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    砂田喜昭 2011年10月30日更新  
    「もんじゅ」を見学して
           市内 MY

     
    福井県で原発の一種、高速増殖炉「もんじゅ」を見学した方に記事を寄せてもらいしました。(編集部)

     去る10月5日から6日にかけて、福井県敦賀市で、福島第一原発災害の報告・学習会、そして「もんじゅ」見学の機会を得ました。
     若狭湾は、活断層の集中地帯。そこに15基の原発があり,まさに原発銀座です。若狭湾は、大津波に襲われる恐れがあることが最近の知見で明らかにされました。深刻なのは30q圏内に京阪神の水がめ、琵琶湖があることです。
     訪れた「FBRサイクル総合研修施設」(FBR;高速増殖炉)は敦賀半島北端の若狭湾に面した所にあります。ここにに入るには、あらかじめ届けてあった名前を証明するために、免許証や健康保険証等で身分確認があり、テロ対策が厳重に行われていました。先ず首から証明されたカードをぶら下げ、3D 画像の映写室で、レクチャーを受けました。FBRの必要性、「もんじゅ」のしくみと安全対策、ナトリウムの性質と安全対策等の説明です。

     高速増殖炉
     「もんじゅ」とは


     「もんじゅ」は、日本原子力研究開発機構(旧動燃)のナトリウム冷却高速中性子型増殖原型炉です。電気出力28万KW。燃料にプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX燃料)を使用し、使った以上のプルトニウムが得られる“夢の原子炉”といわれています。燃えないウラン238をまわりに置くと、核分裂で発生する「高速」の中性子の作用でプルトニウムに変わり、1・2倍に増殖。国は、「核燃料サイクル」の中核として位置付けています。
     しかし、 プルトニウムは非常に毒性や放射能が強く、熱を取り出す冷却材のナトリウムは、水や空気で激しく反応します。

    事故で14年間余 停止中
     維持費に
      一日5千5百万円も


     1995年12月ナトリウム漏れ火災が発生、以後14年5カ月間停止。昨年5月に再開しましたが、8月には、燃料交換時に燃料を仮置きする炉内中継装置3・3tが、炉内に落下し(今年6月24日引き抜き完了)、今年度実施予定だった「40%出力試験」を見送りました。
     「来年度の予算は、もんじゅの維持をしていくための予算だけとし、新しい研究開発は、1年休憩ということにしたい」(中川正春文科相9/27)と、215億円の予算を付けました。なんと維持管理に1日5500万円かかるのです。
     「核燃料サイクル」は、中核と位置づけた「もんじゅ」高速増殖炉がうまくいかなければ成り立たちません。失敗続きで、泥沼の袋小路に陥っています。欧米各国は、技術・経済的困難のため、次々と撤退しているのです。
     福島原発事故を受けて、これはもう中止以外あり得ません。

    停止中でも冷却剤・
    金属ナトリウムを循環


     「研修施設」から高台の「もんじゅ」構内全景を見渡せる場所へ行き、ここで模型をみながら説明を受けました。同行したみなさんのなかには、元原発労働者や、元火力発電で働いた労働者たちがいて、なかなかの専門的なやりとりがなされました。
     私の関心事は、防波堤のことや電源喪失時の対応などです。
     停止中といえども、冷却材の金属ナトリウムを循環させる必要があるのです。核のゴミ・死の灰対策などにいたっては、何の説明もありません。資料によれば、2050年までに150万KWの実用炉をめざすとなっています。発電ゼロでも研究開発費として、国民の税金は果てしなく投入されるのです。
     「原発安全神話」にたったエネルギー政策と決別することが、何よりの解決策といえます。

     

     永平寺も脱原発

     新聞報道によれば、「もんじゅ」と命名した曹洞宗大本山永平寺(福井県永平寺町)も、「脱原発」に舵を切りました。永平寺は11月2日、原発の是非を問うシンポジウム「いのちを慈しむ〜原発を選ばないという生き方」を開催するそうです。

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