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砂田喜昭 2011年7月14日更新  
どの教科書を使うか
原発事故に耐えられなかった「推進派」教科書


 来年度から、どの社の中学校教科書を使うか決定する時期が近づいています。その候補となる教科書が、6月17日より7月6日まで、岩尾滝の教育センターで展示されています。小矢部平和委員会でも調査研究に出かけました。



 いま国民の関心の的となっている原子力発電やエネルギー問題を中学校公民の教科書で調べてみます。
  「自由社」版では「原子力発電では安全性の高い技術を確立し、すでに全発電量の3分の1をまかなっています。」(172P)と、手放しで原発推進を示唆しています。「育鵬社」版を見ると、「原子力発電は地球温暖化の原因となる2酸化炭素をほとんど出さず、原料となるウランを繰り返し利用できる利点があります。そのため石油等の輸入にたよる日本では重要なエネルギー源となります。今後は安全性や放射性廃棄物の処理・処分に配慮しながら増大するエネルギー需要をまかなうものとして期待されています」(178〜9P)とされています。福島原発事故の後では、この記述の誤り(特に下線部を付したところ)は明らかです。
 ほかの五社のものを見ると「いったん事故が起きると重大な被害が発生することや、放射性廃棄物の処分に慎重な対応が必要なことなど、課題も残されています」(教育出版184〜5p)などと事実にもとづいて記述されており、原発事故後も差し支えのない記述となっています。
 「自由」、「育鵬」2社の教科書は、原発に関する記述を変更すれば、それでよし、というものではないようです。この2社は、「国家に守られて生活する私」という項の中の事例「市に原子力発電所の開発計画が持ち上がった!」(育鵬社版32〜3P)に象徴されるように、国策に従うことを強調する立場で一貫しています。どちらも、憲法9条を変え、主権在民の原則を薄めて天皇を頂点とする支配者の権限を大日本帝国憲法のように強めようとする立場です。歴史教科書では、大東亜戦争という言葉に執着し、その戦争が日本の侵略戦争であったことを否定しようとしています。
 このように、科学的事実を無視し、政府の主張を一方的に押し付けようとする教育が太平洋戦争を遂行した重要な要素だったことを反省し、教育基本法は、教育への不当な支配の排除をうたっていました。その原則に反した教科書が大震災の試練に耐えられなかったのは、当然かもしれません。
 小矢部平和委員会では、このような教科書では子どもたちに本当の生きる力を育むことができないとして、「自由」「育鵬」2社の教科書を小矢部の子どもたちに採用しないでください、という意見書を市教委に出すことにしました。
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