遂に上陸!04スーパースポーツ

2004/04/14 (Wed)

 

 去年…2003年は二輪モータースポーツ界にとって「飛躍」の年。
二輪レースの最高峰「MotoGP」のレギュレーション(開催規約)の変更で、4サイクルエンジン搭載車の参戦が可能となりました。
これは従来の2サイクルエンジン車は「排気ガスが有害」…という環境的配慮が主な理由。また世界的に縮小傾向である2サイクルエ
ンジン車の市場に対して、メーカーが「お金をかけて技術的な開発をするのはムダ!」という志向が強まってきたからかも知れません。
 とは言え、2003年は車両開発が間に合わないメーカーへの配慮からか、2サイクル車の参戦も可能でした。「軽量&ハイパワー
な2サイクル車のほうが有利なのでは?」という私の推測を無視し、上位入賞者は4サイクル車ばかり。時代の移り変わりを感じさせる
年となりました。
 そして2004年。1年間のマシン開発のノウハウを身につけた各メーカーは4サイクル車のみでの参戦と相成りました。ここでその
ベース車となったヤマハとカワサキの渾身の一台−「YZF−R1」と「ZX−10R」の実車を見る機会がありましたので、レポートしたいと
思います。

■ヤマハ YZF−R1
 このクラスの教祖的存在だった「ファイアーブレード」を引き摺り下ろし、軽量リッタースポーツの看板となった「YZF−R1」は、初代
モデルが1998年にデビューしました。乾燥重量177kgの車体に最高出力150psの心臓…誰もがこのスペックに驚愕しました。
この当時のリッタークラススポーツは、最高出力こそ120〜130psとさほど変わりませんでしたが、乾燥重量は190kg辺りが常識
だったのです。「YZF−R1」の177kgというのは、600ccのスポーツモデルか400ccのネイキッドモデル並の重量だったのです。
そこに1000ccのハイパワーエンジンが載っていたわけですから、おのずとその凄さが判ると言うもの…。
 しかし「YZF−R1」の魅力は数値的なものではなく、優れた車体設計が世界を驚かせました。活躍するステージを「公道」に絞り込
むことで、フレームに適度な「しなり」を与え、サスペンションストロークを大きく取る事で車体を動きやすくしたのです。これにより路面
の追従性が増し、ライダーが自由にマシンをコントロールできることが可能になりました。クイックな旋回性を狙うには前後のタイヤ
距離(ホイールベース)を短く取れば良いのですが、そうするとリアのサスペンション−スイングアーム長が不足して、動きやすいサス
ペンションが実現できません。そこでヤマハはタイヤ間にあるもの−エンジンに着目。エンジンが占める幅を狭くすれば、ホイールベー
スを短くしながらスイングアーム長が確保できると考えました。しかし大排気量車はエンジンサイズが大きくなりがちです。「YZF−R1」
は主要三軸をオーバーラップさせることで、エンジン前後長を短くする事に成功しました。これこそ「YZF−R1」の生命線。以後のスポ
ーツモデルにもこの考えが採用されるようになり、リッタースーパースポーツのカリスマ的存在となったのです。
 「YZF−R1」はその後2年ごとにモデルチェンジを繰り返し、コンセプトを変えることなくスペックアップされていきます。そして2004
年に登場した四代目は、それまで「公道」主眼だった車体造りから方向を変えて、サーキットで攻め込んでも速い車体を得る事に成功
しました。

これまでのR1と比べて少しボリュームが増したボディ。
テスターはワタシの息子…いやいや、ホント大きい。
シートカウルにマウントされたマフラー。
車体バランスが確保できるのが最大の特徴。
スイングアーム間にマフラーが通るので、サスペンションもの
リザーバータンクを横置きに配置してスペース確保。
コンパクトで質感が増したメーターパネル。
大きく視界に入りこむクラッチワイヤーがちょっと気にる。

<私が見るYZF−R1>  詳細解説はこちら
  更に鋭く、更に過激になった新生R1。各部の作りこみや質感は初期型オーナーの私が見ても羨ましい限り。お金がかかってる
 なぁ〜と痛感します。しかしこの新型R1、一体どんな乗り味なんでしょうか…?既に各バイク雑誌ではロードインプレッションが掲載
 されてまして、「常人では扱いきれない」という言葉が沢山出てきているような気がします。確かに「172ps」というのは、クルマで言う
 と2000ccのスポーツカー並み。あのシルビア(NA)で160psですから、どんなに凄い事かがわかりますよね。
  しかしそこは「ハンドリング」のヤマハ。きっと絶妙な味付けでワインディングも楽しめるものになっているはず。今年からV・ロッシが
 ヤマハ入りし、テストライダーでスポット参戦だった阿部がフル参戦を決定したと言うニュースが入ってきている状況からすると、今年
 のヤマハは何かしでかしてくれそう…そんな気がします。

 

■カワサキ ZX−10R
 このカテゴリで一歩乗り遅れた感のあった、カワサキ・スーパースポーツ。しかし歴史の紐をたどって行くと、古くはZ1・GPZ900
といった名車を数多く世に送り出しています。そして軽量スーパースポーツ「ZX−9R」が登場したのは、あの「CBR900RR」が
デビューした直後の1993年。全世界に「Ninja」のペットネームを定着させた最初のモデルでした。
 通称「B型」と呼ばれるこの9Rは、最高出力は139psとCBRを大きく上回るものでしたが、車重は220kg近くもあり、CBRには及
びませんでした。またスタイルはレーサーレプリカでしたが、実際の乗り味は「スポーティなツアラー」といた印象で、CBRの台頭を
許してしまったのです。
 1997年にデビューした「C型」はライバルCBRに一太刀浴びせんと一気に35kgもの減量に成功。スタイルも現在のR1に通じる、
鋭くスマートな車体になって生まれ変わり、全世界のNinjaファンが狂喜しました。しかしその直後、衝撃的なライバルYZF−R1が
この世に登場してしまったのです。負けじとカワサキも2000年にビッグマイナーチェンジを施し、見た目は「C型」とさほど変わりませ
んが中身は大違い!の「E型」がデビュー。しかし大排気量レプリカの雄「GSX−R1000」の華やかなデビューもあり、時既に遅し。
9Rは地味なスーパースポーツな存在となっていました。
 しかしカワサキは黙っていませんでした!
2004年、今までの「900cc」へのこだわりを捨てて、新生「ZX−10R」をデビューさせました。
 エンジン・車体周りは全て新設計。レーサー「ZX−RR」を彷彿させる流麗なボディワーク。あえて流行を嫌い通常の取り回しと
したマフラー…。今までのカワサキ・スーパースポーツにはない開き直り。そして「パワーウェイトレシオ「1」を切る!」という開発陣
の熱い目標を達成。最高出力175ps・車重170kgというスペックを誇り、名実共に「カワサキスーパースポーツ」の復活を遂げました。

鮮やかなライムグリーンはカワサキ車の証。
シャープでかつ質感の高い作りこみです。
メーターパネルはZX-6RやZ1000と共通のデザイン。
カウルの整形がGPZ900Rを彷彿させる。
北米仕様は保安基準の関係でウィンカー形状が異なる。
その代わり鮮やかなオレンジをラインナップ。
他メーカーがアップマフラーを採用する中、ZX-10Rは
敢えて一般的な右出しレイアウトを採用。まさしく「硬派」。

<私が見るZX−10R>
  900ccのこだわりを捨て、全てが刷新されたZX−10R。この生い立ちはライバル「CBR1000RR」と似ていますが、今まで
 「商品性として成り立たないので」と保守的な経営陣が発想を転換し、「クラスナンバーワンのパフォーマンス」を目指して登場。
 他社と比べてどうしても見劣りしていた今までとはうって変わり、2004年の「台風」となりそうです。これはカワサキのWGP復帰
 が無関係とは言えないと思いますが、それにしても見事なバイク。ハッキリ言って「欲しい!」です。
  しかし「YZF−R1」と同様、「ZX−12R」をも凌いだと言える壮絶なエンジンパフォーマンス車を一般ライダーが扱いきれるのか…?
 機会があったら試乗して、おっさんモードの入った私でチェックしてみたいですね〜。いやぁ〜欲しいっすよ、店長…。