バスタイム

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kv強化月間z

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シャワーの音が止んで、さあ出てくるかと悟空はバスルームの扉を凝視するがベジータは一向に出てくる気配はない。
期待を裏切るようにバスタブからはお湯がザアッと流れる音が続く。
「……あいつこんなに長風呂だったんだ」
悟空は二本目の缶ビールのプルトップを開けて、グイッとあおる。
もう30分はこうしてソファに座り、バスルームの扉を眺めながら待っているのだ。
一足先に帰ったベジータの待つ部屋に合鍵を使って入ると、綺麗に片付けられた部屋には恋人の姿はなく。
ベジータの姿を探して、部屋を見回す悟空の耳にシャワーを使う音が聞こえてきた。
キッチンにはスーパーの袋が置かれたままになっている。
どうやら真っ先にバスルームに行ったのだと判る。
巨大プロジェクトで世界中から召集されたこの絶海の孤島で、悟空は西の都から赴任してきたベジータと出会い。
一目惚れして。
そしてひたすら押して押して押し捲り。
人生でこんなに必死になったことはないというぐらい全身全霊を掛けて、ベジータを口説いたのだ。
やっとの思いでベジータに想いは通じ、今ではこうやってお互いの部屋を行き来する仲にまでなれたのだった。
今はベジータと晴れて恋人同士となり、悟空は毎日が楽しくて堪らない。
そうだろう。
オフィスでは同じフロアで働いているので、一日中ベジータと顔を突き合わせていられるのだ。
例えば二人にしか判らない合図で、人気のない資料室に行ってスリルに満ちた逢瀬を味わったり。
あるいはリフレッシュコーナーに誘い、堂々とコーヒータイムを楽しんだり。
仕事のメモを装い『好きだ』と書いて渡し、いつでも初々しい反応を返すベジータに幸せを感じたり。
帰宅すれば部屋は上と下の階を良いことに頻繁に行き来をしている。
最近になってどちらかの部屋で朝を迎えることが多くなっていたりする。
こんな日々では悟空は有頂天になっていても仕方ないだろう。
まさにバラ色の日々と言って良い。
そして今日は残業の悟空を残し一足先に帰ったベジータが、夕食を用意してくれることになっている。
確かに悟空には片付けなければならない残務はあるが、しかし仕事をさっさと切り上げて弾むような足取りで家路に向かってしまったのだ。
ベジータが一緒に残業となれば話は違ってくる。
例えば真剣に仕事をしているベジータの顔に見惚れたり、運よく二人だけになれたら、エッチなちょっかいを出したりと楽しい時間に変わるのだが。
恋人の居ないオフィスに残る気もないのが悟空の本音だ。


いつもはベランダから入ることが多いが、今夜はキッチンに立つベジータを堪能したくて玄関から入った。
『おかえり。遅かったな』なんてエプロンをして出迎えてくれる姿を想像して、スキップして帰ってきたのにベジータは風呂に入っていた。
昼間、多少蒸し暑かったせいで、ベジータは真っ先に汗を流したくて風呂に向かったのが想像できる。
几帳面な性格そのままに、ジャケットを風通しの良い場所にハンガーに掛けて吊るしてある。
ソファに放り投げる自分とは大違いだ。
だらしない自分に顰められる眉を思い浮かべ、悟空は頬が緩んでくる。
日々の全てがベジータに繋がる幸福感に酔いしれていた。
それからネクタイを緩めてシャツを脱いでと、帰宅したベジータの姿の想像を続ける。
徐々に露になってゆく白い肌を脳裏に思い浮かべ、自分の鼻の下が伸びてくるのを悟空は自覚して、誰も見ていないのに思わず手で鼻を覆った。
「……にしても綺麗好きだよな。シャワー浴びないままでも、良い匂いがするのにさ」
二本目の缶ビールを飲み干して悟空は呟く。
あれは付き合い始めたばかりの頃の事だ。
悟空は自分の部屋に連れ込んだときに、我慢できなくてベジータを玄関から真っ直ぐにベッドに連れ込んだことがあった。
シャワーを浴びてからにしろというベジータに、直ぐに欲しいんだと強引に抱いたのだ。
『少しは我慢しろ、この変態っ』と事の後にこっぴどく怒られることになったが、シャワーで落とさないベジータの肌の香りが、汗の匂いが濃くて、随分と興奮したのを覚えている。
その時のベジータの媚態を思い出して、即熱くなる下半身の正直さに『参ったな』と苦笑した。
今夜は風呂から出てそれから料理してと、ベジータを堪能するまでにちょっと時間が掛かりそうなのにだ。
「ま、仕方ないよな……ベジータの手作りの料理だし」
直ぐにベジータには触れることは出来ないのは残念だが、シャワーの音を聞きながら風呂上りを待つもの良いではないかと思い直す。
まだ恋人同士になって日は浅く、ベジータの身体の隅々まで知っているとは言いがたいが無駄の肉の付いていない均整の取れた裸は何度も見ているので、目を閉じれば瞼にありありと浮かぶ。
そういえば風呂に入っている姿はまだ見たことないと、悟空は気が付いた。
一緒に入ろうと悟空の提案に、風呂ぐらいゆっくりのんびり入りたいとベジータに却下されてしまうのだ。
貴様がいたらちょっかいを出してくるのは目に見えていると言うのだ。
その通りだ。
ちょっかいどころか、ほのかに色づく肌を前に手を出さないわけないだろうと悟空は思っている。
同じ男とは思えないほど、ベジータは何処もかしこも精緻に作られていた。
熱で火照ると肌触りも自分の手に吸い付くようでと、悟空は感触を思い出して自分の掌を開いたり閉じたりする。
そういえばベジータは何処から洗うのだろう?とか、あの滑らかな肌の上を泡の付いたスポンジが滑っているのかなと想像しているうちに悟空はまたもや下腹がモゾモゾしてきた。
「………」
覗いてみたい。
悟空は腰を浮かせた。
「いや、駄目だ。ベジータの奴、すげー怒るにちげえねえって」
ソファに座り直す。
しかしそんな男の葛藤を嘲笑うかのように、バスルームからベジータの気持ち良さそうな溜息が聞こえる。
「………」
夜の声を思わせるようなベジータのそれに、悟空はバスルームの扉を凝視する。
ゴクッとビールを飲んでいないのに、咽喉が鳴った。
「ん~~~」
頭をボリボリとかいて、暫く頭を抱えていたが意を決すると悟空は立ち上がった。



そっとバスルームの扉を開けると、ベジータはバスタブで気持ち良さそうに目を閉じている。
悟空には気付いていないようだ。
もしかして風呂の気持ち良さに、今夜悟空が来ることを失念しているのではないかと思わせる顔をしている。
剣の取れた顔。
濡れて前髪の落ちた容貌は随分と幼くベジータを見せている。
ひでーな待ちぼうけかよと思うが、こんな無防備なベジータを見ることが出来てちょっと悟空は得した気分になった。
持ってきた缶ビールをベジータの頬にそっと押し当てると、文字通り湯船から飛び上がって驚く。
「き、貴様っ!な、なにしているっ!って、勝手に入ってくるなっ!!」
水飛沫が上がり悟空もシャツやズボンが濡れた。
「あービジョビジョじゃねえか…ひでーな」
悟空は濡れた前髪から落ちる雫を拭う。
笑いながら眇められる眼差しが妙に男臭く感じられた。
その瞳に裸体を曝しているのに気が付いて、ベジータは急に気恥ずかしくなる。
身体を重ねたことはあるが、それは明かりを落としたベッドの上のことだ。こんな明るいバスルームで裸を見られるのは初めてで。
しかも悟空は濡れてはいるがちゃんと服を着ているのだ。
「な、なにしているっ!」
ベジータは立ち上がったが慌ててバスタブに飛び込んで、悟空の目から自分の身体を隠した。
「なにって、ほらビール持って来たんだ。随分、長風呂だから咽喉渇いたんじゃねえかと思ってよ」
頬に押し付けられた冷たさは缶ビールと判って、ベジータは思わず悟空の手から缶を受け取る。
な、乾杯と自分の持ってきたのをベジータのに当て乾杯と言うと、悟空は缶ビールを一気に流し込んだ。
「んっ、旨いっ!」
バスルームに悟空の明るい声が響く。
ベジータも悟空に釣られて飲むと、温まった身体には心地良かった。
「やっぱり二人で飲むと旨いな」
一人で待ちくたびれたぞと、言う悟空にベジータは待たせていた事を失念していたのに気が付く。
「………す、少しぐらい貴様はおとなしく待ってられないのか」
ふいとそっぽを向いてベジータは呆れた振りをするが、湯上りのためかそれとも別のせいかで桜色に染まった頬では迫力がない。
「いやー水音が気になってさ。それに、一度、ベジータと一緒に風呂に入りてえなって」
「なっ…!」
さらりと照れもなく言われて、ベジータはカッと自分の頬が熱くなるのを抑えられない。
ちらりとどんな顔をして恥ずかしげもなく言葉を言うのかベジータが見ると、悟空は愛しいとさが溢れた眼差しを送っているのに更に頭に血が上ってしまう。
その上、濡れたままシャツを着ている悟空の姿に目が釘付けになる。
水分を含んで張り付いたシャツが悟空の鍛え抜かれた身体――特に厚い胸板を際立たせて妙に色気を感じるのだ。
慌ててビールを飲むが、逆に体温がカッと上がってきたようだ。
長風呂で温まった身体に急にアルコールが回ったのだろう。ベジータは眩暈をおこして湯船に沈みそうになった。
「わっ、ベジータッ!」
悟空が慌ててベジータを支えた。
シャツの腕とネクタイが湯船に沈むのも構わずに、ベジータの身体をバスタブから引き上げる。
「………っ」
勢い余って悟空はベジータを胸に抱えたまま洗い場で転倒してしまった。
「っ…って~」
転んだ際、打ったのか頭を抱えている。
「大丈夫か?」
厚い胸に圧し掛かるような形のベジータは、眉を顰める悟空を慌てて覗き込だ。
打ち所が悪かったらと心配するベジータの手を引き寄せて、悟空はしてやったりと片目を瞑った。
「なんてな」
「このっ!人が心配してやったらこれだっ!!」
「へへ。石鹸の匂いがする~イイ匂いだ」
悟空はベジータの首筋に鼻を埋めて香りを楽しんでいる。
「ったくっ!!……っ!」
肌を撫でる無骨な指の感触からベジータは身を捻る弾みで、シャワーのコックを押してしまった。
ザーっと上からシャワーが降り注いで、洗い場に重なる二人に降り注ぐ。
水を掛けられた喧嘩中の猫のように二人の動きが止まり、暫し見詰め合う。
「ははっ、ビショビショになっちまったな」
先に動いたのは悟空だった。愉快そうに笑う悟空は目にシャワーが入るのか目を細めている。
太陽のようなと称される笑顔にベジータも笑みを誘われた。
ベジータはふっと息を付くと、水分を吸って結び目がきつくなった悟空のネクタイを緩め始め。
「……ベジータ?」
ネクタイを外しシャツのボタンに手を掛ける自分の仕草に、期待を込めて黒い瞳を輝かせる悟空にベジータは触れるほどに唇を近づけて言う。
「こんなに濡れたんだ。ついでに風呂に入っちまえばイイ……な?」
「………やった…っ」
嬉しそうに弧を描く厚めの唇に、ベジータは自分のを押し付けた。


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