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シンポジウム
並行在来線を考える
「富山県の並行在来線基本方針(素案)を考える」をテーマにしたシンポジウムが6月5日、富山市で開かれました。主催は、市民らがつくる北陸線・ローカル線の存続と公共交通をよくする富山の会(連絡先・富山高等専門学校射水キャンパス・岡本研究室内)です。富山県が北陸線をJR経営から切り離し、県独自の運営会社にする方向を打ちだしたことに対して、5名の方がそれぞれの立場から報告しました。
「政府与党申し合わせ」の
根本的見直しを
県の並行在来線基本方針(素案)の問題点について、奥村義雄富山大学名誉教授は、1990年の「政府与党申し合わせ」を前提に並行在来線をJRから切り離すこと自身を見直すべきだと強調しました。これはJRの収支を優先させた政治決着で、鉄道事業法(資料参照)など法律に基づくものではなく、JRには民営化時に国有財産を簿価という捨て値で取得した責任があり、この「申し合わせ」の根本的な見直しを求めることが重要だと述べました。そうしないとこれから人口減少社会を迎えるから、並行在来線を維持できなくなると指摘しました。
資料 鉄道事業法・抜粋
(青色・引用者)
(目的)
第一条 この法律は、鉄道事業等の運営を適正かつ合理的なものとすることにより、輸送の安全を確保し、鉄道等の利用者の利益を保護するとともに、鉄道事業等の健全な発達を図り、もつて公共の福祉を増進することを目的とする。
(乗継円滑化措置等)
第二十二条の二 鉄道事業者は、利用者の利便の増進を図るため、他の運送事業者その他の関係者と相互に協力して、連絡運輸、直通運輸その他の他の運送事業者の運送との間の旅客の乗継ぎ又は貨物の引継ぎを円滑に行うための国土交通省令で定める措置を講ずるよう努めなければならない。
県境分離で
利用者が不便に
「県境分離で特急列車は、運賃や運行はどうなるのか」の報告をした岡本勝規富山高等専門学校教員は、「特急列車の並行在来線への乗り入れは、全国の先進例からみると過去には夜行列車の例があっただけだが、JRははたして和倉温泉へ特急電車を乗り入れないのだろうか(金沢・津幡間は並行在来線)」「早朝のサンダーバード(富山発4時台)がなくなるとしたらそれに変わる新幹線をJRは走らせるのか」と疑問を述べ、県内乗り入れの必要性を強調しました。利用者の利便性を維持するためには、県境分離による運賃値上げも懸念され、北陸線の一体的な運行の重要性を訴えました。
重要な貨物輸送
国とJRの
支援が不可欠
JR貨物社員の太田茂雄氏は、北陸線を通る貨物列車は一日上下42本(他に普通列車78本、特急・急行列車98本)で、輸送する鉄道貨物は年間約300万トン、一日あたり約8300トン、10トントラックで毎日830台分になることを紹介。東日本大震災で東北線が不通となったなか、北陸線がその迂回ルートとして重要な役割を果たしました。
北陸線が第三セクター化されると、「列車遅延が発生すれば、新幹線やJR在来線との接続、終着駅から先の接続がはかられるのかどうか、あわせて貨物列車の運行整理が適切に行われなければ輸送力が確保できない。このことから北陸線は、各県ごとに区切るのでなく一定線区の運行を統一して、総合的に管理することが適している」と強調しました。太田氏はまとめとして「安心・安全で利便性が高く持続していける北陸線にするには、国とJRの支援や協力が必要。そのために法改正も視野に」と訴えました。
このほか増川利博富山高教組委員長は高校生の通学の面から、武山良三富山大学芸術文化部教授はまちの魅力をどうつくるかを報告しました。
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