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砂田喜昭 2013年5月25日更新  
行政視察報告
下水道計画の見直し

 市議会産業建設常任委員会は5月15日から17日まで、下水道計画を見直した大分県由布市や、民間企業の力を結集して合併処理浄化槽の普及を図った福岡県香春町を視察しました。視察した内容を副市長や部課長に、20日に開かれた委員会で報告するという初めての試みもしました。

公共下水道を中止し、
 合併処理浄化槽方式に転換

       大分県由布市挟間(はざま)地区

 旧挟間町は2005年に合併して由布市となりましたが、それ以前の1996年から公共下水道計画に取り掛かり、1998年度までに汚水処理場用地2・3haを取得し、管路を約1キロメートル敷設しました。しかし、財政負担がたいへんで町として中止したいとして国、県と協議してきました。見直しのきっかけとなったのは、それまでの町長が「イケイケどんどん」と公共事業に積極的だったことへの批判から、選挙で新しい町長に変わったことでした。
 すでに5億6千万円の事業費を使い、国から2億円の補助を受けていましたので、中止となるとその返還が問題になりましたが、汚水処理場用地を公共の公園施設として活用することで、国、県との協議で返還無しで解決しました。
 町では公共下水道の工事手法の見直し、処理区域の再編など29パターンを検討しましたが、最終的には事業実施の場合に財政調整基金(町の貯金)残高がどのようになるかシミュレーションし、、浄化槽方式に落ち着きました。
 2010年度に住民説明会を開き、公共下水道中止は財政状況からやむを得ないことを理解してもらい、合併処理浄化槽方式への補助制度を取り入れることにしました。
 浄化槽の維持管理は個人で行い、法定検査は8割で受けており、町はまだ受けていない人への働きかけを続けているとのことでした。
 住宅団地には全戸をまとめた集中浄化槽が設置されていますが、下水道計画が中止となったことから、30年を経過した古い団地で集中浄化槽を更新する補助制度を作りました。

民間資金活用で、
 市町村設置型浄化槽方式を促進

     
福岡県香春(かわら)町

 福岡県香春町では、町の担当職員が3人体制で人員確保が難しいことから、民間企業に浄化槽工事着工までの事務(現地確認、見積もり、浄化槽設置届提出)と設置工事をしてもらい、完成した設備を町が買い上げ、維持管理は町が行うやり方を取り入れていました。こういうやり方を「民間資金を活用した公共施設整備(PFI)事業」といいます。
 事業者を公募し、地元業者中心で作ったグループが受注しました。町が買い取る価格は5人槽で、年間201基以上設置したら、1基当たり国の補助金満額の83万7千円です。年間50基から80基の設置で75万3千円、50基以下では73万5千円になります。業者はこのため営業活動に真剣に取り組むことになり、2004年度から2012年度までの9年間に累計1504基が設置されました。このうち単独浄化槽(トイレのみ)369基が合併処理浄化槽に転換されました。
 この事業者は設立時に出資金を募りましたが、事業実施から7年目でその出資金をすべて返還でき、利益も出ているそうです。

町は15億円の支払い
 小矢部市の下水道に比べ桁違いに少ない


 町は1504基を買い取るのに15億円を事業者に支払いました(1基約100万円)。
 一方小矢部市は公共下水道(特定環境下水道などを含む)に5226世帯接続して(2011年度現在)、工事費で209億円を費やしています(1世帯平均約400万円)。香春町では小矢部市の下水道工事に比べ桁違いに少なくて済んでいます。

維持管理に1億円
 使用料でほぼまかなえる


 受益者負担金は5人槽で8万円です。
 個人で既設置の浄化槽を町で維持管理してもらうために寄付したのは363基あり、町が管理しているのは全体で1867基です。使用料は5人槽で月4千円、町には年間全体で約1億円の料金収入があり、ほぼそれで清掃・点検などの維持管理費を支払うことができているそうです(消費税分が不足)。
 現在の普及率は64.6%だそうですが、これ以上の普及を図るには、生活保護世帯や高齢者のみの低所得者対策が必要とのことでした。文化的な生活を保障する責任が国にあるので、厚生労働省にこの問題の解決を働きかけているとのことでした。


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