どんな手法なら本物だと言えるのか

 ここまで、億万長者になった主婦がいても不思議ではないことを確かめました。
 それは、実力やテクニックではなく、単なる幸運だけでも、そういう現象は簡単に起きるということを見てきました。
 でも、同じ人が勝ち続けることができたとしたらどうでしょうか。
 こうなると、その人の能力やテクニックに特別の秘密があるかもしれないと思えますね。

 たとえば、サイコロを振って、5回連続で6を出した人がいたとしましょう。
 目の前でこんな現象を見せられたら誰でも驚きます。
 でも、この確率は7776分の1.
 つまり、日本中で8,000人に1人ぐらいは、こういうラッキーな人はいても不思議ではありません。
 そのラッキーな人を探してきて、もう1回さいころを振ってもらいます。
 次も6を出す確率は?
 5回連続で6を出し続けた人だから、次も6を出す確率は普通の人よりも高い?
 とんでもない。
 6回目に6を出す確率は普通の人と同じ6分の1ですね。

 6回連続で6を出し続ける人が世の中に存在してもおかしくはありません。
 めったにいませんが、確率として0でない以上、十分多くのプレーヤーがいれば必ずどこかに存在するからです。
 日本中を探して見つからなければ、世界中を探して、6回連続で6を出した人を連れてくることはできます。
 でも、その連れてきた人が次も6を出す確率は、6分の1なんです。

 わかりますか?
 結果として幸運な人は探せばどこかに見つかります。
 でも、探してきた人がこれからも幸運であり続けるのは非常に難しいということです。

 先の、FX取引で大成功したカリスマトレーダーたち、注目を浴びた後、彼らがどうなったかを見るとそれがよく分かります。
 注目を浴びることで、本が売れ、情報商材が売れ、セミナーが盛況で、別の成功を達成しつつありますが、肝心の取引実績となると、とたんにあやしくなります。
 誇れるのは、過去の一時期に運よく大儲けできたという実績だけという人も。
 注目を浴びた後は、いろいろな人たちの厳しい検証を受けることになるので、そのインチキが暴かれてしまうケースもあります。
 成功し続けていると装うために、実績を捏造していたことが発覚するなどのスキャンダルにまみれてしまった人もいます。
 それだけ、FX取引は運によるところが大きいということです。

 では、本当に優れた手法は、どんなのを言うかというと、次のグラフの手法Eのような場合ががその一例でしょう。



 手法Eは、平均でもかなり高い金額にあります。
 手法Aと同じように、低くなだらかな山になっていますが、山の中心がかなり右側にずれています。
 散らばりが大きいので、最高に儲けた人と最低の結果だった人との違いが大きいですが、ほとんどの人がプラスになっています。
 損する人がほとんどいないという点で、優れた手法だと言えます。
 
 でも、この手法Eは、損する人がほとんどいないからと言って、リスクが少ない手法と言っていいでしょうか。
 答えはNOです。
 実は、損する人がほとんどいなくても、リスクが大きい場合があるのです。
 「リスクが大きい=損しやすい」
 「リスクが小さい=儲かりやすい」
 このようにとらえてしまいがちですが、本当は損得とリスクの大小は無関係なのです。
 リスクとは何かについては、改めてお話しするとしましょう。

 さて、手法Eなら優れた手法だと言いましたが、こんな手法はそもそも実在するんでしょうか。
 実際にこんなおいしい手法が存在したらどうでしょうか。
 そんな手法を誰も放っておくはずがありません。
 みんながその手法を取り入れて大儲けしようとするはずです。
 するとどうなるかというと、手法Eの山は、少しずつ左にずれていき、やがて手法Aと同じ水準で落ち着いてしまうのです。
 手法Eは瞬間的に存在しても、安定しないということです。
 これは、新しいビジネスモデルが登場し、多くの人にまねされて、やがては消えていくプロセスに似ていますね。
 この手法Eがなかなか存在しない理由についても、改めてお話しするとしましょう。

 さて、成功事例でもないものを見せられて、ものすごい成功事例と勘違いしてしまうからくりを見てきました。
 これは、ギャンブルや金融取引の話にとどまりません。
 ビジネス一般でも、こんな話は至る所にあるんです。
 それは次ページに。


 



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