臨床経絡


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刺鍼法
 

刺  鍼  法

補 法

心構え

 生気の虚損した経や場所に気を補う為の手法である。
 乱暴に言い放ってしまえば、経絡治療の補法は普通の鍼灸術からみれば鍼を刺 していることにはならないかもしれない。
 経絡治療で言う「補法」の刺鍼は一般に言う刺鍼ではない。経穴に刺すと言うより 経穴に当てていると言うのが正しいだろう。 しかし術者の心構えとしては2mm刺すと言えば、そのつもりになって施術すること が必須である。 例えば結果として実際に2mm刺入されていることもあるが、それは偶々の結果で あって本来、経絡治療では2mm刺すことが重要ではなく「損なわれた気を補う」と言 う目的が正しく達せられることが重要である。

刺入

 具体的な刺法は、静かに穴所を探り押手を密着させて比較的細目の鍼の鍼柄を極く 軽く持ち、鍼尖を注意深く皮膚面に近づけていく。この時鍼管を使うも捻鍼に依るも どちらでも構わないが正確に穴所に鍼尖が当ることを心掛ける。正確に穴所に鍼尖が 当らなければ目指す効果は半減または得られないかもしれない。鍼の方向は可能なら ば経の流れに随って斜めに刺入する。できない時は直刺でも構わない。
 さらに穴所に鍼尖が触れた時患者に痛みを感じさせないよう慎重に丁寧に手技は行 われなければならない。

 刺入はさらに慎重に丁寧に行われる。決して痛みを与えてはならない。原則として 得気を求める必要はない。目的とする深さまで鍼を滑らすように静かに刺入する。 速い回旋、旋捻は禁忌である。

刺入後の手技

 刺入後の手技について、福島弘道先生著 経絡治療要綱には「目的の深さに達した ら静かに回し、あるいは抜き、あるいは圧し、あるいは留めるなどして気を候う」と あるが実際には「目的の深さに達したら静かに回しかかりそれ以上動かさない、ある いは抜きにかかり本当は抜かないで抜く手前までのアプローチを行う、あるいは 圧を加えるが本当にグッと圧を加えてはならない加え始めたところまでで緩め、ある いは留めるなどして気を候う」と解釈した方がよい。

抜鍼

 鍼尖の抵抗が変化したり穴所やその周辺に気の去来を感じたらこれを度として鍼を 抜く。抜鍼は素早く行い間髪を入れず押手の示指か拇指で鍼口を塞ぐ。 鍼口をふさぐのは充実した気を再び漏らさない様にする為である。

押手

 刺入される鍼がぐらついたりしないように押手(示指と拇指)でしっかりと保持し なければならないが力を入れすぎて鍼の微妙な操作が損なわれるほどであってはなら ない。押手の下面は患者の皮膚にぴったりと且つ軽く触れるが押し付けてはならない。 押手がぐらつかない為には押手側の小指球と小指を患者側にしっかりと乗せ重心をそ ちら側に置いて押手の指先の方は幾分浮いたような感じの方がよい。残りの環指、 中指は軽く開いて添える。

気の去来の感知

 気の去来の感知はいろいろなとらえ方があるが、大きく分けて刺手、押手、患者の 呼吸によって感知することが多い。刺手においては鍼尖の抵抗が緩むことなどで感知 する。押手は押手の下面の変化や他の指や小指球に感じる脉打つような気の流れなど によって感知する。気が充実するピ−ク時は患者の呼吸が深くなることが多いのでこ れも目安となる。

瀉法

浮実

邪気が気分を侵している時、脉状は浮脉を呈する。

 気は陽にして浅く動き(反応)が速いので鍼の手技も手早く減り張りよく行われ なければならない。
 鍼柄をしっかり持ち、経の流れに逆らって斜めに刺入する。気の主りによるので刺 入する深さは浅めである。瀉法の場合も補法の場合と同じく鍼尖が皮膚面に当る時に 痛みがあってはならない。補法と違うのは鍼が皮膚面にくるまでの手際の早さ、さら にまた刺入抜鍼の素早さにおいて違う。
 目的の深さまで達したら巾狭に抜き刺しする。抜き刺しすると言うが実際には鍼灸 学校で習う雀啄のような抜き刺しではない。ぴったりと皮膚面に鍼尖を当てた状態で 前後に振動を加えることと考えればよい。抜鍼時は素早く抜くが抜くと同時に押手を 皮膚面にパッと押しつけて下圧を加える。鍼口は閉じない。

弦実

邪気が血分を侵している時、脉状は弦脉を呈する。

 血は陰にして深く動きは緩慢である。従って目的の深さも浮脉の時より深い。 鍼の種類も太く固めのものがよい。鍼柄をしっかり持ち経に逆らって刺入する。 目的の深さでゆっくりしたテンポで抜き刺ししながら抵抗が緩むのを待つ。 抵抗が緩んだところで静かに鍼を引いていき、その鍼尖が皮膚面を離れようとする時 、ズーンと下圧を押手にかける。鍼口は閉じない。

 弦脉に応ずる手法の時の鍼の深さは場合によっては実際に刺入されて得られる。 これは偶々ではなく術者が意図的に刺入してのことであるがその判断は臨床応用的で あるので割愛する。何れにしても補法と同じで刺痛を与えてはならないし、得気を求 める必要も無い。