完成後の感想 | ||
観測所の製作記はこの前で終わる予定でしたが、使った感想を載せないと、これからドームを検討して いる方の役には立たないと気づき、改めてドーム観測所の感想を書き残したいと思います。 |
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1.ドーム内気流について | ||
ドームにするうえで一番心配だったのがこの点でした。いままで使用してきた観測所はスライディング ルーフ型だったので、この問題はまったく心配なかったのですが、ドームの場合、スリットがあるとは 言え、室内はほぼ閉じられた空間であるため、内部にこもった熱や、人の体温による空気の対流で像に 影響があると聞いていたからです。 惑星の撮影をおこなう場合、こうしたシーイングの問題は画像の優劣を決めるうえで重要な要因になり ます。ドーム内での気流による像の悪化は、致命的な問題になり得るのです。 実際、この点を確認するため観測所の完成から数日間、望遠鏡を覗いて惑星と恒星像を観察しましたが、 現在のところドーム内気流による影響と思われる像の悪化は見られません。 同じドームでも私の購入したものは高さが265pと、他の同サイズのものに比べて高さがあるので、そ れだけ室内空間が広く、影響が少ないのかもしれません。 いずれにしても当初心配していたほどの影響はなさそうなので安心しました。 11月12日の夜に完成後初めて冷却CCDカメラでの撮像をおこないました。対象は土星です。 参考にまずは画像をご覧ください。 (土星の画像) |
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2.設置場所と振動について | ||
この問題はドームとは直接関係ありませんが、ちょっと触れておきたいと思います。 私の観測所はちゃんとした基礎の上に建てられたものではありません。普通の家の屋根の上に観測所を 作り、望遠鏡を置いただけのものです。 赤道儀用の基礎などもなく、屋根の上に木板を敷いてその上にピラー脚を立てています。 私の自宅は普通の日本家屋のような切妻屋根ではなく、セキスイハイムと言うメーカーの屋根が平らな 陸屋根作りの住宅です。そのため観測所をのせるために屋根に特別な工事が必要なく、意外と簡単に観 測所が作れてしまいました。 実際、前に使っていた観測所は自作による木造の観測所をのせていました。 しかしちゃんとした基礎がないため、望遠鏡には様々な振動が伝わってきます。 これらの振動の発生源は、ひとつは自宅の中で人が活動することによるものがあります。 階段の上り下りや、ドアの開閉によるものがこれに当たります。この時は撮影できなくなるくらいかな り影響をうけます。 もうひとつは家の外で発生する振動です。自動車が道路を走る時や、ビルの建設現場から発生するもの などです。これは基礎を作っていてもある程度の影響はさけられません。 それでは基礎がないとやはりだめかと言うと、そうでもないのです。 望遠鏡が活躍する時間帯は人が寝静まった夜半過ぎが多いので、これらの振動の影響はほとんど無視で きるからです。また人が活動している時間帯でも、いつも階段の上がり降りをしている訳ではありませ んし、普通に部屋を歩き回るくらいの振動はまったく影響ありませんから、惑星の撮影のように秒以下 の露出には、ほとんど問題が発生したことはありませんでした。 今回の観測所は屋根にルーフバルコニーを作り、その上にドームをのせ、望遠鏡は屋根に直接乗せてあ るので、ドームと望遠鏡は間接的ながらも独立した形になっています。 そのためいままでの観測所と比べて、望遠鏡に伝わる振動はかなり減少しました。 少なくても自分が観測所の中でドタバタ歩かない限り、振動の影響についてはあまり気にしなくて良く なったというのが私の印象です。 |
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3.ドームの回転について | ||
ドームの場合、撮影や観望中に時々スリット位置を動かしてやらなくてはなりません。 天体が日周運動により動いてしまうためで、望遠鏡で見ている天体がスリットに隠れないように常に気 をつけていなければなりません。 この時、電動でドームが回転できると大変便利です。撮影中に持ち場を離れて、いちいち手で回すのは 意外と面倒なもの、コストが割高になりますがぜひあった方が良いアイテムです。 これらの機能は市販の汎用製品もありますが、できればドームメーカーで純正品があるのなら、少々高 額になっても純正を選んだほうが安心だと思います。 またパソコンを使ってリモートコントロールすることも可能で、シリウスドームの場合にはTheSKY とAutomadomeというソフトが必要になります。 |
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4.結露について | ||
夜間、望遠鏡を使っていると四季を通じて鏡筒が夜露でぬれてしまうことがよくあります。 ドームの場合、空に向かって開いている場所が狭いスリットであるため、スライディングルーフのよう に全開のものよりは、露でぬれることは少なくなりました。 これは室内に湿気が入ってくる前に、ドームの外壁部分で結露してしまったり、室温と外気温の間に温 度差があるためです。レンズにフードを取付けた場合と同じことを考えていただければ良いと思います。 購入したドームは密閉度が高いとは言え、完全には密閉されてはいません。 ドームと円形観測所の間に少し隙間があります。もちろん外部から雨が進入しないようにゴムのパッキ ンでおおわれていますが、ここから外部との空気の出入が発生します。 これはドーム内の温度調整をする上では好ましいことで、密閉された室内では夏には温度が上がりすぎ、 冬場では結露が発生するので適当な換気が必要になるためです。 さらに換気が必要な場合は、小型のベンチレーターを取付けることになりますが、シリウスドームでは 残念ながらこのオプションはありませんので、電気部品店から適当なものを探して取付けることになり ます。私の場合まだ梅雨時期や夏場を経験していないので、来夏の状況をみたうえで考えるつもりです。 追加報告です。 後日、オプションとしてベンチレーターが追加されました。 私の場合、数年使用した状況で問題ないので、ベンチレーターの取り付けはしていません。 |
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5.雨漏りについて | ||
ドームでこの状況が発生する場所は、スリット部分になると思います。 スリット部は開閉時にスライドさせるために多少の隙間があります。当然ながら雨がドームの中に入り 込まないような構造になっていますので、通常の雨降り程度であればまったく心配はありりません。 また風を伴った雨も完成後に何度か経験をしましたが、風速7〜8メートルくらいでは問題ありません でした。 ただまだ台風や雷雨のときのように、強風をともなった豪雨を経験していないので、その時にどのくら い雨の浸入があるかは現在不明です。そのような状況が発生しだい結果を追加したいと思います。 追加報告です。 スリット部分からの雨漏りですが、風を伴う雨の場合、風向きによって多少雨が進入してくることがあ りました。雨漏りする箇所は、開閉用のロープを通している穴の部分からで、こちらの方向から雨が強 く当たると、ポタポタとしたたり落ちる場合があります。 対策として、すきまの部分に布切れをつめて対処しています。 |
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6.FRPの耐用年数について | ||
この件については私自身まったく知識を持ち合わせていないので、はっきりしたことは申し上げられな いのですが、経年劣化により、ドームの表面から雨がしみ込んできたりすることがあると言うことを聞 いたことがあります。 それが何年くらいしたらそうなるのか、必ずなるのかなど分からないことだらけなのですが、私の知人 でFRPドームを所有している方に聞いたところ、表面の光沢がなくなってザラザラしてきたら要注意! 雨漏りなど起こすかもしれないとのことでした。 アドバイスによると車用のワックスを3ヶ月に1回くらいすれば、このようなことは起きないとのことで したので、私もさっそくやりました。 |
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7.ロッカーについて | ||
シリウスドームの特徴のひとつとして、円形観測室の壁を凹ませて内側から物を置けるようにしたロッ カーと言うオプションがあります。 これは大変便利です。注文する前はロッカーの必要性はないと思っていたのですが、観測室内には意外 といろいろな部品や道具を置くことがあって、それらのものを床に置いておくのは邪魔になると考え、 追加注文しました。 また冷却CCDで撮像する時にはノートPCを置く場所が必要になりますので、このロッカーがあると 室内を広くすることができてすっきりとします。 私は日曜大工でこのロッカーに棚を作り、アダプターやケーブル類を整理して置けるようにしました。 |
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8.4ヶ月を経過して | ||
11月に完成してから4ヶ月が経過しました。 ひと冬を過ぎて今までのところ特に問題となるようなことは起きていません。 今年の冬は、積もるような雪が降らなかったため、雪に対する問題の有無は確認できませんでした。 強風は北風や春の嵐を何回か経験しましたが、すきまからほこりが侵入したくらいで問題はなさそうで す。ドームの回転やスリットの開閉も現時点ではスムーズです。 ドーム回転用の太陽光発電装置も順調に機能しています。取付けてから何回かバッテリー液を補充しま した。 ドームの外壁が土ぼこりで汚れてきました。白い色ですからけっこう目立ちます。そろそろ掃除をしな くてはなりません。 このところ池谷・張彗星の撮影でドームの稼働率が高くなっています。 こんなときは自宅に観測所のあることのありがたさが実感できます。 |
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9. 1年を経過して | ||
昨年の10月27日に設置してから1年が経過しました。 前回の報告は今年の3月でしたので、その後の様子を報告します。 今年の梅雨は雨の日が多く、湿気による影響が心配でした。 ドーム自体はFRなので腐ることはありませんが、室内の結露により機材への影響が考えられましたが、 特に結露が発生したり、それによりカビが発生するといったようなことはありませんでした。 使用していない時には望遠鏡に防水カバーをして、鏡筒の中には乾燥材を入れるなど、普段から光学系 の管理には十分に注意をしています。 夏の温度対策は何もしなくても問題ありませんでした。今年の夏は猛暑の日が続き、連日38度を越える 気温となりましたが、ドーム内部の温度は最高でも40度を越えることはなく、想定していた温度の範囲 内でした。室温が40度を越えるようであれば、強制換気のためにファンの取付けも考えていたのですが、 このくらいの温度であれば問題ないと判断しました。 |
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10.ドームの回転制御装置について | ||
ドームを計画した時から、別な部屋から遠隔操作をするためのドーム回転装置の購入を考えていました が、やっと9月に入手することができました。 ハードとソフトを別々に購入しなくてはならなかったり、導入しても動かない不具合が見つかったりし て、対応にけっこう時間を費やしましたが、何とか無事に稼動するようになりました。 (導入方法、操作方法はHPに公開しました。 → こちら ) この機能はインターネットを使用して遠隔操作もできるようになっているので、山奥にドームを設置し て自宅で操作することもできるようです。 |
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11. 2年を経過して | ||
早いものでドームを設置してから2年が経過しました。 このところ火星の大接近で、晴れているときは毎日稼動しています。 ドームの表面はさすがにホコリでうす汚れていますが、表面を拭けば元のようにピカピカになります。 現在までのところ、故障やトラブルもなく無事に稼動しています。 今までに何回か台風を経験しましたが、その度にドームが風に飛ばされないか心配をしました。 強風のとき観測所内にいると、風にあおられてドームがかなり動く(回転方向に)ことがあります。 念のためにドームをワイヤーで固定できるようにして、動かないように安全対策をとりました。 開ける度にスリットの開閉が少し重くなってきました。原因はレールに油汚れなどが付着したためで、 きれいに拭きとって解決しました。 ドーム回転用の電動モーター、バッテリー、ソーラパネルは異常ありません。 最近、観測室内の床の上に鏡筒やバランスウエイト、鏡筒バンド、三脚など色々な部品がところ狭しと 増えてきました。小物類はロッカーの棚に置けるのですが、大きくて重いものはどうしても床に置くこ とになってしまいます。それだけ活躍の場が広がったてきたわけですが、ちょっと整理が必要です。 |
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12. 5年を経過して | ||
ドームを設置してからすでに5年が経過しました。 さすがに5年も経つと、ドームの表面は新品のときのような輝きはなくなりましたが、今のところ雨漏 りや、雨の染み出しなどのトラブルはなく、ドーム自体の機能に問題は起きていません。 ドーム回転用の電動モーター、バッテリー、ソーラパネルにも異常はなく、意外とタフです。 前回報告以降に手を加えたこととしては、天井のスライドのローラーを丈夫なものに交換しました。 すでに何回も台風に遭遇したり、大雪に埋もれたり、大雨に見舞われたりしていますが、壊れた部分な どなく無事に過ぎています。 |
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