『鳥インフルエンザ問題の今後(91)』



世界的には喫緊の問題である鳥インフルエンザで、日本でも実際の鶏の処理現場では皆が地獄の苦しみを味わっている最中だが、目下のところマスコミもその関心事ではなく、来たるべき本当の惨事に備えて、せめて世間で忘れないようにして置いて貰おうと続けて来たこのシリーズでも、通常はもう蒸し返しの議論だけで、当初、NBIが多くの犠牲を払って注意を喚起していた頃から中身は一向に進歩して居ない。そのひとつ、今度のワクチンの話では「こっちまで疑われるんだよ」と笑いながら電話を貰ったが、実際馬鹿げた話であり、むしろそんなことからも逆にこの話が如何に無責任極まる話であるか分かるのである。

われわれ現場がものを考えるときは、まず実際技術的にも可能かどうかを考える。不可能なものは、そして実際的でないものは最初にスクリーニングにかける。病性鑑定と同じで、その善し悪しで診断がきまり、名医かヤブ医者かが分かれる。

日本の通常の鶏飼育現場で、大規模な違法ワクチンの使用などもともと不可能である。空論なら何でも言える。(90)でも述べたが学者というのは、実験室内の一事で博士号を取り、後は机上の空論をこじつけの実験で理論づける大家でもある。それは中には世紀の大発見もある。しかしまたあるものは研究費ほしさの御用学者の所業に等しいものもある。知行合一ではないが、矢張り普段の言行と委員会での立場は一致させて欲しいものである。

何度も云うとおり、もともとワクチン接種説など文字通りの噴飯物で、現場の感覚とか技術的な面からは考えられないことだが、国がそう云うからには証拠を出せと、公開質問状(84)を出したが、本当はそんな説に付き合うこと自体が馬鹿馬鹿しいの一語につきる。尤もここまで作為的になると、どっかのだれかに金でも掴ませて犯人をでっちあげるアメリカ映画そっくりのことだって考えてしまうよ。不活化ワクチンを大型トラックに何台分〇〇農場に運び込んだとか、どっかの国のナマワクはサイバーテロなみに拡がるとか、従業員は皆OO党員で秘密厳守で強制的にワクチンを昼夜兼行で打たせ続けられているとか、まるでOO7の世界になってしまう。

まあ、せいぜい政府に調子を合わせても、何処かの国で使われたグアテマラの粗悪なワクチン株が野外毒になってトウカンヤの唐土の鳥にくっついて飛んで来たんではと、素人でもする推理一つ出来ないとは、小委員会も「先生、風邪引いたらしいよ」と飛び込んで来た患者に「なんで素人に風邪だとわかる」と怒るヤブ医者と同程度である。

肝心の現場を知らなくて、学者や政府の云うことは正しいと簡単に錯覚してしまう人達を見ていると、大本営発表を最後まで信じて居た此の国の国民的メンタリティが思い起こされるのは当然で、こんな荒唐無稽な話までほんとに聞こえてしまうことだってあるんだなあ。


H 17 9 8. I, SHINOHARA