早いが勝ち。 解釈:人に先んじて事を行えば、事に有利だということ。遅れを取っては万 事損である。特許権など、法律でも早いものは保護される。 類義:先んずれば人を制す。早いが重宝。早い者勝ち。 反義:早いばかりが能ではない。 早いが珍重、火傷(やけど)の薬。 解釈:やけどの手当ては早く薬を付けることが第一で、遅れてはよい薬でも 効き目が少ない。 早いのが一の芸。 解釈:仕事は手早いことが肝心で、技巧に二の次ということ。 反義:早いばかりが能ではない。早い者に上手なし。 早いばかりが能ではない。 解釈:物事を早く仕上げるにこしたこしとはないが、いわゆる拙速で粗製乱 造や尻抜け仕事では駄目だということ。 類義:早い者に上手なし。早かろう悪かろう。 反義:早いが勝ち。早いのが一の芸。 早い者に上手なし。 解釈:仕事の手早い人は、反面、あまり上手とはいえない。また、早く仕上 げようとすれば、仕事はそれだけ雑になる。 類義:早いばかりが能ではない。早かろう悪かろう。 反義:早いのが一の芸。 早起き三両、倹約五両。 解釈:早起きと倹約は、どちらも利益を齎(もたら)すということ。朝寝や 浪費などの放縦(ほうじゅう)な生活を戒めた言葉。 類義:朝起き三両、始末五両。早起きは三文の徳、長起きは三百の損。 早起きは三文の徳。 解釈:健康的で、爽快な気持が味わえる朝の早起きは、何かしらの値打ちが ある。 類義:朝起きは三文の徳。 反義:長寝は三日の損。 早合点の早忘れ。 解釈:早飲み込みの人は忘れることも早くて、あまり当てにならないこと。 類義:早飲み込みの早忘れ。 参考:Soon learned soon forgotten.(早く覚える者は早く忘れる) 早かろう悪かろう。 解釈:仕事が手早くて、しかもきちんとできていれば理想的だが、早くやっ た仕事は矢張り丁寧という訳にはいかず、手落ちも有り勝ちとなる。 類義:拙速。 早くて間に合わぬ鍛冶屋の向こう槌。 解釈:向こう槌は、師匠の打つ小槌のリズムに合わせて用いるところから、 早いばかりがよいということはなく、仕事をするには相手に調子を合わせるこ とが肝要であるという教訓。 早好きの早飽き。 類義:近惚れの早飽き。 早寝早起き病知らず。 解釈:早寝早起きを実行すれば、健康で病気に罹ることがないという健康生 活の勧め。 早舟も淀(よど)、遅舟も淀。 解釈:速い遅いの違いはあっても、行き着く先は同じだから、あまり慌てな い方がよいということ。 類義:早牛も淀、遅牛も淀。 早飯早糞早算用。 解釈:食事、用便、計算が速くできるということは、特技ともいえるもので、 人に使われる者には大切な事であるという意。 類義:早飯早糞芸の中(うち)。早飯早糞早走り。 反義:長飯長糞これも一得。 早飯も芸の中(うち)。 解釈:これといった特技のない者には、食事を早く済ませることも特技の一 つに数えられるということ。 類義:男の早飯早支度。早飯早糞早支度。 流行(はやり)の半纏(はんてん)着ない者は馬鹿。 解釈:流行に全然従わないのも馬鹿げている。流行にあまり逆らうのも大人 気ないということ。 流行目(はやりめ)なら病み目でもよい。 解釈:流行りと名が付けば、眼病でも歓迎するというように、流行に飛び付 く人をからかっていう言葉。 流行物は廃(すた)り物。 解釈:今世間で持て囃されている物でも、やがて廃れ、人々に忘れ去られて いく。流行とは一時的なもので長続きしないものだということ。 類義:流行物は廃れる。 生(は)ゆる山は、山口から見る。 解釈:木の生育のよい山は、山に入って見なくても、山の入口でそのことが 分かるということ。 類義:尊(たっと)い寺は門から。流行る稲荷は鳥居から知れる。 腹が後(あと)へ寄って来る。 解釈:腹の皮が背中の方へくっつくようになるということで、空腹になるこ と。 類義:腹が北野の天神。腹が北山。 腹が立つなら、親を思い出すが薬。 解釈:腹が立ったときには、短気を起こす前に親の心配を思い起こすと、腹 立ちも抑えることができるということ。短気を戒める言葉。 類義:腹が立つなら親を思い出せ。 腹が減っては戦ができぬ。 解釈:よい働きをしようと思ったら、まず腹拵えをして掛かれということ。 戦闘だけでなく、物事を成し遂げようと思ったら、準備が大切ということ。 腹が減ると、腹が立つ。 解釈:人間は空腹になると短気になり、怒りっぽくなる。 類義:腹減り男は腹立ち男。 参考:A hungry man angry man.(腹ぺこのぷりぷり) 腹立てるより、義理立てよ。 解釈:腹を立てても何にもならない。それよりも人には義理を立てておくこ とが大切だということ。 腹に一物(いちもつ)。 解釈:口には出さないが、心の中に何か企みを持っていること。心に期する ものがあること。 類義:胸に一物。 薔薇(ばら)に棘(とげ)あり。 解釈:薔薇の花は美しいが、茎には棘がある。外見の美しい物には、隠れた ところに人を傷付けるものがあるということ。 類義:綺麗な花には刺(とげ)がある。美中(びちゅう)に刺(し)あり。 腹の皮が張れば、目の皮が弛む(たるむ)。 解釈:腹一杯食べて腹の皮が突っ張れば、その分だけ目の皮が弛んで眠くな るということ。財産ができ、身分も安定すると、行動が鈍ったり、保守的にも なり勝ちである。 腹の立つ事は明日言え。 解釈:腹が立ったからといって、怒りに任せて言動すると、後で取り返しの 付かないことになりかねないので、そのときは抑えて、一日よく考えてから行 えということ。 類義:言いたい事は明日言え。 腹の立つように、家倉(いえくら)建たぬ。 解釈:世の中には腹の立つことが多く、腹を立てるのは簡単だが、家や倉を 建てるのはそう手軽にはいかない。 腹は借り物。 解釈:生母の腹は一時借りただけで、生まれた子の身分は専ら父の身分によ るということ。 腹は立て損、喧嘩は仕損(しそん)。 解釈:腹を立てると失うものはあっても得るところはないということ。喧嘩 もまた同じで、よくて両成敗、損するばかりである。怒りを抑えてこそ人間は 成長するものである。 類義:短気は損気。 反義:思う事言わねば腹膨る。 腹八分目(はちぶんめ)に医者いらず。 解釈:食欲に任せて腹一杯食べるのはよくない。八分目程度に止(とど)め ておけば心配もなく、何時も健康で医者に掛かることがないということ。 類義:食い過ぎ飲み過ぎは病の元。腹八合には医者いらず。腹八分(はちぶ) に病なし。腹八分目卑しからず。 腹も身の内。 解釈:胃腸も自分の身体の一部分であるから、大事にせよということ。食欲に 任せて胃腸を痛め付けるような暴飲暴食をしてはいけない。 類義:腹八分目に医者いらず。腹も身の内、食傷も病の内。袋は一杯になら ぬうちに縛(しば)れ。 張子(はりこ)の虎。 解釈:虚勢を張る人のたとえ。竹と紙で虎の形に作った玩具(おもちゃ)と 同じで、見せ掛けだけ強がっている人に対していう。また首を振る癖のある人 のたとえ。 張り詰めた弓は、何時か弛む。 解釈:緊張は何時までも続くものではないということ。 類義:張り詰めた弓の弦は切れる。 針で掘って、鍬で埋(うず)める。 解釈:土を細い針でほんの僅かずつ掘るような苦労をして蓄えた財産を、鍬 で埋めるように一度に使い果たすこと。 類義:爪で拾って箕(み)で零す(こぼす)。耳掻きで集めて熊手で掻き出 す。 針盗る者、車を盗る。 解釈:小さな悪でも、厳しく問い糾(ただ)さなければならないということ。 針のように小さな物を盗んでも、それを見逃しておけばやがては車のように大 きな物までも盗むようになるというたとえ。 針の穴から天上覗く。 解釈:狭い見識で、大きな問題を判断しようとすることのたとえ。 類義:管の中から天上覗く。葦(よし)の髄から天上覗く。 針の筵(むしろ)。 解釈:針を刺してある筵のことで、周囲の者から責め立てられて、居た堪れ ないように場を形容したもの。 針は小さくても呑まれず。 解釈:針は形が小さいからといって飲み込むことはできない。形の小さい物 を馬鹿にしてはいけないというたとえ。 類義:山椒は小粒でもぴりりと辛い。針は包まれぬ。 参考:独活(うど)の大木。大男の見掛け倒し。 針は包まれぬ。 解釈:形は小さくても馬鹿にはできないということ。 類義:針は小さくても呑まれず。細くとも針は呑まれぬ。 参考:独活(うど)の大木。大男の見掛け倒し。 針程の穴から、棒程の風が来る。 解釈:開け放った部屋の寒さよりも、小さな隙間から吹き込む隙間風の方が 寒く感じられるということ。 類義:針の穴から棒のような風が出る。 針程の事を棒程に言う。 解釈:小さな事を大袈裟に吹聴すること。 類義:針程の事を柱程。針を棒。針を棒にとりなす。 参考:To make a mountain of a mole hill.(土竜(もぐら)塚を山ほどに 言う) 針を倉に積む。 解釈:小金をせっせと貯め込むこと。 反義:針を倉に積みても続かぬ。針を積んでも貯まらぬ。 針を以て地を刺す。 解釈:狭小な見解で、高い見識に勝手な解釈を加え、間違った判断を下すこ と。また、やってもできないようなことを企てるたとえ。 類義:貝殻で海を量る。鍵の穴から天を覗く。管を以て天を窺う。 春植えざれば、秋実らず。 解釈:原因を作らずに、結果のある筈がないということ。 類義:打たねば鳴らぬ。火のない所に煙は立たぬ。蒔かぬ種は生えぬ。 春先は死んだ馬の首も動く。 解釈:春先の陽気の盛んな様を形容した言葉。天地万物が動き始め、生まれ 出ようとする気(陽気)に触れると、動く筈のない死んだ馬の頭も動き出す。 春先にあらゆる物が活動を始めるということ。 春の晩飯、後三里。 解釈:春の日は長いというたとえ。夕食を済ませた後、まだ三里(約12q) は歩けるというのである。 類義:入相(いりあい)一里。春の夕飯食って三里。 参考:秋の日は釣瓶落とし。 春の雪と歯抜け狼は怖くない。 解釈:春の雪は沢山降っても直ぐに消えてしまい、根雪とはならないので、 大したことはないというたとえ。 類義:春の雪と叔母の杖は怖くない。春の雪と子供の喧嘩は長引かぬ。春の 雪と年寄りの腕自慢は当てにならなぬ。 葉を掻いて根を断つな。 解釈:枝や葉を取り除いて、元の木を枯らしてしまうようなことはするなと いうこと。枝葉末節に拘って根本を駄目にしてはならない。 類義:角(つの)を矯(た)めて牛を殺す。 葉を截ちて根を枯らす。 解釈:まず枝葉を落として丸坊主にすれば、木の勢いは自然に衰えて根も枯 れる。助けをする勢力をまず排除し、それから目指す敵を滅ぼすということ。 類義:枝を切って根を枯らす。 反義:根を掘って葉を枯らす。 挽歌(ばんか)。 解釈:死者を哀悼する詩歌のこと。昔、中国で葬送のとき、柩(ひつぎ)を 載せた車を挽く人が歌った歌を挽歌といったことから。 参考:万葉集の部立(ぶだて)の基本は、相聞(そうもん)、挽歌、雑歌 (ぞうか)の三つ。 万歳(ばんざい)の後(のち)。 解釈:貴人の死の忌み言葉。「百歳の後」ともいう。中国漢(かん)の高祖 (こうそ)が故郷の沛(はい)の人達に語った言葉から。 万事休す(ばんじきゅうす)。 解釈:全てのことが終わったという意。中国宋(そう)の高従誨(こうじゅう かい)は、子の保勗(ほきょく)を大層愛していて、どんなに怒っているときで も保勗を見ると怒りを収めて機嫌を直した。人々がこれを「万事休す」と言った という故事による。転じて、何事もお終いだ、最早手の施しようがないという意 味に用いる。お手上げの状態。 万死(ばんし)に一生を得る。 解釈:万が一にも助からないような危機を辛うじて生き延びることができた ということ。 類義:九死に一生を得る。万死を出でて一生に遇う。 万乗(ばんじょう)の君(きみ)。 解釈:天子のこと。古代中国の周(しゅう)の天子は、その領内に一万台の 兵車を保持していたのでいう。後には諸侯の中にも万乗の兵車を持つ者が現れ たので、大国の君主のこともいう。 繁昌の地に草生えず。 解釈:繁盛して人通りの激しい所には、草の生える暇がないこと。何時も使 っている道具は錆びないし、流れている水は腐らない。また、老年になっても 仕事を持っている人は呆けることがなく、若々しいということ。 類義:転がる石には苔が生えぬ。人通りに草生えず。 半上半下(はんじょうはんげ)。 解釈:態度がどちらとも付かず、曖昧なことをいう。どっちつかずのこと。 半畳を入れる。 解釈:野次ること。江戸時代、歌舞伎の見物人が、役者の芸が気に入らない と席に敷いていた半畳(小さな畳又は茣蓙)を舞台に投げ込んだことから、他 人の言動に対して非難や冷笑の声を挙げることをいう。 類義:半畳を打つ。 伴食宰相(ばんしょくさいしょう)。 解釈:無能な大臣のこと。実力実権がなく、また実務に携わらないお飾り大 臣、お付き合い大臣。中国唐代、大臣達は政事堂で毎日食膳を賜っていたが、 そこで、会食するだけで無能極まりない大臣を嘲笑(ちょうしょう)していっ た言葉。 万卒(ばんそつ)は得易く、一将(いっしょう)は得難し。 解釈:多くの兵隊を集めることは容易だが、優れた大将は一人と雖も中々得 られないということ。平凡な人は幾らでもいるが、指導力や統率力を持った人 は、中々少ないものである。 類義:千軍は得易く、一将は求め難し。 般若湯(はんにゃとう)。 解釈:知恵の湯、即ち僧の隠語で酒のこと。昔、僧侶の飲酒は禁じられてい たので、こう呼んでこっそり嗜(たしな)んだ。 半兵衛を決める。 類義:知らぬ顔の半兵衛。 反哺(はんぽ)の孝。 解釈:烏の子が成長して後、親鳥に餌を運んでその口に与え、養育の恩に報 いるということ。烏でさえ親孝行をするのだから、人たる者は孝行の道を歩む べきだという教えである。ただし反哺しない烏もいて、こちらは「鴉」と書い て区別するという説もある。 類義:烏鳥(うちょう)の私情。烏は親の養を育(はごこ)み返す。鳩は三 枝(さんし)の礼あり、烏に反哺の孝あり。 半面の識(しき)。 解釈:一寸会っただけの人の顔をよく覚えていること。中国後漢の応奉(お うほう)が人を訪問して、扉の間から顔を半分出した人をちらりと見ただけな のに、数十年後道で会ったときにその人を覚えていたという故事による。 類義:一面識。 万緑叢中(ばんりょくそうちゅう)紅一点(こういってん)。 解釈:一面の緑の叢(くさむら)の中に、ただ一つの赤い花が咲いていて、 よく目立つように、男ばかりの中に一人女性が混じっていることのたとえ。 類義:一点紅。鶏群(けいぐん)の一鶴(いっかく)。紅一点。 判を貸すとも、人請けすな。 類義:金儲けはするとも、人請けはするな。 |