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砂田喜昭 2007年11月9日更新  
2007グリーンウェーブシンポジウム から
地域農業の継続 と 食の「安全・安心」を考える

 国民の食糧と健康を守る富山県連合会が主催した2007グリーンウェーブシンポジウム(写真)が11月3日、砺波市で開かれ、日本の食糧を自給できる政策への転換が必要だと話し合われました。
 報告者は全農元専務で農業農協問題研究所の岡阿弥靖正氏、砺波市高波でみずほ農場株式会社を経営する笹嶋賢一氏、COOPとやま副理事長の村瀬むつ子氏でした。


米価下落
  大規模農家を直撃


 岡阿弥氏は農業を巡る情勢について報告しました。

 生産者米価が下落し、政府の言うとおり規模拡大した担い手農家、集落営農ほど大きな打撃を受けています。「二階へ上げて梯子を外した」ようなもので、政府が価格維持装置(@生産調整、A国家備蓄、B民間での調整保管)を機能させなくしたからです。
 これは政府の失策というより、狙ったとおりになったのです。自民党の構造改革路線は、「一言で言えば競争社会をつくること、弱いものは去り、強いものが残ること」(竹中平蔵)です。アメリカや日本では、富めるものはもっと富む仕組みはどんどんつくられたが、貧しいものが脱するシステムは切り下げられてきています。
 岡阿弥氏はこの路線の転換こそ必要で、食糧自給率の向上(麦、大豆、飼料作物等の増産支援)、水田営農の安定(基準になる米価を維持し、これに担い手へ加算する)を訴えました。
 「食糧自給できない国を想像できるか。それは国際的な圧力と危険にさらされている国だ」。これは誰の言葉だと思いますか。アメリカ・ブッシュ大統領です。岡阿弥氏はこれを紹介し、アメリカに馬鹿にされない国になる必要があると強調しました。

価格維持がカギ
 農業法人の経験から


 笹嶋氏は17年前から法人として規模拡大、多角経営に取り組んできた経験を報告しました。

 水稲に加えて、売り上げの半分を占める大豆、ネギ、トマトを販売しています。
 ネギやトマトなどは、天候によって生産量が左右されるので、価格まで変動したら、経営できるわけがないと、スーパーと年間価格を協定して生産しています。
 「最近、県から多角経営のモデルだと言われて、視察が相次いでいるが、みんなでつくったら安くなって作り続けられない。里芋を止めたのはそのためだ。」
 「直まきを3分の1取り入れ、コストを10aあたり10万円まで下げても、今年は赤字か黒字かわからない」と述べ、「主食の米を市場の需給任せにしていて良いのか」と強調しました。

消費者と生産者が
     力合わせて

生活協同組合運動から


 村瀬氏は、先日放映されたNHKのテレビ番組が消費者と農家との対立を煽っていたと批判し、自給率を45%まで引き上げるにはどうするかということが大事だと強調しました。
 組合員の中から「金持ちしか安全・安心な食べ物を食べられないのですか」との問いかけがあると紹介し、「輸入牛肉の全頭検査をひきつづき要求している」と述べました。

農業の展望は?

 小矢部市からの参加者は、「中山間地で農業への展望が見えない。自分か、農業機械が壊れれば、米づくりは終わりだと思っている。野菜の直販店もやっているが、値段が下がる一方で、もがいているだけだ」「展望が示せないか」との発言がありました。

生産を保障する政策こそ必要

 岡阿弥氏は「つくる基盤を保障する政策がないと展望は生まれない。これまでの農政は、規模拡大を勧め、拡大したら、輸入自由化、これを繰り返してきた。果樹栽培とオレンジの自由化、畜産の奨励と牛肉の自由化・・・。ブッシュ大統領が言うように、自給できない国は国ではない。これを変えることが必要ではないか」と語りました。


 最後に、コーディネーターの水越久男氏(富山県農民連書記長)が「NHKのテレビ番組は、なぜ自給率が下がったかというつっこみがなかった。政府・財界の圧力の結果、農業だけでなく、国民生活が破壊されている。この政策転換を求める運動が大事だ。農家が生きていける米価が必要だ。国民の世論をつくる取り組みを大切にしていこう」とまとめました。


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