児童文学作品2
名前は「速人」なのに,走るのは苦手。だから「のろと」って呼ばれるんだ。
おちゃらけ者の速人は名前が「速い」なのに走るのが苦手。だから,クラスの仲間からは「のろと」とバカにされています。でも,クラスのエース,強士とぶつかった結果,けがをさせてしまい,憧れの潤子と一緒に走る練習をすることになったのですが…。
強士と潤子はそれぞれに複雑な家庭環境を抱えています。でも,決してそれに負けず,立ち向かっていこうとしています。そんな2人を見て少しずつおちゃらけ者から変わっていく速人。3人の友情や成長ぶりがよく伝わってきます。
お金があるからといって,幸せであるとは限らない。
お金はなくても,温かい家族と暮らせることの幸せ。
どんな環境にあっても,めげずにたくましく生きている子どもたち。
大人の価値観に惑わされず,自分で接してみて友だちを理解していく速人がとても格好良く思えました。
子どもが友だちを選ぶ基準って何だろう。金持ちだとか権力があるとかそういう理由で判断するのは大人であり,その価値観を大人に植え付けられるから子どももそういう判断をするのではないでしょうか。受け持ちの子どもたちを見ていると,遊ぶ理由が「やりたいゲームを持っているから」となりつつあるのが気になります。つまり,その子本人ではなく,ゲームが遊びの理由となっているのです。遊ぶのは友だちとではないのだろうか?ただ,ゲームがしたいだけなら,その子じゃなくてもいいことになってしまう。子どもたちからゲームを取り上げたら,友人関係に何が残るのだろうかと考えてしまいます。(05/01/23)
孤高であることは,孤独であることなのか。
歩と貴史と「ロミジュリ」メンバーにとって中学最後の夏がやってきた。夏祭りで再び漫才をすることになりそうだったのだが…。
紹介文は第3作のもの。このシリーズ,とても好きなのですが,だんだんとお笑い方向に流れているような気が…。1作目はたぶん続編を考えずに書いていたと思うので,少しずつ雰囲気が変わってきているのかもしれません。
このシリーズでお気に入りなのは貴史。自分の気持ちに正直で,まっすぐ。メグが好きになるのもわかるなあ。あと,学年トップの秀才だったはずの高原君。なかなかよい壊れっぷりです(笑)。これだけの仲間に囲まれている歩はとても幸せだと思うのですが,本人が気づいていない…。もったいないぞ,歩!(07/01/02)
大人になる…じゃあ,どんな大人になるの? 時間は流れ,大人になる日は近づいてくるけれど,自分はどうしたいんだろう?
自分の身近にある大人社会の汚れた部分を容赦なく見せつけられて育った樹。自分もそんな大人になってしまうのだろうか…。
思春期の少年少女が抱える将来への漠然とした不安,それをどう乗り越えていくのか。樹だけでなく幼なじみの達彦,美鈴もそれぞれの立場で大人社会に対して反発し,抵抗し,自分の道を探そうとしていく。生涯があっても立ち向かっていける,それだけのエネルギーがこの時期の子どもたちにはあるはず…。(07/01/02)
一郎さんは腕の良いかばん職人。けれど,商売は上手ではありません。ある日,トランクの中にかばんをつめて,一郎さんは旅に出ました。
一郎さんのもとには,いろいろなかばんを求めて,いろいろなお客がやってきます。はりねずみはランドセルを,魔術師はかばんの修理を,春一番はポシェットを。でも,一郎さんはどんな注文でも素敵な品にしてみせるのです。
でも,一番素敵なのは,一郎さんが持っているおしゃべりをするトランクかもしれません。
ふわりと温かい気持ちになれるお話です。(02/08/16)
新しい町に来たルナたちは水をあやつる大道芸人,しずくに出会います。そんなとき,かすかな妖怪のにおいを感じたのですが,なかなか妖怪を見つけられません。
ユイという友だちとの出会い。謎の水晶玉の話。妖怪の正体は一体?
紹介文はルナシリーズ第2弾,『人魚の住む町』のものです。
わくわくしてくる設定で,ぐいぐい引き込まれていきました。
ルナの活躍ぶり,おとも(?)のもっけとスネリのナイスなフォロー,そして,謎の少年の出現…。続きがとっても気になります。
そうそう,ルナがあまりのあるわり算の勉強をしている場面があって,「うちのお子さまたちと同じところを勉強している!」とウケてしまいました。このあたりまで読み進めているお子さまは…まだいないのかな。
うちのクラスで一番この本を気に入っているのは男の子。表紙の折り返し部分を見て「ねえ,もうルナ出てるはずだよー。持ってきてよー。」と毎回忘れずに声をかけてきます。
今回は巻末におまけのマンガがついています。もっけファンのみなさま,ぜひ読んでください!(04/10/03)
『妖界ナビ・ルナ 火をふく魔物』では,ルナの孤独な一面もうかがえて,一緒に寂しくなってしまいました。ルナの旅もまだまだ続くようです。お子様の中には「もう買ったよ〜♪」という子もいます。(05/04/17)
『光と影の戦い』でルナは…大変なことになっています!もっけ,スネリ…。いったいどうなってしまうんでしょう。シリーズ最大の山場を迎えているんじゃないかという感じです。これ,読んだ子どもたちはけっこうショックかも…。まさか,こんな展開になるとは思いませんでした。(05/09/19)
『赤い花の精霊』は第6弾。前回,スネリともっけがとんでもないことになってしまって続きが気になっていたのですが…ホッと一安心。ルナがひとりっきりにならなくて,こちらも一安心。新たに四神も登場し,この先どうなるのかドキドキしてきます。
今日,教室にユーリとルナの新刊を持っていったところ,朝から奪い合いが…。ジャンケンで読む順を決めたり,隙をねらって読んだりと大騒ぎです。あまりの騒ぎに,今日は貸し出し不可といたしました(笑)。明日から貸し出し開始となります。え?明日は土曜日だろうって?授業参観のため,土曜日ですが弁当持参でガッコに行くのです(笑)。(05/11/18)
『妖界ナビ・ルナ7 青き龍の秘宝』は音楽関係のことがいっぱいでてきて,個人的に楽しませていただきました。それにしても,もっけって超聴力をもっているというのに,音感がない…。つまり,音痴です(爆)。しかも,オクターブや周波数まで言ってのけ,「ラ」を「A音」とまで説明しているのに…。参考までに,もっけが「ラ」と言って出した音は「ミ」でした。
ルナも負けずに音感はあまりよいとは言えません。でも,もっけよりはいいですね。「ミ」と「ファ」を間違えただけだから。
今回登場した音楽少年レンくんはピアノも笛もバッチリでうらやましい…(笑)。(06/03/19)
『妖怪ナビ・ルナ8 白銀に光る剣』です。ナビ・ルナシリーズ第8巻。もう8巻まで来たのかという感じがします。
3人目の四神を探しているルナたちは,神隠しにあう子どもたちがいるという街にやってきました。なかでも,ナツメという少年だけは何度も神隠しにあっているというのです。
今回はもっけと高校生の梨子(ナツメの姉)とのラブストーリー…とまではいきませんが,ちょっともっけが切なくなっちゃったかなというお話でした。スネリが大活躍でしたね。
今まであまり話題に出なかったルナのお父さんの家系のことも少し出てきて,物語は確実に終わりへと向かっているのだなあと思いました。
ルナのパワーも確実に上がっている感じがしますね。
最大の謎である,ルナの弟のタイをさらったのは誰なのか,それがあかされる日も近いかもしれません。(06/06/18)
『妖界ナビ・ルナ10 黄金に輝く月』です。途中9巻が抜けてしまいましたが,最終巻の感想UP!
ルナと一緒に,今までの登場人物やできごとをいろいろと思い出しました。
そういえば,ルナは6年生になっているはずだったのです。学校に通い続けていれば。
ルナはみんなと同じように見かけが成長しません。友だちができてもずっと一緒にはいられないなんて悲しいですね。
また,双子の弟であるタイくんとのお別れ…。 でも,タイくんと仲直りをして,手を取り合ってめでたしめでたしというラストよりも,わたしはよかったなあと思いました。
現実でも,いろいろな悲しいできごとがあり,別れもあります。 それでも前へ進んでいかなければなりません。
この2年でルナはたくさんの経験をして,見かけよりずっと大人に近づいたのかもしれません。(07/01/20)
工事中です。
原爆症のため,12歳で亡くなった佐々木禎子さん。彼女をモデルにした原爆の子の像がどのようにして作られたのか,その後世界にどのように広がっていったのか。
ノンフィクションです。原爆の子の像が,広島に投下された原爆の後遺症で12歳でなくなった佐々木禎子さんをモデルにしていることは小学生の頃から知っていました。でも,像がどのようにして作られたのか,また,世界中にどのように広がっていったのかはまったく知らずにいました。そんな時に読んだのが,『折り鶴は世界にはばたいた』でした。
モンゴルでは,みんなサダコのことを知っているのに,なぜ日本人は知らないのか不思議だと言った,モンゴルの歌手オユンナ。
サダコの話を知って,自分の国の子どもたちにそのことを伝える活動をしている人。
そして,話を聞いた子どもたちが自分たちでも平和の像を作ろうと活動する…。
こんなにも原爆の子の像にまつわる話があったのかと,正直驚きました。そして,知らずにいたことが日本人として恥ずかしいとも思いました。『折り鶴は世界にはばたいた』は,子どもたちを含め多くの人に読んでもらいたい本です。(03/08/17)
さだこの祈り,さだこの願いは,遠く海を越えて世界へと広がっていく…。
うみのさんが以前書かれたノンフィクション『折り鶴は世界にはばたいた』を元に,絵本という形で生まれ変わった作品です。
『折り鶴は世界にはばたいた』は,小学校高学年でも読み切るのは少々難しいというのが実感でした。
今回出版された『おりづるの旅』は『折り鶴は世界にはばたいた』の内容をまとめた絵本です。美しい絵に淡々と事実を語っていく手法。これならば,小学校低学年でも読み聞かせれば十分に作者の思いを伝えることができます。
この話は,単に禎子のことを悲劇として伝えるだけでなく,平和への願い,そして,今なお続く戦争や核兵器の開発に対する筆者の怒りをも伝えています。
戦争教材が国語の教科書から姿を消しつつある今,この本は絶対に子どもたちに紹介し続けたいと思います。
折り鶴に火をつけるなどという,考えなしの情けない人間が出てこないよう,この本がより多くの人に読まれることを願っています。(03/08/17)
優子の大切な母ちゃんが死んでしまった。優子はその日からちっちゃな母ちゃんとしてがんばる。けれど,やっぱり母ちゃんと同じにはなれない。純兄ちゃんは何だか様子がおかしいし…。そんなとき,ビックリするニュースがとびこんできた。
この物語には2つの大切な命が描かれています。1つは消えてしまった命。もう1つは誕生する命。
子どもを産むことには責任があります。今は,子どもを育てられない,未成熟な大人が増えていると思います。
また,大切な人を失ってしまった悲しみをどう乗り越えていくのか…。優子の家族は一度崩れかけますが,新しい命によってお互いが繋がり,悲しみを乗り越えていきます。
この本を通じて,命とは何か,子どもだけでなく大人も一緒に考えられたらと思います。(07/01/03)
工事中です。
あたしはヒンディーのパンニャ村に住むシュリー。棒術が得意なんだ。でも,むやみやたらに戦うわけじゃない。だって,あたしは「みんなを幸せにする,ちっちゃなシュリー」なんだから!
現在第3巻まで出版されています。元気な少女シュリーはしゃべる白ネズミのガーシャ,異国からやってきた少年ヒデマル,医者であり棒術もできる師匠のチャンダ,穏やかで優しい木の女神スンディーたちとさまざまな冒険をくぐり抜けていきます。姿を現すのは死者を迎えるためであると言われるダキーニ神ジャバハーリーをも味方にしてしまうシュリーの明るく前向きな姿がとても生き生きとしているこの物語。現在最強の敵と言えそうなのは同じく少女のドゥルガーです。相手を倒すことに対し何のためらいももたず,むしろそれを楽しんでいるかのようなドゥルガーですが,どうやらその背景には戦争で親を殺された過去があるようです。彼女も救ってほしいというヒデマルの願いはいつか叶うのでしょうか。(05/06/19)
『少女戦士シュリー4 魔法の決戦』は最終巻ということで先に読みました。とてつもない敵だと思っていたドゥルガーとの決戦の行方はどうなるのかと思いましたが,うまい方法を作者は思いついたなあと感心しました。
戦いにはただ力で勝てばよいというのではない。シュリーの戦い方はみんなの力がなくては成り立たないもの。そして,人の命を奪わないで平和を手に入れることの大切さを,シュリーもその仲間もよくわかっているのです。
(06/03/19)
家を飛び出した香保里が出会ったのは,超能力者の暎兄ちゃん。心と心を繋ぐネットワーク「インナーネット」を巡って追われているという。さらに暎兄ちゃんは具合が悪いのに,白鳥山へ行きたいなんて言っている。どうしよう!
カジシン唯一の児童書…かもしれません。青い鳥文庫です。解説は,はやみねかおるさん。これだけで「読みたい!」と思う人もいるはず。
香保里と暎兄ちゃんは果たして無事に白鳥山へたどり着けるのか。暎兄ちゃんの超能力とはいったい何なのか。ハラハラドキドキする展開で,一気に読み進められます。ラストシーンにじーんとくる人も多いかもしれません。(07/01/03)
霧の谷の気ちがい通りには,ちょっとかわったすてきな人たちが暮らしていました。
『千と千尋の神隠し』に影響を与えたと言われているお話ですが,あの映画とは関係なく,十分素敵な物語でした。「働かざる者,食うべからず」というピコットばあさんの言葉は名言ですね。気ちがい通りにやってきたリナは,自分の力で働くようになります。働くうちに,いろいろな人達と出会い,仲良くなっていきました。ただ一人,ピコットばあさんを除いては。でも,このピコットさんは,言い方は意地悪だけれど,リナのことをよく見てくれているし,リナには内緒でまた気ちがい通りに来られるようにしてくれています。いい人なのです,実は。
登場人物がみんな個性的で,次はどのお店のどんな人とリナが出会うのか,わくわくしてくるお話です。(02/08/16)
おばばのところからこっそりもってきたパチンコ。このパチンコったらとんでもないんだ!だって,カラスをうったら,ガラスになっちゃったんだから。
おばばの発明品はおかしなものばかりです。後ろにしか進まない自転車とか,絶対に開かないタンスなんて,使い道がありません。
今回のパチンコだって,迷惑なものに違いないと思っていたのですが,これがびっくり。「゛」をつけて,別の物に変えてしまうのですから。「カラス」→「ガラス」,「コマ」→「ゴマ」というわけです。しまいには,「カッコウ」が「ガッコウ」になってしまった!なんとかして元に戻さないと大変!さて,どうやって戻すのかは,読んでみてのお楽しみ。発想がユニークで,とてもおもしろいお話です。言葉遊びの感覚で読めます。(03/08/17)
ぼくたちは『万朝報』の編集室でボーイとして働いているんだ。でも,帝都に事件が起きたとき,探偵団になるのさ!
基本的に楽に読めるシリーズ。単行本として出版されたのは『吸血鬼…』が先ですが,作品として発表されたのは『記憶…』が先。『記憶…』から読んだ方がわかりやすいですね。
『万朝報』と聞いて「おや?」と思った方,いらっしゃいませんか?そうです,この物語には明治,大正時代に実在した人物が登場するのです!芥川龍之介が小学生という設定…おっと,これ以上はやめておきます。(05/04/17)
『真犯人はそこにいる』はシリーズ第3作です。
あいかわらずのメンバーが,明治の帝都で事件に巻き込まれていきます。
本当にあったできごとが話の中に出てきて,明治時代のお勉強にもなります。しかもかなりマニアックな内容(笑)。
今回は,不忍池で行われた自転車競争,十二時間の長距離競走,田中正造の直訴,中江兆民の告別式といったことが盛り込まれていました。推理ものとしても楽しめますが,明治時代をかいま見ることができるような気がして,そこも魅力的な作品です。(05/08/21)
『透明人間あらわる!』シリーズ第4作。今回は透明人間が相手! どこにいるのか見えない相手にどう対応したらよいのか…。最初の方の展開では,透明人間相手に打つ手がないという雰囲気で,先がまったく読めませんでした。
万朝報の面々も手こずっていて,いつもより活躍していなかったような…。
でも,おぼっちゃまくんこと芥川龍之介少年がようやく探偵団の一員と認められたようでなによりです。(というより,彼の方が探偵団よりもずっと優秀だから,認められなくてもいいのかもしれないけど…。)
おぼっちゃまくん一人では太刀打ちできない相手も存在するのです。
愛すべき探偵団の面々の次の活躍が楽しみなシリーズです。(06/02/12)
わたしたちの町には神様がいるの。いつでもみんなを見守ってくれている神様が。
読む人によっては,大阪の下町の良さが感じられるであろう作品。そこに住む神様は下町の人々を温かく見守っています。そして,人々も温かい。最初の話を除いては。
早川司寿乃さんのイラストも作品の雰囲気にピッタリです。早川さんのイラストってやっぱり好きだなあと改めて感じました。
このお話の神様はとても温かくて好きです。
すっきりしなかったのは,最初の学校の話。自分が教員のせいかもしれませんが…。学校の現状,学級崩壊の様子など,非常によく描けてはいるのです。でも,子どもの側の気持ちは描かれていても,教師の気持ちは残念ながら描ききれていなかったように思います。正直,一方的に先生が責められているという感じがしてしまいました。自分たちのことを知ろうとしない先生がいけないのだと…。では,子どもたちの側は,その親や同僚は,本当に先生のことを理解しようとしたのでしょうか?先生が主人公の頑張ってやったことを認めず,点数稼ぎだと突っぱねたことに対し,主人公は先生が思いを込めて作った大切な花瓶をわざと壊します。確かに,先生は主人公の気持ちをわかろうとせず,傷つけました。でも,その前にあそこまで先生を傷つけ,追い込んでしまったのは子どもたちとその親,同僚たちです。
自分が今,あの学校にいて,あの学級を受け持ったとしたら,即投げ出します。「やんちゃ」な進藤くんが言うように「せいいっぱい」やっているのに,まわり全てが敵という状態なのだから。主人公も言っていますが,かなり悪質な「いじめ」です。あれだけのことをされて踏みとどまれる教員って,相当神経の図太い人です。弱虫,泣き虫というレベルではないでしょう。主人公は,先生に真っ正面から自分たちに立ち向かってきてほしいと言いましたが,もともと先生は立ち向かっていたはずです。いくら注意しても,おちゃらけて言うことを聞かない児童のことを「やんちゃ」と表現していますが,果たして「やんちゃ」というレベルなのか…。あの場面で,他の子どもたちの方がいい子だと言ってしまったのは明らかに先生の失言です。他の言い方があったでしょう。でも,そこまで言わせてしまった子どもの側に非はないのでしょうか。
結局,主人公だけは自分たちの非を認めていますが,他の子たちはどうだったのかまったく描かれていません。「先生が悪い」と言っていたにもかかわらず,6年には持ち上がれないと先生が言い出したら「困ったわ」と言った主人公の母親も理解に苦しみます。本当に困ったと思うのなら,なぜ先生に協力していこうという姿勢を示さなかったのか。あれだけ傷つけられたのに,ペットボトルの花瓶程度で立ち直っていったこの先生にも,申し訳ないけれど共感できません。正直,単純すぎます。
最初の話には下町の良さや温かさはまったく感じられませんでした。むしろ,余所者を排斥するかのような雰囲気すら感じてしまいました。「自分たちの町の良さを知って」という思いはわかります。けれど,相手のことを知ろうとはしていません。そのため,その後の話も,主人公や友だちには共感できませんでした。
残りの話はどれも本当に温かくホッとするものばかりだったので,あの話がなければ素直に素敵な町だと思えたのに…。残念です。自分が教員でなければ違う読み方になったのかもしれませんが…。(05/11/21)
あたしは歌姫になるんだ!そう,この夢があるから,あたしはがんばって生きてきたんだ。
歌姫を目指す少女エルの物語。ファンタジーです。
エルの歌が桁外れにひどいという設定がいいですね。もし,エルの歌が上手かったら,おもしろいお話にはならなかったでしょう。ただし,エルは歌はとんでもないけれど,作り出すメロディーはとてもきれいなのです。笛で演奏すればきちんと音程がとれるのに,歌うと思いっきりひどくなるのはなぜ…?不思議な子です。
ラストのトルンの行動は予想外!いい意味で裏切られました。
イラストの永田智子さんの絵は,昨年のNHKドイツ語会話の表紙も飾っていました。(03/08/17)
家に帰ると,ロボットのルイが言うんだ。「ママがこわれました。」ママが壊れた!?いったいママはどうしちゃったの?
タイトルにまずビックリ。ママが本当にロボットだったらどうしようと,最後までハラハラさせられました。
人間型ロボットがいたら,確かにとても便利でしょうね。家事を全部やってくれたら言うことなし!でも,どんなに仕事をこなしてくれても,ロボットは決してママではないのです。カミキリの気持ちもそのお父さんの気持ちも,それぞれわかる気がしました。高学年が読んだ方が,深く読み込めるお話ですね。
ラストのママが「こわれた」の意味がわかった時には思わず笑ってしまいました。まったく思いつきもしなかったので。(03/08/17)
どういうわけだか,おれと山花はデュエットでものまねすることになったんだ。でも,山花は「ぼくが歌うと何かが落ちる」なんて言って,まともに歌いやしない。どーすんだよー!
とにかくテンポがいい!
今年初めて同じクラスになり,ついこの間まで口をきいたこともなかった山花くんといきなりデュエットをすることになった光太郎。光太郎の「おれ」という視点での語りなので,とても感情移入がしやすい作品です。あちこちに思わず笑い出してしまう場面があり,楽しみながら読めました。
「歌うと何かが落ちるなんてこと,あるわけない」と光太郎が言おうとしたら,母親が「落ちたわねえ」と言い出すのですが,その内容にビックリ!光太郎じゃないけど「そういうのもありか!」と思ってしまいました。
山花くんは途中までの展開で,歯医者を継ぎたくないのかと思っていたら…やられた〜という感じです。(03/08/18)
ある日,世界は一変してしまった。そんな世界でも,ぼくたちは前へ進む!
一読して思い浮かべたのが,那須正幹『The End of the World』でした。人間の作った兵器で世界が壊滅状態になり,その後生き残った子どもの物語という点で似ているように思ったのです。『The End of the World』はあまりにも絶望的な展開でしたが,『あした地球がおわる』では希望が見いだせます。
極限の状態に陥ったとき,果たして乗り越えることができるのか,どんなふうに生き抜こうとするのか。絶望的な状況でも前に進んでいこうとする子どもたちの姿に,勇気づけられる子も多いのではないでしょうか。(03/11/24)
雄介は母親の焼くパンが大好き。母親は毎日雄介のためにパンを焼いてくれる。でも,そのパンが雄介だけのものではなくなってしまい…。
この物語で印象的だったのは,子どもの帰りを家で待つお母さんの存在でした。わたしの母もそういう母親でした。両親は子どもの頃,自分の母が働きに出ていて寂しい思いをしたので,そういう思いは子どもにはさせたくないと考えたのでした。作者があとがきで書いていた「おとなになったら,きっと,家で子どもの帰りを待つお母さんになろう。」という言葉は,我が家でもよく耳にしたのです。
わたしが子どもの頃には,専業主婦をしている母親はわりと多かったように思います。けれども,今は共働きや母子家庭で働かざるを得ないという母親が多いと感じています。
つい先日,専業主婦をしているお母さんからこんなことを言われました。
「働きに出ているお母さんのお子さんはとてもしっかりとしているように思えるんです。うちの子は,わたしがいつでも家にいて,いろいろなことをしてあげてしまうから何だか甘ったれているような気がするんです。」
……何だか自分のことを言われたような気がしてしまいました。確かに甘えている部分は多いかもしれません。でも,家に帰ればお母さんがいてくれるということにどれだけの安心感を覚えたか!
家に帰ると誰かがいるのは,子どもにとってとても安心なことなのです。
家に帰っても誰もおらず,寂しい思いをしている子どもたちは大勢います。この子たちを「しっかりしている」と言うけれど,しっかりしなければならなかったというのが本当のところではないかなと思います。
でも,働いているお母さんたちは,子どもを放っているわけではありません。子どもの元気な顔を見たくて,職場からすっ飛んで帰っていくのです。そんな同僚の姿をわたしは毎日見ています。どんな形であれ,親は自分を愛してくれている,それを実感できればよいのではないかなと思います。
この物語は,子どもだけでなく多くのお母さんに読んでもらいたいですね。(05/01/23)
「好き」という感情はどこからくるのだろう。中学2年生の晴彦,真樹,志麻子が抱える思春期まっただ中の悩み…。
この作品は小学生にはあまり理解できない部分が多いかもしれません。性に関することがあちこちに出てくるからです。でも,性に対して関心が出てきて,あれこれと悩む中学生には受け入れやすいかと思います。
「好き」という感情はいったいどこからくるのでしょう。晴彦にとって,真樹(まさき)は幼なじみで志麻子は気になる存在。どっちも「好き」だけど微妙に違う。親友としての「好き」と異性としての「好き」。
けれど,真樹と志麻子の体が入れ替わったことで,晴彦の「好き」が揺らぎます。
「好き」は体と切り離せるのか。体があってこその「好き」なのか。結論は…読んでのお楽しみ。(05/11/27)
宇宙で一番「ヘンな」中学生3人組が大活躍!? 宇宙を舞台に大暴れ!!
時を超え,昭和39年の世界に入り込んでしまった一樹。どうしたら元の世界に戻れるんだろう…。
これもタイムトラベルものです。導入部分で「地底の森博物館」が登場し,そこで一樹は時間の堆積を実感します。そして,命のリレーについて考えます。その後,タイムスリップをしてしまいます。たどり着いたのは昭和39年。たまらない孤独感を抱えていた一樹に強力な味方が現れます。昇平という同い年(現代なら昇平の方がずっと年上)の少年です。
昭和の情景や人々の生活が生き生きと描かれ,そこで暮らす昇平の姿はとても輝いています。こういう時代は確かにかつてあったのです。
また,この物語では風を効果的に使っています。風が太古の空気を運んでくる。その風に乗って,過去の世界へと旅をすることができる…。
過去へ旅することで見えてきたもの,かわったものが一樹には確実にありました。大切なものにも気づくことができました。
こういう旅なら,わたしもしてみたいなあ。(07/01/02)
羊飼いの少年ネフィは,都にいるアーデム教授と青いチューリップを作り出そうとします。けれど,青いチューリップをめぐり,ネフィとその周辺の人々は争いに巻き込まれていくのでした。
1500年代半ばのオスマンの国が舞台となっている物語。めずらしい舞台設定です。でも,作者は中近東のノンフィクション作品を手がけているので,当時のオスマンの様子や人々の暮らしぶりなどが見事に描写されています。場面がとても克明に思い浮かべることができました。
登場人物もそれぞれしっかりと描かれています。個人的には,乞食のジェムがお気に入りです。彼の活躍が前半部分で終わってしまったのが残念です。また,絵師の弟子メフメットもいろいろな謎に包まれていてドキドキハラハラさせられました。
ネフィたちはさまざまなアクシデントに見舞われ,幾たびも危険な目に遭いますが,そのたびにうまく助けられていきます。ちょっとうまくいきすぎかなと思う部分(特に人物同士のつながり)もありますが,ラストまで気持ちよく読めました。
わたしはトルコについてはあまり知識がなく,読んでいて「へえ〜」と思うことがいっぱいありました。小松良佳さんのイラストもぴったりあっている感じがしました。今までの良佳さんのイラスト(本の挿し絵)とは雰囲気が変わっていますが,今回のイラストの方がもともとの画風に近いのかもしれません。(05/02/06)
女子大生と同級生,2人のあゆみ。2人の間で揺れる,思春期のオレ。
オレ,サブ,井ノ原と個性豊かな3人の少年の会話がおもしろい。関西の言葉でテンポよく繰り広げられています。年上の魅力的なお姉さんに憧れたり,性に興味を持ったりと,思春期の男の子の気持ちがよく描かれている作品です。
よく女の子は大変と言われますが,男の子だっていろいろ大変なんだよー。
実は,このお話にはもうひとりのあゆみが登場します。このあゆみさんに関連した話が一番おもしろく読めました。
3人のあゆみの年齢がまったく違うことで,それぞれと接する「オレ」の立場がかわってきます。女子大生の前では弟のように,同級生の前では友だち,もうひとりのあゆみの前では…。
あとは読んでのお楽しみ。(04/10/03)
工事中です。
不思議な事件が起こった!みんなもカポネやはなえさんと一緒に,謎解きしよう!
『わんわん探偵団』シリーズのファンの子が大喜びで読んでいた本。謎解きになっていて,ちょっとした探偵気分を味わえます。
主人公のはなえさんは本屋さんが本職。でも,最初の事件に巻き込まれたときに,名猫(迷猫?)カポネと出会います。そのカポネの何気ない行動が事件を解くきっかけになることが多いのです。
即解決編を読んでしまえばあっという間に読み終えることができるけれど,はなえさんに負けず,自分で解決しようとするとけっこう時間がかかるこの本。いろいろな楽しみ方ができます。(06/05/06)
1955年と2005年,時を超えた恋の行方は!?
講談社のヤングアダルト部門から出版されているので,児童書の分類にしておきますが,これは一般書の方がしっくりくるかもしれません。
作者も『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を意識して書いたとあとがきに記しているように,まさに基本はあの映画になっています。
最後まで読むと,また最初に戻って読み直したくなる構成になっています。
最初は「エピローグ」から始まるこの物語。この時点で「うーん,誤植か!?」と思ってしまったのですが,ラストを読んで納得。確かにエピローグかもしれないなあ。そして,ラストが「プロローグ」です。 それにしても,主人公のライバルの執念深さには恐れ入りました。
タイムトラベルものが好きな方は楽しめると思いますが,『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が好きな方がどう受け取るかは…(笑)。
わたしは,現代版『バック・トゥ・ザ・フューチャー』として楽しみました。(07/01/02)
道路に飛び出したとたん,車に跳ねられそうになった達也。でも,不思議な力に引っぱられて助かった。それは…真一というゆうれいのおかげだった!
ゆうれいの真一は達也の体の中に入り込んでしまいました。そして,3つの願いが叶ったら出ていくというのです。その願いとは…。
旅の始まりは見かけ上は達也のひとり旅。でも,本当は真一とのふたり旅。だから,心配もあまりなく,初めての知らない場所でも平気で行けます。でも,3つ目の願いを達也にたくした真一は,旅先で消えてしまいます。
帰りは本当のひとり旅となった達也。でも,このわずかな時間で達也はぐんと成長していました。
自分で時刻表を見て,プランを立てて…。
真一の願いはとても切ないものだったけれど,達也がそれをきっと叶えてくれると信じていたのでしょうね。
このお話は,鉄道好きな方にとてもお薦めです。(06/05/06)
翔と翼は二人で決めた「兄弟」だ。名字が同じ「大杉」で,名前も似ている。しかも同じ歳でマンションも同じ。でも,翼は高知に引っ越してしまった。離れていても仲良しでいられると思ったのに,引っ越してからの翼はなぜかよそよそしい。夏休みにも来てほしくないとまで言われてしまった。何かヘンだ!
というわけで,翔は翼に会うため,東京から高知まで行くことを計画します。もちろん,鉄道で!
落ち合う場所は,「大杉駅」です。高知に実際にある鉄道の駅です。数年前に,この駅のことがニュースで紹介されていた覚えがあります。
途中で翔は困難にぶちあたりますが,優しいお兄さんにも出会えました。お兄さんが言うには,「離れていても親友でいるというのはとても難しい。だから,その友だちを大切にしろよ。」確かにそうですね。そういうつもりはなくても,だんだんと気持ちも離れていってしまうのかもしれません。そして,お互いの環境の中で,それぞれが変化していくのも当然のことでしょうね。
でも,だからこそ,お互いに伝え合うことが大切なのだと思います。2人とも少しずつ変わりながら成長していった夏のひとときですね。(06/05/06)
勝の家に配達された一枚のハガキ。それは,知らない人の死亡通知だった…。なぜ,このハガキが勝のもとに届いたのか?勝は差出人の住所を訪ねることにした…。
高森さんの作品には,鉄道の話がよく出てきます。今回も,勝は鉄道好きということで,時刻表を調べ,塾をさぼって旅に出ます。
そして,「知らない人」ではなく,知っている人だったことに気がつきます。
自分の好きな鉄道のことを自分で本にして売っている人だったのです。
そして,2冊目が冬にできるから,そうしたら案内状を送ると告げていたのです。けれど,届いたのは死亡通知だった…。
自分の思いを誰かに伝えたい…これは,死んでしまった正之,その弟の浩司,そして作者に共通していることだと思います。
遠く離れた地にいる勝に正之の思いが届いたように,今度は勝が自分の本当にしたいことを見つけ,その思いを伝えていくのです。サイトも同じですよね。自分の思いを伝えたくて発信しているのだから。(06/05/06)
運動はダメ,頭も顔もいまいち,かっこいいとはいえない北斗。でも,鉄道のことに関しては誰にも負けない自信があります。
そんな北斗のもとに届いた一枚のファックス。北斗に守ってほしいという依頼だったのです。
でも,送り主は知らない女の子の名前。彼女はなぜ北斗を知っているのか…。
鉄道がらみのお話を書くのが得意な高森千穂さんの最新作。
普段はあまりさえない北斗ですが,いざとなると行動力があります。また,北斗の家庭環境にはビックリ!いわゆるおぼっちゃまです。執事までいるお屋敷に住んでいるのです。執事の十兵衛じいは北斗を「ジェントルマン」にすべく,日夜努力している模様(笑)。時々ページの下に出てくる「十兵衛じいのジェントルマン講座」がいい味を出しています。
相棒(というのか?)の小型ロボット犬のハナグロはAIが埋め込まれていて,話をすることもできます。けっこう口が悪いハナグロですが,大活躍します!
シリーズ化されそうな感じもするお話です。(05/08/21)
ふだんはパッとしない小学生だけど,ぼくは鉄道のことなら誰にも負けない知識を持っているトレイン探偵だ!
トレイン探偵北斗の第2弾。今回は女優の卵である,綾乃ちゃんを助けるために大活躍します。毎回楽しませてもらっているのが,「十兵衛じいのジェントルマン講座」です。これを読むと…自分はジェントルマン…いえ,レディにはなれないなあとしみじみ思います(笑)。(07/01/03)
工事中です。
工事中です。
工事中です。
麻矢は交通事故にあった後,見知らぬ世界に紛れ込んでしまう。でも,そこでの麻矢は,ヤーという少年の頭の中に入っていて,精霊として扱われるのであった。
読み進めていく内に,この世界は,麻矢と弟の好樹が発売を楽しみにしていたRPGゲームと同じであることがわかってきます。でも,麻矢はまだこのゲームをやったわけではなく,発売前の情報を少し知っている程度。冒険のあらすじは何となくわかるけれど,詳細まではわかりません。
この世界はゲームとして作られた物であるはずなのに,麻矢にとっては現実であり,その世界で生きる人々にとっても現実です。そのことを実感して,麻矢は現実世界へと戻ってきます。ストーリーの大筋はゲーム通りになっているようなのですが,麻矢の介入により少しずつずれが生じます。決められた通りに進むのではなく,自分の力で進むことで未来は変わってくるのです。
ゲーム世界での冒険はドキドキさせられてとてもおもしろく読み進められました。ただ,麻矢(精霊)の話し方には少々違和感を感じました。子どもたちの使う言葉には流行り廃りがあります。しかも,その移り変わりはあまりにも急で,あっという間に死語となっていきます。児童文学においては,一時的な流行語はあまり使わない方がよいのかもしれません。
結局,ヤーたちがどうなったのか,はっきりとしないまま麻矢は現実世界に戻ってきてしまいます。お姫様だとわかったリーナとの恋はどうなってしまうのか…。何だか気になってしまいました。(05/02/06)
「ながくる おうゆき こうこう こうゆき おうゆき こうこう」
子どもたちが声を張り上げ祭りに出かけていくと,どこからともなく白い小さな子たちが現れるのでした。
「ながくる おうゆき こうこう こうゆき おうゆき こうこう」
「おうゆきんさい」は雪にあうお祭りです。
雪の降るお話だけれど,不思議と心が温まってきます。雪というと,わたしは「仕事に行きにくくなるな。降らないでくれないかな。」と思ってしまいます。でも,子どもの頃は雪が降るのを楽しみにしていたはず。楽しみに雪を待つ,そういう心をいつの間に忘れてしまったのか…。
また,地域の人たちみんなでお祭りをするという機会にも恵まれなくなってしまいました。このお話を読むと,忘れてしまった大切なものを思い出します。本当は忘れてしまってはいけないのに…ね。(05/01/23)
150年以上前に建てられた古い家。そこには,菜緒のおじいちゃん,おばあちゃん,そしてひいおばあちゃんにあたるさよばあちゃんが住んでいる。その家が取り壊されることになった…。見納めに,菜緒はひとりでこの家に向かった。
日本の古い家屋には,独特の空気があるような気がします。不思議なことが起こってもおかしくないような雰囲気もあります。けれども,それは怖いものではなく,どこか温かいものを感じます。この物語で起こる不思議なことがらも同様です。そして,語り部として存在するさよばあちゃんも温かい。何よりも「ふしぎ」なのは,さよばあちゃんのような人なのかもしれません。(07/01/03)
父の故郷に帰ってきた智が森で出会った少女あまみ。天の海と書くのだと天海は言う。天海にはどこか不思議なところがある。彼女は何者なのだろう。
タイトルも表紙もすてきなこの本。 静かな森,清らかな流れの川や滝。 自然の息づかいが聞こえてくるような気がします。
龍伝説のある村にやってきた智は森で会った天海と何か縁があるようです。天海の方は智をよく知っているようなのに,智はさっぱり思い出せません。でも,天海に惹かれていくのです。
天海と智の出会いは,智が二歳の時。お互いの存在によって助けられていたふたり。
天海は何者なのか,龍伝説とどのような関わりがあるのか。
本文に入る前の扉の言葉が,とても印象深く残っています。大人になった智の言葉なのでしょうか。
この村に行って,龍を見てみたくなります。(07/01/27)
風町…それは,どこにでもあって,どこにもない場所。
魔法好きのあかりがふとしたはずみでやってしまったこと…。そのせいで封印されていたはずの魔女がよみがえった!
魔女ってよい人,悪い人? 最近のお話に出てくる魔女はよい魔法使いというイメージが多いのですが,こちらの魔女は悪い魔女です。
あかりは魔法使いになりたい女の子ですが,本物の魔女に出会って,魔法とは何なのか考えるようになります。
自分のやりたいことを自由に叶えられるのが魔法なのかな? 魔法に憧れる子はたくさんいるけれど,何のために魔法を使うのか,考えないとね。
※余談ですが,山口美由紀『タッジー・マッジー』というマンガに「魔法とはなんぞや?」という問いが出てきます。その答えは「可能性を見つけること」だったかな。(07/01/02)
ぼくたちは今日から黒い兄弟だ!友情は永遠だ!
アニメ『ロミオの青い空』の原作。かつてこんなふうに子どもたちが売り飛ばされていたということに驚きを感じるお話です。
アニメでは主人公の名前が思いっきり違いますし,煙突掃除夫になるいきさつもけっこう違います。ジョルジョというのが原作の方での名前。ジョルジョとアルフレドの友情という点ではけっこう読み応えがあります。
でも,アルフレドは中盤であっさりと死んでしまいます。その後はカセラ先生というお医者さんと出会い,これまで信頼してきた親方に信じてもらえなかったことがきっかけとなり,脱走することになります。そして,さまざまな苦難を乗り越えて,ようやくスイスのカセラ先生の元へとたどり着くのでした。
ジョルジョはそこで,先生の息子と仲良くなり,アルフレドの遺言を果たすため,一緒に出かけていきます。遺言は「妹のビアンカの兄になって見守ってほしい。」その後,9年の歳月が流れ,ビアンカとジョルジョは結婚し,ジョルジョの両親の元へと帰っていきます。ジョルジョは新任の教師としての里帰りです。読み書きのできなかったジョルジョがここまでなるのには相当苦労したはずです。でも,その様子は描かれず,立派な大人になったジョルジョの姿だけが描かれます。
正直,原作よりもアニメの方が話としてはおもしろいし,感動的かもしれません。(05/11/21)
神の野「コウヤ」で,吾郎たちは金色の竜と出会う。「コウヤ」から帰るにはどうしたらいいんだ?
鎌倉時代を舞台にした児童書ってあまりないような気が…。1巻目は「金色の竜」です。
個性的な3人の子どもたちも魅力的ですが,どこかとぼけた竜の方が気に入ってしまいました。(05/04/17)
2巻目は「まもりの刀」です。あいかわらずおちゃめな竜(金竜)が登場しています。
主役の3人の子どもより存在感がある…(笑)。 でも,前作は登場人物紹介という感じで終わっていましたが,
今回はきじゅ丸の秘密が少し明かされてきました。
展開が気になって,あっという間に読み進められました。 さらに,カギを握っていそうな新たなお子さまが登場!
この子がまたとんでもなく個性的です…。 この面子で果たして旅は続けていけるのでしょうか。(06/02/12)
『コウヤの伝説4 ふぶきの山』です。途中3巻が抜けてしまいましたが,最終巻の感想UP!
かなり速いテンポでラストまで駆け抜けていった感じがします。ページ数も多いので,本来2冊分にするところを1冊にまとめてしまったのかなという気もします。
さまざまな苦難を乗り越え,成長していく吾郎たち。また,きじゅ丸がかっこよくなりました。友情も深めていきましたが,ラストはよい意味で予想外の展開となりました。
コウヤでの物語は終わってしまいましたが,この後,吾郎はどうなるのか一番気になります。
そういえば『妖界ナビ・ルナ』と四神が登場するところが似ていましたね。他にも四神の登場する物語やマンガはたくさんあり,それぞれの四神像があるので,「この四神はこんな性格なのね〜」と楽しみながら読んでいます。
時海さんの本は中・高校生向けもかなり出ているようです。時海さんは考古学や歴史にとても詳しい方なので,他の本も読んでみたいなあ。
(07/01/20)
ぼくのところに不思議なタコがやってきた。このタコ,しゃべるんだ!しかも,自分は宇宙人だっていうんだよ…。
どう見てもタコにしか見えないけれど,宇宙人のミシェール。いろいろやってくれるので,続きがどうなるのかワクワクしてきます。ミシェールは不思議な力を持っているのですが,どうもその使い方がいまひとつ。騒動へと発展してしまいます。
でも,ミシェールはいつでも一所懸命。本人はいたって大まじめ。ラストはちょっと切なく…と思っていたら,やっぱりミシェール!ぬかりなく大失敗をやってくれました(笑)。
この本を読んだ子は,いろいろと質問したいことがあるらしい…。ミシェールが使うオクター語の解読に勤しんでいました。(03/11/24)
ぼくはまんまるネコ。丸い物を見ると,つい同化したくなっちゃうんだ。いろいろなところにかくれているぼくをみつけてくれタマえ!
絵本です。基本は,あちこちのページにかくれている「たまタマ」を見つけることだと思うのですが,それぞれのページにはもっといろいろなものがかくされています。一度見ただけでは気づかなくても,何度も見ているうちに「あっ!」と驚く発見が必ずあります。また,1月から12月までの月に合わせて絵が描かれていて,日本の伝統的な風景や季節を味わうこともできるのです。
さらに,たまタマには公式サイトがあります。絵本では味わえない,もう一つのたまタマワールドをお楽しみください。(04/10/10)
公式サイト→「たまタマオフィシャルホームページ」
桃から生まれたのが「桃太郎」なら,ママから生まれたのは「ママたろう」だ!
敬語って知っているかい?親しき仲にも礼儀ありとも言うよね。敬語ってどんなものなのかな。
児童文学ではありませんが,とてもお勉強になる本なのでここで紹介いたします。
一言で「敬語」と言うけれど,大人でも意外と使い分けが分からない場合が多いのではないでしょうか。「尊敬語と謙譲語って違いは何?」そんな疑問を持つ方,お子さんに質問されて困っている方には,ぜひこの本をお薦めします。ただ,大人は,「間違ったらどうしよう」とドキドキしますが(笑)。
この本は,子ども向けに敬語を説明しているので,大人が読んでもすんなりと頭に入ります。クイズがたくさんあるのも魅力。
先日,授業で本の最初の方を使って尊敬語,謙譲語,丁寧語の違いを説明しました。3年生でもけっこう理解できていました。その後,子どもたちはあいさつクイズに挑戦し,楽しんでいました。わざと違う答えを選ぶ子もいましたが…(笑)。朝バージョンで時間切れとなったので,残りは休み時間に数名で集まって解いている子たちもいました。
子どもも大人も一緒に楽しく学べる敬語の本。(05/10/02)
本日,第2巻を使って敬語のお勉強をしました。三択のクイズ形式になっているので,子どもたちは大喜び。最初の10問は比較的簡単だったようで,パーフェクトがいっぱい出たのですが,次の10問は間違い続出!平均して,7問くらい正解していたくらいかな…。「そんな言い方,聞いたことないよ〜!」という子もたくさんいて,敬語は普段からよく聞いていないと身に付かないのだなと思いました。
やはり,身近な大人がしっかりと使わなければ!!(05/11/14)
全3巻が発売となりました。第3巻は『間違いやすい敬語』です。けっこう言い間違っている敬語があってドキドキ…(汗)。敬語って大事だなあとつくづく思います。
みかこさんならではのおもしろいイラスト&セリフもあります。(05/12/10)
みんな,先生や家の人が話している言葉を聞いて「それ,どういう意味?」と思ったことはないかい?これを読めば,語彙力アップはまちがいなし!
四字熟語や難読地名など,非常におもしろい内容です。前に掲示板で話題になっていたことも入っていて思わず笑ってしまいました。
もう少し早く手に入れば,子どもたちに見せられたんだけどなあ。 24日に修了式だったので,見せられませんでした。
このシリーズは3年生の子どもたちに人気があって,みんなでクイズを解きながら楽しんでいます。全3巻です。
敬語のシリーズも,もちろんよく読まれています。 (06/03/26)
みんなで楽しく早口言葉に挑戦!さあ,誰が一番上手に言えるかな?
全3巻。この巻には,早口言葉の作り方まで載っているので,興味を持った子はすぐ挑戦するのではないかと思います。
わたしは早口言葉が苦手で,まともに言えません(笑)。 クラスではお子さまたちがチャレンジしてくれています。
回文の時も思ったのですが,ながたみかこさんって言葉遊びがとても上手です。しかも,誰でも簡単に作れるということを紹介してくれているので,子どもたちも興味を持ってくれます。(07/01/20)
『教科書に出てくる歴史年号を語呂あわせで覚えよう』 ながた みかこ
「歴史の年号って覚えるのが大変!」って思ったこと,ありませんか?そんなあなたに,みかこ流歴史年号語呂合わせをお届けいたします!
全3巻です。わたしは歴史上のことがらを知るのは好きなのですが,年号が覚えられなくて学生時代にとても苦労しました。語呂合わせで覚えている年号もいくつかありますが,それはほんのわずか。テストはいつもさんざんな結果でした。この本が学生時代にあったら…。
ん?今からでも遅くないか?(07/05/05)
「文法なんてめんどう!そんなの知らなくたって,日本語しゃべってるもん!違くない?」そう言った君の日本語は,すでに文法が間違っているのだが…。この本を読んで,文法について学びましょう!
全3巻です。今回の文法の本は,ちょうど「主語述語」について習ったばかりなのでタイムリー。みんなで頭を寄せ合って読んでいました。文法が苦手な子も,これを読むとわかりやすくなると思います。3巻目には原稿用紙の使い方も載っていて,ありがたい!質問してくる子に「ここをよーく見てごらん!」とふせんをつけたページを教えてさしあげることにしました(笑)。(07/05/05)
上から読んでも下から読んでも同じ文章になる回文がいっぱいつまったこの本。頭の中から離れない文も続出!
ある日の朝のこと。教室にいると昇降口が開く時間になり,子どもたちの声が聞こえてくる。……いや,バタバタバタバタという足音の方がはっきり聞こえる。
足音の主は教室に入るやいなや叫んだ。
「いっちばーん!」
「おーい,今走ってきた人,やり直しね♪廊下は校庭じゃないよねー。教室は逃げないから,走ってこないの!!あいさつもしていないじゃーん。」
すると,足音の主はこう言った。
「あ,おはようございます。いや,教室は逃げないけどさ,本が…。」
「はい?本も逃げないよ?」
「本も逃げないけどさ,回文の本,他の人にとられちゃうもん!」
「本が読みたくて廊下ダッシュしたの?」
(これ以上ないくらい真剣な顔で)「うん!」
「……ねえ,今教室にいるの,君を入れて2人だから,とられないと思うよ…。2冊あるんだからさ。」
「よかったー!」
足音の主は,結局ランドセルを猛スピードで片付け,無事に『上から読んでも下から読んでもまさかサカサマ 回文ゲーム』を読むことができたのであった。
これ,昨日あった本当のできごとです。 その後登校してきた子も,回文の本を読んでいました。相当気に入った模様です。(07/04/22)
核兵器が使われてしまったこの世界。生き残っているのは,ぼくしかいないのか…。
もともとは『六年目のクラス会』という本で20年ほど前に出版されていました。今回,『The
End of the World』というタイトルで復刊されました。
この話,20年近く前に読んだときに,とても怖かった覚えがあります。『六年目のクラス会』というタイトルと,ズッコケの那須さんの本ということで読んだのですが,予想していたのとまったく違っていました。
去年古本屋で『六年目のクラス会』を見つけたので即購入しましたが,復刊されている方も手に入れました。
『六年目のクラス会』で復刊ではなく,『The End of the World』で復刊されたことに意味があるのでしょう。それだけ,『The
End of the World』の内容は,今考えなければならないことなのだと思うのです。
図書館の書庫には『六年目のクラス会』があると思います。その最初に収録されているのが「The
End of the World」です。那須さんのお話は,今読むとズッコケ以外のものの方がずっといいですね。教科書作品で紹介している「まぼろしの町」も,『The
End of the World』に収録されています。「六年目のクラス会」は「約束」という原題に戻して収録されています。
あと,小松良佳さんが絵を担当している少年山賊のお話もおもしろかった。別の本なのですが,『大あばれ山賊小太郎』と『気球にのった少年』です。
個人的に,小松良佳さんの絵って好きです。富安陽子さんの『ほこらの神さま』や芝田勝茂さんの『マジカル・ミステリー・シャドー』の絵も担当しています。(03/08/17)
子ども時代は永遠じゃない。いつかは卒業して大人になるんだよ。
ズッコケシリーズ最終巻です。27年で50冊。ほぼ1年に2冊刊行していたことになります。
今でこそ,誰でもが知っている大人気シリーズとなっていますが,出版された当時はかなり風当たりが強く,「ズッコケなんて読んでいないで,ちゃんとした本を読みなさい。」などという声も聞かれました。
でも,当時の小学生は,小難しい文体で説教じみている分厚い本より,スラスラッと読めてハチベエたちに共感できるズッコケの方がずっと好きだったのです。さらに言うなら,厚めの本なのに読み切れてしまうことも,ズッコケシリーズが受け入れられた要因かもしれません。ハチベエたちは子どもにとってとても身近に思える存在で,ズッコケを読んでいるとハチベエたちの仲間になって一緒にさまざまな事件を体験しているような気持ちになったものでした。
さて,最終巻です。ズッコケ三人組もついに小学校を卒業します。
作中でモーちゃんが「なんだか二十六年くらい,ずっと六年生やってたみたいな気がする。」「なんどもゴールデンウィークがあったり…。夏休みもなんども,なんどもくりかえしたような気がするんだよ。」と語っているところに大ウケ!そう,確かに君たちの六年生は長かった。ハチベエたちは永遠に六年生のままなのかなって思っていた…そういう読者は多いはず。
けれど,ついに卒業の日がやってくるのです。
卒業だというのに,ハチベエたちは相変わらずです。彼らに卒業という意識はあまりないのかもしれません。
そんな彼らに,作者は容赦なく卒業という現実を突きつけます。ずっと毛嫌いしていたタクワン(宅和先生)が退職すると知ったハチベエは「先生,やめちゃだめだよ!」と泣きながら訴えます。この話はこの場面で終わるのです。この後,タクワンが退職することは間違いのないことであり,ハチベエたちは,二度とタクワン先生に教わることはないでしょう。このことは,ハチベエたちが本当に卒業してしまうのと同時に,読者も完全にズッコケから卒業させてしまっているように思えてなりません。
作者からの,
「ものごとには,はじめがあり,そしておしまいがある。永遠につづくと思っている,きみの子ども時代も,やがては卒業式をむかえるのだよ。」
という言葉がすべてを物語っているようにも思います。
卒業後のポツンとひとり取り残されたような寂しさを感じずにはいられず,ズッコケシリーズのラストとしてふさわしい物語です。(05/01/10)
歴史に「もし」はない。でも,もし,日本が太平洋戦争に勝利していたらどんな世の中になっていたのだろうか…。
日本が太平洋戦争に勝利し,軍部が力を持ち続けているパラレルワールドに入り込んでしまった省平と大二郎。きっかけは,学校の屋根裏に入ったこと。違う世界にやってきてしまったふたりは最初とまどいますが,しだいに慣れていきます。また,屋根裏へ行けばいつでも元の世界に戻れると気楽に構えていたのです。
けれど,いよいよ戻れるというときに,とんでもないアクシデントに見舞われるのでした。
読み始めた当初,わたしも二人と同じように,きっとこのパラレルワールドから最後には帰ってこられるのだろうと思っていました。けれど,結局二人に残されたのは,パラレルワールドで生きていく道だけでした。
「おれたちはおれたちのやりかたで生きていくしかないさ。」
「おれたちには,この世界しかないんだもんねえ。」
そう語る二人。小学校六年生の語る言葉としては非常に重いのではないでしょうか。
パラレルワールドと元の世界とは実は似通った部分が多くあります。そのため,省平は授業中にどちらがどっちの世界のことなのか混乱してしまいます。戦争に負け,平和憲法の下,日本は再び戦争を起こさないはずなのに,軍隊ではないけれど自衛隊が存在しているのはなぜなのか。日本は本当に平和な国なのか。省平を通じて,作者は読者に問いかけているように思えます。
「もはやおれたちに,もどるべき世界はないのだ。いやでも,このけったくそわるい日本のなかで,せいいっぱい戦っていくしかない。もっとも,いったいだれと,どんなふうに戦っていいのやら,見当もつかない。ひょっとしたら,そいつを見つけるための戦いなのかもしれない。」
ここでの「日本」はパラレルワールドの方なのですが,実は現実の日本を指しているのではないかと感じました。
この作品が発表されたのは,1975年のことです。30年も前になります。けれど,古さなんてまったく感じません。大人もこの作品を読んで今の日本を考えるべきなのではないかと思います。
それにしても,那須正幹さんの作品は本当に奥が深い。「ズッコケシリーズ」もいいけれど,その他の作品にこそ那須さんの魅力があふれているように思います。(05/05/01)
ヒカリはボーイッシュな女の子。ヒカルは読書が好きな男の子。2人はまったく似ていないけれど,ふたごなのです。
ヒカリは親友の花菜に修斗先輩への告白の手伝いを頼まれます。でも,男の子と遊ぶのが大好きなヒカリには「好き」という気持ちがどうもよくわかりません。そこで,ふたごのヒカルに相談することにしました。
最初はボーイッシュでスポーツ万能なヒカリが「好き」ということについてどう考えるようになるのかなと思って読んでいたのですが,途中で花菜の変化の方が大きかったのでそちらに気をとられてしまいました。
花菜は,好きな人に告白するのも,その後のデートのことも全部人任せ。自分では何もしません。それを全部手伝ってしまうヒカリにもびっくりですが…。
結局花菜は「好き」ということをよくわかっていなかったことに気づきます。内気で自分から友だちを作ろうとしていなかったのに,いきなり彼氏を作りたいなんていうのは無理だということにも気づきます。失恋してしまったけれど,そこから得たものはたくさんあり,どれも価値のあるものばかりでした。男女問わず気楽に話せるようになったり,自分からみんなのために行動したりと,今までの花菜だったら絶対にできなかったことでしょうね。
登場人物の中で一番魅力的だったのは恵美です。出番は少なかったけれど,とにかくサッカーが純粋に好きで,夢中になっている,こういう女の子っていいなあ。
結局,主人公だと思われるヒカリにはあまり魅力を感じないで終わってしまいましたが,「本当の好きが見つかるまでいろいろ経験してみる」という考えに至ったのはいいかなと思います。ヒカルは「好き」を実感しつつあるようです。この後,花菜とさらに仲良しになれたらいいですね。
ところで,ふたごのお母さんが書いている小説のタイトルが「アルフライラ戦記」となっていたことに大ウケしたのはわたしだけでしょうか?(06/06/18)
ぼくがその少年を見かけたのはスクールバスに乗っている時だった。彼は,脇目もふらず,とてつもない速さで走っていったんだ。彼はいったい何者なんだ?
帯紙に「アメリカからすごい本がやってきた!!」と書かれていたのですが…「すごい」というところまではいかないかなというのが実感です。でも,非常に読みやすく,読後感も爽やかです。おもしろいですしね。
主人公のロイ(ROYと同じ名前♪いや,だからどうというわけじゃないんだけど…)は中学生。転校生です。学校一の乱暴者であるダナにいつもちょっかいを出されています。いじめを乗り越えていく話なのかなと思っていたら,そうではありません。まあ,最終的にはダナに勝つことになるのですが,もともと一方的にロイがいじめられているという感じではなく,ロイも抵抗しているので,ダナとのことはおまけかな…。
それよりもメインになるのは,裸足の少年とその姉ベアトリス(FF9だっけ。この名前の強いお姉さんが出てきたの。)とのこと。裸足の少年をスクールバスの中から見つけたロイは,少年に関心を持ちます。その少年が何者なのか,何をしようとしているのか。始めは頑なだった少年とベアトリスも,徐々にロイにうち解けてきます。
ロイは,基本的には恵まれた環境で育っています。一人っ子だけれど,理解があり愛情を持って接してくれる両親がいます。それに対し,少年とベアトリスは家庭環境に恵まれていません。けれど,自分で生き抜いていくたくましさを持っています。それぞれ環境は違うけれど,子どもたちに共通しているのは,正義感を持ち,間違っていることに立ち向かっていこうとする姿勢です。とる行動は違っていても,基本的な精神は同じというのかな。ふくろうとそのすみかを守ろうと,彼らはさまざまな行動をとります。(環境保護に対する社会の姿勢を見直せという作者の意図も感じられますが。)子どもたちの活躍ぶりを読んでいるうちに,自分もこんなふうにしてみたいと同年代の読者は思うのではないでしょうか。(03/08/17)
虹のような七色の光の輪の中,突然現れたとんがり屋根の洋館と緑の広場。そこには,ラベンダーさんという不思議な人が住んでいたの!
4年生の真子たちは,ラベンダーさんの洋館へ出かけていくようになります。そこは,楽しく勉強したり,芝生の上で走り回ったりと,まるで夢のような世界なのです。こんなすてきな日々を送れるラベンダー塾。真子たちの仲間になりたいと思う子はたくさんいるに違いありません。
それにしても気になるのは,ラベンダーさんの正体…。いろいろ不思議なことを可能にしてしまうのです!やっぱり魔女なのかな?(03/08/18)
鬼の助の望みは,悪さをして鬼の世界で一番になること。そのために,人間を食らおうとしている。人間の赤ん坊に化け,人間の中に紛れ込んだ助だが,人間たちはみんな助のことを「好き」と言うのだった…。
子どもたちに読み聞かせをしたところ,こんな声が聞かれました。
「助がいつ人間を食べちゃうんだろうってどきどきしちゃった。」
「最初は,助ってすごく悪い奴って思ったけど,本当は悪い奴じゃないんだよ。」
「何だか助がかわいそうだったよ。」
「助は,結局鬼にはなれなかったていうことなのかな。」
「鬼にはなれなかったけど,人間のことを好きになれてよかったんじゃないの。」
「でも,鬼の中でえらくなりたかったのになあ…。そうなれず,死んじゃったのはかわいそうな気がするよ。」
「だけどさ,鬼の世界ではダメでも,みんなに『好き』って言ってもらえて,助もみんなのことを好きだと思うようになったんだからいいと思うよ。」
助が赤ん坊に化ける場面や,助が「人間を食ってやる」といいつつも村の子どもたちと一緒に遊んでいる場面では笑いも起こりました。
鬼としての助は,英雄ではないかもしれないけれど,人間としての助は誰からも好かれる魅力的な人物なのだと思います。
村人の誰からも鬼とは知られず,「好き」という感情を知り,人間として死んでいった助。村人たちは,ハクレンを見るたびに彼を思い出し,ずっと彼のことを好きでいることでしょう。(05/11/09)
ひとり暮らしの正蔵じいさんのところに,とびきりの笑顔の「わらいっ子」がやってきた!わらいっ子を見ているうちに,正蔵じいさんは何だか嬉しくなってくるのです。
正蔵じいさんは奥さんを亡くしてひとりで住んでいます。近くに住む娘の咲さんが毎日様子を見にやってきてくれるのですが,具合が悪くて訪ねていけないと電話をしてきました。娘が親の様子を気にかけて面倒を見るのは当たり前だと思っている頑固者の正蔵じいさんは,咲さんが来ないのでイライラ。年をとり,仕事も辞めてひとり暮らしになると,その生活はとても寂しいものになってしまいます。そんな正蔵じいさんの様子をみていて,頭に思い浮かんだ人が一名…。
そんな時に現れたわらいっ子。この女の子と一緒に過ごすうちに,正蔵じいさんはとても生き生きとしてきます。わらいっ子は弟や友だちも連れて来るようになります。子どもたちのために,正蔵じいさんはすべり台を作ったり,飲み物を用意したりするのでした。
それにしても,このわらいっ子はいったいどこの子なのでしょう? 大人だとおそらく,途中で予想をするのではないかと思います。わたしは二通り考えついてしまい,どちらかなあと迷いました。思いっきりネタバレになりますが,子ども時代の咲さんか,咲さんのお腹にできた赤ちゃんのどちらかではないかと思ったのです。でも,わらいっ子の弟が出てきたり,友だちが出てきたりしたので,子ども時代の咲さんかな…と思ったのですが,ラストを読むと,そのどちらでもあるのかもしれないと思いました。
なくなる命もあるけれど,生まれてくる命もある。今ある命を大切にしていくことで,次の命へと繋がっていくのでしょうね。(07/02/11)
四年一組では不思議なことがおこるんだ。くしゃみをすると,身近にあるものがしゃべりだしちゃう!
シリーズ第1作。先に第2作,3作を読んでしまいました…(汗)。 短編連作になっているので,どのお話から読んでも問題はないのですが,第1話から読んでいくと,なぜこの子がこんな行動をとったのかというのが明らかにされ,そうだったのかと納得させられます。
四年一組は全部で32名。1冊で4名の話が載っているので,全員の話が終わるのは8冊目ということになりそうです。
それぞれにまつわる物語は「そうそう,こういうことってある!」と身近に感じられることばかり。子どもたちが共感しやすいのではないかと思います。(07/01/06)
くしゃみをすると何かが起こる!?さて,今回はどんなことが…。
シリーズ第2弾。実は,1冊目を読んでいなくて…。しまったと思いました(汗)。もちろん,2冊目から読んでも問題はありません。
今回は幽霊が登場するお話が多かったなあ。でも,どれも幽霊が悪さをするのではなく,この世に何かしら思いを残しているのです。その思いが切なくて,幽霊が恐いなんていう気持ちはふっとんで,何とかしてあげたいという気持ちがうまれてきます。(05/10/18)
何で自分の名前はこんななの?わたしには全然似合わないよ!
自分の名前は自分では決められません。子どもにしてみれば「何でこんな名前付けたの!?」と思うこともあります。でも,名付けた側にだってちゃんと思いがあるのです。わたしは,子どもたちに自分の名前の由来を調べる宿題をよく出します。キライだと思っていた名前であっても,その意味を知れば愛着がもてるのではないかと思うのです。自分の名を嫌うというのは,自分自身も嫌うということに繋がりかねないのではないか…そんなことも思ってしまいます。
このお話は,子どもたちの名前に対する思いをよくくみとっていて,とてもリアルです。ぜひ,多くの子に読んでもらいたいですね。(06/05/21)
ウソをつくことって誰にでもあるよね。今回は,ウソにまつわる4つの物語です。
初めは小さなウソだったのに,それをごまかすためにどんどんウソを積み重ねなくてはならなくなってしまった経験ってありませんか?
ウソって本当に恐ろしい。でも,自分を守るためについウソをついてしまう。そして,心の中に何かもやもやとしたものが残ってしまう…。
このお話を読んで,ウソについて子どもたちが考えてくれたらいいなあと思いました。
このシリーズの良さは,クラス全員が必ず主人公になれるところ。どんな子にだって,自分の物語があり,抱えているものがあります。作者はこの四年一組の担任の先生のような存在ですね。こんなふうに,一人一人を見てあげられたらなあと思います。あと4冊,全員の物語をぜひ読んでみたい!(07/01/07)
美少女で運動神経抜群で成績優秀。武術とバイオリンをたしなむわたくしを,人は「天下無敵のお嬢さま」と呼ぶのです。
私立の小学校がどうなのかは知りませんが,公立の小学校に通う子はこのお嬢さま,菜奈のようには話さない…と思います,たぶん。菜奈の話し方は,上品で本当に「お嬢さま」という感じです。最初から最後まで,この話し方は崩れません。私立の名門校に通う従妹の綾香の方が,少々砕けた話し方をしています。でも,このお嬢さま,実際にはバイオリンよりも武術の方に長けているのです。
菜奈と綾香は見かけがよく似ているのですが,中身はまったく違います。綾香は菜奈の持つ個性にあこがれというかねたましさというか,そんな思いを持っています。菜奈の方は,親に大切にされている体の弱い弟や,綾香をうらやましいと思っているのですが,そんな様子は見せません。母親を恋しく思いながらも,そんなわがままを言ってはいけないのだと必死に自分の気持ちを抑えている菜奈は,決して天下無敵のお嬢さまではないのです。時には,「自分はいらない子かもしれない」と思ってしまうこともあるのです。そんな菜奈の本質に気づいている人は,物語中にはわずかしか出てきません。庄司陽子『生徒諸君!』に出てくるナッキーを思い浮かべてしまいました。
そんな菜奈ですが,持ち前の明るさですてきな友だちを作っていきます。お年寄りでも子どもでも,誰とでも仲良くなれるのは菜奈の良さ。
その存在に救われている人はたくさんいるのですが,本人はそのことには気づいていないようです。
第2巻では,政治家による歴史の改竄という話題が出されます。時の政権を握る権力者によって,都合のよい歴史に塗り替えられないよう,真実を伝えていくということについても触れられています。大人が読むといろいろと深読みができる物語です。
イラストは『夕凪の街 桜の国』のこうの史代さんです。(07/01/06)
「わたしらしいって何だろう」自分は自分のことをどれだけわかっているのだろう。自分ですらつかみかねるのに,ましてや人のことなんてどれだけ理解できるというのだろう。
自分の中学生時代を彷彿とさせる物語でした。女の子なら誰でもこの道を通ってきているのではないかとも思いました。
自分のやりたいことが見えず,思っていることを表に出さず,自分をごまかしながら行動する杏。
甘え上手で幼い感じがし,杏を「いちばんの親友」だと思っている美香。
バドミントン部のエースで,美香の面倒をつい見たくなってしまう樹里。
3人は同じクラスで仲良し三人組に見えるけれど,それぞれ微妙なバランスで友だちとなっています。というよりも,友だちを演じているという感じです。
美香は杏を一番大切だと思い,世話焼きの樹里を少々うっとうしいと感じている。
樹里は美香を一番大切だと思い,美香が信頼を寄せる杏に嫉妬している。
杏はどちらとも距離を保ちつつ,本音を出さないで接している。
そんなとき,杏はクラスの中で気になる存在,真由子を見つけます。今まで自分とは縁がないと思っていた真由子。でも,誰よりも近い存在である真由子。
杏が真由子と一緒に行動することで,3人のバランスは崩れ始めます。
友だちって何なのでしょう。席が近い,同じ部活だから友だちとして一緒に行動しなければならないのでしょうか。わたしは中学生の頃,同じ部活の人たちと一緒に行動するのは嫌いでした。行き帰りを何故一緒に行動しなければならないのか。ダラダラ歩きながらいつまでもおしゃべりしている彼女たちが大嫌いでした。
だから,クラスでは同じ部活の子とはほとんど一緒にいませんでした。集団でトイレに行くのも嫌い。部活の内輪もめなんて日常茶飯事で,いつでも誰かをはじきだしていないと気が済まない人たちにうんざりしながらも,部活を続けていたのは,純粋にバスケットが好きだったから。ただ,そのために部活をしていたのです。
親友なんて言える存在はないのだから,うわべだけで接していればよいのだと中学生のわたしは思っていました。でも,どこかで親友と呼べる深いつきあいのできる友だちが欲しいとも思っていたのです。わたしは,真由子や杏に一番近いのかもしれません。でも,バドミントンに夢中になっている部分の樹里の気持ちもわかるのです。
この話に出てくる,
「わたしたちはわたしたちのすべてを伝えることも,知ることもできない。理解することもできない。それでいいのだ,きっと。」
という文が,すべてを物語っていると思います。 わたしはわたしであって,あなたではないからどうやっても完璧に理解することなんてできないのです。一部を伝え合うことはできても,すべては伝えられない。自分でも気づかない自分も存在するから。けれど,少しだけでも知ることができるし,理解しようと努力することはできる。寄りそいたいと思うことはできる。それでいいのではないのでしょうか。(07/05/27)
うちの隣に不思議な人が引っ越してきた。「名探偵」なんて言っているけど本当なの!?わたしたちは調査することにした…。
激しい雷雨のまっただなかで読みました。「やはりミステリはそういう環境で読まなくっちゃ!?」というわけではなかったんですけどね。
非常に子どもたちに人気のある作家,はやみねかおるさんの本です。名探偵夢水清志郎のシリーズです。今ごろなぜはやみねさんなのか?はやみねさんが小学校の教員であったことを知り,ご本人のHPに行ってみたのです。そこで見つけた「教職セミナー」という雑誌に連載していた文章を読んで大爆笑!こういうおもしろい人が書いた本ならぜひ読まなくてはと思い,手に入れたのがこの本だったのです。
この本は非常に読みやすいです。けっこう分厚い感じがしますが,そんなの気になりません。この名探偵が実に個性的!こんなんで本当に探偵業が務まるんかいと思うくらい,いい加減な生活をしている人ですが,非常に洞察力があるのです。名探偵と行動を共にする,隣に住む中学生の三つ子姉妹もいい味出しています。見かけはよく似ている3人だけど,性格や趣味はまったく違います。この3人に面倒を見てもらっている名探偵夢水さんの活躍や如何に!(…うん,夢水さんが面倒を見てあげているんじゃないな,絶対。)
でも,1つ突っ込んでいいかな。三つ子って,そんなにそっくりな外見にはなりません…。一卵性ならともかく。でも,一卵性もけっこう違ってくるのです。一卵性で,利き手が逆というのはよくあるみたいですね。こういう双子は見分けやすくていいです。でも,利き手が同じでも,けっこう違いが出てくるから,見分けはつきます。双子や三つ子を今までに何組か受け持っていますが,見分けがつかなくて困るということはそんなにありません。ただし,受け持ったことのない双子は見分けられないことがしょっちゅうです。あまり普段接していないから違いがわからないのです。(03/08/17)
はやみね作品はシリーズになっているものが多いので,単発で読めるものにしようと思ったのですが,これもシリーズものになっていました。創也は頭脳明晰,内人は平々凡々という設定のようですが,内人の方が緊急事態に即対応でき,生き延びる力がある気がします。冒険物がお好きな方へおすすめです。(03/11/24)
第2弾がようやく出ました。内人の非凡なる能力が今回もいかんなく発揮!創也と内人,このコンビの会話は息があっているのかあっていないのか…。かなり分厚い本ですが,一気に読ませてしまうのはさすがです。(04/10/10)
『都会のトム&ソーヤ3 いつになったら作戦終了?』が出版されました。
…いや,非常におもしろくて大笑いさせられるんです。でも,創也ってこんなキャラだっけ?内人はあんな感じだと思うけど。
それにしても毎回災難なのは卓也さん。彼はいつになったら念願の保育士への転職ができるのでしょう?
今回はイラストが可愛かったな。内人の作戦終了はいつの日になることやら…。分厚い1冊分をもってしても終了しなかったのだから。ちなみに,この作戦とは,好きな女の子をデートに誘うことです(笑)。(05/04/17)
『都会のトム&ソーヤ4 四重奏(カルテット)』がようやく出版されました。
授業中にエスケープをしたことってありますか? 内人たちのエスケープは用意周到に…計画したと思われたんだけど!?
今回は短編集という感じでしょうか。 1年1冊刊行ペースになりつつあるこのシリーズ(笑)。
だんだん創也が壊れていっている感じがするのは気のせいでしょうか…?
内人と創也なのに,なぜ「トム&ソーヤ」なのかという疑問にも答えてくれているサービス付きの第4巻。
どうしても大笑いしながら読んでしまうこのシリーズ。 登場人物が魅力的なのは言うまでもないのですが,語り口がまたおもしろいのです。
さらに,巻末にはマンガまでついている…。
イラストの「にしけいこ」って,漫画家の西炯子のこと…だよね?『Flowers』に作品が掲載されていることがあります。(06/05/21)
ど,どうしよう!校長先生とぼく,体がいれかわちゃったよう!
太一の学校の校長先生はもうじき定年。でも,子どもたちと一緒にサッカーや野球やおにごっこを楽しそうにやってくれる,みんなに大人気の先生です。
校長先生は,太一の家で作っている栗ようかんが大好き!太一は新作の栗ようかんを校長先生に持っていくことにしました。このようかんには言い伝えのある栗が使われています。この栗を使ったお菓子は「びっくり」「そっくり」「しゃっくり」になるというのです。その意味はわからないけれど,できたお菓子は最高に美味しい!そこで,太一と校長先生はこの栗ようかんを食べたのですが,しばらくすると2人の体が入れ替わってしまいました!そこへ,校長先生を呼び出す放送が…。いったいどうなるの!?
校長先生と児童が入れ替わってしまうという発想がおもしろい!
校長先生の姿になった太一は,ここぞとばかりに学校のルールを自分に都合良く変えてしまいます。その中身が実に子どもらしい!いやなことはぜーんぶなくし,好きなことだけできるのだから。でも,楽しいことばかりではありませんでした。体調管理のために,校長先生の食事は制限があったのです。いいことばかりではないのですね。
また,校長先生の姿なら,他のクラスにも自由に行けます。そこで太一は,6年生のいじめっこの優しい一面をかいま見るのでした。
そして,子どもの軽い体になった校長先生にはやってみたいことがありました。自分が小学生の頃の苦い思い出を精算するために,シイの木に登りたかったのです。子どもの頃は運動神経がなく,他の子の言いなりになってしまっていた校長先生でしたが,太一の体になっている今は,生き生きと木登りをしていきます。
大人になると,生き生きとして輝いていた子どもの頃の自分を取りもどしたい,そんな思いに駆られることがあるものですが,そんな校長先生の思いが今回の入れ替わり劇を生み出したのかもしれませんね。
この校長先生みたいな人が身近にいたらいいのになあと思います。(05/01/23)
アカネは,ナイトメア・ウィルスと夢の世界で戦っていた姉を亡くしてしまった。ナイトメア・ウィルスにかかると,目覚めることなく死んでしまうのだ。アカネは姉の死をきっかけに,夢の戦士として戦いはじめた。
「かがやく明日」はシリーズの第2作…。1作目だと思ったのに…とほほー。でも,2作目からでも十分楽しんで読めます。
「夢」と一言でいっても,本当はいろいろあります。寝ているときに見ている「夢」もあれば,将来の「夢」だってある。でも,もしかしたら「夢」は全部繋がっているのかも知れない…。どちらも,自分が見ているものだから。もしも,挫折したり絶望したりすると,「夢」は消えてしまったり,暗いものになったりするでしょう。そんな気持ちを持ち続けていたら…。
一見,登場人物がかっこよく戦っているように見える物語ですが,心のあり方を問いかける部分もあり,深く考えることのできる作品です。(06/05/21)
ミィは猫又。育ててくれたおばあさんと死に別れ,外の世界に出ていきます。でも,猫又だとわかったとたんに,人々は恐れて逃げていってしまいました。そんなとき,やさしくしてくれる女の子と出会ったのです。
このお話にはいろいろな日本の妖怪が出てきます。妖怪ハンターも出てきます。でも,妖怪ハンターだからといって,どんな妖怪も退治してしまうわけではありません。「悪い」妖怪を退治するのです。
でも,「悪い」というのはどこで決まるのでしょう。雪女の雪乃さんは人間に味方する妖怪です。雪乃の願いは,お互いに戦わず,共に暮らせる日が来ることです。けれど,実際には人間と敵対する妖怪はいなくなりません。
だいたい,妖怪はなぜ存在するのか…。人の悪い心が悪い妖怪を作り出すのか。人々の恐れ,不安などが妖怪となって姿を現すこともあれば,もともと存在する妖怪もいるのかもしれない。人間だって,悪い心ばかりになったら妖怪のような存在になるのかもしれない。
でも,思いやる心があれば,妖怪と人間は友だちにだってなれるのです。(04/10/03)
怪盗の一族に生まれた七海。怪盗なんて胡散臭いものじゃなく,まっとうな人生を歩みたいと思っている小学生。それなのに,母さんや師匠であるおじさんはりっぱな怪盗にしたいと思っている…。何でそんなに怪盗にしたがるんだろう?
七海の怪盗名はファントム。師匠はダークネス。この2人で,賞金や宝の地図がかかっている大会に出場します。怪盗にはなりたくないと思っている七海ですが,宝の地図が手に入れば行方不明の父の所在もわかるかもしれないと思い,大会に出ることにしたのです。
七海は怪盗としてはそんなに見事な腕前ではありません。師匠のダークネスの方がずっと上です。まだまだ未熟な七海くんですが,この先どう成長していくのでしょう。りっぱな怪盗となれるのか!?
このお話は,ミステリや謎解きが大好きな人におすすめです。七海くんになりきって,さまざまな謎を解きあかしてみてください。(04/10/03)
「怪盗になりたいなんて,少しも思っていない。真っ当な人生を送りたいんだ!」そう叫ぶ七海。今回のEX-GP2で優勝したら一人前として認められ,怪盗にならなくてもいいと母親に言われたのですが,さて,うまくいくのでしょうか?
最初のうちはしぶしぶ参加しているような感じなのに,ラストの方ではライバルが出現し,自分で怪盗の修行を続ける決心をした七海。このままだと,怪盗になっちゃうんじゃないかなという気が…。
怪盗になるかどうかはともかく,今までの七海はどこか受け身というかやる気に欠けるというかそんな雰囲気がありました。でも,ライバルの力って大きいですね。過剰なライバル意識はどうかなと思いますが,お互いが向上しあっていくためにはライバルの存在って大切だと思います。
今後,七海がどんなふうに成長していくのか,楽しみです。(05/05/22)
七海のライバル,シャルロットとスマイルの活躍ぶり…。ファントムの活躍は?
今回はライバルのシャルロットやスマイルの成長ぶりが楽しめる1冊でした。じゃあ,主人公のファントムは…まあ,もう少し見守りましょうか(笑)。
どうも主人公よりも脇役の方に目がいってしまうのですが,ファントムも順調に怪盗への道をまっしぐら…って,それは本人としては不本意なのか(汗)。
だんだんと難関になってきているEX-GPですが,ファントムの今後の活躍に期待しましょう!(06/05/06)
携帯に届いた呪いのメール。誰かに送らないと自分が呪われてしまう。それなのに,携帯を先生に没収されちゃった!先生ったら,自分を怖がらせることができたら返してくれるなんて言うけど…。
タイトルだけ読むと恐い話系かなと思いそうですが,まったく違います。本当に恐いのは幽霊やお化けなのだろうか。このお話を読んで,大切なことって何なのか,本当に恐いものは何なのか,そして友だちってどういう人のことをいうのかを子どもたちが考えてくれたらと思います。(05/04/17)
占いって信じますか?それとも信じない?
内気で友だちが作れなかったさくら。でも,転校をきっかけに,友達を作りたいと願います。その時思いついたのが,占いで友だちと仲良くなることでした。
この物語では,占いに対するさまざまな考え方が登場人物を通じて出されます。肯定する人もいれば,否定する人もいる。いいことは信じて,悪いことは信じない人もいる。でも,どれが正しいのか,その結論は出されません。この話を読んで,自分はどう思うのか,それが考えられればいいのかなと思います。
わたしは,最初のさくらのように,何でも占いの結果に頼っているのはよくないと思っています。占いは,自分の都合の良いように解釈できるようになっていると思っているからです。
最後の方でさくらが言っているように,いろいろ迷っていても,自分の中では結論は出ていることで,最終的にはそれをやってみるから占わなくてもいいとわたしも思います。
血液型で相性や性格を決めることはない。友だちは血液型で選ぶものじゃなく,実際にその人と接してみてわかることがいっぱいある。
あとがきに,作者は登場人物の小谷くんの考え方が好きと書いていましたが,わたしも同感です。どんな考え方なのかは…読んでみてください♪(06/06/18)
アトピー性皮膚炎のため,入院することになったきなこ。そこには,長期入院している紗雪がいた。面会謝絶で窓越しにしか会うことができない紗雪と何とかして友だちになりたい!そこできなこは…。
アトピーで苦しんでいる子の辛さがひしひしと伝わってきました。作者自身がその辛さをよくわかっているからこそ,描けたのでしょうね。身近にいるアトピー性皮膚炎の子も,こんな思いをしているんだなあと改めて思いました。
同じ病院に入院していても会って会話をすることができない2人は,オンラインゲームの世界で会うことにします。そこでの2人は元気いっぱい。現実では病気であっても,ゲームの世界では元気な姿でいられるのです。でも,決して現実から逃れるためにゲームをしているのではありません。きなこは,ゲームでのキャラクターを設定するときに,たくさんあるかわいいキャラではなく,人型のロボットを選びます。理由は「機械の体は,かいても傷にならないから。」現実の自分がいて,ゲームの中でもそれを反映しているのです。
よく,ネット上と現実でまったく別人という人がいると言われますが,実際には現実と切り離されてはいないのではないでしょうか。現実の自分が持つ夢や願いをネット上やゲームの世界で実現しようとしているのではないかと思うのです。きなこはアトピーでかゆくならない体が欲しい,紗雪は元気いっぱいで自由に動けるようになりたい…。
だからといって,2人はゲームの世界に入り浸りにはなりません。ゲームの中でお茶会をする2人ですが,現実の世界でお互いの顔を見て,声を聞いてのお茶会にはかなわない。クリアしなかったあのゲームのことを忘れたわけではないけれど,もっと大切なことが,今,目の前にあるのだから…。
病気は,自分が治したいと思わなければダメ。逆に言えば,あきらめずに治そうと立ち向かっていけば,道が開ける可能性があるということだと思います。
たくさんのメッセージが込められたお話です。
また,『はてしない物語』を読んだことがある方には「あっ!」と思うことがあちこちで出てきます。
さらに,この物語は横書きの文章になっています。メールや顔文字,オンラインゲームのことなどが出てくるので横書きにしたのだと思われますが,これも効果的でした。解説が精神科医の香山リカさんで,こちらも読み応えがあります。(05/12/18)
鬼は人間と仲良しにはなれないのかな…。
タイトルやイラストを見ただけだとおもしろそうな雰囲気なのです。 でも,主人公のまめ太は鬼の子で,人間達に鬼の一族はみんな鬼の里を追い出されそうになっているという状態。まめ太,大ピンチ!そこに現れたのは,人間と妖怪とのトラブルを解決するというサーカスの一団なのでした。
このサーカスのメンバーはみんな妖怪。 ピエロ団長はまめ太に厳しく,とても意地悪そうなのですが,実は妖怪の悲しさをよく知っています。団長に限らず,みんな妖怪であることの痛み,苦しみ,悲しみを経験しているのです。そして,自分たちの居場所がこのサーカスにしかないということも知っているのです。
まめ太は,そんなことを何も知らずにいたのですが,仲良くなった子の目の前で鬼としての力を発揮してしまいます。本来なら鬼の力を出せるようになり,友だちを助けられて嬉しいと思えたはずなのに,仲良くなった人間にはその姿を恐れられ,逃げられてしまったのでした。
どんなに人間に優しくして,助けてあげても,妖怪である自分の気持ちは伝わらない…。
そんなまめ太でしたが,このサーカスでなら自分の活躍する場があることに気づきます。
妖怪であることの悲しみがあるけれど,人間に喜びを与えることもできるということがわかったまめ太は,次に行く場所でどんな人々と出会うのでしょうか。(06/05/06)
伝説の海賊船,ユーラスティア号は不思議な力で人々を救ってくれる。その船長,ユーリには大きな秘密があった…。
1巻目は続きがどうなるのかとても気になる終わり方で,次の巻の発売が楽しみでした。未来から来た少女(といっても,それは外見上のことで,実年齢は200歳を超えるのです!)のかっこいい振る舞いとその奥底に抱えている悲しみや苦しみにドキドキさせられました。読んでいる途中で何となく「クロノクロス」というゲームを思い浮かべました。時を扱っている話だったからでしょうか。この本を学級文庫に置いたところ,あっという間に借りて行かれてしまいました。
2巻目は解説が上橋菜穂子さん。ユーリのお話はいったいどこまで続くのか…だいぶお話が大きく広がってきた感じがします。でも,これはおもしろい。ユーリの背負っているものの重さから,いつか解放されて欲しいですね。どちらかというと,女の子向けかな。続きが早く出るとよいのですが。(02/08/16)
3巻目は解説が芝田勝茂さん。読んでいて,「うん,その通り!」と思うことがたくさん書かれている解説でした。この巻では海賊見習いの少年,ザーナンの過去が明らかになります。実は,このザーナンは密かに(いや,大っぴらにかも)クラスの女の子たち(6年生)の間で人気があるのです。女の子たち曰く,「ザーナンはしゃべれないけれど,優しいし,そんな彼の吹く笛の音を聴くときっと癒されるんじゃないか。」というのです。
でも,一番の人気者はやっぱり主人公のユーリです。女の子たちは,「冒険や海賊の話ってわくわくするから好き。こんな冒険,自分もしてみたい。」「ユーリってかっこいい!」と口をそろえて言います。女の子だって,冒険したいのです。このお話は,読んでいて自分も一緒に冒険している気分になってきます。(03/08/17)
4巻目は ガラス職人のゲルトさんが素敵!!主人公に敵対する黒マント(ボルド)自身も気づかなかった心の内を見抜き,彼を救えるよう最高のガラス細工を作ったゲルトさん。みにくいものに,美しいもので戦うと言ったゲルトさん。最高です!
主人公のユーリは未来世界からきた少女。海賊船の船長で,多くの仲間がいるのに,彼女はなぜか孤高の人に見えます。それは,彼女の背負うものがあまりにも重すぎるからなのかもしれません。ゲルトの作ったガラス細工は黒マントだけでなく,ユーリの孤独をも照らしてしまったような気がします。もしかしたら,今回のことでユーリのボルドに対する考えも少しかわったのではないでしょうか。ユーリの手で作り出したものがもたらした憎しみや悲しみを,ユーリ自身の手で取り除いていくことができたとき,彼女は心からの笑顔を見せることができるのでしょうね。
今回は,海賊見習いの少年レニーがかわいい!同じ海賊見習いのノエルという少女のことが好きなのですが,ライバルになりそうな少年の登場であたふたしているのです。実にほほえましいです。
ユーリが孤高の人に見えるのは,彼女がいつでも人から頼りにされていて,逆に弱音を吐いたり頼れたりする人がいないからなのかなとも思いました。海賊見習いの子どもたちは,決してユーリと対等ではないのです。実年齢(200歳以上!)からしても対等にはなりえないのですが。ユーリの心を理解し,受け止めてくれる人が現れたらいいのに。ユーリが幸せになれるようにと祈らずにはいられません。(04/01/17)
第5巻『黒いゆうれい船』が出版されました。先が気になって,あっという間に読み進んでしまった…。読み終わった時には「えー,もうおしまい?もっと続きが読みたい!!」
子どもたちにも大人気。教室に置いたら,即奪い合いになりました。
ユーリは最初から強い少女だったわけではありません。時光石をめぐる事件が起きた時,ユーリは何よりも自分自身を許せませんでした。でも,ドランのおかげで,どんなことがあっても生き抜いて新しい未来を作り出さなければと考えられるようになります。この悲しみをずっと持ち続けながらも,彼女は未来に向かって進んでいきます。こんなふうに考えていくことは,今のわたしたちにもとても大切なことではないでしょうか。また,ユーリが剣の達人になれたのも努力したからだということが明らかになりました。今までは何でもできてかっこいいけれど孤高の人という感じがしましたが,彼女の過去を知って,より身近な親しみを持てるようになりました。
ノエルは今回とても生き生きとしていたなあと思います。彼女はこの先ユーリにとってなくてはならない存在になるのではないでしょうか。
赤の時光石を作ろうと決意したユーリ。この時光石を巡って,きっと戦いが起こるのでしょう。でも,ユーリは争うことを望んではいません。そのとき,ユーリはどうやって解決するのか…。
このお話を読んでいて,アインシュタインのことを真っ先に思い浮かべました。彼は戦争で原爆を使うことを望んでいたわけではないのに,結果的には自分が作り出した物でたくさんの人の命を奪ってしまった。その苦悩はどれほどのものだったのか。何だかユーリと重なるところが多いように思いました。
そして,未だに世の中で起こっている争いや戦争…。暴力や武力以外に解決する道はないのでしょうか…。人の気持ちを思いやること,命を大切にすることは,何度も繰り返し語らなければならないのだと思います。(04/06/27)
シリーズ第6巻『さまよえる宝島』です。
自ら作り出した時光石を完全に壊すため旅を続けるユーリ。今度の行き先は「さまよえる宝島」です。そこには,「真実の宝,若返りの水,黄金」があるというのです。
「真実の宝」とはいったい何なのか,これがこの巻でのポイントになっています。
たくさんの人が宝を求めて集まってきますが,当然争いごとが起こります。人の命を奪う人まで出てくるのです。「人の命を奪う=悪人」といった図式があるように思いますが,自分や仲間の身を守るために向かってくる敵の命を奪うこともあり得ます。この物語の主人公ユーリも,仲間のノエルが敵に捕まったときに「はなしなさい!さもなければ,お前の命はないわ!」と言い放ちます。
けれど,宝島に住むサラは,敵味方関係なく命は大切なのだと,ユーリたちの敵の命も救うのです。
「自分たちの命も大切な宝なのに…。生きようとすることがどんなに尊く素晴らしいか…。」
サラのこの言葉に,作者のメッセージはすべてこめられているように思います。
真実の宝を知ったユーリとユーラスティア号の仲間たちはこの後どのような旅を続けていくのでしょうか…。(05/01/09)
シリーズ第7巻は『指輪のちかい』です。今回は,「死んだ者は生き返らない」という言葉がとても重みを持って語られていたと思います。最愛の者を失ったとき,誰もが「生き返ってくれたら」と願うのではないでしょうか。氷の島の女王キリナも,ノエルも,グリフィスも,もしかしたらユーリも,それは同じだったのだと思います。けれど,死んだ者はどうやっても生き返らないのです。それを忘れてはいけないのです。
ノエルは,忠実な家臣であったのに裏切ったグリフィスと再会します。父母を死に追いやり,弟を行方知れずしたグリフィスのことをずっと許さないと思い続けていたノエル。けれど,最愛の家族を失ったグリフィスの思いを知り,かつて自分も同じ思いをしたことを思い出したノエルは,グリフィスを許すことができました。これまでずっと憎んできた相手を許せたことは,ノエルの大きな成長だと思います。また,今までユーリが持つ青の時光石の力によって助けられてきたノエルでしたが,今回は自分の持つザリア石(時光石のもと)が力を発揮し,ユーリを助けることができました。
たった一人で戦っていると思っていたユーリですが,ようやくさまざまな人たちに助けられていることに気づきます。ユーリも少し成長したようです。また,カイルという時空を超えて現れた青年がこの後どう関わってくるのか,先が気になります。(05/06/19)
第8巻は『剣にかがやく星』です。ついに赤の時光石が完成!と同時に,黒マントの男も動き出した…。
今回は,レニーが主役と言ってもよいかもしれません。彼の成長ぶりに驚かされました。レニーの優しさ,責任感の強さ,人を思いやる心,そういったものが哀しい心の持ち主であるロードの心を救ったのでしょう。ようやく完成した時光石をめぐる今後の展開がとても気になります。さらに,前回登場したカイルは何者なのか…。今回は登場しなかったので,次回はぜひ!!(05/11/18)
『流星の歌』でユーリシリーズもいよいよ9巻目です。今回の巻末には挿絵の永盛綾子さんのコメントが載っていて,1巻目が出版されてから5年が経っていることに初めて気づきました。そういわれてみると,この本は前任校で6年を担任したときに子どもたちから大好評だったので,好きな理由を聞いたことがあったなあ…。その時には,2巻目辺りまで出ていたのを覚えています。彼女たちは,自分もこんな冒険がしてみたいと思っていたのでした。
その冒険もそろそろ終わりが近づいているようです。最大の敵,ボルドの目的が明らかになり,ユーリに対する気持ちもわかりました。それを知ると,何だかボルドが気の毒になってきます。でも,今のボルドの思いは歪んでいるもの。そのままでよいわけはありません。
また,ノエルとユーリの関係も明らかになってきました。ノエルはユーリのご先祖になるのです。ユーリはノエルが指輪に記した「まことの幸せ」とは何かを聞いてみたいと思っていたというのです。でも,今のノエルにはそれはわからないようです。なぜなら,指輪にはまだ何も記してはいないのだから。おそらく,ノエルが大人になったときに指輪に記したのでしょう。
今回のお話を読んでいて思い浮かんだのは,「天空の城ラピュタ」「宮沢賢治」です。なぜかって?それは読んでみてください♪
ユーリを助け,新しい未来をひらくため,みんなの気持ちがひとつになったところで,今回のお話はおしまい。次回の発売予定は,来年の3月…。先が気になってしかたがありません!無理は承知ですが,もっと早く出してほしい!!(06/06/18)
『未来へのつばさ』はシリーズ最終巻です。 昨日読んで,今日はもう職場に持っていってしまいました。
というわけで,ちょっと正確さには欠けます。
ボルドには寂しい心に自分でも気づかずにいた悲しい一面がありました。たくさんの人がいるから,互いに思いやり,助け合うから人は生きていける。
進んだ科学は役立つときもあれば,人を不幸にすることもある。使い方を誤ってはいけないけれど,手にしていれば,いつか誰かが悪用するかもしれない…。
この物語では,時光石を破壊し,時空を元通りにすることでユーリは未来を創り出そうとしました。
「まことの幸せ」の意味もユーリは理解しました。 それは,現実の世界にも通じるものがあると思います。
『少女海賊ユーリ』は架空の世界を描きながらも,常に裏にあるのは現代を生きる読者たちの現実世界だったと思います。
ユーリの選択は正しかったのか,それは未来世界へと帰っていったユーリ,そして,これからも生き続けていく現代のわたしたちが知っていることなのでしょう。
海賊見習いの子どもたちの幸せな未来を見ていると,未来でユーリも幸せになっているのかなと思わされます。(07/03/19)
トンビは石を積む。トンビになったかあさんに近づけるように,風見の塔を作る。
パティーという食べ物を作っている家の息子リュタは,自分の腕前を父親がなかなか認めてくれず,不満でいっぱいです。そんなとき,隊商とともに町にもたらされた歯車に魅せられます。
歯車によって便利になっていく町の生活。けれど,そのために失われていく自然や,砂漠で生きるための知恵。そこには,現代の姿が反映されているように思います。
トンビは30歳近い男性ですが,言葉が上手くしゃべれず子どもたちにすらばかにされています。まったく異なる雰囲気のリュタとトンビには共通点がありました。それは,幼くして母が死んでいることです。その印が2人の手首には刻まれているのですが,リュタはそれをとてもいやがります。トンビと同じと見られるのがいやだったのでしょう。けれど,トンビの風見の力や石の質を見抜く力を知り,徐々にその存在を認めるようになっていくのです。
トンビの純粋さ,自然の声を聞き,共に生きていく姿勢が,そして,リュタの成長していく姿がとても印象的な物語です。
あと,パティーがとてもおいしそう!(02/08/21)
オーパーさんの家にはおいしいりんごがあります。でも,オーパーさんはみんなにわけてあげません…。
絵本です。2年生の子どもたちがとても気に入って,グループでの読書発表会で紹介していました。
オーパーさんは市場でおいしいりんごを手に入れます。残った3つのたねをまいたら,あっという間に100個も実がなりました。あまりによいにおいがするので,動物たちがやってきて「ひとつくださいな」と言うのですが,オーパーさんは「だめだめ!1個だってあげないよ!」と独り占めしてしまうのでした。
ここで終わったら,オーパーさんはただの欲張りとなってしまいますが,その後思いがけないことが起こるのです。どんな展開になるのかは,読んでみてのお楽しみ。
ラストのオーパーさんの舌を出しながら恥ずかしそうにしている姿が印象的です。
話とは関係なさそうですが,オーパーさんのそばにいる3匹の猫がかわいい♪(05/01/09)
死んだはずのおばあちゃんが現れた!ぼくの霊力が目覚めようとしているっていうんだけど…。
シリーズ物になりそうな感じ。今までのファンタジー世界とは少々異なり,恐い話系かな。霊力にめざめた主人公はどうなっていってしまうのか…。
お子さまの中にはすでに読み終えた子もいます。(05/04/17)
優真の弟,勇は体が弱い。だから,いつでもお母さんは勇のことばかり気にかけている。優真のお弁当を作るはずだったのに,冷蔵庫を開けたのは熱を出した勇に氷枕を用意するためになってしまった…。
体の弱い兄弟姉妹がいると,親の目はそちらに行きがちになるかもしれません。体が弱いわけではなくても,小さい弟妹がいると,そちらに目がいくのと同じように。いくら手がかからなくなってきているとはいえ,まだ小学生の子ども。自分のことを見てほしいと思って当たり前です。
そんな優真の前に,ゆうれいになったジュンが現れます。どうやら,両親に会いたいという思いが残ってしまい,成仏できなかったようです。ジュンは自分を「生まれながらに体が弱く,たった9歳で死んでしまってかわいそう。」「優真みたいに学校に行ったり,友だちと遊んだり,走り回ったり,パパとキャッチボールをしたことだってないんだ。」と言います。そんなジュンに対し,優真は,「だからなんだよ!」と反論します。
「勇のために仲良しの友達と別れて引っ越ししたり,しょっちゅうひとりで留守番したり,いつも後回しになっているぼくは,ジュンより幸せなのかよ。」
どちらが幸せなんて,正直決められません。どちらも,辛い思いを抱えているのは一緒なのですから。大切なのは,お互いの辛さを理解し合うことではないでしょうか。優真はジュンのおかげで勇の辛さにも気づきます。
ところが,ジュンは勇の命を助けるために消えてしまいます。ジュンの思いを知り,ジュンの両親を捜し出そうと決心する優真。ラストはちょっぴり切なくなる物語です。(05/01/23)
デルトラのベルトから失われた宝石を取り戻すため,リーフは旅立った!
全8巻ですが,1巻ずつが薄めなのでそんなに時間はかかりません。
影の大王に侵略されたデルトラ王国を救うため,国王の親友の息子であるリーフは仲間とともに旅をしていきました。デルトラを守るベルトにはまっていた7つの宝石がデルトラ全土に散らばってしまい,それを見つけ出さなければならなかったのです。
1巻で1つの宝石を見つけ出すのですが,この宝石が全部集まっても,王家の直系の人物がベルトを身につけなければ真の力は発揮されません。本当にギリギリまで世継ぎが誰なのかわからず,一気に読み進めました。でも,凝りすぎているかな…という気もします。
主人公のリーフが成長している…という気はしなくもない。が,ジャスミンの方が成長の度合いは上かな?
男の子に人気だということですが,確かにそのとおりかも。(05/01/04)
『デルトラクエストU』です。あの物語はそこで終了していいと思ったので,続きは読もうと思いませんでした。が,図書室で発見してしまったので(笑),とりあえず読んでみました。
最初のシリーズほどのドキドキハラハラする感じはなく,ジャスミンがあまりにも無鉄砲になっていて,何だか無理矢理事件を起こしているように思えてしまいました…。やっぱり,続編は読まなくてもよかったかな…。(05/01/16)
レイチェルの日々はいつも同じことのくりかえし。何かいつもと違うことが起きたらいいのにと思っていたら,本当にとんでもないことが起きてしまった!
小学校中学年くらいから読めそうです。
不思議な世界に紛れ込んでしまったレイチェル。そこでは,ブタが空を飛び,人々が妙な様子に…。レイチェルは果たして無事に元の世界に戻れるのか!?
いつでも同じことをくり返している退屈な日々に,ちょっと変わったできごとが起きたらいいなあと思う人は多いかもしれません。でも,「違うできごと,変わったできごと」というのは楽しいことであるのが大前提。とんでもないレベルの大事件が起きて欲しいと望んでいるわけではありません。
レイチェルの場合は別の世界に紛れ込むという大事件に巻き込まれます。その世界から何とか元の世界に戻ろうとするのですが,方法が見つかりません。少しずつ手がかりを得て,方法を見つけだしていくのですが,これが時間との戦いとなっていきます。
怪物と戦ってアイテムを手に入れていく『デルトラクエスト』とは違い,戦うべき敵は存在しませんが,謎を解いていくという点では似ています。読んでいくうちに,この謎をレイチェルと一緒に解いていく気分になってきて楽しめます。(05/01/23)
ティーン・パワー株式会社の社員は6人の中学生。男の子3人に女の子3人。仕事は…町の便利屋,つまり何でも屋ってところかな!ところが,なぜか毎回いろいろな事件に巻き込まれるの…。
ファンタジーではなく,中学生たちの日常生活を描いています。が,この日常がとんでもない!とにかくさまざまな事件やトラブルが発生するのです。6人の中学生は,それぞれ個性がはっきりしていておもしろい。中には,とんでもない人もいるのですが,これでもみんなでうまくやっていくのだからたいしたものです。
5巻目は「甘い話にご用心!」で,今回の主役はサニー。グループ一番の運動神経のよさを誇っています。この子が一番お気に入りなので,彼女が主役のお話が読めて嬉しい。
「甘い話」というのは2つの意味で「甘い」のですが,それは読んでみてのお楽しみ。
にしても,どうしてこの子たちはすぐにトラブルに巻き込まれてしまうんだろう…。(05/04/17)
大好きなおばあちゃんがけがをしてしまった。それ以来,おばあちゃんの様子は何だか変。大切にしていたブレスレットまでなくしてしまった。早くあのブレスレットを見つけなくちゃ…。そう,早く。なぜだかわからないけど,そうしなくちゃいけないの。
『デルトラクエスト』が男の子向きなら,『フェアリー・レルム』は女の子向きのファンタジーかもしれません。
主人公のジェシー(本名はジェシカ)はおばあちゃんの孫にあたります。実はおばあちゃんは妖精の国の女王様なのです。妖精の国は女王のかけた魔法で守られているのですが,その魔法が解けかけていました。でも,おばあちゃんはブレスレットをなくし,妖精の国のことをすっかり忘れてしまっています。
この危機を知ったジェシーは機転を利かせてブレスレットを取り戻し,おばあちゃんを妖精の国に連れてくることに成功します。
そう言えば,ジェシーには不思議なところがあります。おばあちゃんのブレスレットを早く見つけ出さないといけないと,胸騒ぎを感じるのです。妖精の国の女王であるおばあちゃんの血を受け継いでいるからでしょうか。でも,女王の娘であるママ(ローズマリー)にはそういう力はなさそうです…。
ツンとすましたところのある馬のメイベル,泣き虫のジフ,メイドのパトリスなど,すてきな妖精たちにも出会ったジェシー。次に妖精の国へ行ったときにはどんな冒険が待っているのでしょうか。
2巻目の『花の妖精』には困った5人の妖精が登場します。とてもかわいいのですが,おしゃべりで余計なことまでつい言ってしまうのです…。さらに,ジェシーの苦手なものがダンスであることが判明!人間界と妖精の国と両方で困ったことになってしまいます。さて,ジェシーはうまく乗り切れるのでしょうか。それは読んでのお楽しみ!(05/06/26)
『三つの願い』は舞台が海の中のようです。このシリーズは,安心して読める雰囲気があります。わたしは,ジェシカおばあちゃんとロバートおじいちゃんの深い愛情があちこちにちりばめられているところがお気に入りなのですが,子どもたちはまた違う読み方をしているようです。(05/09/19)
『妖精のリンゴ』はフェアレル第4弾。今度はおばあちゃんが大切にしていたリンゴの木に異変が起きます。そこには,なぜかノームが…。
このシリーズは次々とユニークな人々が登場してきます。今回はノームとお話好きの動物(でいいのかな?)が現れました。
ジェシーが機転を利かせて大活躍する今回の作品は,どんどん続きが気になって読み進めました。妖精の世界の住人にはときどき困ったちゃんがいますが,そこもまた愛すべき魅力なのかもしれません。
フェアレルを心待ちにしている子がいて,あっという間に借りていって読み終わってしまいました。(05/11/24)
ジェシーが楽しみにしていた誕生日。それなのに,朝から雨が降っていて気分は最悪。でも,おばあちゃんは「すべてうまくいくわ!」と言う…。
フェアレルも第5巻まできました。今回はジェシーにとってとても大切な1日が朝から台無しになってしまうという困ったできごとが起きました。でも,陽気なピクシーや虹の妖精達のおかげで,ジェシーは何とか危機を乗り越えることができ,楽しいバースデーを迎えることができました。
それにしても,妖精の国の住人は楽しませてくれます。こんな妖精に会ってみたいと思わされます。ジェシーになった気分で,冒険ができますね。(06/05/21)
『フェアリー・レルム 6 夢の森のユニコーン』です。妖精の国にあの邪悪なベラが舞い戻ろうとしていた!
妖精の国のみんなを助けなくちゃ!
1巻で登場したあのベラが再び現れました。ジェシーにとっても妖精の王国にとっても大変な危機です。ベラは用意周到。この危機をどうやって乗り越えるのでしょうか。今回はすてきなユニコーンが登場します。ユニコーンがどんな活躍をするのかは,読んでみてのお楽しみ!(07/01/02)
『フェアリー・レルム 7 星のマント』です。「大変だよぅ!助けて!!」エルフのジフがジェシーの元へやってきた。どんな大変なことが起こったというの?
またもやジフが大騒動を起こしてくれました…。 悪気はないのでしょうけれど,これだけやってくれて,しかも勇気を出せなくて逃げてしまうというのはいかがなものでしょう。最初は「仕方がないなあ」という気持ちで読んでいましたが,だんだんとジフは情けないなあと思うようになりました。でも,そんなジフを見捨てないジェシーや妖精の王国の仲間たちって寛容だわ!
今回はジェシーと一緒にとてもハラハラドキドキしてしまいました。(07/01/03)
切ない気持ち,ドキドキする心…,初恋を描いた短編集!
初恋に関するお話が収録されています。大塚菜生さん,風野潮さん,池田美代子さん,横山充男さんなど,豪華執筆陣です!小学校高学年向きかな。
初恋…懐かしいですね♪大塚さんの作品では「きなっちゃん」に会えます!
女の子の一人称視点で書かれている作品が多い中で,紅一点ならぬ黒一点の横山充男さんの作品は過去の初恋を振り返るような形で書かれていて違う雰囲気を出しています。初恋の切なさとは違う切なさをこの作品は持っています。(05/10/18)