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砂田喜昭 2015年9月9日更新  
TPP学習会
いまこそTPP交渉から撤退させよう!

  ハワイで開かれていたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)12カ国の閣僚会合で各国の利害が対立。「大枠合意」に至らず8月1日に決裂し、漂流する可能性が強まっています。 
 ところが日本政府やマスコミはもう一回閣僚会合をやれば「大枠合意」が近いと宣伝しています。
 農民運動富山県連合会小矢部班(班長・辻慶輝氏)は「いったいTPPはどうなっているのか」「今後どのような運動をすればTPPをつぶせるのか」を学びたいと、東京から農民運動全国連合会の笹渡義夫副会長を招いて、8月27日に小矢部市農村環境改善センターで学習会を開きました。
 30人を超す参加者は、日本のメディアが流す話と全く違う内容に驚きながら聞き入り、熱心に質問をして理解を深めました。笹渡氏の講演で明らかになったことを紹介します。

異常な安倍政権
本気で「大枠合意」めざしたのは日本ぐらい


  閣僚会合で本気で「大枠合意」めざしたのは日本ぐらいです。
 甘利TPP担当相はハワイ閣僚会合が決裂した8月1日、「残る課題は医薬品と乳製品だけ」と言い、ニュージーランドが「法外な要求をした」と非難しました。「8月末にもう1回閣僚会合を開けば決着できるというのが共通認識だ」と述べましたが、結局開く見通しが立たない状況です。
 安倍政権はこの閣僚会合で「大枠合意」ができると踏んで、その内容を農業団体や記者らに詳しく説明するために、重要5品目(米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物など)を担当する農水省の4部長を閣僚会合に派遣していました。8月1日の記者発表に準備されていた資料は100ページを超えるものだったそうです。自民党は「大枠合意」を受けて行う国内対策の説明をする準備もしていたそうです。

伝えられている安倍内閣の「譲歩」内容
 驚くべき公約、国会決議の裏切り


 [米] 関税を据え置く代わりに21・5万dの無税の特別輸入枠をアメリカが要求し、これに対して日本は7〜8万dの受け入れを表明した模様です。
 アメリカの輸入枠の10%程度をオーストラリアにも認めたようです。そうなればベトナムも同様な要求をする可能性があり、日本の米価がさらに暴落することになります。
 [牛肉] 現在38・5%の関税を一定期間かけて9%にするといわれています。
 [豚肉] 1`482円の関税(低価格帯)を一定期間かけて50円程度に下げる。
 [乳製品・小麦] 低関税・無税で輸入する枠を増やす。
 [自動車] アメリカが日本の自動車部品にかけている2・5%の関税廃止は事実上先送りし、撤廃は20年〜30年後か?。

 いずれも国会と国民に情報を開示させることが重要です。

「日本のマスコミが伝えない、深刻な対立点」が

*医薬品問題―アメリカは
  絶対に譲歩しない


 ガンやエイズ、糖尿病の治療に使われる生物製剤のデータ保護期間を、アメリカは12年以上、オーストラリアなどは5年を要求。日本が中間の8年という妥協案を示しましたが、合意することは非常に困難な事情があるそうです。
 オバマ政権には譲歩できない理由があります。「12年」はオバマ大統領の最大の遺産である健康保険法(オバマケア法)に明記されています。
 アメリカの法体系は国際協定(TPP協定)と国内法が矛盾する場合、国内法が優先するため譲歩すれば法律の修正が必要になります。
 一方、医療費の抑制を求めるオーストラリアの法律では特許の保護期間は5年と明記。妥協すると政権が持たないとみられています。

* 乳製品問題――
アメリカのダブルスタンダードに批判


 ニュージーランドは世界最強の乳製品輸出国です。ニュージーランドはもともとのTPP参加国で、TPPは関税ゼロが原則。乳製品については当然、市場開放を要求しています。アメリカは関税を撤廃せずに、ニュージーランドからの無税輸入枠拡大を受け入れる一方、米国からそれにみあう無税輸入枠をカナダと日本に認めさせようとしました。米国は輸入枠の「玉突き」で、自分の腹を少しも痛めません。
 ニュージーランドの「法外な要求」(甘利大臣)は、米国のダブルスタンダード・ご都合主義を衝いたものです。

* 国営企業問題――
マレーシアはマレー系企業優遇を譲れない一線


 マレーシア政府は、交渉で堅持している分野として、憲法と主権、政府調達、国有企業などの中核的政策を挙げました。マレーシアにとって譲れない一線が「ブミプトラ(土地の子)」政策で、これは国民の約65%を占めるマレー系を優遇するもので、公共事業の工事請負契約や政府調達などでマレー系の企業に優先的に受注させてきています。

情報開示と反対世論でTPPの漂流を 

 笹渡氏はTPPを漂流させるチャンスが生まれているいまこそ、秘密交渉の情報開示を求め、TPP反対の世論を広げ、つぶすためにがんばるときだと訴えました。

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