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『いちばん初めにあった海』
『いちばん初めにあった海』
加納 朋子・著
 表題『いちばん初めにあった海』と、『化石の樹』の2つの小説が収められています。
 テーマは「心に傷を負った女性の絆と再生」。ジャンルはミステリーに属しますが、血なまぐさい事件などは起きません。
 とても穏やかでさわやかな雰囲気の中、二人の女性が登場し、ちょっと謎めいたストーリーが展開していきます(ミステリーものなので、敢えて内容には触れませんけれど)。
 この2本の作品は、どちらも独立しているようで、実はそうではありません。どちらかだけを読んでも成立するけれど、両方読むとさらに見えてくるものがあるという実に奥の深い作品なのです。
 幼い頃のオブラートに包まれた記憶、学生時代のまぶしい想い出、悔やんだこと、苦い過去…など、読み進めていくうちに誰しも思い当たることがありそうなシーンが思い出されてきます。
 また、この作品は、語り口調がとても丁寧なんです。
 一文一文がじっくり練り上げられているので「ああ、日本語ってこんなに綺麗なのよね」としみじみしてしまいます(普段、思うがままに書き散らしている自分に反省したりもして)。
 それなのに、とても読みやすく、ほんわかしたムードを構築していて…私はすっかり作者の虜になってしまいました。

 さて、この小説のどこに鉱物が関係しているのかといいますと…作品中にすこうしだけ登場しています。
 「花崗岩の中の雲母」、「大理石。そこに潜むアンモナイトの化石」、「木の化石」、そして「ビーチ・グラス」(ビーチ・グラスは鉱物ではなく、海辺に流れ着くガラスのかけらのことですが)など。
 文中にたとえとして使われているものもあれば、印象的な存在として描かれているのもあります。
 その鉱物たちのさりげない存在感に、思わず微笑んでしまうほど。

 ある晴れた昼下がり、そよ風に揺れる木々のざわめきを聞きながら、大好きなドリンクをお供に、のんびりとページをめくる。…そんなシーンに最適の一冊だと思います。オススメです。

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