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砂田喜昭 2009年5月11日更新  
儲け本位の農外企業に
農地を委ねるわけにはいかない

農地法「改正」案に反対

 いま国会で農地法等の「改正」案が審議されています。最大の問題が、戦後の農地改革で打ち立てられた“農地は耕作者のもの”という大原則を解体し、農外企業や外国資本にも農地の50年にも及ぶ賃貸借を認めようというのです。標準小作料(いまは各地の農業委員会が地域の実態に応じて農地の賃借料の標準を決めている)を撤廃し、大企業が高い小作料で農地を借りまくることも可能にします。
 日本共産党は、この法案が、家族経営中心の農業を解体し、食料自給率向上や環境保全などに重大な障害を持ち込むものとして、強く反対し、撤廃を求めます。(日本共産党国会議員団の見解、4月21日発表。全文は日本共産党中央委員会のホームページに。)
 農地法『改正』案は、農家や地域に何をもたらすのか考えてみます。


農地法「改正」案は、賃借自由化法案


農地の悪用規制難しい


 農地を借りたあと、産業廃棄物の埋め立てをする例が、これまでもあとを絶ちません。

名目は、トマト栽培地
実際は、産廃埋め立て地


 名目はトマト栽培地として借りながら、実際にやったことは産業廃棄物と建設残土の盛り上げというところもあります(茨城県古河市)。ほうれん草栽培の畑にする名目で建設残土を捨てた水田もあります。周辺地域では地下水源の汚染が心配されます。

許可した農業委員会が
非難の矢面に立たされる

 
 この「改正」案では、企業でも個人でも「農地を適正に利用」との形式さえ整えば、そこに住んでいなくても原則自由に農地を借りることができます。農業委員会は書類が整っていると、外資系を含めてどんな企業でも、許可しないわけにはいかなくなります。農地として「適正に」利用されていないことが後でわかっても、それを復旧する保障はなく、解決には多大な時間とコストがかかります。
 農業委員会には、農地の利用状況を調査し「適正」か、どうか判断し、必要な措置をとる責任が課せられています。不適正な利用があれば、許可した農業委員会が非難の矢面に立たされることも起きるでしょう。

賃借50年 
所有権の自由化に連動するのは必至


 政府は、今回自由化するのは、農地の賃借だけで、所有権については「農作業に常時従事するもの」以外には許可しないとしています。しかし、賃借期間が50年まで認められます。孫やひ孫の代になって、それからもう一度農業をやろうということになるでしょうか。所有権の自由化に連動するのは必至です。
 
企業経営で農業振興なるか

 政府は耕作放棄地の広がりを口実に、企業に農地利用を広げると、耕作放棄が解消するかのようにいいます。
 しかし、実際はどうでしょうか。

農外企業 
赤字が63%


 農外法人・企業で農業に参入したもののうち、黒字は11%、63%が赤字です(全国農業会議所調査、2008年8月)。

ユニクロ、オムロン、JT
農業から撤退


 ユニクロは2002年11月、インターネットで生鮮野菜を販売しようとしたが、わずか2年足らずで9億3千万円の赤字を抱え、撤退しました。
 オムロンは北海道千歳市に日本最大の硝子温室を建てて高糖度のトマトの大量生産、販売事業に参入、農業の工業化を掲げたが、失敗し、3年程で撤退しました。
 JT(日本たばこ産業)も農家との契約栽培で、自社の種や苗を農家に販売し、できた野菜をスーパーと取引するというビジネスに参入したが、輸入野菜の増加などで結局2003年に撤退しました。
 もうけ本位の農外資本は、利益が出ないとなると、さっさと撤退してしまいます。


企業参入は、
もうけの見込める施設園芸に


 企業参入の多くは、施設園芸など「もうけの見込める分野」であり、環境保全の役割が大きいのに収益性の低い水田や畑作では少ないのが現状です。

地域の協働が壊される

水田や畑作は、集落営農など地域の農家の協働でどうにか維持されているのが現状です。不在地主や農外企業による農地の賃借で、地域の協働が壊されることも懸念されます。認定農家、集落営農にとっても、地域で優良農地の取り合いなど、競合が起きます。

自民党農政の転換こそ必要

農地まで財界、アメリカのかってにさせるな


 企業経営だから農業でも利益が上がるというのは幻想にすぎません。輸入自由化や価格暴落の野放し、減反押しつけなど歴代の自民党農政のもとでは、もうけを追求する企業でも赤字がさけられません。
 これまでずっと農地所有の自由化を求めてきたのは、日経連、経団連など財界でした。アメリカの証券大手幹部も農地の自由売買を求めています。そのねらいは、農業の振興より、もうけのための企業参入自由化、農地の資産化・不動産信託、環境破壊に直結する産業廃棄物処分場への利用だといわねばなりません。

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