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砂田喜昭 2016年3月11日更新  
TPP学習会
私たちの暮らしに迫る危機
内容知らせ批准阻止へ


 TPP協定の5000ページを超える英文テキストを徹底分析した市民団体の代表から「TPP協定の内容と今後 私たちの暮らしに迫る危機」との報告が2月28日、富山県民会館でありました。主催は富山県食健連(国民の食糧と健康を守る運動富山県連絡会)で、報告者は内田聖子氏(アジア太平洋資料センター事務局長)です。彼女はTPP交渉が行われた現地へ何度も出かけ、各国の市民団体などと情報交換やTPP反対運動を続けてきた人です。
 内田氏はTPP協定の内容を広く知らせて、@TPPの批准阻止の運動を強めること、ATPP関連の国内法や制度の改悪を食い止めることを強調しました。


 TPP交渉 国民には秘密
多国籍大企業関係者は自由にアクセスし交渉官に圧力


 TPP交渉はかつてない秘密交渉でTPP協定の日本語訳が発表されたのが今年1月7日で、国民向けにはほとんど内容を知らされていません。ところがアメリカの大企業関係者は貿易アドバイザーという名目で約600人もが自由にテキストを見て、政府交渉官にロビー活動という圧力をかけ続けていました。こうした米国の多国籍大企業は薬のファイザー、インターネットのグーグル、自動車のフォード、穀物メジャーのカーギルなどやその関連業界団体です。
 TPPで利益を得るのはこうした多国籍大企業です。

日本だけが批准へすすもうとする異常さ

 TPPはこれから12カ国で国会の承認手続き、批准がはじまろうとしていますが、各国ではそれぞれの国益に合致するかどうかの真剣な議論と検討が行われます。
 アメリカでもTPP反対を表明する大統領候補が大多数です。議会での審議入りも今秋の大統領選挙の後といわれています。
 ところが安倍政権は、これからどのような影響が国民生活にあらわれるのかの検討もしないまま、TPP対策と称する法案を提出し、批准に突き進もうとしています。

際限なく関税ゼロへ
「見直し」「再協議」が協定に明記


 TPP協定は大筋合意で決着したわけではなく、すべての関税をゼロにする方向で進行する「生きた協定」「進化する協定」です。内田氏によれば「自由化に向けてのエンドレスゲーム」とのことです。協定それ自体が「発効後3年以内に見直される」ことになっています。
 安倍政権は農産品の重要5品目を基本的に守ったなどとうそぶいていますが、実は協定には発効7年後に、わざわざ日本を名指しして、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、チリの5カ国と「市場アクセス改善の観点から」再協議を行うことが明記されています。
 見直しの方向が「関税ゼロ」「非関税障壁の撤廃」という一方向のもので、後戻りは許されません。規制の強化や新たな関税創設、関税引き上げは認められません。

小矢部市の農業も大きな打撃

 「聖域」とされた農産品の多くが関税削減や撤廃に追い込まれましたが、それ以外の農産品はほとんどが関税ゼロとされることも明らかとなりました。
 小矢部市に関係ありそうなものを拾い出してみても、卵(殻付き)17〜21・3%の関税が11〜13年目にゼロに、鶏肉11・9%が11年目にゼロ、蜂蜜25・5%が8年目にゼロ、リンゴ17%が11年目にゼロ、ソーセージ10〜20%が6年目にゼロなどなどです。

食の安全が脅かされる
遺伝子組み換え作物の輸入拡大


 政府は「TPPで遺伝子組換え表示制度は変わらない」と述べていま すが、実際にはもうすでに表示されないまま大量に入っています。キリン、サントリー、アサヒ、サッポロ4社の発泡酒や新ジャンル(第3のビール)にもすでに遺伝子組換えトウモロコシ由来の原料(液糖)が使われるようになっています。
 サラダ油など食用油に遺伝子組換え作物が使用されていますが、日本ではこの表示義務がありません。
 米国で大問題となった非常に農薬耐性の強い遺伝子組換え作物(大豆、トウモロコシ、綿)も日本は2012年に輸入を承認しました。
 成長促進ホルモン剤ラクトパミンを食べさせた牛肉、豚肉はEU、ロシア、中国では使用も、輸入も禁止されていますが、日本ではすでに輸入が認められています。

企業が政府を訴えるISD条項

 新年早々カナダの企業がアメリカ政府を訴えました。カナダから米テキサス州に原油を運ぶパイプラインの建設をオバマ大統領が拒否したところ、カナダのトランスカナダ社が北米自由貿易協定のISD条項によって150億ドルの損害賠償請求をしました。オバマ大統領はこれを認めると石油消費量が増えて気候変動に悪影響があるとして昨年11月に却下したのです。
 ISD条項は社会的正義より投資家の利益を守る制度です。国民の生活や権利、環境保護などは裁定の基準にはならないのです。この裁定に不満があっても上訴できません。裁判官には企業寄りの国際弁護士が選ばれています。

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