バナー2006年8月20日号 小矢部市議会議員 砂田喜昭 
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前知事退職金 返還訴訟

「市民オンブズ小矢部」が控訴へ


 「市民オンブズ小矢部」が中沖前知事への退職金は違法に支払われたとして返還を求めた訴訟で、富山地方裁判所(佐藤真弘裁判長)は原告の訴えを認めませんでした。「市民オンブズ小矢部」は8月8日の定例会で、この判決を不服として控訴することを決めました。そして各種団体に呼びかけて署名運動に取り組むこと、知事、市長退職金が庶民感覚からみて異常に高額なことを訴え、是正を目指すことも確認しました。
 原告の一人である美谷克美氏が、スミヤキスト通信ブログ版でこの判決を批判しています。美谷氏の許可を得てその一部を転載します。  (見出しは編集部)


お粗末判決

 8月2日(水)午後1時10分、待ちに待った(笑)富山地裁判決である。原告3人に、市民オンブズ小矢部の他のメンバーも2人加わって地裁まで出かける。
 判決は主文だけを読み上げるまことにあっけないもので、その間わずか30秒もかからないほど。「主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。2 訴訟費用は原告らの負担とする。」とまあ、これだけ。

議会の議決だけで退職金支給

地方自治法にいう給与条例主義に適合しているか


 判決文は、ひとことで言って「お粗末」である。争点は、中沖前知事の退職金を支給するに際して、富山県職員退職手当条例15条にもとづいて議会の議決によることが、地方自治法204条にいう給与条例主義に適合しているか否か、ということに尽きる。判決は、そのことを「(争点1)」として取り上げてはいる。したがって、問題の核心はここにあることを認識してはいるのである。
 しかしながら判決は、この争点の内容をすこしずつずらしてゆく。つまり、給与条例主義の趣旨が、@職員に対して給与を権利として保障すること。A給与の決定を住民の代表たる議会による条例制定を通じて民主的にコントロールすること。と置き換え、「本件条例15条は,議会がその議決により知事に対する退職手当の額を定めることによって,その額の決定について,直接議会のコントロールを及ばすものであり,しかも,議会が条例を制定する場合の議決方法と条例で議会の議決事項とした場合の議決方法に区別がないことからすれば,実質的には給与条例主義の上記趣旨に直ちに反するものということはできない。」(判決文)というのである。
 つまり、条例も議会の過半数の賛成で成立する(同じ議決方法による)のだから、単独の議決も効力は条例と同じだ、というのである。ここにある「直ちに反するものということはできない」という語にご注意いただきたい。いわば、「完璧とは言えないけれどもまあ、6,7割の妥当性はある」という意味であろう。

議会の議決だけでは、 事前に退職手当額を 住民は知り得ない

それでも民主的コントロールが及ぶというのか


 そうしておいて、次に、「もっとも,条例については,条例が公布されることにより,退職手当の額が住民に了知され得る状態に置かれ住民の条例改廃請求(法74条)により,その内容を修正する余地があるのに対し,議会の議決による場合には,議案が議会に提出される前の段階でその議案の内容(退職手当の額)を住民が了知することはできないことになる。」(判決文)と、一応は議決と条例の差異を無視するのではないとことさら念押しした上で、「しかし,議会の議員は住民の選挙により選出された住民の代表者であることからすれば,民主的なコントロールのもとで退職手当の額を決定しているものといえるのであって,上記差異をもって,条例により定める場合の方が,議会の議決による場合より民主的なコントロールが及ぶものとまではいいきれない.したがって,本件条例15条は給与条例主義の趣旨を没却するものではない。」
 議決によるからといって、民主的なコントロールという点では条例に劣る「とまではいいきれない」と述べている。つまり、ここにおいても、完璧ではないが、まあ6,7割の妥当性はある、というわけである。(ちなみに、こういう曖昧な表現で条例と議決の境界をわざとぼかすことは、裁判所としては、法の命ともいうべき「法治主義」に関して、致命的なごまかしをしていることである。そこまでして行政を庇う意志を示したということである。司法の劣化の一証左というべきであろう。)(中略)

2億3500万円の退職金

不当に高額でないというのか


 (裁判所はこうして)ともかく、その手続きと内容を検討して、「本件退職手当の額を決定した手続,その内容等に鑑みても,社会通念上許容し得る限度を超えて著しく不当に高額とまではいえないから,結局,本件退職手当の支給が違法であるということはできない。」(判決文)と結論づけるのである。
 お笑いなのは、最後に、われわれが、議決と条例の本質的差異として挙げた、条例なら改廃請求の対象になるし、選挙などで争点として争うことができるが、議決ではそれができない、と論じたことに対して、「原告らが主張するとおり,住民の条例改廃請求権の行使等を重視するとしても,住民は,議会の議決する額とすることができるという本件条例に対しても,条例改廃請求を行うなどしてその意思を反映させることができたものというべきである。」(判決文)と、お説教までたれているのである。そんなことはまさしく余計なお世話なのであって、裁判所は、提訴された「争点」のみに関して虚心に、法律と裁判官の良心にのみ基づいて判断すればいいのである。(後略)


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