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名古屋のスズメバチ事情


名古屋市は濃尾平野の南に位置し,市域の南西部で伊勢湾に面しています.面積 326.5Ku,世帯数 1,159,223世帯,人口 2,327,322人(2024年1月1日現在)の都市で,行政上は16の区からなっています.

市域の東北端にあたる守山区の東谷山(198.3m)を最高点として,北東の丘陵地から南西の低地に向けて緩やかな勾配をもつ地形が続いています.地形は自然環境や土地の利用形態から,東部の丘陵地,中央部の台地,北・西・南部の低地の3つに区分されます.

東部の各区(守山・千種・名東・天白・緑区)は,標高50〜100m程度のなだらかな丘陵が続いています.最近は急速に宅地化が進んでいますが,まだあちこちに大規模な公園・緑地が散在しており,比較的自然度の高い地域です.

市の中央部(中・東・昭和・瑞穂の各区と南・熱田区の一部)は,北から南にかけてなだらかに傾斜する標高10〜15m程度の平坦な洪積台地になっており,古くから市街地が発達し,商業地・住宅地として栄えています.

北部・西部・南部(北・西・中村・中川・港の各区と熱田・南区の一部)は,河川の堆積作用によってできた沖積低地で,特に庄内川の西側と北側にはまだ畑や水田が多く残っています.しかし市域の北・西部では,人口の増加と市街地化が進んでおり,南部の名古屋港付近はエ業地帯となっています.

こうした地形や自然環境,土地の利用形態の違いがスズメバチの発生量にも大きな影響を与えており,東部丘陵地で多く,市街地から西部の低地にかけては極めて少なくなっています.



スズメバチに関する苦情や相談の増加に伴い,名古屋市では1983年7月から駆除対策を実施し,この間1万件を超える膨大なデータを蓄積してきました.

本州西南暖地の都市部において増加傾向が著しいのは,キイロスズメバチとコガタスズメバチの2種ですが,名古屋市ではコガタスズメバチが圧倒的な優占種となっています.この2種は営巣場所や採餌習性に柔軟性があり,都市化に対して高い適応能力を持ったハチだといえます.

名古屋のスズメバチの特徴としては,1 コガタスズメバチが圧倒的な優占種となっている,2 キイロスズメバチの発生が少ない,3 モンスズメバチの発生が多い,4 チャイロスズメバチが生息している,の4点が挙げられます.

特に都市環境環境下では減少傾向にあるとされるモンスズメバチが毎年多発していることや,幻のスズメバチとも呼ばれるチャイロスズメバチが生息していることは特筆に値します.

スズメバチの駆除件数は不規則な増減を繰り返しながらも増加傾向にあります,特に1994年を境に大幅に増加し,その後は現在まで多発傾向が続いています.コガタスズメバチの駆除件数は3年周期で増減を繰り返していますが,変動要因は複雑で増減のメカニズムはまだよく分かっていません.

毎年駆除依頼があるのは,コガタスズメバチ,キイロスズメバチ,ヒメスズメバチ,モンスズメバチおよびオオスズメバチの5種ですが,その他にチャイロスズメバチ,クロスズメバチとシダクロスズメバチを合わせた合計8種が生息しており,シダクロスズメバチを除いた7種の駆除記録があります.