2000年8月上旬の日記

夏期講習も佳境に入ってきました。「暑い、暑い」と言いながら、多忙な日々を送っています。オレンジ色のVisor(Palm OS搭載PDA)にはまりながら、8月26日に出荷されるPower Mac G4 Cubeを買おうかどうしようかと、逡巡している毎日です。(2000年8月18日記)

8月1日(火) 長*さんのお友達とお食事。
[日記]埼玉県の某校舎での夏期講習、2日目。終了後、長*さん(銀河のパートナー/同居人)から「高校時代の友人に銀河を紹介したいから、新宿まで出ておいで」という連絡が入る。速攻で新宿に戻って、いつもの『嵯峨野』(新宿西口の行きつけの居酒屋)へ。長*さんとお友達がお食事をしているところに同席させてもらう。長*さんはお友達に銀河を一生のパートナーとして紹介してくれる。お友達の方もそれを喜んでくださって、結婚生活の先輩としてのアドバイスをいろいろとしてくださった。素直にうれしい。
長*さんはこうやって、親族の方々やお友達など自分の身近な人たちに銀河の存在を認知してもらおうと努力してくれている。「これからずっと一緒に生きていくパートナーなんだから、胸を張って正々堂々と紹介することができなければ、意味がないんだ」というのが長*さんの考え方だ。もしも銀河が逆の立場だったら、つまり、銀河が普通の男性でトランスセクシュアル(用語についてを参照)の彼女がいたとしたら、同じような態度をとれるかどうかということを考えてみると、長*さんって本当に立派な人なんだなあと思わないわけにはいかない。
職場でトランス(用語についてを参照)が認められていること(女性として勤務できていること)、両親がトランスに同意してくれていること(両親が女性として生きていくことを認めてくれていること)などについては、理解を得られるように銀河自身が努力してきた結果だと言える面も大きいと思う。でも、長*さんというパートナーを得られたことについては、まったくラッキーだったとしか言いようがない。神様のお導きに感謝の気持ちでいっぱいだ。

8月2日(水) オレンジ色のVisor(Palm OS搭載PDA)、その後。
[日記]埼玉県の某校舎での夏期講習、3日目。今年の生徒たちは例年以上に真面目ではあるけれど、全般的におとなしくて受け身的な印象を受ける。授業の予習復習で手一杯で、自分なりにあれこれと試行錯誤をするだけの余裕がないのかもしれない。
帰宅途中、近所の大型書店で、発売されたばかりの『MacユーザーのためのPalm IIIc & Xv』(佐橋慶信著;毎日コミュニケーションズ)を購入した。タイトルにはPalm IIIc & Xvとあるが、銀河の持っているVisorハンドスプリング社)も含め、Palm OS搭載PDA全般への入門書っていう趣の本だ。Palm OSは(Mac OSと同じように)直観的に操作することができるので、マニュアルを見なくてもある程度は使いこなせるようになるのだが、入門書を1ページずつ確かめながら読み進めていくと、見落としていたこと(特に操作上のTips)がいくつも見つかる。
インターネットではPalm OS上で動くフリーウェアやシェアウェアが多数公開されている(Muchy's Palmware Review!など)。そうしたソフトを組み込んで自分なりにカスタマイズして使うのが、Palm OS搭載PDAの醍醐味なのだそうだが、当面は最初から搭載されているソフトの使い方をしっかりと身につけようと思う。
[読書記録]石原千秋『教養としての大学受験国語』(ちくま新書)。自分の息子の中学受験の体験をもとにして書かれた『秘伝 中学入試国語読解法』(新潮選書)が話題を呼んだ著者(成城大学教授・日本近代文学)。発売されたばかりの新刊は「二項対立」を思考の基本に据え、現代文の大学入試問題を読み解いていく。学習参考書の体裁を借りた現代思想アンソロジーという著者のねらいは成功していると思えるが、これが学習参考書として有効かどうかは別問題。おそらくこの本を読み進むだけの力がある高校生ならば、この本の助けがなくても、すでに十分に大学(しかも入試難易度の高い大学)に合格するに足る国語力を備えていると思えるからだ。

8月3日(木) 今年の秋の流行はブリティッシュ・トラッド。
[日記]まだ5月になるかならないかの頃に、行きつけのMICHEL KLEINのショップで「今年の秋のラインはクラシックなテイスト、特にブリティッシュっぽいのが中心ですよ」って言われていたんだけど、発売されたばかりの『an・an』(8月11日、18日合併特大号)の「秋の服・全カタログ」という特集を見ていると、どうやら今年の秋の流行はやっぱりブリティッシュ・トラッドみたい。どのブランドも示し合わせたように同じような傾向の服を発表しているのには、「流行ってだれがどこで決めてるんだろう」って不思議に思う気持ちがわいてくるけれど、そんな疑問はさておいて、ツイードのジャケットが欲しいなあ、今年は絶対に。

8月4日(金) 長*さんの誕生日のプレゼントにPalm IIIcを買う。
[日記]埼玉県の某校舎での夏期講習は、今日が最終日(5日目)。終了後は新宿へ戻り、長*さんと合流。
8月18日(金)は長*さんの誕生日だ。昨年の誕生日にはスーツを、一昨年の誕生日にはネクタイをプレゼントした。今年は何をプレゼントしようかなとあれこれ考えていたのだが、買ったばかりのVisor(Palm OS搭載PDA)の使い勝手がよいので、長*さんにもPalm OS搭載PDAを1台持ってもらおうと決めた。数日前から長*さんにカタログを見てもらったり、店頭で実物に触ってもらったりしていたのだが、カラー液晶を使ったパームコンピューティング株式会社Palm IIIcが気に入ったようなので、これをプレゼントすることにした。誕生日はまだ先だけれど、決めたからには1日でも早い方がいい。ヨドバシカメラのポイントカードのポイントがずいぶんたまっているので、それを利用してゲット。長*さんの事務所のグラファイトのiMacに、同梱されていたPIM(個人情報管理)ソフトPalm Desktopをインストールし、Macとの連携(データの同期)を中心に使い方の基本を教えてあげる(で、翌日から長*さんもPalmにはまることになる)。
夜は、仕事帰りの緑川りのちゃんと合流して、長*さんと3人、新大久保の飲み屋さんでいろいろとお話しをする(もちろん、銀河のVisorと長*さんのPalm IIIcを見せびらかすことも忘れない)。しばらくして、りのが呼び出した関あゆみちゃんも到着。銀河は明日の午前中に川越に行かなければならないので、深夜の12時半にみんなと別れて帰宅。みんなはその後、新宿2丁目方面へと遊びに行ったみたいだ。

8月5日(土) 川越の赤心堂病院へ。血液検査の結果には、特段の異常はみられない。
[日記]月に2回の女性ホルモン注射のために、川越の赤心堂病院泌尿器科(内島豊先生)へ。今日はいつもよりも少々待ち時間が長かった。待っている間ずっとVisor(Palm OS搭載PDA)をいじっていたのだけれど(笑)、しばらくすると眠くなってウトウトしてしまう。
いつも通り、処置室で看護婦さんにペラニンデポー10mgを注射してもらった後で、内島先生に、前回(7月14日の日記を参照)採血した血液検査の結果を伺う。処置室に入ってくるなり内島先生が「いやあ、悪かったですね」とおっしゃるので、驚いて「えっ、そんなによくなかったんですか?」と尋ねる。内島先生はあわてて「あ、ごめんごめん。待たせて悪かったっていう意味で言ったんだ。検査結果はまったく悪くないよ」と答えてくださる。単なる勘違いでよかった(笑)。それにしてもびっくりして心臓がドキドキしてしまった。
ホルモン関係の結果は次の通り。テストステロン(男性ホルモン)の値が15.1ng/dlで(標準値は成人男性が277〜1111ng/dlで、成人女性が16〜86ng/dl)、フリーテストステロン(蛋白と結合していないテストステロン)の値が0.6pg/ml以下(標準値は成人男性が14〜40pg/mlで、成人女性が3pg/ml以下)。プロラクチン(乳腺を発達させ、母乳の産生を促すホルモン)の値は30.0ng/ml(標準値は成人男性が1.5〜9.7 ng/mlで、成人女性1.4〜14.6 ng/ml)。内島先生によると、ホルモン投与は効果的におこなわれていると言えるが、プロラクチンの数値が少々高いのが気になるそうだ。しばらく様子をみてから(プロラクチンが高濃度だと、乳首から乳汁が出たりする)、場合によってはホルモン注射の間隔をもう少し長くしてみましょうということになる。
一般的な項目(肝機能とか腎機能とか血糖値とかコレステロールとか)に関しては、すべて標準値の範囲内で特段の異常はない。半年前の検査で標準値を大きく上まわっていた白血球も(2月21日の日記3月3日の日記を参照)、今回は標準値の範囲内だった。
毎度のことだけれど、費用は、診察料が1160円で、これには保険が効いて230円(自己負担は2割)になる。注射料が420円(実費)。計650円に消費税20円を加えて、全部で670円だ(川越まで行く交通費の方がずっと高い)。

8月6日(日) 疲れ気味なので、一日中寝ていた。
[日記]夏期講習も3週目が終わり、さすがにばててきた。今日はゆっくり休養をとって、残りの2週間に備えることにする。
[読書記録]藤田正『メッセージ・ソング 「イマジン」から「君が代」まで』(解放出版社)。部落解放同盟系の出版社から出た藤田正さん(音楽評論家)の新刊。(ソウル・フラワー・モノノケ・サミットもうたっている)「水平歌」や「インターナショナル」から、ボブ・マーリーの「ゲット・アップ、スタンド・アップ」や喜納昌吉の「花」、そして安室奈美恵の「LOVE2000」に至るまでの50曲近くのメッセージ・ソングを取り上げ、その歌がうたわれた社会的背景やその歌に込められた人びとの思いをつづっている。部落差別をストレートに扱った岡林信康の名曲「手紙」(なぜか放送禁止歌に指定されている)を初めて耳にしたときのショックがよみがえってくる。同時に出版された森達也『放送禁止歌』(解放出版社)と併読することをお勧めします。

8月7日(月) クリームの「ホワイト・ルーム」(新型iMacのテレビCM)。
[日記]今日からの5日間の持ちコマは少し変則的。午前中に都内の某校舎で90分授業を1コマ担当。そのまま移動して(移動の途中に昼食もとって)、午後からは自宅近くの某校舎で90分授業を1コマ。暑い最中の移動はちょっとばかりしんどい。
さて、新型iMacのCMがテレビでもバンバン流れ始めた。でもどういうわけだか、見かけるのは新しい光学式マウスのCM(BGMはステッペン・ウルフの"Born To Be Wild")と、スノウ(白)のiMacのCM(BGMはクリームの「ホワイト・ルーム」)ばかりだ。インディゴ(青)(BGMはエルヴィス・プレスリーの「ブルー・スエード・シューズ」)やルビー(赤)(BGMは"Ruby, Ruby"とかいう銀河の知らない曲。ストーンズの「ルビー・チューズデイ」だったらよかったのにね)やセージ(緑)(BGMは『セサミ・ストリート』に出てくるカエルのキャラクターがうたう歌)はどこへ行ったんだろう(ちなみにアップルのWebサイトこのページで、セージ以外のテレビCMを見ることができます)。
で、ステッペン・ウルフも(ヒット曲としてリアルタイムで体験した身にとっては)懐かしくてうれしいんだけど(ピーター・フォンダの『イージー・ライダー』の主題歌だ。フカキョンの「イージーライダー」ではない)、やっぱり、スゴイのはクリームの「ホワイト・ルーム」。テレビから前後の脈略もなく流れてくると、突然、時代が70年前後にタイムスリップしてしまったような強烈な違和感(もちろんよい意味で)に襲われる。
ところで、伝説のロック・グループ、クリーム(念のために書いておきますが、エリック・クラプトンが在籍していたグループです)も、初めて日本に紹介されたときには(たぶん、シンコー・ミュージックの『ミュージック・ライフ』誌。クリームがアメリカに進出してフィルモア・イーストでライヴをおこなったときの紹介記事)「いまヒッピーたちの間で最も人気があるのが『ザ・クリームス』です」なんて書かれていたのだ(笑)。ロック・グループといえば、最初に冠詞の「ザ」がついて、最後は複数形の「ス」だの「ズ」だので終わるのが当たり前だった牧歌的な時代の微笑ましいエピソードです。

8月8日(火) Web上での結婚式。
[日記]Internet Weddingというページを見つけた。Web上で結婚式があげられるという趣向。幸せの鐘の音から始まって、賛美歌斉唱だとか、祈りの言葉だとか、結婚指輪の交換(アニメーション付き)だとか、なにもかも全部そろっている。早速、長*さんと試してみた(笑)。「ちょっと変わった話のネタになればいいかな」って感じの軽いノリで臨んだのだけれど、画面に合わせて賛美歌をうたっているうちに、結構、感動してくる。最後に宣誓書に署名をするところでは、ちょっぴり涙がでてきてしまった。
事情があって結婚式をあげることのできないカップルにはお勧めの、素敵なヴァーチャル・ウェディングです。

8月9日(水) アメリカが長崎に原爆を落とした日。
[日記]1945年8月9日午前11時2分、6日の広島に引き続き、アメリカが長崎に原子力爆弾を落とした。当時、長崎に住んでいた銀河の母親とその両親(銀河の祖父母)も、被爆した(爆心地からは遠く離れたところで被爆したので、死んだり重度の障害を負ったりすることはなかった)。
母親は自分の子供たちの健康状態には神経質と言えるほど敏感だった(「被爆2世」の健康が一種の社会問題になっていた時期もあった)。その母親が子供たちに初めて被爆体験を語ってくれたのは、銀河が高校2年生、銀河の弟が中学3年生のときだった。壮絶な体験を淡々と語ってくれたのが、逆に生々しく衝撃的で、軽々しく感想など吐けるはずもなく、銀河も弟もじっと黙り込んでしまった。その事実の前には、なんの言葉も無意味だったのだ。母親の話は、聞き書きの形で、弟がメモをもとに文章にまとめた。大学ノートまるまる1冊分になる(それを何らかの形で公表しようとは思わない)。以後、母親が子供たちの前で原爆の話をしたことは一度もない。
原子力も戦争も、無条件に(平和利用のための原子力だろうが自衛のための戦争だろうが)反対だ。たとえそれが非現実的な理想論、子供の論理と言われても、せめて被爆者の身内だけは「イヤなものはイヤ」と言い続けなければ、死んでいった人たちも浮かばれまい。

8月10日(木) 早くも冬期・直前講習の授業依頼が。
[日記]夏の暑い最中だというのに、もう12月、1月におこなわれる冬期・直前講習の持ちコマの打診があった。例年よりも仕事量が増えたのはいいんだけど、増えた分は、ここ10年ほど担当することのなかった(正確に言えば、担当することを避けていた)センター試験(正確には大学入試センター試験)対策テストゼミだ。
直前期のセンター試験対策テストゼミって、1年間(一所懸命とまではいかなくても)それなりに勉強してきた生徒が、自分の学力に穴がないかどうかを最後に確かめるためには最適の講座なんだけど、実際に受講する生徒のなかには、センター試験対策をまったくしていないで、直前期の90分2コマのテストゼミだけでなんとかしようと思っている生徒も多くて、授業をしていてちょっとばかりつらくなるのだ(まあ簡単に言えば、こちらが提供できるものと生徒のニーズが合致していないってわけだ)。おまけに、テストゼミだと(時間的にも内容的にも)制約が多くて、個々の講師の腕の見せ所があまりないので、フラストレーションも溜まってしまう。
とは言っても、私立大学の志願者が激減し、国立大志向がますます強くなる傾向はこれからも当分続きそうだから(念のために付け足しておきますが、国立大学志願者はセンター試験の受験が必須なのです)、90分2コマのテストゼミを幅広いニーズに対して有効なものにするために、今のうちから授業の組み立てをじっくりと考えて、工夫しておかなければなるまい。


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Does mind dominate matter, or matter mind?