TOPページ > スズメバチはなぜ刺すか > アナフィラキシーショック | |
アナフィラキシーショック |
|ハチ毒の成分と作用|アナフィラキシーショック|ハチ刺されと抗体価の変動| |
免疫反応はウイルスや細菌,異物など(抗原)が体内に侵入した時にこれを排除する仕組みで,抗原抗体反応とも言います.最初の抗原の侵入により体内で抗体が作られるため,同じ抗原が2回目に体内に侵入した時には,1回目よりも急速で強い反応が起こります. 抗体は血液中にできるタンパク質の1種で,免疫グロブリンとも呼ばれており,IgG,IgM,IgA,IgD,IgEの5種類が知られています.予防接種はIgG抗体の働きにより感染症の予防に有効です.また,養蜂家など普段からハチに刺される機会の多い人が,何度も刺されているうちに強い症状が出なくなることがありますが,これもIgG抗体の働きです. 一方,この免疫反応が生体に不利に働き,さまざまな障害を引き起こす場合をアレルギーといいます.アレルギーの原因となる物質には,ハチ毒の他に,スギやヒノキなどの花粉,食物(牛乳,卵白,小麦,ソバなど),ダニなどに由来するハウスダスト(室内塵),カビ,薬物(抗生物質,サルファ剤)などがあります. アレルギー反応は,発症までの時間が短い即時型反応(Ⅰ型,Ⅱ型,Ⅲ型)と,発症まで時間がかかる遅発型反応(Ⅳ型)の4種類に分類され,それぞれ関与する細胞や物質が異なっています.アナフィラキシー症状はIgE抗体が関与するⅠ型アレルギーにより引き起こされます.ハチ刺傷により抗原となる物質(ハチ毒)が体内に取り込まれると,ハチ毒に対する特異的IgE抗体が作られ,体内で肥満細胞と結合します.これを”感作の成立”といいます. |
▶ 1回目のハチ刺傷 |
1 体内に抗原が入ってくると,T細胞の表面にある受容体で抗原を認識する. |
2回目の刺傷により抗原(ハチ毒)が再度体内に取り込まれると,肥満細胞表面でIgE抗体と結合し(抗原抗体反応),その結果,肥満細胞が活性化され,ヒスタミン,ロイトコリエンなどの化学伝達物質(ケミカルメディエーター)が体内に放出されます.この物質が体の各臓器に作用して,くしゃみや鼻づまり,じんま疹などの様々なアレルギー症状を引き起こします. この反応は極めて短時間(数分~30分以内)に起きるため,即時型反応といわれます.このうち,呼吸困難や血圧低下などの全身的な反応をアナフィラキシーと呼び,生死に関わる重篤な症状を伴うものをアナフィラキシーショックといいます.ショック症状を引き起こす原因には,この他にヒスタミンやセロトニンなどの化学伝達物質に起因するアナフィラキシー様反応がありますが,広い意味ではハチ毒によるアナフィラキシーとして扱われます. |
▶ 2回目のハチ刺傷 |
1 体内に抗原が入ってくると,肥満細胞の表面にあるIgE抗体と結合する. |
アナフィラキシーについて詳しく知りたい人は,次のHPを参考にして下さい. |
▶ アナフィラキシー症状出現時の対応 |
1 2 3 4 |
アドレナリン携帯自己注射キット( エピペン)を携行している場合は,直ちに注射します. その場で体を横たえ,脚を少し高くします. おう吐がある場合は顔を横に向けて窒息しないようにします. できるだけ速やかに最寄りの医療機関を受診します. |
▶ エピペン (エピペン注射液0.3mg) |
ハチ刺傷によるアナフィラキシー症状を緩和するための自己注射器”エピペン”が,医師の処方により入手できるようになりました.主成分はアドレナリンで,強心作用,血圧の上昇作用,気管支の拡張作用があり,アナフィラキシーの徴候や症状を感じた時に速やかに注射すると,ショック症状を軽減させる効果があります.吐き気,発汗,めまい,じんま疹,ふるえなどの初期症状がみられた場合は,ショック症状が発現する前にすみやかに注射します. エピペンの投与対象者は,ハチ刺傷によるアナフィラキシーの既往のある人,またはアナフィラキシーを発現する可能性の高い人(ハチ刺傷時に全身症状が見られ,かつ抗体価が高い人)です.症状出現後30分以内(遅くとも60分以内)に注射すれば,死亡者を減少させる効果が期待できます.適正に使用しないと重大な事故につながる可能性がありますから,使用に当たっては十分な注意が必要です. 今までは保険が適用されませんでしたが,2011年9月22日から保険が適用されることになりました.薬価は大人用の0.3mg規格が10,894円,子供用の0.15mg規格が7,979円です. |
|
※ 食物アレルギーなどにも使用できます.子供用のエピペン注射液0.15mgもあります. 詳しくは” エピペンのホームページ”をご覧下さい. |