電撃文庫刊行、時雨沢 恵一著「キノの旅 - the Beautiful World - 」
電撃hpにて一挙掲載され、書き下ろしを加えての発刊。電撃のお得意手法である。
なんと言えばよいのだろう。なんか言葉に出来ないのだけれども。
長編ではなく、連作短編。キノという少女が「話すバイク」と共に旅をし、様々な国を
訪れる、
あるいは道中おきた出来事の話。
ある国ではテレパシーが発明され、全国民にその能力が備わったが故に皆孤立して生活
していたり、
またある国では隣国との戦争のかわりに近くに住む武力をもたない部族をターゲットに
「狩り」をおこない、
その結果によって「戦争」の代替手段としていたり。
サブタイトルの意味は美しい世界である。
世界は美しくとも、人は醜かったりする。
それ故に、まるで対比されるがごとく、世界が美しい、といいたいのだろう。おそらくは。
テレパシーによって孤独となった国も、元は互いの痛みをわかちあい、完全な相互理解を求めてのことだった。
代替戦争を起こす国も、元は我が子を殺された母が、せめて我が子を失う悲しみだけは味わいたくない、
と考え付いたことだった。平和には、犠牲が必要。しかし、その犠牲は我が子であっては、絶対にならない。
との強い想いから。
すばらしい事を求めて、それ故に残虐に、それ故に醜くなれる典型的な例がここにはある。
なんだ、単なる自己チューってことやんか。
メディアワークス(電撃文庫)の小説大賞最終選考にのこりながら消え去った作品。
何がどうなって日の目をみることになったのかはわからないけれども、なんと、作者を変更しての発表である。
電撃文庫刊行、鷹見 一幸著「時空のクロスロード ピクニックは終末に」
謎の老人と出会った事から並行世界へと転移する装置をもらった主人公。
跳んだ先は「地獄」ともいうべき状況に陥った世界であり、主人公の元いた世界とちょっとだけ違う世界であった。
日常をきらい、非日常を望んだ主人公が日常に気が付く、という主旨の話
なのではあるが、ある意味残酷な話。
まぁ、薬品や食料が不足している世界へ十分にある世界から持込むのよしと
しよう。
エントロピー(質量保存の法則、とも)あたりが妙な具合になりそうな気もするが、きっと気のせいだろう。
時間移動というわけではなさそうなので、パラドックスの類も起きないし。
んじゃ、この不満っていったいなんだろ?
久しぶりの話である。ソードワールドというRPGを母体としたRPG小説。
そのソードワールドの中でも少し毛色の変わった(つーか、設定が発表されていないけど)
ケイオスランドと呼ばれる大陸を舞台とした話である。
富士見ファンタジア文庫刊行、 清松 みゆき著「ソードワールドノベル 混沌の大地W」
こーんなところにもグレネードエルフがいたよ。
グレネードエルフとは・・・D&DというRPGをやっている時に聞いた話。
要は自分を巻き込む形で破壊的な呪文等を使い、周囲に群がる雑魚を蹴散らし、
自分はその破壊力に耐え切って見せることをいう・・・・・・多分。
年齢を上下ランダムに動かす「狂った=制御できない=精霊」をあえて呼び出し、
周囲にいる人間に年をとらせ、あるいは若返らせておいて、当然自分もターゲット
となるのだけれども、少しの年齢の上下はエルフに関係ない、というずっこい手。
敵まで「ずるい」とのたまってたのがなんだか。
詳しくはソードワールドRPGのルールを参照(笑)
もっとも精霊を使う精霊使いにとって、狂った精霊を意図的に呼び出すということは
アイデンティティの崩壊にもつながる行為なのだけれども。
キャラクターが落ち込む、ということでちょびっとだけそのへんもかかれては、いた。
ちなみに、RPGの中で再現は、マスターの協力なくしては不可能。
狂った精霊を意図的に召喚すること自体ができないもので。
ずいぶんと長い時間がかかったけれども、どうも次巻で完結するらしい。
続編が別タイトルで出そうな気もするんだけど。
(混沌の夜明け、混沌の大地ときたので・・・混沌の祝祭とか・・・苦しいな)
角川スニーカー文庫刊、鷹野 良仁著「フィールド・オブ・スターライト 砂漠の花嫁」
潜水艦同士の戦闘を読んでいるような感覚を、宇宙空間に持ってきた一風かわった話の
続編である。
かつて高校生だった主人公たちが25歳、なんと作中時間で7年が経過しての話。
学生だった彼らも今は立派な軍人として・・・というのがなんか悲しいのだけれど。
今回、宇宙船同士の戦闘はメインではなく、惑星上でのレジスタンス活動を行う女性と
第一作の脇役のひとりを主役にしての話である。
この話における戦闘ってのはいかにして自分の位置を知られずに敵を攻撃するか、
というのが大事なだと思っていたのだけれどもなぁ・・・攻撃直前やダミーを
撃破させた直後に敵艦に通信いれてどうするんだろ(苦笑)
生命の危険を迎えた時の男女の間には恋愛感情が生まれる。よくある話。
だが、そのロマンをぶちこわす説がある。
その感情は種族保存の本能がなせるものだ、という説である。
もしかすると、その事を現した話なのかもしれない・・・これわ。
まぁ、男女の関係なんてどうなるかわかんない、というのが通説なのだから、
結婚式当日に夫を殺された女性がその数週間前に知り合ったばかりの男性と
一年後に結婚してもおかしくはないかなー、なんて思ってみたりもするけど。
ま、一年あればね・・・。
それはそうと。
作中に出てきたギミックのひとつ。光学ジャミングは光学的に限りなく透明に近くなる、
というもの。光の歪みが出るので注意深く見ればわかる、という設定であったが、
それでおもいだされるのが攻殻機動隊、というのがなんとも自分らしい
というかなんというか。(苦笑)
10年前にデビューして、姉妹作品を一作だしただけで休眠状態に入った岩本 隆男の新作
朝日ソノラマ文庫より、「鵺姫真話(ぬえひめしんわ)」
話の時代的には「星虫」の数年後、「星虫」の主人公なんかも出てくる。
話の中身的には「星虫」の姉妹作である「イーシャの船」(現在絶版)の姉妹作。
「イーシャの船」の登場人物の設定が変わって主人公として登場している。
その地方に伝わる鵺姫伝説を作り上げたタイムトラベルの話。
後味はすっきりしているが、私はこの手ので一番のお気に入りは「タイムリープ」で、それとどうしても比べてしまう。
出来は悪くはない。
整合性もとれてそうだけれども。
「タイムリープ」にあったようなパズル感覚がなくてイマイチという感がぬぐえないのは少し残念。
先がすぐに読めてしまったのも残念なところ。まぁ、多少のどんでん返しはあったけど。
注文のしすぎかなぁ?良作ではあるとおもうけどね。
「星虫」「鵺姫真話」の姉妹作品となる「イーシャの船」もソノラマ文庫より出版されるとのこと。
「鵺姫真話」の影響で変わった部分があるので、・・・いや、そうでなくても買ってしまうのは目にみえてるな(苦笑)
過去遡及記述のその1。いや、たいしたものではないんですけどね。
先月書き下ろしをだしたばかりの上遠野 浩平による新作。
ペースはやいな、と思いきや・・・いや、速いのはたしか。
徳間デュアル文庫という新しい文庫のスタートラインナップのひとつ。。
徳間もライトノベルのシリーズを作ったらしい。
でもその他のラインナップが田中芳樹の「銀河英雄伝説」や新井素子の「ラビリンス」(これもすっげー昔の本)、
夢枕獏の「闇狩り師」ってのはなぁ(苦笑)
「僕らは虚空に夜を視る」
宇宙に進出した人類が、「敵」と戦う話。ぶっちゃけていってしまえば。
で、この敵との戦いの結果・・・・先月に出た「冥王と獣のダンス」につながる。
姉妹品というわけだ。・・・「敵」の名前が同じだから、多分、そうなんだろう。
戦争全体が書かれているわけではなく、ほんの一部しかかかれていない。
一冊で人類の敗退を書くのは難しいだろうし、ね。
この戦争に駆り出されるパイロットの精神安定として採用されているのが一種の
ヴァーチャルリアリティ。
厳密には一種の二重人格であって、仮想現実とは違うけど。
仮想現実の中ではパイロットも彼らが守る冬眠中の人たちも20世紀頃の世界を再現
して生活している。
あたかもそれが現実であるかのように。
で。主人公がそれに気がつかざるを得ない状況になって。と話が進むわけだが。
なんか似たような話は昔読んでいるんだよね。今でいうライトノベルで。
たしかソノラマ文庫から出ていたはずだ。
エイリアンだか隣国だかとの戦闘で仮想現実を現実を思い込まされ(=守るべきものがあると思わされて)
戦闘バイクに乗って戦う戦士の話。
なんだっけかなぁ。
この話は宇宙が舞台だけあってもちっと凝ったギミックつかってますな。
光の速さを超える航法については私には初のパターン。
時間の速度を調整して見た目上光の速度を超える速さを出しているらしい。
でもなんだか光の速度を超えるのと同じくらい難しい技術だとおもうけどな。