もう1月も終わり。(あと2日あるけど、終わったようなものだ)速いものである。
角川スニーカー文庫刊行、神坂 一著「トラブルシューター シェリフスターズMS mision02」
事件処理業をいとなむ会社「シェリフスター・カンパニー」のチームふたつのうち、
連載で「シューティングスター(SS)」チームの活躍を、そして書き下ろしで「モーニングスター(MS)」チームの活躍を描く
ある種のダブルキャストものである。
今回は書き下ろしのMSチームのほう。 ・・・・・・ザクまでいくかな?(苦笑)
自動兵器による「反乱」で都市や軍が攻撃をうけている星から人物を救出する依頼を受けることになったMSチーム。
SSチームとの共同作戦。
人物を救出したのはよいが、そこであかされる「反乱」の意外な真相。
「反乱」をおさめる立役者となったにも関わらず、ヒロインの胸中には己の無力さだけが残る。
作戦中、知り合った子供たちが、無事両親と再会できた、という手紙だけがひとつの救いだった。
1巻はスレイヤーズの焼き直しにしか見えなかったのだけれども、ここにきて主人公たちが「人間ではない」ことが大きく
クローズアップされつつあるように思える。
登場人物はMSチームふたりとSSチームふたりの計4人。この名前がまぁすごい。
サミィ=マリオン,イーザー=マリオン,メニィ=マリオン,そしてレティシア=マイスター
マリオン姓の3人は肉親とか兄弟だとかいうわけではない。3人が3人とも人工生命体である。
それも、人間を遥かに凌駕した戦闘能力をもつ。
最後のレティシアだけが、カンパニーの社長の妹で、カンパニーの親会社である巨大企業の社長令嬢だったりするのだが。
このあたり、なかなか複雑な事情がありそうではある。
案外、親のすることに反感をもった娘がグレただけかもしれないが。
今回は、それがこうをそうして事件解決に至るのだけれども、その解決に一役買ったのが
カンパニーの親会社が提供した兵器の数々。そして、その兵器を操る人間ばなれした戦闘能力をもつ兵士たち。
兵士の姿はみえなかったけど。
最後の最後で出てきた3人の兵士はイーザーと、その最大の特徴を同一にしていた。
ここに、ある種の不気味さと、先の暗雲が見え隠れする。
ぶっちゃけた話。
主人公が(ひとりを除いて、だけど)使い捨て道具にもなりかねない、ということ。
今回もそういう方向に行きかけたみたいなのだが。
そこにレティシアという人間と、彼女の兄、カンパニーの社長の存在が絡んでくるので一筋縄ではいかないようにはなっているようだが。
うまくすればかなりヘビーな話に出来る可能性がある。
連載版でとことんおばかな話を展開するのであれば、書き下ろしでそのヘビーな方面に進んでいってもよいのではないか、
そうも思える。
もしかすると、毛色の変わったライトノベルになるかもしれない。
いや、まあ。「星の大地」までは無理でしょうが。あれは特別なのではないかと(苦笑)
さがしまくってようやく見つけた第三巻。おそらくは再入荷したのだろうけど。
電撃文庫刊行、伊達 将範著「DADDY FACE 冬海の人魚」
八百比丘尼ネタである。
意外な人物が意外な役回り。最後の最後でちと蛇足かな?と思いつつ、それでも一応そう考えればわけもわかるか、と思える。
なかなかよく調べてあるようで、とはいってもどこまで本当なのかがわからないのだけれども。
人魚ネタということでアンデルセンのほうまでからめているのは少し驚いたが、ちょっと残念なのはそれがセリフ数行で終わってることか。
もう少し掘り下げられればよかったかな、と。
今回のテーマは「愛」・・・かな?それも悲哀系。
最後はまぁありがち、というかSF者からみればすぐに思い付きそうなオチではあったが。
にしても、父ちゃん、えーかげん母ちゃんの正体に気がつけよ(苦笑)
いや、まぁ、多分気がついた時がシリーズの最後だろうとは思うけど。
徳間のデュアル文庫刊行、アンソロジー「少年の時間」内収録、上遠野 浩平著「鉄仮面をめぐる論議」
なぜ、アンソロジー収録のこの短編がきたか。まぁ、雑誌掲載の作品でさえ出しているのだから、というものあるけれども。
この作品は「僕らは虚空に夜を視る」や「冥王と獣のダンス」と強い関係がある。
主人公は触れたものすべてを強靭なクリスタルへと変化させる特異体質の少年。
それ故に他人とふれあうことができず、内部をフィールドでコーティングした鉄の完全鎧に身を包んで始めて人とふれあうことが
(擬似的に)出来る境遇にある。
触れるものすべてをクリスタルにかえ、それには一切の例外はなく、それゆえに彼は「敵」に対しての切り札として使用されていた。
外宇宙に進出した人類の前に現われた敵。それは「虚空牙」と呼ばれた。
話的には「冥王と獣〜」のはるか以前、「僕らは〜」とおそらくは同時期の話だと類推される。
どうやって人類が生き延びたか、ということが書かれていると同時に「虚空牙」とは何か、という大きな謎がいっそう深まった話でもあった。
少年が恋した少女、少女が恋した少年、しかし、少女は己の目的 -- それは少年を人類の救世主としてその力を発揮させることではあったが --
を達成するとさっさと少年の前から立ち去った。
そう、その姿を物言わぬクリスタルにして。
取り残された少年は、ひたすら戦い続けた。パートナーである戦闘機械、ナイトウィッチとともに。
彼がその後どうなったのか、生きているものがいない以上、わからない。
深く読むと結構物悲しい話ではある。
前巻までの内容を既に忘れている、という問題がなきにしもあらずなのだが。
惰性で読んでいるせいではあろう。
富士見ファンタジア文庫刊行、秋田 禎信著「魔術師オーフェンはぐれ旅我が戦場に踊れ来訪者」
淡々と話しは進む。
一歩間違えればすべりそうなギャグをかましながら、あやうい薄氷の上を滑っているようでもあり。
話は非常にシリアスで、重く、救いがないかどうかはわからないけれども。
すべては主人公の後ろ向きさかげんだったりするせいだけど。
前向きにもっていこうとしているキャラがヒロインただひとりであり、そのヒロインがすっげー気に食わないせいでそう感じるのかも。
物語はクライマックスに向けての助走段階だそうで。
とはいえ、背後の動きが複雑で読んでてちと理解不能な部分も。
これはまぁ、流し読みしているせいなんだろうけど。
先日の続きである。実は第三巻まで出ているのだが、初動が遅れたせいか、近辺の本屋には既に第三巻がおいてなかったりする。
第二巻までならあるんだけどなぁ。
電撃文庫刊行、伊達 将範著「DADDY FACE 世界樹の船」
年齢差9歳の父娘+双子の息子と巻き込まれる母のくりひろげるトレジャーハントもの。
根本的なところの疑問だとか矛盾はあるんだけれども、それに目を瞑ればなかなかに読める。
私自身はこーゆー「冒険者」が好きなせいもあるだろうけど。
娘に睡眠薬で眠らされて気がつけばドイツ。「回る水」と呼ばれる秘法を巡っていつもの冒険がいやおうなしにはじまった。
商談できていた息子や友人と旅行にきていた母親をも巻き込んでのドンパチ。
ところが、この「回る水」ってのが「人の願望をその人の一番大事なものと引き換えにかなえる」というとんでもないしろもの。
「母親」は死んでいると娘に聞かされた主人公は、自分が生きているいるよりは、彼女を、と水を前にじっと佇んで。
まぁ、一部抜粋てな所なんですが。
母親のひとつのうそがここまで事態をややこしくできるというのも笑える話だし、
すぐ側で露骨なやりとりを母子がしているのに気がつかない父というのも笑える。
まぁ、ここらはわざとやっていることなんだろうけど。
トレジャーハント、それも遥かな過去、アトランティスだとかムーだとかに関与したといわれる「来訪者」(おそらく宇宙人)の残したものを探す、
ということで、自然とオーパーツに話が集中するかとおもいきや。
前巻では竹取物語、今回は北欧神話となかなかにマイナーなところをついてくる。
さて、次巻は何が元ねたであろうか。
幼い日の過ちが、九歳差の父娘を生み出した・・・・・・ってなんじゃそりゃ(苦笑)
電撃文庫刊行、伊達 将範著「DADDY FACE」
上記のようなとんでもない設定をもった貧乏大学生が世界をまたにかけるトレジャーハンターになっていくお話。
つきつめればそうなるのだけれども、「家族」(あるいは「家庭」)を軸にもってきていて、
笑わせながらも意外と(失礼)訴えかけてくるものもある作品。
とはいえ、「笑い」が主体に捕らえられるので、ここまで読むのはちと難しいかも。
トレジャーハンターと聞いておもいだされるのはスーパー高校生「八頭 大」の活躍する菊地 秀行氏の一連のシリーズ。
この作品はあそこまですごい人物が主人公ではない。とはいえ、トータルでみると・・・・・・
正月からゆっくりと時間をかけて読んでいたもの。
ちょっと内容が難しいとすぐこれなので困ったものだが。
角川文庫刊行、瀬名 秀明著「BRAIN VALLEY(上)(下)」
「パラサイト・イブ」の著者の3年前の新作である。当時の医学知識や科学知識が総動員された感のある作品であった。
寂れた山村のい作られた最先端の科学を集めた脳医学研究所ブレインテックにヘッドハントされた科学者が
ある日の奇妙な出来事のあと、アブダクティー(UFOによる誘拐事件被害者)となる。
催眠による過去遡及でそうだと知った主人公だが、それは脳の見せる幻覚だと諭され、
その日からブレインテックの真の目的であるオメガプロジェクトに携わるようになる。
SFサスペンス調で進められる本作。「脳」について詳細に書かれており、脳生理学に疎い読者(私のような者だ)
への気配りがきいてはいるが、反面それがわずらわしくもある。
前半のそういった科学的な説明を越えたあたりで主人公が「アブダクティ」となり、
「臨死体験」と「電脳人工生命体」がこれにからんでくる。
ここらから物語が展開しはじめて、目が離せなくなった。
最終的には「神」がキーワードとなるのだが。
こうしてキーワードだけ出してるとどんな話なのかさっぱりわからんな(苦笑)
オカルトなのか科学なのかホラーなのか、その境界線をふらりふらりといきつもどりつ話が
進んでいくさまは見事というしかないだろう。
いつものくせで速読したせいもあって、後半の怒涛の大展開が何をしたかったのか、
どういう敵対関係があったのか、もう2、3回は読まないとわからなさそうではあったけど。
前半スローペースで、後半にいくほどのめり込んでいける作品に、久しぶりに出会った。
・・・・・・それって、物語の基本じゃん。
21世紀最初の更新である。まぁ、まだコンシューマーのGameにはまり込んでいるので更新速度は低速だろうけど。
そんな中でも一気に読み切った電撃文庫。
時雨沢 恵一著 「キノの旅V - the Beatifull World - 」。
和製「悪魔の辞典」というかなんというか、全てではないのだけれども、かなりブラックユーモアのきいた短編集である。
もしかすると読み手を選ぶか?
キノという少女がしゃべるモトラド(=バイク)エルメスと共にさまざまな国を巡り、
そこでであった出来事を比較的淡々と書き綴ってある。
前巻あたりからキノと出会い、自分も旅するようになった男の話が一編、
口絵ストーリーとして出てくるようにはなったのだが。
差別を許さない国の矛盾、同じ顔をした国民しかいない国を襲った出来事、等。
第三巻にはどうもキノが旅に出る前の話らしきものもでていたりして、第一巻から読み
つづけて見るとよいかも。
この世界の背景はまるっきりわからない。多数の小さな国家が乱立し、そのくせどこの国家も同一の入国管理や出国管理をし、
機械であるモトラドが話したり犬が話すことが平然と受け入れられる。
科学レベルも国によって結構バラバラで国と国との交流もあったりなかったり。
まぁ、そんな事は気にせずに読むのが吉なのだろうけど。
ああ、最後の一編の「終わってしまった話 - Ten Years After - 」は詐欺だよな。絶対。