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スズメバチによる集団刺傷被害を防ぐには

刺されないための注意集団刺傷被害を防ぐには刺された時の対処法抗体検査ハチ刺傷歴と抗体検査結果

スズメバチによる集団刺傷被害が,9~10月を中心にしばしば発生しています.刺傷被害の原因となるのはオオスズメバチかキイロスズメバチのいずれかであることが多く,どちらも大きな巣を作り,攻撃性が強いという点で共通しています.特にキイロスズメバチは働きバチの数も多く,大きな被害につながりやすく危険です.

被害を確実に防止するための良い方法はありませんので,野外活動の際には細心の注意を払って被害に遭わないようにしてください.そのためにはスズメバチの生態を良く知ることが大切です.スズメバチが人を攻撃するのは,”あくまで巣を守るため”です.活動期間,営巣場所,攻撃性,被害の実態を良く理解し,状況に応じた適切な判断と行動をとってください.

スズメバチに対する忌避剤は今まで知られていませんでしたが,最近になってスプレータイプのスズメバチ忌避剤が市販されました.

事前に十分な下見が必要です

少人数の時は大丈夫でも,多人数で巣の近くを通行した結果,集団刺傷被害が発生するという事例がしばしば見受けられます.被害を未然に防止するためには,事前の調査で巣の有無を確認することが大切ですが,実際に巣を見つけることは意外と困難です.以下のような点に注意して下見をしてください.

キイロスズメバチは建物の軒下や天井裏,樹洞などに巣を作ります.下見の際はコースの周辺の建物(特に廃屋や小屋など)に巣がないか,ハチが出入りしていないか慎重に調査してください.営巣規模が大きく,多数の働きバチが活発に活動しています.小型ハチが直線的に素早く飛んでいる姿を見かけたら飛行コースを良く見極め,巣の発見に努めてください.キイロスズメバチは日光が当たっている時はオレンジ色に見えます.

オオスズメバチは,主に地中や樹洞に巣を作るため,草刈りやキノコ狩りなど,山林やその周辺を歩いていて被害にあうことが多いようです.巣の付近を大勢で通行すると振動が巣に伝わり攻撃してくることがあります.野外活動に出かける時は十分注意し,できれば道以外の場所へは踏み込まないようにしてください.

大型のハチが飛んでいるのを見かけたら,飛行コースに注意してください.餌や巣材を運んでいる時は少しお尻の先を下げて飛んでいますから,慣れれば巣から外役に出かけるハチか,巣へ戻るハチかを区別することも可能です.ハチが直線的に飛んできて急に向きを変え,林の中などに姿を消したような場合は,曲がった先に巣があります.

スズメバチの威嚇行動に注意を払いましょう

刺傷被害の大半は,不用意に巣に近づきすぎた場合や,巣の近くを通行して直接,間接を問わず,巣に何らかの刺激を与えた場合に発生します.特に多人数の場合は,振動や動き,大きな声などが巣を刺激し危険性が増すので注意が必要です.

その際,いきなり攻撃してくることは希で,事前に以下のような警戒や威嚇のための行動をとることが普通です.これを事前に察知できれば被害を回避できる可能性があります.

     ・ 相手の周りをまとわりつくように飛び回る.
      ・ 相手に狙いをつけて空中で停止(ホバリング)する.
      ・ あごをかみ合わせて”かちかち”という威嚇音をたてる.

左のアイコンをクリックすると,オオスズメバチの威嚇音を聞くことができます .(”上野高敏のウェブサイト”より転載)

こうした行動に気づかずそのまま巣に近づくと,攻撃を受けることになります.常に周囲に気を配りましょう.少しでも気になる行動がみ見られたら,姿勢を低くして静かにバックしてその場から離れるようにします.あわてたり大騒ぎするとハチを刺激するので,決してしてはいけません.

できるだけ小グループ単位で行動しましょう

遠足など集団で行動する時は,なるべく小さなグループに分かれて静かに行動してください.大声をあげたり,走り回ったりすることは巣を刺激して大変危険です.万一,刺傷被害が発生した場合でも,小グループであれば現場から避難しやすく,被害の拡大防止に役立ちます.

刺傷被害が発生した場所には,不用意に近づかないよう気を付けましょう

刺傷被害が発生した巣では,働きバチが興奮状態になっています.そのため近くを通行するだけでさらに被害が発生することがしばしばあります.大人数で通行すると被害が拡大しますので,現場付近に近づかないよう気を付けてください.また、救助に向かった人が刺されるという2次被害もしばしば発生していますので注意してください.

同じコースを往復する場合,往路に刺傷被害が発生した時は,少人数であっても先に進むのを中止し,その場から引き返すのが賢明です.復路に集団刺傷被害が発生したケースがしばしば見受けられます.ただし,復路に別ルートが確保でき,刺傷被害が発生した場所を通行しない場合はこの限りではありません..

万一,刺傷被害が発生した場合に備えて,忌避剤を携行しましょう

木酢液をスプレーすると,興奮したハチがおとなしくなることが知られています.また,2018年5月に画期的な忌避剤”スズメバチサラバ”が,高知大学発のベンチャー企業”KINP”から発売されました.高価なのが難点ですが,携行すれば被害を未然に防止したり,被害の拡大防止に有効です.

詳しくは”KINP”のホームページをご覧ください.

基本的な対処方法については,”スズメバチに刺されないための注意”もご覧ください.