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種別・年別の発生状況


1983年から2007年まで25年間の総駆除件数は12,898 件でした.毎年駆除依頼があるのは,コガタスズメバチ,キイロスズメバチ,ヒメスズメバチ,モンスズメバチおよびオオスズメバチの5種ですが,その他にチャイロスズメバチ,クロスズメバチとシダクロスズメバチを合わせた合計8種が生息しており,シダクロスズメバチを除いた7種の駆除記録があります.

種別の内訳は,コガタスズメバチが11,906 件,92.3%を占め,圧倒的な優占種となっています.以下ヒメスズメバチ347件,2.7 %,モンスズメバチ286件,2.2 %,キイロスズメバチ206件,1.6 %,オオスズメバチ142件,1.0 %の順となっています.

ただし,コガタスズメバチやキイロスズメバチなど,人家やその周辺の人目につきやすい場所に営巣する種については,高い割合で駆除依頼が寄せられるのに対して,営巣場所が人目につきにくい種や,営巣規模が小さな種は営巣しているのが見逃される機会も少なくないと思われます.トラップによる捕獲調査では,オオスズメバチとヒメスズメバチの2種も市内各地で多数捕獲されており,駆除件数以上に多数が市内に生息していることは確実です.

コガタスズメバチとキイロスズメバチの2種は営巣場所や採餌習性に柔軟性があり,都市環境に対する適応能力が高い種とされています.そのため,この2種のいずれかが発生の優占種となっていますが,名古屋市ではキイロスズメバチはむしろ退潮傾向にあります.キイロスズメバチは1994年に記録した22件をピークに1桁の発生に止まっていましたが,2005年には15件と久しぶりに2桁台を回復しました.

ヒメスズメバチの駆除件数はコガタスズメバチに次いで第2位を占めています.本種は性質が温和で攻撃性が弱いことや,営巣規模が小さく営巣場場所も閉鎖空間で人目につきにくいためか,実際よりも駆除依頼が少ない可能性があります.市内16 区全てで記録されており,本市ではキイロスズメバチ以上に都市環境に適応した種とみなされます.

また,本州西南暖地の大都市には珍しくモンスズメバチの発生が多いことも名古屋市の特徴の一つで,毎年少なからず発生が見られます.総駆除件数はコガタスズメバチ,ヒメスズメバチに次いで第3位ですが,2005年には54件と過去最多を記録しています.

オオスズメバチは樹液に飛来する個体が市内各地でしばしば目撃されますが,営巣場所が土中などの閉鎖空間で人目に触れる機会が少ないためか駆除件数は意外と多くありません.しかしながら,ここ数年は2桁の発生を記録するなど着実に増加傾向にあり,2005年は25件と過去最多を記録しました.この年は雑木林のアベマキやコナラの樹液で,例年にも増して多数の働きバチが目撃され,本種の多発を裏付けています.

本種は他のスズメバチやミツバチの巣を集団で襲い,幼虫や蛹を蛋白源として巣に持ち帰るという特異な習性があります.そのため,他のスズメバチの天敵としてコロニーの存続に大きな影響を与えており,毎年多数の巣が本種の襲撃により廃巣となっていると考えられます.

また,チャイロスズメバチの生息が毎年のように確認されていることも特筆に値します.クロスズメバチは,少数ですが越冬調査時に越冬中の女王バチが見つかっており,また,誘引トラップでも捕獲されることから,市内に確実に生息していると思われますが,営巣場所が土中であることや,成虫が小型で目立たないことから駆除依頼がほとんど無いものと考えられます.

1983年の駆除開始以降,スズメバチの発生件数は不規則な増減を繰り返しながらも増加傾向にあります.特に1994年を境に大幅に増加し,その後は現在まで多発傾向が続いています.この25年間で最も発生が多かったのは2005年の 1,116件でした. 1994年以降についてみると,コガタスズメバチの発生件数は3年周期で増減を繰り返して おり,1995 年,1998年,2001年,2004年が多 発年でした。多発した翌年にはいったん減少し,その後2 年続けて増加するというパターン を繰り返しますが,その変動要因は複雑で増減のメカニ ズムについてはまだよく分かっていません. 最多年(2004年:1,059件)と最小年(1999年:511件)の変動幅は2.1倍と比較的小さい のが特徴ですが,これは駆除がコロニー密度を調節する役割を果たし,結果として発生量の増加と年次変動の安定化につながっている可能性が高いものと考えられます.また,ガタスズメバチ以外の4種については,これとは異なる不規則な増減をくりかえし ており,明瞭な規則性はみられません.