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* 非常識な死体 *
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<闇夜の本(1)> の中の 「非常識な死体」 のアイデアメモです。
ワタシのマンガができるまでの流れがわかりやすいので出してみました。

上の文字は、なんとなくピンときそうな 「ことば(のイメージ)」 のメモ。
「どんな話を描くかなぁ・・・」 と、物語になるタネを探している段階です。

このようにクロッキー帳を開いて文字を1つ2つでも書いている場合はまだマシで、 たいていは、ただぼーーーーっとしているか、黙ってTVを見ているか、 CRPGゲームでレベル上げしていたり、 友達に全然内容のない手紙やハガキを書いたりしている場合もあります。
頭の中の意識下では、いろんなデータや素材の組み合わせなどが、 何億回とか何兆回のレベルで、 次々に組み合わさっては動いてるのかもしれませんが、 いうところの「ピンときそうなものをサーチ」しているだけの状態なので、 本人は具体的には何も考えていませんし、 外見的に、どーみてもタダのロクデナシです。  まわりから見て、まんが描きが最も役立たずでデクノボーに見える瞬間です。  慣れたアシスタントさんは、横でただただ黙って座っているか、 こっそりと別の部屋に行って静かに本を読んでいたりします。
あまり長時間になると、 そっとお茶を入れて出してくれたりしてありがたいのですが、 目の端で人が動く気配すら煩わしいことがあります。 なかなか厄介です。

この状態の時にどういう事をするかは、人によって様々です。
本を読んでる人もいるし、ひたすら食べる人や、 酒とか煙草を吸い続ける人もいるし、 まったく食べ物を受付けなくなる人もいるし、散歩する人もいるし、 電話で友達と何時間でもしゃべり続けたり、寝ちゃってる人もいます。 (私もたまに寝ます。ぐっすり眠るわけでもなくて、半日でも1日でも、 半覚醒状態のような、レム睡眠みたいなうつつのウトウト状態なので、 長時間寝てるわりに、ヤケに疲れるのが難点です。  しかもまわりから見ると、やはり 「単に寝てるだけの役立たず」 であります。)

次の段のヘンなバケモノや女の子のイタズラ描きは、別に意味はなくて、
何か具体的なモノが出てくるまでの 「手ならし」 みたいなものです。
(ここまでは、まだストーリーもキャラクターも何も出てきていません。
真っ白なクロッキー帳の頁をひろげて、ここまでで 「何時間」 とか、
調子が良くなければ 「何日」 とかの、かなり長い時間の単位です。)

このあたりの本人の状況も、外見的には上に同じ。
単に思いつくままのイタズラ描きのようなものを描いていて、 そのカットが気に入って、そのままキャラクターになったり、 そこからのイメージ連想で物語ができる場合もあります。  (まぁ、ごくたまにですよ。 でも可能性ゼロという訳ではないので、 ここはほとんど あらゆる可能性に向けての総当たり戦 みたいなものですね。)

「頼むから近くへ来ないでくれないか」 からが、話が出たところです。
「美形のゾンビ」 というイメージが出たのに反応して、そのままどーっと
つながって出たものを書きとめています。 (文字の荒れ方でも分かる
とおり、ここは速記的なスピードで書きとめています。 時間がかかると
消え去りますからね。 消しゴムで消す時間が惜しいので、絵が部分的に
重なったりしたところも消して直したりせず、そのまま先に進んでいます。
ここから最後の 「食欲がなくなる!」 を描くまでが10分とか、せいぜい
30分くらいです。30分の場合は 「これはどっちだろう?」 と何か取捨
選択してるような場合が多いです。あと主人公の名前が出ない時とか。)

この1コマ分が浮かんで出てきて、ここに描きつけた瞬間に、 この回の仕事がほぼ八割方くらい終わった感じです。
あとは、まんがを描く用紙(ワタシは模造紙という紙を使います)に、 えんぴつ(2Bの芯の入ったシャーペンです)で、ネームとコマ割りをして、 順次絵を描き入れて、編集部に渡すだけです。  もう内容は全部できたのですから、後は紙に移す実作業だけ ・・・というわけ。

クロッキー帳は、いつも左から右へ描いていきます、「やめてくれ、食欲
がなくなる!」 で、ほぼ描くイメージが完成して物語の内容も丸ごと出ちゃ
ってますので、あとはせいぜい「この話はどうやって始まったのだろうか?」
と、イントロ部分を考察(想像)しながらネームとコマ割りをし、下絵とペン
入れを同時進行して、そのまま実作業に入って原稿を仕上げて完成です。

ネームとコマ割りが完成すると、体力の方はかなりなくなってますが、 後はどちらかというと手を動かすための、職人さん的な作業が増えるので、 気分的にはプレッシャーが軽減されて、うんとラクになってます。  気楽なのでまわりとくだらない話をしたり、ヘンなTVをかけて 大騒ぎをしながら絵を入れている場合もあります。 手が動いているぶん、頭の方は一息ついています。

このあたりの時間帯になると、 気分的には「あとは手を動かすだけ」という事で、 すっかり「作業終了までの秒読み状態」に入っていますが、 時間に押される事が多いので、さすがに集中力が切れてくるのと、 徹夜になっていると、完全に体力が底を尽いてしまう事があるので、 (このページでいうところの、上の2種類の事をやっている時に、 ピリピリしてて、あまりマトモに寝られてない事が多いんですね。 時間的には、そのまま連続して原稿を描く実作業に入っていますから、 つまりスタートから連続して寝てない訳です。)  その場合はちょっとナサケナイ事になります。
私はほとんど薬を使わない人間なので、「夜明けに原稿を航空便に乗せるのに、 あと2時間!」 みたいな時に意識がなくなって、ペンをホロリと落とし、 原稿を汚して修正に余計に時間がかかる・・・みたいな事態になった時に、 ごくたまにリゲインとかユンケルを飲んだりする程度です。  (昔は何があっても原稿が上がるまで眠る訳がなかったんですが、 基礎体力がなくなると、こういう事になります。  まんが描きは体力勝負のような仕事で、 つまりどれだけ集中力を持続させる体力があるか・・・ というのが勝負の職種なんですけど、 3−4日くらいまともに寝てないままで徹夜作業に入ると、 最近はわりとこういう事になって さすがにトシか?! という感じで、 ちょっとムッとします。)

体力が底を尽いていないときで、全員が徹夜作業をし続けると、 ちょっとのーみそがヘンになる事があります。
俗に言う「キレている」状態になるわけで、ものすごくクダラナイ冗談で、 全員が笑い出して止まらなくなったりして、作業にまで支障が出ることがあります。
(笑い転げてしまうので、どーやっても絵が描けないわけです)  「ヤクに手を出す若者達」というようなレポート番組を見ながら、 「まんが描きの仕事場に行けば、薬なんか使わなくてもハイになれるのに、 ヘンな奴らだ・・・」などとみんなで話してたりします。 (もっとも、どちらも体に悪そうなので、あまりオススメはしません。)


この「非常識な死体」のクロッキー帳メモはここまでで、このまま原稿に
かかったようです。 (”闇夜の本(1)”は、現在、早川JA文庫で発売されています。)







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2001.5.26.



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