みーちゃんとんびさんの アナンダ旅日記

 

 4 歯が抜けた

 


別名 エビフライ

 

 みんなは、学校にいました。
 エデュケーション・フォー・ライフという、ことをしているんだって。
 日本語に直すと、「いのちの教育」っていうことらしいよ。

 わたしも、小学校1年生。アメリカの学校ってどんなとこか、気になった。
 けど、遅れて行ったんで、先生とかの説明は終わっていて、お昼ごはんの時間でした。
 なんでも、アナンダ村のひとだけじゃなくて、近くの人も通っているということでした。生徒が少ないんで、小学校1・2年生で一クラス、3・4年生で一クラス、5・6年生で一クラスらしいです。

小学校3・4年、5・6年生の教室

教室の内部

 中学校は、すぐ横の丘の上にありました。

 今は、中学生(アメリカでは7年生とか9年生とかいうらしい)までは、アナンダにいるけど、高校になったら外に行かなくちゃいけないんだって。今、高校を村に建てる計画があって、アナンダの人は、とても喜んでるみたい。

エデュケーション・フォー・ライフ(Education for Life))とは、アナンダ村で25年ほど前から行なわれてきている、知育だけでなく、心についても一緒に学んでいこうというものです。
ネイチャーゲームの考え方なども、随所に取り入れられており、アメリカ各地はもちろん、ドイツなどでも実践されています。
ただ、上に書いてあるとおり、午前中寝ていたため、合流が遅れて、先生からお話を聞くことができませんでした。
どなたか、このあたりのことを教えていただければありがたいのですが。

くわしくは、ホームページもあります。(ただし、英語ですが)

 ヤッター、泳ぐんだ!

 車に乗る時に、村の子どもたちも数人乗り込んできました。
 わたしは泳ぐの大好き!
 でも、川で泳ぐの初めて。

「こんな、何も無いとこが、州立の公園なんだ」って、誰かが言ってました。公園の入り口で車を止めて、川原まで歩いて降りました。そして、着替えるところがなかったので、川原の陰の方で、水着になりました。


こんなところで泳いだよ!


一緒に行ったみんなと・・・

 靴を脱いで、水のところに行こうとしたけど、石が熱い!
 ビーチサンダルを持ってくればよかったと思いました。もっともわたしは、ミサトッコを持っていってたんだけど・・・
 ミサトッコって、みんな知らなかったみたい。ぞうりの上の面が畳みたいになったやつのことです。みんなは、「なんで、ミサトッコって言うの?」って聞くけど、ミサトッコはミサトッコ。保育園のころからミサトッコって言ってたもん。

 川の水は、とても冷たかったです。何でも、高い山から流れてくる水で、山の上の方には氷が残っているんだって。どおりで冷たいはずだ。
 みんなで川の上流の方まで泳いで行きました。川ってプールじゃないから流れがあるんだって、初めて知りました。「みーちゃん、進んでないよ。泳いでるけど、止まってるよ。」って誰かの声が聞こえたけど、そんなこと言っても知らないよ。浮き輪に入って一生懸命に泳いでるのに!
 大人の人は、大きな岩の上から川に飛び込んでいました。わたしは、川の上の方までがんばって行ってから、「何もせずに流れてくる」ということをやってみました。とても楽しかったよ。
 もっともっと、泳いでいたかったけど、もう時間だって。つまんないな。

 川を出てから、神奈川の相模というところから来てるスダジイさんが、今、研究中だっていう川のネイチャーゲームをしてくれました。
 けど、わたしは泳ぐのが終わっちゃったんでつまらなくなって、横で離れて見てました。

 帰りのバスの中で、また寝ちゃいました。お父さんに起こされて外に出たら、アナンダの学校の近くでした。「少しの間だけ、ココで待っててね。おいしいのがあるからね。」って言って、みんなを降ろしてハリダスさんは、アナンダ村の子供たちを送っていきました。
 何があるのかな?と思ったら、日本のジャスコで買ったことのあるブルーベリーみたいのがありました。黒いんでブラックベリーというそうです。おいしそうだなって思ったけど、洗ってないものは、ちょっと食べにくいな。お父さんたちは、「おいしい、おいしい。」って言ってたけど。

 

   夕食は、ジャガイモにいろんなトッピングをするんです。けどわたしは、日本から持っていってたお茶漬けの素をライスにかけて、お湯を入れてお茶漬けをしました。そうそう、お父さんはコーネルさんに、「とんびって、どんな鳥?タカみたいなの?」って聞かれていました。なんて言うのかなと思ってたら「タカよりも、ずっとおとなしくて、のんびりしたヤツです」って言ってました。

コーネルさんは、鳥が好きです。大学で「ネイチャー・アウェアネス」という課程を専攻した最初の修士となり、野鳥で有名なオーデュボン協会に300分の2の倍率でナチュラリストとして採用されました。
後で出てきますが、鳥を呼び寄せる術(もう、テクニックとかいうような領域ではありません)なども、すばらしいものでした。 

 夜のプログラムが8時からだというので、ごはんが済んでから、すぐにシャワーに行きました。

  サマータイムっていうのを、お父さんに教えてもらいました。夏の間だけ時計を1時間早くするんだって。だから、夜遅くても外が明るく、朝は6時だとまだ薄暗いんだそうです。でも、時計を早めるのはいいけど、わたしは時計を持ってきてないから一緒なんだ。

  シャワーは、おとうさんと一緒に入りました。中で、洗濯もしました。洗濯ものは、うちの玄関の中にロープを張って干しました。外に干そうかな?って最初は言ってたんだけど、ブラウニーがくわえちゃうかもしれないから、お父さんは中に干していました。お父さんは「ブラウニーだけじゃなくて、いっぱい動物さんが来るんだよ」っていってました。マウンテンライオンやシカ、七面鳥なんかが、お客さんでいっぱい訪ねてくるんだって。見てみたいけど、ちょっと怖いな。

  夜は、テンプルでスライドショーっていうのを見せてもらいました。
  スライドショーというのは、スライドの写真を見ながら、音楽や説明なんかで、自然のいろんなことを紹介することらしい。
  中に入ると、映画を見るときのようなスクリーンが正面にありました。また、並んだ椅子の後ろにスライドの機械が2台ありました。
  何か、学校の体育館で見る映画みたいな感じです。ハリダスさんが、この写真を撮ったゴリンダさんを紹介しました。がっちりした体のきれいな目をしてるおじさんです。本当の名前はロバートって言うんだって。普段はアナンダに住んでいるけど、世界中を飛び回っているカメラマンなんだって。
 「写真を撮るときは、自然の中で心を開いて、いろんな生命を感じて、回りの自然と一体化するんだ。」っていってました。


これは、ハリダスさんです

photo by Sai

  部屋を暗くしてスライドショーの始まりです。みんなが「んー」とか「ハー」とか小さな声で言っています。わたしは、じっと写真を見ていました。
 なぜかって?キレイなんだ。写真が。音楽もとっても気持ちがよかったです。
  スクリーンに次々とキレイな写真が映されます。でも、ホントのところ、わたしはちょっと眠くなってきちゃった。だって、昼間にいっぱい泳いだもん。床に転がって、お父さんにくっついたりゴロゴロしたりしてました。

  スライドショーが終わってから、みんなにプレゼントがありました。
  ゴリンダさんの撮った写真がポストカードになったのを、1人1枚ずつくれるというんです。わたしは眠かったけど、お父さんが選びなさいというので、お花のいっぱい写ったのを選びました。お父さんは、お土産に買うんだと言って、いっぱい選んでました。1枚2ドルっていってました。
 けどそんなことより、わたしはデザート(夜食)のアイスクリームの載ったケーキの方が気になりました。とっても、オイシイもの!

  ほんとうは、わたしの選んだのを、ここで紹介したいけど、著作権とかなんだとかいうのでややこしいから、やめときなさいってお父さんが言いました。
でも、ほんとうに、きれいなんだから!

  おうちに帰ってから、お父さんは、明日からのキャンプの用意をしてました。お父さんに、「ねえねえ、お父さん、日本って、今何時かな?」と聞いたら、怒られました。
 「何回聞けば、気が済むの!」って。そんなに、いっぱい聞いたかな?
 ただ、わたしは、日本にいるおかあさんと、大ちゃんが、何してるのかなと、ほんのチョッピリ気になっただけなのに。

 わたしも手伝おうかなと思ったけど、いつのまにか寝ちゃいました。

これまで、すぐに「今は日本だと何時かな?」という質問をしていました。最初は、こちらも頭で計算して、いちいち答えてきましたが、たびたびだったので、とうとうキレちゃいました。たぶん、ホームシックの影響なのでしょう。
こちらも、わかっちゃいるけど・・・・

 

  翌日は、朝ごはんのあと、キャンプ場へ出発の予定です。

 でも、朝ごはんのときに、またちょっと泣いちゃいました。
 また、お茶漬けを食べようとしていたら、ハチが飛んできて、わたしのシャケを持って行っちゃた。お父さんが、早く食べなさいって言ったけど、悲しくなって「ハチさんが食べたのなんか、毒が入っちゃってる。食べられない。」って、大きな声で泣いちゃった。

 9時30分になって、 いつものように、お父さんと一緒に車に乗ろうとしたら、「みーちゃん、今日は別々の車に乗ろうか?」といったんです。わたしは、「なんで?」とおもいました。けど、サイさんが、「おとうさんなんか、ほっとけ、ホットケ」というので、「それもそうかな」と思って、違う車に乗りこみました。
 車の中では、仙台の児童館に勤めてるサリーさんや、茨城から来てるマチコさんなんかと一緒に歌をうたいました。「トトロ」の歌や校歌なんかを大きな声で歌いました。

他人の子供を連れてキャンプなんかに行った時の、ホームシックの対応は、とにかくホームシックにかからないように、楽しいことや興味をひくことを、休む間もなく続けることだと思っています。
しかし、自分の子供がホームシックにかかるとは思ってもみませんでした。
他の人と少し話をしていても、私の顔を見ると日本のお母さんや弟のことを思い出してしまうのです。
そこで、この日からは、なるべく子供と離れるようにしました。一緒に行った人には申し訳なかったのですが、その方が家のことを忘れられるからです。
幸いにも、一緒に行った人たちが、とても良くしてくれたので、この日から時差ぼけも治ってきたこともあって、段々みんなに馴染んでいきました。

 1時間ほどで、街に着きました。「30分休憩します」って、なおこさんが言いました。
 わたしは、ジュースが飲みたかったので、お父さんとお店に行きました。マーケットで、いっぱい冷たいのがありましたが、どれがいいのかわかりません。お父さんが、「これ炭酸やで。」って言ったのを買うことにしました。
 横には、7UPって書いてました。
 そのあと、お土産を見ようかということで、お店に入りました。どうもここは、お土産屋さんが集まっているところらしい。あとで、「このあたりは、昔は金が採れていて、そこで働いてる人たちが集まったところだ」って聞きました。だれか「じゃあ、ゴースト・タウンですね」って言ったら、「それを言うなら、ゴールド・タウンだろ」って突っ込まれてました。

 あんまし、いいのがなかったので、車のところに帰りました。車はガソリンスタンドにとめてあって、その横がさっきジュースを買ったのと違うお店になっています。
 お父さんと、そのお店に入って、今度はイチゴのアイスを買ってもらいました。
 外に出て食べてると、いろんな人が、いろんなものを食べたり、飲んだりしてました。
 「アナンダで、きれいになった体に毒を入れてる」って、誰かがいってました。
 何時の間にか、休憩時間が45分になっていました。

 道に迷いながら(迷っている最中に、車にはねられたシカの死んだのも見ました)、キャンプ場に着きました。


いま、かじっているリンゴに注目
この後、あの事件が・・・

 もう12時30分です。お昼ごはんは、アナンダでもらった袋に入ったランチです。
 お父さんのも、わたしが選んでおきました。チーズと野菜のサンドイッチか、バターとジャムの両方ついたサンドイッチのどちらかと、リンゴかオレンジのどちらか、チョコレートとクッキーが入っていました。
 わたしは、茨城から来たユミコさんやサリーさんと一緒に食べていました。

 おいしそうなリンゴを口一杯にほおばりました。
 すると、突然口の中が変になり、少し血が出ました。
 そう、歯が抜けたんです。
 わたしは慌てて、少し離れて他の人とお昼を食べていたお父さんを呼びました。

 お父さんは、笑いながら「また、抜けたか!」って言いました。アメリカに来る2週間ほど前に、前歯が2本抜けたとこだったんです。お母さんは、「みんなに、歯抜けデースって、自己紹介したら・・・」って言ってたくらいです。

 わたしも最初は慌てたけど、すぐに血も止まったんで落ち着きました。けど、ここでちょっと悩みました。
 「歯が抜けたら、リンゴがかじれない!」
 かじれないと思うと、余計においしそうに見えてきます。
 ほんとに、こんな大事な時にお父さんがそばにいない。プンプンしてたら、サリーさんがお父さんを呼んでくれた。お父さんは、ナイフでリンゴを切ってくれた。三木の刃物の肥後守だ。

右の白いティッシュの上に歯が!
photo by Yumi

 なんとか、おなかもふくれました。時間があったので、あたりをみんなで探検しました。
 日本だと、歯の妖精が、抜けた歯を持っていってくれるんだけど、アメリカにもいるのかな。歯をお供えしたらいいやということで、大きな岩の上に落ちそうになりながらのぼって、みんなで、お祈りといっしょに歯を置いてきました。
 「これで、立派な歯が生えてくるわ」と、いっしょに行ったおねえさん(とんび註:一部おばさん?)たちが、言ってくれました。

 テントをみんなで建てました。ハリダスさんが、「この後、泳ぐ人と山に行く人と別れます」と言いました。
 わたしは、もちろん泳ぐ組。
 泳ぐのは、けいくんとヤンボーとわたしだけみたい。お父さんも、他の人と一緒に山に行くみたいです。

 でもいいや。けいくんと泳ぐのも楽しいよね。

 

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