中学二年生の「まい」が、登校拒否をするようになり…、困った母親が「まい」を西の田舎で一人暮らしをしている祖母に預けるところから物語は始まります。
このお祖母さん、実は魔女で、「まい」に魔女になるための手ほどきをしてくれます。
とはいっても、ホウキに乗ったりとか、そういうファンタスティックな方向ではなく、「生きていく」ための手ほどきとでも言いましょうか。
街で暮らしていた「まい」にとっては、自然豊かなその祖母の家での生活は、驚くことばかり…。
舞台は日本ですが、お祖母さんは英国人なので雰囲気はどことなく欧風で、そこがまたよいエッセンスになっています(泥臭くないというか)。
物語のタイトルを一見すると暗いイメージを抱きがちですけれど、なんというか、ページをめくるたびに新緑の香りが漂ってくるような、木々のざわめきが聞こえてくるような、とってもすがすがしい物語になっています。
そんな作中に、鉱物はほどよいアクセントとして登場しています。
今は亡き祖父の部屋に、蛍石や輝安鉱、水晶などが、ひっそりと無造作に、置かれている…という。
鉱物を使って魔法を唱えたりはしません。
ただ、そこに「ある」だけ。
にもかかわらず、「この静謐な世界に私も浸りたい!」と思えてくるほどの圧倒的な存在感は、もうたまりません。
日々の生活に疲れた時などに、鉱物を愛でるように、この物語を読んでみると癒されること間違いありません。
おすすめの一冊です。
2003-06-13