富士見ファンタジア文庫刊行、榊 一郎著「ストレイト・ジャケット2 ツミビトのキオク 〜THE ATTACHMENT〜」
「スクラップド・プリンセス」を書いている作者の書き下ろし長編。その第二弾。
分厚い。昨今のライトノベルでは都市シリーズ級の分厚さ。富士見ファンタジアでは珍しいのでは。
あいかわらず主人公のスタンスがイマイチよくわからないのだが、
第一巻と比べると「守るべきモノ」がいつのまにか出来たようで。
自分的な趣味からいえばもっとクールになってほしいのだけれども、
対象読者が中高生と思われるライトノベルじゃ無理か。
作中に頻繁に「こだわりがヒトを形作る」なんてことが書いてあって、
サブタイトル的にこちらこそ「ニンゲンのカタチ」なんでは、などと思ってみたりもしたか。
一応、「罪を犯し、贖うすべを無くしたモノはどこへいけばよい」というニュアンスの事が書かれてもいて、
サブタイトルの意味はあったのだけれども。
ああ、榊 一郎だな、と。
前にも述べたけれど、流れは完全に「ドラゴンズ・ウィル」のほう。
ややダーク目で、でもエッジじゃない物語、というのが感じた所。
もっとエッジなほうが好みではある。
富士見ファンタジア文庫刊行、榊 一郎著「ストレイト・ジャケット1 ニンゲンのカタチ 〜THE MOLD〜」
「スクラップド・プリンセス」を書いている作者の書き下ろし長編。
月間ペースで連載をして、かつ長編シリーズが2本目である。よくやるなぁ、とおもいつつ、
メインと思われる「すてプリ」がどう考えてももうすぐ終わるので、次のシリーズを準備した、という所か。
話的には「すてプリ」とは異なる、どちらかというとデビュー作である「ドラゴンズ・ウィル」に近いか。
ダークファンタジーと呼ぶ声もあるけど、違うよな、というのが自分的感想。
作者の書きたかったことがイマイチ見えてこない作品ではある。
主人公の立場がはっきりしないせいでもあるんだろうけど。
正義の味方でもない、純粋な巻き込まれともちがう、影に生きているShadowrunnerにしては甘い。
(カタカナの「シャドウランナー」が一番しっくりくるかも、とわかる人にだけ)
2巻目も出ているし、裏でごそごそやっている悪役がなんとなく気に入ってしまったので続けて読んでみよう。
最近、頻繁に更新してるな。(苦笑)
電撃文庫刊行、伊達 将範著「リムーブカース<上><下>」
同じく電撃文庫で「DADDYFACE」というシリーズを書いている作者の旧作。
最新作もそうなのだけれども、かなりオカルトの入った作品。DADDYFACEのように設定勝ちしている作品でない分、
もう少し捻りがほしいとも思ったけれども、求めすぎか。
話そのものはある意味オーソドックスで、ただし、主人公が最後の最後まで「役立たず」だったのが
新鮮といえば新鮮か。
例外はもちろんあるけれども、この手の転生ネタだと8割がた主人公は「目覚める」というのがライトノベルのパターンなので、
そういった意味では珍しいか。
オカルトとはいったけれども、そこにSF的な科学を持ち込んではいる。
もっとも、「進みすぎた科学は魔法に同じ」のパターンではあったが。
細かな所までこだわると矛盾もあるし、奇妙な点もあるけれども、気にせずに読むのがやはりライトノベルの基本か。
人物表現?文体?なおさら気にしちゃいけないよ。うん(苦笑)
大事なのは一気に読ませる勢い。
じっくりと読ませるのは本格的なSFだとか、人物描写や心情面は純文学にまかせとけ(苦笑)
電撃文庫刊行、中里 融司著「ドラゴン・パーティ@ 星空に伸ばせ希望の手」
同じく電撃文庫で昔、「狂科学ハンターREI」というシリーズを書いていた作者の新作。
前作は主人公がまんま「せつら」だったのがちとなんだったのだけれども、アイデアそのものは結構気に入っていた。
シナリオネタにもつかわせもらったほど。
で、今回の作品は、まぁ、「狙ってるな」といわんばかりの設定で。
話そのものになんだかいまいちという感がある。ありがちでもあるし。
宇宙で発見された物質をコアにしてロボットをつくったら女性型だけ自我が芽生えた、という、
せめてもう少しへ理屈をつけてほしいな、というかなんというか。
読んでいて、思い出したのが「虚空牙」という「敵」と人類が戦う上遠野 浩平の「
僕らは虚空に夜を見る」と「E.G.コンバット」
どこが似てるというわけではないのだけれども、なんとなく。
富士見ファンタジ文庫刊行、舞阪 洸著「火魅子伝 6」
機種はわからないけど、電源付きコンシューマーゲームのノベライズ、というと少し違うか。
自分なんかは戦略級のシミュレーションゲームはやらないので、なんともいえないが、おそらく、
そこらが根本にあると思われる。戦術級じゃなかろ。
とはいえ、それが功を奏しているのか、なかなか読み応えがある。多少、暇な部分が出てくるというのも否めないが。
今回は交渉や統治フェーズが終わって戦術級になったところ。
戦術級でもなかなかのトリックを駆使しており、すんなりといくと思ったが、意外な所で苦境が。
御都合主義がないわけではないが、っていうか、あったほうがライトノベルらしくてよいと自分的にはおもってたりするのだけれども、
この苦境、見事にシミュレーションゲーム的にクリアするかどうか、次巻の楽しみが増えたというか。切る所、うまいな
最後に現代に残ったヒロインのひとりの様子が書かれていた。
異世界との時間の流れの差を強調してたみたいだけど、意味あるのかなぁ?
まとめがきその4。
角川スニーカー刊行、吉田 直著「トリニティ・ブラッド Trinity Blood Rage Against the Moons フロム・ジ・エンパイア」
トライガン+ヘルシング+吸血鬼ハンターDな小説の第二巻。
こちらは第一巻とは違い、角川の隔月刊誌に連載されたもの。
第一巻の未来(というか、「現在」になるのか)の話。
第一巻を読んだ時こそまんまトライガンだなぁ、とはおもいつつもその裏の設定を知りたいがために読んでいる話でもある。
設定マニアの心をくすぐるというか。
おそらく、一番の謎というか中心にあるのは「吸血鬼」の正体なのだけれども、
普通に我々が想像する「吸血鬼」とは異なるようで。
そこが、主人公との関係をも含めて、うまく見せてもらえばトライガンどころではない作品になるのだろうけど。
おしむらくは後発か。どうしたって本歌取りしてるな、と見てしまうのが。
パロディとかパクリとは思っていない。っていうか、文学の世界ではよくある話でもあるし。
(著作権の問題はこの場合度外視)
中国の説話を翻訳し、日本に舞台を置きかえるだけで100年以上も「文学」として学会で研究されているものだってあるし。
国文学者を名乗る「先生方」は、そのパロディ作品をよってたかってなめつくしておぜぜをもうけているのです。
たしかに普通の人より「舌」が長くないと出来ないことですけどね。
まとめがきそのさん。
新刊ではなくて古い本。
秋山 完の「ペリペディアの福音」が予想外によかったので、氏の初長編を読んでみた。
朝日ソノラマ文庫刊行、秋山 完著「ラストリーフの伝説」
まぁ、古い話だし。
ペリペディアのような大掛かりなギミックはなかったけれども、小粒のアイデアがなかなかよかったのではないかと。
でもなぁ、最後はライトノベルの宿命かなぁ。
ハッピーエンドなんだけれども、それでよかったという人もいるだろうけど、自分としては
ここはあえてアンハッピーエンドで終わってほしかった。
そのほうが、多分、人の業の強さ(愚かさと言ってもよい)を感じることが出来ただろうから。
映画の「アルマゲドン」的な、あるいは同じく映画の「ディープ・インパクト」と同種の、
小説でいえば「たったひとつの冴えたやり方」と同種のエンディングにはなろうが。
単純でいいじゃないか。お涙頂戴で(苦笑)
後れを取り戻さんとのまとめがき。いや、あまり意味はないのだが。
角川スニーカー文庫刊行、岡本 賢一著「放課後退魔録 ロストガール」
この著者は朝日ソノラマから「銀河聖船記」を出した人。あの話はよかったと思ったのだが。
あとが続かないのかなぁ。
話としては平凡な男子高校生がちょっと気になる女の子を助けるために妖魔に立ち向かう話。
なんかこう書くとすごいな。その実、主人公の男子高校生というのがすっげー後ろ向き。
主人公は -- ありがちではあるが -- その素質から妖魔を相手になぜか(最後まで理由はよくわからんかった)
戦っているヒロインたちに協力を求められるのだけれども、嫌がる。
嫌がるといったら嫌がる。
考えてみりゃすっげーリアル。普通そうだよなぁ。
最後にはそれっぽいこといって主人公の面目躍如するのだけれども、このなんだか中途半端なリアルさというのか、
主人公の後ろ向きさかげんがいい感じに反発を生んだというか。
気にくわね。
後ろ向きな主人公といえばDADDYFACEもそうだったりするのだけれども、あっちは設定勝ちというか。
設定そのものがDADDYFACEのほうがハチャメチャでありえない事であるのに対し、
こちらはまぁあってもおかしくないかな、というリアルさをかもしだしてる。
そこがなんかきにくわなかった。
っていうか、もしかして読んだ時の精神状態がヤバめだったのかなぁ。(苦笑)
実際にこれを書いているのは5月4日。ずいぶんと昔にさかのぼっての記録である。
しかも読んだ本はさらに前だったりするので、ある意味手におえないか。
富士見ファンタジア文庫刊行、秋田 禎信著「エンジェル・ハウリング2 戦慄の門 - from the aspect of FURIU - 」
サブタイトルが妙に長い本である。
過去に読んだ第一巻とは主人公を異にする。ただし、まるっきりの別話ではなく、第一巻の主人公もでてきたりする。
最初の出会いは敵対関係、とよくある話なのだが。
このまま最後まで敵対関係を続けていると面白かったのだが、なかなかそうもいかないようで。
かといって完全な味方になるには双方アクが強すぎるというか。
この著者の作風は自分的にはシリアスが気に入っていることもあり、このくもり空のような展開というのはなかなか気に入った。
偶数巻の主人公にまとわりつく小妖精(のようなもの)のはなつ「ボケ」が「オーフェン」に出てくるギャグ担当キャラの匂いを感じたのが
やはりこの作者はギャグやっちゃダメだ。と再認識させたが。
いや、アレが面白い、という人もいるとはおもいますよ。思うけど、自分には合わなかっただけで。