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砂田喜昭2009年3月17日更新  
さらば『構造改革』 

自治と公共性の復権をもとめて
  
ー 自治体政策セミナーに参加してー 
            
市議会議員 砂 田 喜 昭

 「さらば『構造改革』 自治と公共性の復権をもとめて」をテーマに第34回自治体政策セミナー(主催・自治体問題研究所)が2月13日から15日に、兵庫県姫路市で開かれ、私も参加しました。指定管理者制度についての専科があり、それを学びたかったからです。全国のいろいろな経験を聞くことができて、有意義なセミナーでした。

 今年で34回目のセミナーですが、私は初参加でした。姫路で開かれるから、姫路城を訪ねることができるかもという期待もありました。セミナー初日に司会者は「姫路城は戦争をしたことのない城だ」と平和と民主主義をモットーとする自治体問題研究所らしい、開会の挨拶をされました。

 記念講演は二宮厚美神戸大学発達科学部教授が「新自由主義的構造改革の破局と自治体における決着」と題して行いました。「小さな政府」「規制緩和で市場にまかせればうまくいく」。これまで政府やマスコミからそのように宣伝されてたが、結果はごらんの通り大不況に襲われてしまいました。二宮教授は、この本質は過剰生産だと、ずばりと指摘しました。アメリカでの自動車の販売台数が2007年には1600万台だったものが今年1月の予想では年間800万台へと半減。あっという間にこういう事態が起きたのは貧富の格差が拡大していたアメリカでサブプライムローンなどという返済能力の乏しい人々にもお金を貸し付けて自動車を売っていたバブルがはじけたからです。具体的な事実を上げて話されるので、たいへん説得力がありました。(二宮教授の著書「新自由主義の破局と決着 格差社会から21世紀恐慌へ」が新日本出版社から発売されます。)

 この解決には格差社会の是正が必要であり、税や国債を買わせることで大企業の内部留保、過剰資金を吸い上げ、年金や派遣切りされた人々、農業、中小企業にまわし、内需を活発にしていくことです。

 「100年に1回の危機、解決の見通しは」との質問に答えた二宮教授の話は特に印象に残りました。「戦いに勝利できると思ったときだけたたかっていたら、人間の歴史は今とは大きく異なっていただろう」というカール・マルクスの140年前の言葉を紹介されました。これはフランスのパリ・コミューンに関しての言葉だそうです。勝利の見通しが立つまで待つのではなく、今日の危機に対して、政治、経済を切り替えるために、問題解決の課題をはっきりさせたら、それに向かって全力を尽くす、後は結果を待とうというのです。この言葉に私は励まされました。

 
2日目以後の内容を、以下に追加する。

なお、セミナー修了後、姫路城を見学しました。写真は、ブログで。
http://06996341.at.webry.info/200902/article_5.html

専科 指定管理者とPFI
官製ワーキングプアをつくる


 2日目は指定管理者についての専科です。城塚健之弁護士の講義は、官製ワーキングプアをつくり出す制度だと、その本質を指摘されました。(著書 官製ワーキングプアを生んだ公共サービス改革 1995円 自治体研究社)

問題点を3つ

 城塚氏はなにが問題になるかと、3点指摘されましたが、それぞれ、小矢部市での指定管理を検証する上で参考になりました。
 @営利主義に陥り、儲からないと民間企業が迅速な撤退をする。信じられないことですが、全国には指定後1年で撤退する無責任な事例があるとのことです。引き受ける民間企業が、多国籍企業か、地元資本かでたいへん様子が違うようです。
 A官製ワーキングプア多用によるサービスレベルの低下が避けられない。3ないし5年ごとに競争で指定管理者を決めるため、コスト削減が強いられ、人件費がその標的になる。
 B自治体が無責任になる。民間の手に委ねた途端、責任は終わったと思う傾向がある。

軌道修正の動き
図書館、公民館について


 これに対して軌道修正の動きがあることも、わかりました。図書館や公民館への指定管理導入の動きに関連して、渡海文部科学大臣の答弁や国会での付帯決議、総務省の通知がそれです。参考のため、紹介しておきます。
同委員会付帯決議(2008年6月3日)
 「公民館、図書館及び博物館等の社会教育施設における人材確保及びそのあり方について検討するとともに、社会教育施設の利便性向上を図るため、指定管理者制度の導入による弊害についても十分配慮して、適切な管理運営体制の構築をめざすこと」
総務省「平成20年度地方財政の運営について」(平成20年6月6日総財財第33号)
 ア 指定管理者の選対の際の基準設定にあたっては、公共サービスの水準の確保という観点が重要であること。
 イ 指定管理者の適切な評価を行うにあたっては、当該施設の態様に応じ、公共サービスについての専門的知見を有する外部有識者等の視点を導入することが重要であること。
 ウ 指定管理者との協定等には、施設の種別に応じた必要な体制に関する事項、リスク分担に関する事項、損害賠償責任保険等の加入に関する事項等の具体的事項をあらかじめ盛り込むことが望ましいこと。また、
委託料については、適切な積算にもとづくものであること。

指定管理者に取り組む4つの留意点

 城塚氏は、今後、指定管理者制度を取り組む場合の留意点を4点指摘されましたが、いずれも納得のいくことばかりでした。一部紹介します。
 @ やっぱり指摘管理者はよくない(継続性の切断、つまり3年ないし5年という有期契約。ワーキングプア)
 A 公募はよくない
  公募・競争入札が価格競争になるのは必然。市場原理は公共性を担保しない。
  行政と業者の癒着があるから、これを断つために公募が必要となるが、そもそも行政と業者が癒着することが問題だ。
  行政に業者を見極める能力があるかどうか。専門家がいないと業者のウソ、ごまかしに騙される。
 B 公募するなら公共性の担保が必要
   雇用の維持、適切な賃金(積算)
    千代田区 指定管理者の労働環境も点検 2008.10.25 日経新聞
    「従業員の健康管理の実施状況や労働時間なども点検する」
 C これらを深めるために、住民との情報の共有、公論、つまり議論して決めていくことが大事だ。
 これに関連して、「住民訴訟を民主主義と考えるのは間違い」という城塚氏の指摘は衝撃でした。ちょっと紹介します。
 「住民訴訟は一人でも『市民』を名乗って訴えることができる。これは権力をチェックするシステムで、公論の場ではない。
 枚方市で『枚方市民オンブズ・パーソン』を名乗る1人の市民が『非常勤職員に一時金、退職金を支払うのは違法』『地方自治法に報酬と書いてあるのに、手当てを支給するのは違法』と主張し、裁判になった。『市民』名乗っての暴走としかいいようがない。
 裁判では、職業として従事しているものに手当を支払うのは適法。しかし、条例に基づかず、規則で支払うのは違法とされた。
 非常勤職員は一時金を正職員の40%、退職金も13%。非常勤職員から市は取り戻せという、とんでもない弱いものいじめ。」というものです。
 同じオンブズでも、小矢部市のオンブズは県知事の退職金を返せとたたかった。権力者に立ち向かうのと弱いものいじめをするのとでは全然違うと思いました。

PFI
行政サービスを自治体が民間からローンで購入する仕組み


 城塚氏はPFIについても、スバリと本質を指摘された。行政が民間企業から建設工事と維持・運営サービスを、たとえば15年間の割賦で購入したと考えればよいというのです。病院建設にPFIがよく利用されているようですが、資金調達に限ると自治体自身が起債するより高くつくようです。契約内容によって、PFIを使う範囲に建設まで含めるか、一部サービスのみをPFIを活用するかが決まりますが、いずれにしても行政サービスを自治体がローンで購入する仕組みだと考えると、わかりやすい。
 小矢部市はまだPFIを取り入れていないが、今後ともこの本質を踏まえた対応が求められると思いました。

「コウノトリ育む農法」
兵庫県豊岡市のとりくみ


 3日目は「コウノトリ育む農法」について、兵庫県豊岡市で農業改良普及センター職員の西村いつき氏の講演があった。コウノトリのえさは蛙や蛇などの動物で、農薬でえさが少なくなって次第にいなくなったのですが、兵庫県はコウノトリを絶滅から救い、その繁殖と自然へ返す取り組みを、県の施策として行っています。
 無農薬農法は、これまで個人の熱意と努力で、全国あちこちで取り組まれていますが、集落営農組織として、地域ぐるみで取り組まれていることがここの特徴です。県の農業改良普及センターが一つ一つデータを集め、農家を説得してここまで持ってきました。農家の長老は「コウノトリは害鳥だ、せっかく植えた苗を踏みつぶしてダメにする」と猛反対したそうですが、県職員はコウノトリの一日をずっと観察して、一日に7000歩歩く、踏みつぶした苗は17本で、その後13本はちゃんと生育したと、データを示して、農家に納得してもらったという話には、びっくりし、そこまでやるのかと驚きました。
 「コウノトリ育む農法」がブランド化し、国内だけでなく、世界中から視察に訪れているそうで、英文のパンフも資料としてもらいました。このブランド力を活かして、米価を自分たちで決めて販売していることに感心しました。生産費所得補償方式で価格を決め、高くても順調に売れているそうです。
 また、水稲→菜種→大豆という2年3毛作で、大豆も関西大豆協会との契約栽培で、1キロ360円という再生産可能な価格を実現しているそうです。
 会場から「コウノトリ農法はどこでもできるか」との質問に、福井や山口でも取り組みが始まっており、どこでもできると、西村氏は強調されました。

 すべての日程が終了し、帰りの電車時間まで、参加者の中から希望した20数名で、姫路城を見学して、これもたいへん良い経験でした。

 その他、たくさんのことを学びましたが、今後の議会活動の中で行かしていきたいと思います。



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