桑田真澄の「野球を学問する」
桜宮高校での体罰による男子生徒自殺事件は、その後報道された本人の手記を目にするたびに悲しくなる。キャプテンだからと、理不尽にも殴られ続けたそうだ。
桑田真澄氏が小学生の頃から野球部で殴られていたが、それに納得したことがないと聞いて、彼の著書「野球を学問する」を読んでみた。
そこには中学時代に勉強して「知識が広がり、考える力がついてくると(体罰が)おかしいと思うようになった」とある。彼は、現役を引退した後、早稲田の大学院で野球の歴史を研究し、いま野球界の悪弊を正す道を探求している。
著書によれば、日本の野球が猛練習でアメリカ人チームに圧勝した1896年頃から精神主義に結びつき野球道といわれだした。日清戦争の頃のことで、明治維新後の西洋化への反動で日本の伝統文化、武士道への再評価が進む中での動きだ。
そういえば学校教育で体罰が容認されたのも、戦時下の軍事教練だったと聞く。戦前でも体罰は認められていなかったが、生徒に絶対服従を強いるために持ち込まれたとのこと。スポーツも戦争の時代にゆがめられていく。
桑田氏は武士道精神からスポーツマンシップへ、考える野球、合理的な練習を提唱しているが、納得させられる。
一方近頃の政治の動きが気になる。橋下大阪市長が桜宮高校体育科の入試中止、教職員の総入れ替えを迫る。受験生や在校生、保護者の声を聞かず、絶対服従を強いる。憲法改悪、「国防軍」創設を唱える安倍氏が首相になった。
絶対服従と軍と言えば、体罰につながった土壌ではないか。しっかり学んで、考える力を付けなければ。
|