デジタル・ピント調整装置

デジタルノギスを使って、イプシロン160に使用するピント調整装置を作ってみました。
アナログ式のダイヤルゲージを使ったピント調整装置は、天文ショップの誠報社が販売しているので、
たまに見かけたことがありますが、デジタル式のピント調整装置はまだ見たことがありません。

数値を確認するなら、アナログ式よりデジタルのほうが絶対に見やすいと思って、加工のしやすそうな
小型のデジタルノギスを買って、作ってみることにしました。

完成した装置は下の写真のような構造で、接眼部への取付部とカメラ取付部の2つのパーツから構成さ
れています。
接眼部取付部は取付金具とデジタル表示器からなっていて、デジタル表示器のスケールが左右にスライ
ドすることで、長さを測ることができます。
カメラ取付部は、デジタル表示器のスケールをカメラ側に固定するための金具で、カメラの三脚用ネジ
穴に取付けます。

製作するに当たっては、次の2点をコンセプトに設けました。

 1.カメラや望遠鏡に取付けるための加工は一切しないこと 
 2.着脱をスムーズに行えること

カメラ取付部は、カメラ下部の三脚用ネジ穴にねじ込めるようにします。
接眼部取付部はラックアンドピニオンのギアボックスをにかぶせ、アリガタ・アリミゾ方式で取付けます。


下の写真が購入したデジタルノギスです。WIL-MARTというショップから、ネット通販で1,980円で
購入しました。 ( URL: http://store.yahoo.co.jp/wil-mart/)

ノギスの大きさはいくつか種類がありましたが、ピント調整をするために必要な接眼部の繰り出し幅は
小さいので、一番小さな10cmまで計れるタイプのものを使用することにしました。
材質はステンレス製で、手に持つとずっしりと重めです。測定精度は100分の1ミリまで測定可能
なので、撮影のピント精度用には十分だと思います。


デジタルノギスは加工しないでそのまま使ってもいいのですが、見た目の良さも考えて、下の写真の
赤い線の部分(4ヵ所)をカットしてしまうことにしました。
ところがこれが大変な作業で、材質がステンレスのうえに焼入れがしてあるため硬くて、切断し終わ
るまでに長時間掛かってしまいました。

ミツトヨ製で材質がプラスチックのデジタルノギスもあるようなので、加工するならそちらのほうが
やり易いと思います。


切断するためには、まずデジタル表示器を外します。
ノギスの裏に銀色のシールが貼ってあるので、それを剥がすとデジタル表示器を取付けている4本の
小さなネジがあります。ネジを外すと台座からデジタル表示器が外れます。
ちなみにデジタル表示器の裏には長さを測るためのセンサーがあります。
デジタル表示器は最後に取付けますので、それまでは大切に保管しておきます。


次にスケールの右端のスライド止めネジを外して、スケールとデジタル表示器の台座をスライドして
分離します。このとき真ちゅう製のスライド調整用のバネも外れてしまうので、なくさないようにし
てください。


スケールとデジタル表示器の台座の不要部分を切断したあとの状態です。
スケールの長さは、取付ける望遠鏡の種類によって異なるので、良く測ってから切断してください。
ノギスの加工はこれで終わりです。


次に接眼部とカメラに取付けるための金具を作成します。

下の写真はイプシロン160用に製作したもので、望遠鏡の機種によって取付方法やサイズが異なります
ので、参考としてご覧下さい。

金具の材料としては、コの字形をしたアルミのアングルを使いました。
サイズは、接眼部取付用が幅30ミリ高さ15ミリ、カメラ取付用が幅50ミリ高さ25ミリ、スケールを
スライドさせるためのレール用が幅18ミリ高さ10ミリ、以上3種類を用意しました。
材料は東急ハンズなどDIYセンターで、1本あたり300円〜600円くらいで購入できると思います。
あと必要なのはネジ類で、カメラネジ、つまみの付いたネジなどが必要になります。

接眼部取付金具は、接眼部のラツク&ピニオンのギアボックスにかぶせるように作成し、接眼部取付
ネジによって、アリガタ・アリミゾのように固定したり外したりすることができるようにします。
取付ネジによってギアボックスにキズがつかないように、薄いアルミの板を間に挟んであります。
金具には、デジタル表示器の台座をエキシポ系接着剤で接着し、乾いたところでスケールを差し込んで
デジタル表示器をネジ止めします。

カメラ取付用金具は、カメラネジでカメラの三脚用ネジ穴に取付けられるようにします。
スライド用レールにノギスのスケールを差し込んで、ストッパー用のネジを締めるとレールに固定され、
緩めると外すことができるようにします。
デジタル表示器のスケールが、スライド用レールに水平になるよう高さを測って製作してください。


完成したカメラ取付用金具をカメラにセットしたようすです。
スライド用レールが光軸に対して平行になるよう、カメラネジによって三脚用のネジ穴に取付けます。
カメラネジは着脱が簡単にできるように、手で回せるような大きめなつまみがあると便利です。
私は不要になった三脚から外して流用しました。


接眼部用取付金具を取り付けたようすです。
ラツクアンドピニオンのギアボックスに、きっちりとかぶさるように取付けてネジで固定します。
このとき、スケールをカメラ取付部のスライド用レールに平行になるように差込みます。


ピントスケールを取付けた状態です。
カメラ取付用金具にあるストッパーネジを締めるとスケールが固定され、接眼筒の繰り出しに伴って
カメラと一緒にスケールがスライドします。


使い方ですが、まず接眼筒を一番内側に入れた状態にしてデジタル表示器の電源をONにします。
液晶画面に値が表示されますので、表示された数値がゼロでなかったら「ZERO」ボタンを押して
ゼロリセットしてください。
表示される数値はミリ単位で小数点第2位まで表示されます。


スケールストッパーを締めて、接眼部のノブをゆっくり回すと接眼筒が繰り出され、それに伴って
スケールがカメラと一緒にスライドしてデジタル表示器の数値が上がっていきます。
(注: スケールストッパーを締めていないとスケールは動きません。)


ピントの合焦位置は一度だけじっくりと時間を掛けて確認して、表示された値をメモして残しておきます。
次からはその値になるまでゆっくりと接眼筒を繰り出せば、そこが合焦位置です。
実際に何回かテストして再現性を確認しましたが、ぴったりと一致していました。
ただ外気温の差によりピントの位置が多少変化すると思うので、外気温毎に数値を記録しておく必要が
あると思います。

合焦位置に合わせたら、念のために前後0.1ミリの間で少しずつずらし、10秒ほど露出して星像を液晶
画面やパソコンで確認したうえで本番撮影にはいれば完璧でしょう。
ピント位置で0.1ミリの差があると星像の写りはずいぶんと違うものです。パソコンで強拡大しないと
わからないくらいの違いですが、ピント合わせは撮影の基本、しっかりとやりたいものです。

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