いま、FXブームです。
FXとは外国通貨証拠金取引のこと。
少ない元手で大きな取引ができるため、うまくいくと大儲けできる金融取引です。
円相場が上がるか下がるかの判断をするだけなので、見方が簡単なのが素人受けするところでもあります。
書店に行くと、FX取引の解説本がたくさん出ていますね。
帯には派手なセールス文句が書かれてます。
「フツーの主婦が億万長者になれた!」
「7万円の元手で7000万円」
こんな本がいっぱい。
で、この著者らは、経歴も肩書もよくわからない本当の素人だったりします。
こんな素人でも大儲けできたという実績がウリのようです。
本の内容をみると、難しいことは何も書いてありません。
本当に普通の主婦でもできそうな単純なテクニックが紹介されているだけ。
「こんなに簡単なことで稼げるの?」
と驚かされます。
でも、本当にFX取引で普通の主婦が8億円も稼ぐなんてことがありうるんでしょうか。
結論から言えば、「ありうる」となります。
どんな極端な事例でも、可能性として0%でなければ、「ありうる」となります。
たとえば、普通の主婦がFXで億万長者になる可能性が0.01%だとしましょう。
普通、0.01%と言ったら、ほとんどあり得ないことを指しますが、日本全体でみると様子が変わってきます。
0.01%ということは、10,000人に1人の割合で存在するということ。
では、全国で100万人の主婦トレーダーがいるとすると、億万長者になる人は何人?
そう、100人もいるってことになるんです。
その100人の億万長者の中から、さらに大きく儲けた人を探してきて本を書かせれば奇跡のカリスマトレーダーの誕生です。
普通の主婦なのに億万長者になるなんてすごい。
というのが普通の感覚ですが、実際は、すごくも何ともありません。
例外的に運よく大成功してしまう人は必ず存在するからです。
特に、その手法が、成功と失敗のブレの大きい方法であるほど、成功した時の金額が大きくなります。
で、素人の人ほど、危なっかしい手法を平気で採用したりするので、たまたま成功した時の儲けが莫大な金額になったりするのです。
宝くじで億万長者になるのは簡単ではありません。
でも、年末ジャンボ宝くじの場合、1等70本、2等140本もあります。
つまり、1回の宝くじで、億万長者が確実に210人も誕生するのです。
自分が宝くじで億万長者になるのは可能性は非常に低いですが、世の中に宝くじで億万長者になった人がいたとしても珍しくもなんともないってことです。
主婦のカリスマトレーダーがいたとしても、何の不思議もないというのはこれと同じなんです。
あの3通目のメールを思い出してください。
3通目のメールでは、一番の成功者はどれだけ稼いだかを調べていました。
| 手法A |
手法B |
手法C |
手法D |
| 7280$ |
1052$ |
380$ |
90$ |

手法Aだけが極端に高額の成功者がいました。
これは、手法Aが成功と失敗のブレが大きい手法だったからです。
だから、特別に運のいい人は、極端に大儲けできてしまったわけです。
この現象は不思議でもなんでもありませんね。
何度やっても、このように特別に運のいい人は必ず存在するんです。
これは、全体像を見れば驚くことでもなんでもないことが分かります。

ルーレットの実験結果から、極端に好成績を出す人がいるということは、一方で極端に悪い成績を出してしまう人がいるということが分かりました。
だから、カリスマトレーダーと同じ手法で取引をしても、大損してしまう人が同じ確率で存在するかもしれません。
FX取引は、非常にギャンブル性の高い金融取引なので、余計にルーレット実験と同じ現象が起きやすいといえます。
ブレの大きい手法ほど、大儲けできる可能性が高いことから、FXで大儲けした手法というのは、ブレの大きい手法である可能性が高いのです。
これからFX取引を始めようとする人が、極端な成功事例をまねようとするとどうなるでしょうか。
一部の運のいい人は、お手本の成功者と同じように大儲けできますが、多くは取引手数料ばかり取られて大した成果も出せずに終わります。
成果が出なかっただけならまだいいでしょう。
ブレの大きい手法は、大きい損失を出す可能性もあるのですから、一部の運の悪い人は取り返しのつかない損失を出すことになります。
「フツーの主婦でも億万長者になれた」というのがカリスマトレーダーの売り文句ですが、普通の主婦でも成功した手法だから危ないのです。
実際に、カリスマトレーダーと同じことを実践してどうなるかを検証した人の実績はネット上の個人ブログや掲示板なのでたくさん見ることができます。
ほとんどは、カリスマのように儲けることができていません。
多くは、大儲けもできず大損もせずというところ。
まれに、大損して深刻な事態に陥ってしまっている人がいたりします。
特に、FX取引というのは、ゼロサムゲームの世界です。
ゼロサムというのは、誰かが勝つと誰かが負けるというゲーム。
つまり、誰かが勝ったということは、その一方で同じだけ損をした人が存在するということ。
FX取引で億万長者になったカリスマ主婦がいるということは、大損失を出した大勢の主婦が存在しないとバランスが取れないのです。
逆に言うと、大勢のカモがいないと、大成功者も出てこないということでもあります。
たまたまの成功者をカリスマとして持ち上げ、他の素人投資家の金銭欲を煽る出版社やFX業者。
彼らは、カモを市場に引きずり込むのに貢献しています。
さて、
その手法で大儲けした人がいたとしても、それだけで、その手法が優れた手法であることの証明にはなりません。
その手法で儲けた人をいくら探してきたとしても、それだけで、その手法が優れた手法であることの証明にはなりません。
じゃぁ、どうであれば、その手法が優れていることを認めるの?
それは、次ページ以降に。

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