バナー2006年1月13日号
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貧困を少なくする運動の規模拡大を図る上海会議への開会のあいさつ
    2004年5月25日
   世界銀行総裁ジェームズ オルフェンソン

 これは、日本共産党不破哲三議長が昨年暮れ、中国共産党との理論交流会談の報告会で紹介していた世界銀行総裁の挨拶の一部を、私の知人に翻訳してもらったものです。


 主席、首相をはじめ、       来賓各位
 ちょうど2年前、私はここ上海で、貧困に関するわれわれの努力を引き上げる問題についての会議をここ上海で開催する可能性を、友人の皆さん方と協議しました。その会議は地味なものになるだろう、この問題に関心のある専門家と人民のための会議となるだろう、と私は考えました。
 それで、今日ここにものすごい数の皆さんがいらっしゃったのを見て、非常に驚いていますとともに、ホスト役をしていただいている上海市や、中国政府や財政当局へのものすごい信頼感を覚えるのであります。私はその方々の努力と暖かい受け入れの気持ちに大きな感謝を表明したいと思います。
 私たちが上海を選んだことは驚くべきことではなかったと思います。この町はこの国の歴史上注目すべき地方であり、今日では、科学工業、企業家精神および信頼できる統治の中心地の代表的なものであるからです。そして私は、Deng Xiaopingが1992年に、上海が揚子江流域経済および中国の全局面を変えたようだから、経済開発中ずっと上海が注目されてしかるべきだった、と述べたことを思い出しています。
 この町がこの地域のみならず中国の世界的なイメージをどんなに大きく変えたかを知るために、この建物からちょっと出てもらうだけでいいと考えています。さて、これから2日間の討論の主題に話を進めるところに来ました。しかし、まず、主席が今日述べた経済開発計画に対する財政的精神的な貢献をさらに追加すると述べたことに対して感謝申し上げる。
 彼は、平和と安定なくしては、私たちが貧困を軽減する可能性はないと述べました。それでも、私は私たちがこの会議で協議しようとしていることのひとつは彼の提起の反対物(つまり戦争と紛争の問題だ)と思います。貧困を軽減しないで、平和と安定の可能性はありません。したがってこの会議の目的は、私たちが共同して出来ることが何であるかを、、南と北の代表、諸大臣、市民団体の代表、個人参加者などここにいらっしゃるすべての人に語りかけて、若い世代の人々に、安全で安心な活気に満ちていてしかも安定的な世界を手渡せるよう努力することです。
 これこそ私たちの協議の核心にあるものです。私たちはまず第一に60億人の人口を持つこの世界で、10億人が世界の所得の80パーセントを持ち、残り50億人が20パーセント以下の収入を分け合っていることを認識することから始めましょう。これから25年後には20億人の人間がこの地球上に現れ、しかも5千万人以外は経済発展途上国に生まれ、その結果、地球は、2025年には、80億の人間のうち70億の人間が発展途上国に住んでおり、2050年までには、90億のうち80億人が発展途上国に住んでいる星となるだろう、というという説をまず問題にしましょう。
 私は、私も出席したエヴィアン・サミットのことを覚えています。ルラ大統領が入室して、典型的な目立たない語り口で,G8の首脳たちと同席することを誇りとすると、述べた。しかしたぶん、地球上の60億のうち50億を代表していたのだから、次の年の中国のHu大統領やインドのバジパイ首相や彼の後に続く人たち、ナイジェリア大統領や南アフリカの首相継者たちそしてルラ自身こそがG8であるべきだった。
 そして彼ルラ大統領はわれわれの世界で必要とされているこの新しいバランスを指摘した。彼は、今日世界には、バランスを欠くことが生じており、ミレニアム発展計画で確認されている貧困の挑戦に我々はいま直面している、と指摘した。また彼は、若者の問題も解決を迫られている「挑戦」だと、そのとき語ったし、もっと最近も語っている。現在28億の人が24歳以下であり、10億5千万が15歳以下であり、さらに、これから20年ないし25年後には20億人以上がさらにこの地球上に生まれでてくる、つまり約世界人口の半分を占めている若者の問題についてだ。
 若者問題解決の難問、ジェンダー問題の難問、女性の権利の問題、貧困の中で生きている10億人の貧困の問題、この世界的不公平の問題ーーーこれらがこの会議で議論されるべき問題なのだ。
 
 そして、この会議をめぐる重要な問題は、これは2日間の長さの会議ではないということです。私たちはすでに、南の発展途上国の経済発展の経験について9ヶ月も研究してきました。あなた方に、この開発の経験から得られた、あるいはこの開発に適用された、また、これから取り入れることの出来る、良好なあるいはあまり良好でない証拠を示してくれる何百もの事例研究のまとめを、差し上げることが出来るでしょう。そして、貧困撲滅計画を拡大する努力に良いアイデアや経験を披露して貢献して来られた国々の指導者の方々が壇上に居られるのを見て、私はわくわくしております。
 この会議はワシントン合意の中身を教えてあげる会議ではありません。ワシントン合意は役立たなくなって何年にもなります。それは他の多くの合意に取って代わられました。しかし、今日我々は、いかなる合意も前提にせずに、この問題を取り扱おうとしています。私たちは、アイデアを交流しあうこと、経験を学びあうチャンスを持つこと、お互いに学びあうチャンスを持つことで討論を進めてゆきたいと思います。
 それで、このように取り組みたかったので、私たちは2日間の会合だけでなく、あなたがたの多くの人を11回ものフイールドワークにお連れし、20回のヴィデオ会議に参加していただき、世銀のチームと中国政府のチームと2社共同で、私たちが強く要求する方針や教訓を、ではなく、南対南、南対北方式による、お互いの考え方を交流する機会をもってもらうように組み立てることに参加していただくやり方を取ってきたのです。これは学ぶことの出来る本物の機会なのです。
 しかしこれは単なる意見交換以上のものです。この会議で行なおうとしていることは、私たちが過去にやってきた、あちこちのプロジェクトでまあまあの成功を収めるはずのことを乗り越えるはずです。私自身の組織(=世界銀行のことか)は、いわゆる「感じのいいプロジェクト」でいっぱいです。それらはあなた方が今まで若者のために何をしてきたか、とか、水を節約するために何をしてきたか、とか、環境保全のために何をしてきたか、などと、あなた方が質問するプロジェクトですそうするとあなた方は、北地域のある国で100の学校に対して行なったプロジェクトとか、200キロの高速道路を作ったとか10の橋を架けたとか、あるいは小グループにかかわる衝撃的な事例とかの、成功例の長い一覧表をもらうことが出来ます。
 しかし皆さん、私たちは、個々のプロジェクトについて「いい感じがする」だけでは不十分だ、ということを知りました。私たちが直面している解決を迫られている問題はあまりにも大きいのです。10の学校ではなく、10,000の学校なのです。5つの橋ではなく5,000の橋なのです。100人の人ではなく、何億人、何10億人の問題なのです。
 そして私たちがこの会議で理解しなければならないことは、これらの「感じのよいプロジェクトの成功例から抜け出して、みんなが衝撃を受け、ミレニアム目標を達成できるような段階にまで、それらを規模拡大することです。
 それで、2年前に私がここ(上海)へ来たとき、中国はわれわれの(貧困撲滅の)探求を始めるのに(ここで開催するのももっともだと納得してもらうのに)わかりやすい場所だと思われたということでした。というのはこの国が過去20年間に3~4億人の人々を貧困から引き上げた国であるからです。そしてまた、中国は物事を短期的次元では見ない国です。5カ年計画というものがありますが、この政府は第11次5カ年計画を目論んでいて、広く意見を求めています。そして主席が述べたように、数年来の、(7年計画だったのですが、)貧困低減戦略は、新たな5カ年計画に引き継がれています。(obvious:明白な、わかりやすい。ここでは開催する理由がわかりやすい、という意味だろう)
この継続性や、一貫した戦略性を大事にすること、そして、以前の戦略を忘れることを許さず、政策的変更を許すがしかし一貫性を保つこの思考方向を大事にすることこそわれわれが学ぶ必要のある重要なことなのです。(貧困低減運動を)加速するためには、4~5年で成し遂げることは出来ないのです。時間が要ります。やりくりが要ります。そして、粘り強さが要ります。そして、計画や政策を前進させるには、(この計画や政策を実践して得た新しい)経験を常に取り入れてゆくことが必要です。(attentionをattendすること、つまり、仕えること、大事にすることと意訳しました)
そして、あなた方は、これまで見てきた何百もの研究の中に共通して現れてくるテーマがあることに気づかれることでしょう。まず第一のことは目標を広げねばならないということです。利用できるお金に従うような目標を立ててはなりません。われわれの組織の中でしばしば、かくかくの国に数百万ドル差し上げようとしているのだから、その数百万ドルを使うようなプロジェクトをやりましょうと言うような、罠にしばしば陥ってきました。
私たちは数百万ドル持っているかどうかという方式で問題を見てはならないということです。私たちは、何が解決を迫られている問題で、何が拡張された目標で、何を達成しようとしているのかという方式でこの問題を見、それから、その目標を達成出来る方法を見つめなければいけないのです。なぜなら、この会議の成功が5千万ドルや1億ドルを首尾よく使えるようにすることには無いのですから。この会議が成功するということは、私たちが達成しようと努力している全面的な戦略目標に取り組めるようになることなのです。
私たちはあなたの目前の書類でこの解決を迫られている問題のいろいろな面をお示ししています。取り扱い方の問題、外資導入の効果の問題、資源問題などです。そして私にとってたぶん唯一の最も重要な事項は、この中国もブラジルもバングラデッシュもタンザニアもご存知のことですが、経済発展を、われわれがプロとして夢想しそれから経済開発中の人々、貧しい人々のところへ持っていって、ある意味でそれらの人々に与えるもの、と見做してはならないということです。
そしてこれらの計画を実施したら生じてくることなのだが、欠くべからざることとは、もしうまい計画を持っているなら、貧困から抜け出すべき人々を慈善活動や経済開発活動の対象に変えるのではなく、資産(宝物)に、つまり貧困から抜け出す方向に動いている活発な共同作業者に、変えることである。
この規模拡大活動の中で私たちがやる必要のあることは、貧しくて、よりよい生活を捜し求めている人々の共同体自体を、その問題解決に従事させることである。彼らはわれわれより以上に何が必要か知っている。(その仕事をする)機構や方法に関して彼らを手助けすることが出来る。インフラを備えてあげることが出来る。資源をあげることも出来る。

以下省略

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