美味しい実をつける木



百匁(ひゃくめ) 柿

収穫した百匁柿と柿の木
収穫した柿、背景は柿の木
 名前の『百匁(ひゃくもんめ)柿』は尺貫法の重さの単位から付けられたようだ。メートル法に換算すると1匁は約3.75グラムであるから、百匁は375グラムとなる。大きな柿という意味であろう。
我が家での記録は300グラムほど。大きいのが特徴であるが、甘みも強くこれ以上の柿を未だ食べたことがない。

 家を建てて最初に購入した木である。出会いは近くの園芸店、富有柿など数種類の柿の苗が展示してあり、大きな物は実を付けていた。他の柿は食べた経験があったが百匁柿は始めての種類、どれか一本は買うからと頼み込み実を試食させてもらった。
 甘みの強い味が気に入り我が家の庭に植え次第である。実がなっていたから接ぎ木をしてから数年は経っていたと思われる。
 以来30年毎年旨い柿を食べ続けている。

手入れ

<剪定>
  柿は本来は高木であり、自然では高さ20メートルほどになりとても都会の狭い庭では育てられない。柿に与えた空間で育ち実を付けるには、毎年、かなり注意を払って剪定してやる必要がある。

☆ 第一回の剪定
  木が活動を開始する2月中旬に第一回の剪定をする。先ず、不要な枝、込み合った枝、弱々しい枝、下向きに伸びた枝、内側に伸びた枝を切り取る。次に、上を向いて勢い良く伸びた枝を切りつめる。これによって高さを制限するのである。更に、この木に割り当てた領域の外に伸びた枝を切る。以上の作業で大きさを一定に保つことが出来る。
 次に残った枝ごとに元気な横または斜め上を向いている芽のうち最も基にあるものを一つ残だけ選び、その芽の先で枝を切り取る。どの芽を残すかがポイントで経験が必要である。
 切った枝は木の下に積んで置くと2〜3年で腐り土に還り肥料となる。

☆ 2回目の剪定
  6月の上旬になると、木の体力以上に付いた実は自然に落下する。落ち始めると1週間の間ほどで実を落とす。これは生理落下といい、よくへタムシの被害と間違われるが余分な実を付ける事を防ぐ現象であるから心配は要らない。落下が終わってから混み合った枝を除く。徒長枝、細い枝、実を付けていない枝を選んで切り取る。木の下に立って空が枝の間から空が見え、枝の下に木漏れ日が差し込む程度がよい。
 柿の木自身にもこの程度の枝数が最適であり、木の下に植えた日光をあまり必要としない植物も生育できる。この様な環境で育つミョウガ、フキ、ミツバなど食べられる野草を育てたり、夏の直射日光を嫌う日本サクラソウなどの鉢物も置くことが出来る。これで庭を二層に使うことが出来、狭い庭が広く使える。

<消毒>
☆ 一回目の消毒
  2回目の剪定が終わった6月中旬にヘタ虫の消毒をする。スミチオンを1,000倍に薄めて行う、カルホスという1週間ほど残留している薬品を使えばより効果が高い。カルホスは農協、農薬の専門店にしか置いて無く、購入には印鑑と身分を証明する運転免許証などの提示が求められる。
 消毒前に近くの食用の植物は収穫を済ませ、消毒後2〜3週間は収穫を控える。小さな庭木の消毒であるから神経質になることもないが、念のため長袖のシャツ、首には手拭い、マスク、メガネ、帽子を着用し肌に薬剤が付かないない様にし、消毒後は直ぐに風呂に入りきれいに洗い流す。薬剤は正確に希釈し(指定より薄いと効き目が悪く、濃くしても余計に利くわけでなく、植物に薬害を発生させる危険性がある)。使い切るだけの量を作り、万一余っても下水に流さず、庭の人が触れない場所に散布しここで分解させて薬剤の環境への拡散を最小限にする。

☆ 二回目の消毒
  ヘタ虫がもう一度発生する8月中旬にもう一度消毒をすれば完全である。

<肥料>
  お礼肥と、実に甘みを増すため9月下旬にカリ・燐酸肥料を施している。晩秋に枝の下に穴を掘り落ち葉に油粕やコヌカを少し混ぜて埋めている。毎年穴を掘る場所を移動して数年で一周するようにしている。落ち葉の処理と肥料、且つ土を柔らかくし、一部の根を切ることにより木の活性を増す等の作用がある。くれぐれも落ち葉をごみとして出さないで欲しい。

食べ方

<生食>
  9月の下旬になると早い物は甘くなる。実が堅い内に甘くなった物が最高である。しかしながら、甘くなった柿をいち早く知るのは「ヒヨドリ」である。どの様にして知るのか分からないが甘い物から次々とついばんしまう。
 この時期ヒヨドリと競争で甘い柿を探している。ヒヨドリを避けるために、カラスの模型、目玉などを木に付けるが決定的は効果は発揮ない。1年間手入れをした、好物の柿を食べてしまう悪いヤツ。まだ他に悪戯を沢山する、かくして「ヒヨドリ」は大嫌いな鳥になった。

<渋抜き>
  だんだん太陽が低くなると南の家が日光を遮り、南側の枝になった柿は渋が抜け難い。誤って渋が抜けていない柿を採った場合は、焼酎を吹きかけたり、リンゴと一緒にポリエチレンの袋に入れて3日ほど経つと渋が抜ける。食べられるようになるが、甘みも少なく全体が柔らかくなり味は落ちる。

<熟し>
  12月上旬までヒヨドリと争って収穫しているが、この時期に少し渋みが残ったものも含め総て取り込み熟し柿にする。正月まで保存しておくと渋みは完全に抜け、水分も少し抜け皮にしわが寄ってくる。この時期の食味も大変良い。

成り年
 
紅葉した葉
 柿には沢山実を付ける年とほとんど成らない年が交互にやってくる。気象条件にも左右されると思うが種々な条件が良い年には沢山実を付け、勢力を使い果たしてしまう。この影響で翌年はほとんど実を付けない。勢力が回復して次の年は、また沢山実を付ける。
 適切な剪定と摘果によりこの様なことを防止できる。不覚にも一昨年は摘果の時機を失してしまい、柿の実がかなり大きくなってしまった。大きくなったのを摘み取るのは勿体なく思い沢山残してしまった。このため沢山収穫出来、多くの人にお裾分けをした。このため木の勢力が落ち、昨年は少ししか実を付けなかった。その上、夏の消毒をさぼったのでヘタ虫の被害も出てしまった。

柿の花と葉
 5月12日頃から開花を迎えている、今年はこまめに手入れをしていきたい。毎年150個30sほど収穫出来る。
田舎の実家に送り、息子の嫁さんの実家、友人と我が家の柿を待っていてくれる人が多くいる。
 自分で食べるのも楽しみであるが、人にやり喜んでもらうのも楽しく、手入れの励みになっている。

 


豊後(ぶんご) 梅

豊後梅の花と密を吸うヒヨドリ
大嫌いなヒヨドリ、メジロが密を吸いに来ると追い払ってしまう
 豊後梅は杏に近い梅で花の色はピンク、枝も青くなく飴色をしている。実を採る梅としては白加賀が有名で優れている。豊後梅は開花がやや遅く実は大きいが不揃いである。これを選んだ理由は子供の頃の体験が脳裏に焼き付いていたからである。出身地の信州・安曇野は遅霜があり多くの果樹が被害を受ける。梅も開花期に強い寒さに遭うと落下してしまい、ほとんど収穫出来ない年がある。苗を購入するときこのことを思い出し少しでも開花が遅い品種を選んでしまった。
 東京ではこの様な心配は全くない。

手入れ

<剪定>
  誰に聞いたのか定かでないが『椿切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿』との言葉があるようだ。「梅は枝がどんどん伸びるから切らなければならない」とのことであろうが、枝切りは難しくコツがいる。剪定すると言った方が良い。毎年、春に美しい花を付け、夏には実の収穫量を得ることを前提にして難しいと表現したのである。
 枝が込み合ってくるとどの枝も日光が不足して花付きが悪くなる。枝が伸びきった8月でも木下から空が所々透けて見え、木漏れ日が差し込む程度が最適である。また、狭い庭の梅に割り当てた空間の中に枝を張らせ、あまり高くすると剪定、摘果、収穫等の作業が困難になってしまうので高さも抑えなければならない。
 梅の実は新しく伸びた枝には付かず、2〜3年前に伸びた枝に付くのである。枝を切ると徒長枝が勢い良く伸びてしまう。徒長枝にはなかなか実が付かないので、伸びきった夏に切り戻し短い枝を出させる。

<摘果>
  五月初旬、同じ枝に沢山実を付けた場合摘果する。この作業を怠ると沢山成った枝の実は大きく育たない。この時期アブラムシがひどく発生していたらスミチオンの1,000倍液で消毒をすればよい梅が収穫できる。


<梅干し>





温州(うんしゅう) みかん

ミカンの花
ミカンの花、5月の中旬に満開となる
孫が集まってみかん狩り
我が家の庭でみかん狩りを楽しむ
 私は信州・安曇野で育った。
リンゴや葡萄、梨など果物が豊富で、昼夜の温度差が大きいため大変美味である。
しかしながら冬の寒さが厳しいので、ミカンは育たない。
隣の県である静岡県がミカンの産地で有名であるのに、柑橘類が好きで寒さが苦手な者としては静岡県はあこがれの地でもあった。
ミカンの仲間であるカラタチの花を見たり、「♪ カラタチの花が咲いたよ、白い白い花・・・・・♯ 」と唄う度にこの思いは募った。

 20年ほど前、植木市で東京でミカンが育つことを知り苗を購入し、15年ほど前から毎年実を付けるようになった。
当初は酸味が強く美味しいといえる味でなかったが、木が成熟したためか、あるいは温暖化の影響か、最近は味が良くなり食べる楽しみが増してきた。
食べる楽しみに加えて、寒さが増して殺風景になった庭を金色で飾ってくれる。

 また、暮れには孫たちが集まりみかん狩り、正月のお供えに使うミカンは我が家で採れたものを使っている。
子供の時代のあこがれの我が家で採れるミカンが実現し、このミカンをお供えしてからいい年を迎えられているように思えてならない。


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