再生

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元となった神絵チャログ。「2CLICK」まうす。様

自分はかつて海の中を飛ぶ魚だった。
けれどある日突然世界に冬が訪れて、海は凍りついた。魚は氷の中に閉じ込められ、氷の檻から逃れようと身もがくたびに氷はどんどん厚くなり、魚は身動きが取れなくなって、遂には暴れる事を止めてしまった。今この時まで魚は自ら氷の一部になって、死んだも同然だった。

氷原に一筋光が射すように、カカロットが以前と同じ笑顔を見せながらそこに立っていた。
「ひさしぶりだなベジータ、元気だったか?」
「カカロット…」
大空から答えが光となって、自分の上に落ちてくるこの日をずっと待っていた。どこまでも広がる虚無に押しつぶされていた、ちっぽけな自分を抱き止めるその強い腕に、夢中でしがみ付く。その名を口にすれば、氷は溶けてひび割れ始め、やがて瓦解していく。
「カカロット…」
こんなにも大きな存在をどうして忘れていられたのかと不思議に思う。止まっていた全てものが動き出す。凍りついていた胸に再び命が吹き込まれ、新たな脈動を始める。それはたちまち大きくなって自分の中に満ちていき、遂に奔流となって自分を押し流す。頬がジンジンと熱い。鼓動が激しい。涙が止まらない。
「下級戦士の分際で王子の俺を待たせやがって」
「……ああ、悪かったな」

奔流の中に放たれた魚は尾びれをいっぱいに動かして、再び海の中を飛び始める。
懐かしいその声を聞き、息も止まりそうなほど抱き締めてくる腕の確かさを感じて、自分は確信した。一たび死んだ魚は、命を得て今再びこの世に生まれ落ちたのだと。