臨床経絡
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下肢がビリビリ痛む(胃経・脾経)


80歳になられる男性。健康管理で定期的に継続治療をされている。
80歳だがバリバリの現役。毎日々々オーバーワークの連続だがハートの熱い方なので簡単にへこたれる人ではない。診せていただいている僕には気弱なことを言われることもあるが仕事では衰えを見せない。もし僕が80歳で現役で臨床現場に立っていることができるとしたらと想定する時に実践例として憧れる人物のひとり。
今日はそのツワモノがへこたれている。

「おいかがですか?」
「んにゃ!もう、先生!どうも、こうも今週はいかんです。最初左足がなんかおかしかて思いよったら次に右足がビリビリしてきて、これがなんともひどくて寝ても覚めても収まらんで身の置きどころがありません」
「どがんしたもんでしょうか?神経痛でしょうか?」

東洋医学的に説明するとしたら?
簡単に説明がつく。

いわゆる神経痛ではない。
坐骨神経痛でないと判断するまず一番の根拠は痛みが左から右に動いているということ。一般的にこのような症状で坐骨神経痛であることは少ない。加えて症状が発現している領域が大腿前面で四頭筋部と下腿脛骨内側面だからデルマトームが合わない。西洋医学で説明しようとすれば2か所以上に神経を傷害している部位があることになり状況からして無理がある。精々病名を付けるとしたら自律神経失調症か。

しかし、東洋医学からみれば簡単でこれは気の不調和だ。
症状の発現している場所も胃経と脾経に限られていて非常に整然としている。
後はその発現の原因だがこの方の場合僕の経験上、散髪の時期が遅れて髪が伸び過ぎて耳介に毛先が触っているのがその大きな理由のはずだ。

耳介の一番内側を走る経は三焦経で脾経の子午関係。症状が出ている経だ。もう一つの症状部位の胃経は脾経の陰陽で対局にあたる。

経穴ゲートスイッチ理論で考えれば頭髪の刺激によって三焦経の流れに乱れが生じ子午関係の脾経とその陰陽関係にある胃経にまで及んだ病症であるからそれを調整する為のスイッチとして候補に挙げられるものがそこから絞り込まれてくる。

こんな簡単な理由づけで本当に良いのかは鍼を一本してみればわかる。原因を考えればまず外関にというところだが患者さんが真っ先に大腿部を指したので胃経の子午、心包経の絡穴、内関を選んでみた。
選穴・取穴はとても重要だが刺鍼に特別な技術はいらない。補も無い、瀉も無い。ただ正確に経穴に刺せれば良い。選穴が正しければゲートスイッチは入る。

左内関穴に3oくらい刺入してそのまま和的に構えて押し付けたり緩めたりしていると押手に脈打つ感じが広がりだしたので聞いてみると痛みの8割ほどがいつのまにかなくなっていた。
ダメ出しに左外関穴に同じように施術して一件落着。

症状は取れてしまった。

「症状はとりあえず取れましたけど原因は髪が耳に触っているからですから今日中に散髪に行ってくださいね。そうしないとまた症状が出るかもです。」

治療後すぐに散髪されたのもあってその後症状は出なかった。