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砂田喜昭 2007年11月17日更新  
憲法施行61周年
これからの日本の座標軸
財界人 品川正治さん 憲法9条の大切さ説く
経済同友会終身幹事が語る

医療や福祉、環境は市場まかせにできない
 

 11月3日、62年前に日本国憲法が公布された記念日に、「憲法九条の会inとやま」など憲法擁護の諸団体が富山市内で講演会を開きました。
 講師の品川正治さんは日本興亜損保(旧日本火災)社長、会長、相談役を長く勤められ、経済同友会副代表幹事、専務理事を勤められた財界人で、現在も経済同友会終身幹事であり国際開発センター会長を勤めておられます。「これからの日本の座標軸〜財界人の直言」と題して諄々と憲法九条の大切さを説きました。


 戦争を起こすのも人間
 戦争を止めるのも人間
   自分はどっち?


 品川さんは、旧制高校在学中、1944年12月に召集され、すぐに中国北部の最前線へ投入されました。1240高地争奪の激しい戦闘の中で負傷し、補給がたたれ、飢え、捕虜になり、ようやく1946年5月に引き揚げてきました。「上陸待機中の引き揚げ船の中に日本国憲法案が載った新聞が持ちこまれ、憲法9条を見ました。あのときの驚きは忘れません。みんな『これなら生きてゆける』と涙を流しました」。
 品川さんは学生時代から哲学者カントが好きで、「国民の一人として」どう生きるか、と真剣に考えていました。しかし憲法案を見て、己を問いました。「自分は、浅はかにも、国を中心に『国家対国民』という論立てをしていた、憲法案のように、なぜ人間を中心に考えられなかったのか」と。「戦争を起こすのも人間なら、戦争を止めようとするのも人間だ、お前はどっちなんだ」と。戦争体験をくぐってたどり着いた品川さんの座標軸でした。

 戦争中のアメリカと
 憲法9条の日本とは
 価値観が違う


 戦争は価値観の転倒をもたらします。「勝つため」がすべてに優先し、自由・人権・人命が軽んじられます。経済力、労働力だけでなく科学、文化などすべてを動員します。通常は三権分立の国家でも戦争となれば権力は戦争指導部に一極集中されます。近頃は日米首脳会談になると「価値観を同じくする」という声明が発表されますが、日本とアメリカは価値観がおなじなどということは絶対にありません。アメリカは戦争中の国です。日本は先の戦争を反省し、憲法九条を持つ国です。

 日本の経済人とも
 価値観が違う
 アメリカの市場原理主義


 経済の世界でも価値観は違うのです。戦後の廃墟から世界第2位の生産力を持つ国に仕上げてきた日本の経済人の考え方は「修正資本主義」で、アメリカのような市場原理主義一本槍ではありません。少なくとも、医療や福祉、環境問題は人間が努力して保持すべきものであり、市場任せにできる問題ではない、と考えてきました。「経済が成長すれば、成果は国民に分け与える。資本の利益だけのためには仕事をしない」と頑張ってきました。
 それが小泉構造改革の中で、市場原理主義へと大転換させられたのです。「市場」と言ってもこの「市場」は、ものを売買する市場ではなく、資本が「収益率」をめぐって一刻一秒を争い、世界中を大移動する「資本」の「市場」のことです。ここでは雇用破壊であれ、格差拡大であれ、戦争であれ、すべてがゆるされ、利益率引き上げ競争に血道を挙げます。「そういう価値観は、GNP世界第2位を導いた日本の経済人は持ってこなかった。社長の給料もせいぜい社員の給料の7〜8倍だった」。
 小泉政権を通して「市場原理主義」という価値観を押し付けたアメリカが、安倍政権を通じて、戦争で国際紛争を解決する価値観を実現しようと期待しました。このような「価値観の共有」に対して国民は、今度の参議院選挙で初めて主権を発動し、ノーと言ったのだと思います。安倍政権はつぶれたが、自民党は憲法改正を綱領に掲げる党ですから、「憲法改正は止めました」というまでは、安心はできません。

日本国民の力で
世界史まで
変えることができる


 「もし国民投票となり、国民が『ノー』といい切って『価値観の共有』を拒否すれば、日本が変わるとともにアジアもアメリカも変わります。日本国民の力で世界史まで変えることができます。国民の本当の出番のときに出くわしたことをほんとに幸せと思います」。
 経済界にあって、市場原理主義はおかしいぞ、国の価値観はちがうぞ、と言い切る品川さんは、経済界でも孤立しているわけではない、たとえば「損保九条の会」がある、ということです。
 「草の根の運動で自分たちも日本の座標軸をまもる力になろう」と品川さんに熱い拍手が送られました。(H。文責、編集部)

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