一人の人が一人の人を殺す。それだけのことが生み出す余波というものは、実ははかりしれないものがあるのではないか、当事者となんらかの関わりを持ち、それによって多少なりとも影響を受ける人は、即ち事件そのものの被害者といえるのはないか(中略) 特に犯罪被害者に限定して言えば、事件の加害者となった人間以外はすべて、被害者になってしまうのではないかと、私はそんなふうに考えている。そして、その爆風とも言える影響が、果たしてどこまで広がるものか、どのように人の人生を狂わすものかを考えたかった。
「今ならまだ間に合います。手遅れにならないうちに嘘をついたことを認めなさい。さもないと自分の言葉に踊り続けさせられる羽目になりますよ。赤い靴の少女みたいにね」 「ギムレットには早すぎますね」 「昨日ははっきりしない空模様で、天気予報では降水確率は低かったんですが、午後からはいつ降り出してもおかしくない感じの雲行きでした」