月くらいバックカントリーを歩いているとか。 連続ではなく、 数日〜1週間歩いてはタウンサイトに降り、 また許可を取って別ルートを歩く。 今このルートはソロで歩いているとのこと。 彼女にロッテの小梅ちゃんを一粒進呈。
朝の陽光をバックにCreek沿いを下り、 昨日の分岐地点へ。 今日はここからが勝負。 Fifty Mountain まで登ったのち、 一気にGoat Hauntまで引き返すという、 計20mi(32km)を超える強行ルート。 ヤバそうなら途中でやめて引き返せばよい。 森の中を登ったり降りたりするうち、 段々と登り優勢となってくる。 流れ落ちる渓流にて、 浄水フィルタで水を汲み、 疲れを癒す。 ここから森が拓け、 低灌木のサブアルパイン地帯に突入。 広大なU字谷と少し遠くに見えるどでかい氷河をたたえた山々、 Flattop Mtn.? 勾配はそこそこだが、 既にボクらにはけっこうキツい。
とうとう、 Garden Wallの北端が見えてきた。 その名を Cathedral Peak という。 気分はハイ、 風景もハイメドゥであるが、 ここから Fifty Mtn. Campground ("FIF")までが思った以上に長い。 そして、 やっと Continental Divide に到着、 と思いきやここはタダの Fifty Mtn. サドルであった。
しかし森を抜け山を越え、 そして到達したこの地は一面の草原地帯。 何という風景だろう... 遠方には Garden Wall に沿って Mt. Gould(Many Glacier から見える山です) の裏側までがくっきりと見える。 ここはその昔、 山小屋だかLookoutだかを作ろうとして途中でヤメた残塁を乗せた丘の上。 疲れ切った体に、 ゆるやかな風が心地良い。
Fifty Mountain Campground ("FIF")までもうちょい距離があるようだ。 そして "FIF" に着いた時点で確認してみると、 Continental Divide は更にそこからまだあることがわかり、 時間的にも体力的にもそこまで行くのは断念。 そう、 今からまたGoat Haunt("GOA")まで戻らなければならないのだ。 普通ならFIF-GOA間片道だけで一日ハイクの距離といってもいい。 時刻は3時をまわっていた。
あとはひたすら"GOA"まで戻る。 下る下る。 脚が、 膝が、 足の裏が痛い。 バックパックの重みがのしかかる。 ストラップが肩に食い込む。 両者無口になる。 だんだんと薄暗くなってくる。 足はもう「終わっている」が、 ほとんど気力で下っている感じ。 今日はきっと脚が短くなったに違いない。 あーはいはい、 ああごめんよ、 前から短足だよ。
やっとこさ Goat Haunt Shelter に戻ってきたのは8:35pm。
と、 ほぼ同時に、 あんなに晴れていた空から雨粒が落ち始める。 ギリギリだった。 今日のキャンプサイトはシェルター形式で屋根があり、 なんかラッキーだったと思う。 しかし、 食事するにももうフラフラ。 疲れた。
...そして夜じゅう、 雨は降り続いた。 まるでこれまで続いた晴天で乾燥し切った山々を、 一気に潤し尽くすように...
- ハイク本日分:20.9mi 計:49.6mi(79.4km)/4days
Day-5 (8/30) : Waterton Lake Shore Trail、雨天決行
〜 雨天結構! 〜
さて、 これまであんなに晴れていた空が、 我々のバックカントリー最終日を祝福するように(-_-;) 「恵みの雨」を落としまくっている。 雲が低く立ちこめている森と山々は、 ボクらとは裏腹にとても嬉しそうだ。
今日は急がずとも昼過ぎにはおそらく着くであろう。 我々はシェルターに守られたテントからのうのうと目覚め、 軽く食事を済ませてから完全防水対策を施し Goat Haunt を後にする。 雨だし、 しょせんトレイルも単に Upper Waterton Lake 沿いの森を延々まっすぐ歩くだけなんだから、 日和ってボートで帰っちゃえばいいじゃん、 という意見もあるにはあるのだが、 それでは本日のメインイヴェントを敢行できない。 逆に言えば、 本日の目標は天候の影響をあまり受けないのが幸い。
降りしきる雨の中、 森の下草は潤いを取り戻し、 つややかに光り輝く。 木々の間から時折顔を見せる湖面は霧と雲によって幽玄さに拍車をかける。 今回、 雨具に加えシューズもゴア仕様にしておいて大正解。 雨の中でもムレず、 水もたまらず快適である。 友人は傍らで「靴の中がびちゃびちゃし始めた」と言っている。 悪いな、フッフッフ。
湖沿いのトレイルを北に歩き始めて2時間、 ついに国境到着。 ここにはカスタムの代わりに石碑があるだけだ。 相棒と自分とでアメリカ側・カナダ側に分かれ「友好の握手」を交わし(バカだねー)、 ひとしきり休んだあと、 また雨の森の中を黙々と進む。
延々湖沿いで特別何の変化もないと思われたトレイルは、 Beltha Campground を抜けたあたりからグググっと登り始め、 ルートはどんどん湖岸から遠ざかっていき若干不安に駆られるも、 フイに見晴しが良くなった場所で「アッ」と声をあげる。 目前、 目と同じ高さに堂々たる Prince Of Wales Hotel (POW) がっ。 そして眼下にいきなり Waterton Townsite が広がっているではないか。 そして雨も上がりかけていた。
本日の雨天決行ルートはほぼ4時間で歩き切る。 昼飯にやたらめったら油ギトギトクリームソースまみれのパスタが食いたくなるのは何故だろう。
友人は明日の早朝 Kalispell を発つため、 Watertonを後にし、 GTTSを西方向へ登ると、 Logan Pass を抜けた西側は晴れていた。 Garden Wall にかかる雲も美しい。
その夜、 Kalispell で一番美味しいと評判のステーキレストラン Cafe Maxに立ち寄ると、 何とオーナーの Vonny さんがボクを憶えていてくれ、 感激。 ホームページで紹介しますといって、 彼女の旦那で共同オーナーであるシェフのDoug さんにも紹介してもらう。 そう、 こうやって嬉しいしがらみは増えてゆくのだ。
- ハイク本日分:13.6km(カナダ側集計のためkm表記) 計:58.1mi(93.0km)/5days