今回は、「ノックノック・ジョーク」を紹介します。このジョークは、マザーグースではなのですが、英語の言葉遊びとして広く知られているものです。
このジョークのパターンは決まっていて、
この「ノック遊び」は、1920年から10年ほど続いたアメリカの禁酒法時代に始まったとされています。人々がこっそり、もぐり酒場(speakeasy)に入るとき、ドアをノックして、名前や「合い言葉」を告げた名残だと考えられています。1935年ごろに大流行したそうです。
では、映画の中から、いくつか用例をご紹介します。これ以外にも、ロビン・ウィリアムスの『アンドリュー』にも顔を出していました。
ユー・ガット・メール
トム・ハンクスとメグ・ライアンの共演でヒットしたインターネット恋愛ドラマ『ユー・ガット・メール』<You've Got M@il> (1998.US)にも、このジョークが顔を出していた。以下は、ジョー(T・ハンクス)がレジ係のローズにジョークを言う場面である。
JOE:I'm Joe... Knock, knock.
ROSE:Who's there?
JOE:Orange.
ROSE:Orange who?
JOE:Orange you going to give us a break by
zipping this credit card through the credit card machine?
ジョー:僕はジョー。ノック、ノック。
ローズ:どなた?
ジョー:オレンジです。
ローズ:オレンジだあれ?
ジョー:オレンチのカードを機械の中に入れて、勘弁してくれないか。
込んだスーパーでキャッシュ・オンリーのレジに並んでしまったキャスリーン(M・ライアン)は、クレジット・カードしか持っていなかった。レジ係のローズは、並び直せと、キツイ視線。そんな彼女を助けようと、ジョーはノックノック・ジョークを始める。「ノック、ノック」と言われると、知らない相手でも、条件反射的に「どなた?」と答えてしまうところが、オカシイ。このジョークで、不機嫌だったレジ係も表情を和らげ、レジを通してくれたのだが、このジョークを知らない人にとっては、ちんぷんかんぷんのシーンだったかもしれない。
戸田奈津子さんの字幕では、
「ここで質問」「何でしょう?」「ピザ好き?」「好きだけど?」「じゃ、このピザカード、ビビッと機械に通してよ」となっていた。
このダジャレは、Orange who と Aren't you の発音が似ていることを使ったもので、ノックノック・ジョークでは定型のスタイルである。
ワンダフル・ファミリー ベイビー・トーク3
Look Who's Talking Now! (1993.US)
JULIE:Knock, knock.
MIKEY:Nobody's home.
JULIE:Knock, knock.
MIKEY:Nobody's home!
JULIE:Knock, knock.
MIKEY:All right. All right. Who is it?
JULIE:Buck.
MIKEY:Buck who?
JULIE:Buck buck. I'm a chicken.
MIKEY:Oh, mom. Can I kill her?
MOLLIE:After dinner, honey.
JULIE:Knock, knock.
ジュリー:ノックノック。
マイキー:留守だよ。
ジュリー:ノックノック。
マイキー:留守だよ!
ジュリー:ノックノック。
マイキー:わかった、わかったよ。どちらさん?
ジュリー:カバ。
マイキー:どこのカバ?
ジュリー:カバ、カバ、バカ。
マイキー:ママ、こいつ絞め殺してもいい?
モリー:夕食がすんでからにして。
ジュリー:ノックノック。
【状況と背景】
赤ちゃんがしゃべるシリーズの第3作で、こんどは犬がしゃべる。ジェイムズ(ジョン・トラボルタ)の妻モリーは失業して元気がない。二人の幼い娘ジュリーは、兄のマイキーにノックノック・ジョークを言う。(映画の前半)
すてきな片想い Sixteen Candles (1984.US)
SAMANTHA:Hi, grandpa.
GRANDPA:Oh, I've got one for you. Knock, knock!
SAMANTHA:Who's there?
GRANDPA:Who!
SAMANTHA:Who who?
GRANDPA:Helen? We've got an owl here in the hall.
サマンサ:おじいちゃん。
祖父:もう一人いるよ。ノック、ノック。
サマンサ:誰?
祖父:誰かさんだよ。
サマンサ:誰かさんって?(ホーホー)
祖父:ヘレン。おすましさんが、お帰りだ。
(玄関にフクロウがいるよ。)
【状況と背景】
サマンサは16歳の誕生日を迎えるが、家族の誰も彼女の誕生日のことを覚えていない。これは、不機嫌なサマンサとトイレから出てきた祖父との会話。自分をいつまでも子供扱いする祖父に、うんざりしている様子がうかがえる。(映画の前半)
火山のもとで Under the Volcano (1984.US)
GEOFFREY:Knock, knock.
YVONNE:Who's there?
GEOFFREY:Cat.
YVONNE:Cat who?
GEOFFREY:Catastrophe.
YVONNE:Catastrophe, who?
GEOFFREY:Catastrophysicist.
ジェフリー:ノック、ノック。
イヴォンヌ:どなた?
ジェフリー:猫。
イヴォンヌ:どこの猫?
ジェフリー:ろくでなしの猫。
イヴォンヌ:聞いたことないわ。
ジェフリー:なにぶん...ろくでなしなものでして。
(直訳ではありません。吹き替えのとおり)
【状況と背景】
1930年第のメキシコの火山のふもとの町クエルナバカを舞台に、酒浸りの中年男ジェフリーとその妻イヴォンヌ(ジャクリーン・ビセット)のすれちがいを描いた作品。家出をしていた妻が町に帰って来ているという噂を聞いたジェフリーが、妻の滞在しているホテルを訪れる場面。(映画の前半)
サンタリア 魔界怨霊 The Believers (1987.US)
CHRIS:Knock, knock.
CAL:Who's there?
CHRIS:Dwayne.
CAL:Dwayne who?
CHRIS:Dwayne (Drain) the bathtub! I'm drowning!
CAL:That's terrible.
クリス:ノック、ノック。
キャル:誰だい?
クリス:ドゥエイン。
キャル:ドゥエインそれから?
クリス:ドレイン・ザ・バスタブ!(お風呂の水を抜いて!)おぼれるよ!
キャル:おもしろくないジョークだぞ。
【状況と背景】
映画の冒頭、朝食の支度に忙しい母親のそばで遊んでいるクリス。起きてきた父親に、クリスは「ノック、ノック」の言葉遊びをする。
Knock-knock Jokes が100以上収録されています。また、Mudder Goose の項目に、ハンプティ・ダンプティやメリーさんの羊など、8つのマザーグースの替え唄が載っています。(英語)