第7回意見交換会

(1999年7月31日開催、8月1日掲載)


 市民グループと石川県による辰巳ダム建設計画に関する第7回意見交換会は、7月31日(土)午後、石川県自治研修センターで開催されました。


(第7回意見交換会。向こう側が市民グループ。)

 市民側は、中井安治(辰巳の会)、碇山洋(同)、渡辺寛(ナギの会)、中登史紀(建設コンサルタント)、吉岡勇(金沢自然観察会)、佐藤禮子(豊かな自然と健康を考える会)、高橋外男(白山の自然を考える会)などが出席。県側からは、米田昭夫河川開発課長はじめ、河川開発課、河川課の職員らが出席しました。

 昨年11月の「15団体申し入れ」に端を発し、2月の県土木部長記者会見、3月の予備交渉(2回)を経て、4月からはじまった一連の意見交換会も、今回でとりあえず「最終回」となりました。

 今回の議題は、「その他」で、共有地問題、河川維持水量、水力発電、費用配分などの問題について話し合いました。


市民側が提出した質問状への県側回答文書(pdf/35KB)

pdfを見るにはAcrobatReaderが必要です。お持ちでない方はここから入手してください。


 意見交換会冒頭、公共事業再評価や公共事業評価監視委員会の審議とは独立して、今後も必要に応じて市民側・県側いずれかのよびかけによって公開で意見交換会を開くこと、その際のルールは3月の予備交渉の合意文書に準拠することで合意。それを前提に、次回監視委員会に向けた一連の意見交換会については今回を最終回とすることに合意しました。

 このことを含め、今回の意見交換会では、大きな成果をあげることができました。


1.辰巳ダムによって辰巳用水の水量が増えることはないことを県側が認めた。

 辰巳ダムは、「日本一の用水」辰巳用水の取水口と水トンネル(東岩隧道)百数十メートルを水没させますが、肝心の用水管理者、辰巳用水土地改良区は辰巳ダム建設推進の立場です。

 夏場の渇水期、辰巳用水は、慢性的に水量不足に悩まされています。(先日、辰巳用水の歴史上はじめて、兼六園への給水を一時停止しました。)
 土地改良区の幹部の話によると、辰巳ダムができれば、ダムの水を安定的に辰巳用水に供給すると、県が約束したということです。

 辰巳ダムの河川維持用水の容量は240万トン(毎秒0.7トン、40日分)ですが、計画ではそれらはすべて犀川本川に流すことになっており、辰巳用水のための独自の貯水容量はまったくありません

 県側は、辰巳用水への「安定給水」を、“水量を安定させること”にすりかえて、辰巳ダムの効果を強調。
 しかし、水量が不安定なこともさることながら、最大の問題は、水量が絶対的に不足していることです。

 辰巳ダム建設によって、現状よりもより多くの水を辰巳用水に供給できるようになるのかとの市民側の追求に、県側は、辰巳ダムができても用水に入る水の量は変わらないことを、はっきりと認めました

 読売新聞(石川県版)8月1日付には、「県も『用水量は変わらず』」の見出しで、つぎのように報道されました。
 「今夏は兼六園への給水停止もあり改めて浮き彫りになった夏場の渇水問題で意見交換。流域農家からも、安定水量確保のためのダム建設の要望が高いことについて、市民グループは、『ダムが建設されても、用水の水量は変わらないはず』と指摘。県側も認めた。」

 また、山本担当課長(河川開発課)から、辰巳用水土地改良区にたいして辰巳ダムによっていまより多くの水を供給すると約束したことはないはずとの発言がありました。

 県はあいまいな口約束で、改良区に辰巳ダム推進運動の一翼を担わせてきたわけですが、県自らの発言によって、これまでの欺瞞が明らかになったわけです。


(毎秒0.7トンの水では良好な河川環境はつくれないと説明する宮江伸一さん〔中央〕)


2.「用地取得が完了するまで本体着工しない」と言明。

  辰巳ダムの水没予定地には、辰巳の会の共有地が3筆、辰巳の文化遺産と自然を守る会の共有地が2筆あります。

 これらの土地に関連して、米田河川開発課長は、「共有者にダム事業を理解してもらい、用地取得が済むまで着工はしない」(「北陸中日」8月1日付)と言明しました。

 これまで辰巳の会は、土地を取得したり共有登記をした都度、辰巳ダム中止をもとめて県に申し入れを行ってきましたが、県側からは「地権者の理解を得られるよう努力したい」といった発言はあっても、未取得の土地が残っている段階では着工しないという発言は、はじめてのことです。

 もちろん、「用地買収が済むまで」といわず「用地取得が済むまで」と言っており、強制収用の可能性を残した発言ではありますが、その前に「共有者にダム事業を理解してもらい」がついているので、強引な収用はやりにくくなったことはまちがいありません。

 苫田ダム(岡山県)のように未取得の土地が残っていても本体着工した例もあるだけに、今回の課長発言は、重要な意味をもっています。


(「用地取得が完了するまで本体着工しない」という県の新見解にマスコミも注目。)


 予備交渉や1・2回目くらいまでは、たがいに不信感もあり、議論が白熱しすぎて、険悪な場面も少なくありませんでしたが、回を重ねるごとに全体として冷静に、また建設的に議論できるようになってきました。

 碇山、米田課長がそれぞれ挨拶をのべ閉会したあと、米田課長、高野課長補佐、奥村氏(いずれも河川開発課)が握手をもとめてこられました。
 「アカウンタビリティーの大切さ、難しさがよくわかった。ほんとうに勉強になった」(奥村氏)、「市民のみなさんが真剣に考えておられることがわかってきて、自分たちももっと勉強してみなさんに理解していただける仕事をしなければと思った。ほんとうにありがとうございました」(高野氏)といった感想が述べられました。

 また、意見交換会には毎回、公共事業評価監視委員会から委員が臨席されました。そのうち、最多の6回に臨席された川村国夫委員(金沢工業大学教授)は、今回も出席され、意見交換会終了後、「市民の公共事業に取り組む姿勢に感心したし、県も出来るかぎり対応した。難しい問題も多く、私自身もまだ結論を出していないが、大変参考になった」(「読売」石川県版、8月1日付)、「辰巳ダムの建設は、防災、環境、辰巳用水の保護の3点が重なり、難しい問題だ。計画の推進、中止については慎重に審議したい」(「朝日」石川県版、8月1日付)と述べられました。


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