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スズメバチはなぜ刺すか

|種による攻撃性の違い刺傷被害の発生時期とその原因スズメバチによる集団刺傷被害ハチ刺されと死亡事故

スズメバチによる刺傷被害の多発が,各地で大きな問題となっており,時には死亡事故も発生しています.厚生労働省の人口動態調査結果(2023年のデータが2024年9月17日に公表されました.)をみると,有毒動植物との接触の中では,ハチによる死亡者数が一番多くなっていますが,それでも2023年は21人に過ぎません.

スズメバチが人を刺すのは,ほとんどが巣を守るためです.刺傷被害はいきなり発生するように思いがちですが,攻撃の前には働きバチによる警戒や威嚇行動を伴います.この段階で巣に気づけば,被害を未然に防ぐことができますが,これを無視したり,気づかずに巣に接近し過ぎると,しばしば刺傷被害が発生します.ただし,急激に巣に近づくなどして激しく巣を刺激した場合は,いきなり攻撃してくることがあります.

ひとたび刺傷被害が発生すると,刺された人にとっては痛いだけではなく,重篤な症状になったり,時には死亡したりもします.一方,刺したスズメバチも巣が駆除の対象にされてしまします.刺傷被害の発生は人間にとっても,スズメバチにとっても,お互いに”不幸な出会い”ということができます.こうした”不幸な出会い”を少なくするためには,スズメバチの習性や営巣場所,活動時期,対処法などをよく理解し,注意深く行動することが大切です.

ハチの仲間(ハチ目に属する昆虫)は,日本で約4,200種が記録されていますが,大部分を他の昆虫などに寄生する寄生バチが占めています.

人を攻撃したり刺したりして問題となるのは,人家やその周辺に巣を作り,集団生活をするスズメバチやアシナガバチ,ミツバチの仲間で,ハチ全体から見ると極一部に過ぎません.これらのハチは,巣を単位とした集団生活をしており,(1) メスに繁殖をする個体(女王バチ)と繁殖をしない個体(働きバチ)の区分が存在する,(2) 世代の重なりがある,(3) 協同で子育てをするという共通性がみられます.アリも含めて膜翅目の中では最も進化したグループだと考えられており,社会性のハチ類(social wasps)と呼ばれています.

スズメバチ上科のスズメバチ科スズメバチ亜科(3属17種)およびアシナガバチ亜科(3属12種)と,ハナバチ上科のミツバチ科ミツバチ亜科(1属2種)およびマルハナバチ亜科(1属14種)に属するハチの一部がこれに該当します.

なかでもスズメバチ亜科に属するハチは,外敵から巣を防衛する手段として攻撃性が発達しており,そのため,直接,間接を問わず巣に刺激を加えると毒針を武器にして攻撃してきます.

毒針は産卵管が変化したものなので,刺すのはメスだけです.巣を守るという役割は働きバチと呼ばれるメスが受けもっています.女王バチも毒針を持っていますが,働きバチほど攻撃的ではなく,女王バチによる単独営巣期には,巣をつついても女王バチはそのまま逃げ去ることがほとんどです.