風情を愛でる 偕楽園周遊ガイド |
白や紅のかれんな梅の花が咲き乱れる偕楽園。約6.4ヘクタールの広大な梅林から風に乗って運ばれる、ほのかな梅の香に満ちている。水戸藩第9代藩主徳川斉昭により造園計画の構想が練られ創設された偕楽園と、位置や建築意匠を定められた好文亭。歴史の重みを感じさせ、今なお人々を魅了してやまない見どころを紹介する。 |
美しい森と千波湖を一望できる高台に位置する偕楽園。金沢の兼六園、岡山の後楽園と並ぶ日本三名園の一つで、梅の公園として全国的に知られ、今なお緑を色濃く残し、四季の風情とともに明暗に富む作りで訪れる人々を魅了する。「清陰幽遂(せいいんゆうすい)と眺望の小径(こみち)」と呼ばれる、明暗の変化対照を楽しめるコースは、園内をぐるりと一周し、同園がもつさまざまな表情を堪能できるメーンルート。また、歴史的な名碑や吐玉泉、好文亭などを巡る「歴史の小径」と呼ばれるコースは、メーンルートとは違った趣を持つ。手軽に開園当時をしのぶことができる同コースを紹介する。
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スタートは、隣接する常磐神社側にある東門。門をくぐり千波湖を眼下にして、緩やかな階段を下りる。暖かな日差しが春の到来を感じさせ、鳥たちの鳴き声も一段と活発に聞こえる。時折吹く風に乗って、ほのかな梅の香りが運ばれてくる。
小径を進む |
茨城百景の碑や「僊湖(せんこ)暮雪」の碑を見ながら小径を進むと、陽光を浴びる斜面に正岡子規の句碑が千波湖を見つめるように立っている。明治時代の俳人、子規が偕楽園を訪れた際、南崖(がい)に立つ梅を詠んだもの。ふと崖(がけ)の方に目をやると「崖急に梅ことごとく斜めなり」の歌どおり、力強く太陽に手を差し伸べるように梅の木が立っているのに気付く。
水音を楽しむ |
南門を通過し、園内を流れる小川の水音を楽しみながら進むと、鬱蒼(うっそう)と繁る杉林の中に突如姿を見せる、樹齢750年といわれる太郎杉。そのすぐそばで清らかな水をたたえる吐玉泉が、一服の清涼感を醸し出す。
七曲り坂をのぼって |
南門方向に戻ると、急な斜面を縫うようにして上る七曲り坂が現れる。息を弾ませて上ると、杉林の中を通り抜けた風が心地よく感じる。中門をくぐり抜け、最終目的地の好文亭へ。三階の楽寿楼からは、眼下に広がる梅林や千波湖などの絶景が楽しめる。
千波湖も一望 |
約百種類、約三千本の梅が立ち並ぶ梅林をはじめ、千波湖や千波公園を一望できる仙奕(せんえき)台や所々に立つ石碑など、見どころを随所に持つ偕楽園。二時間ほどかけてゆっくりと小径を巡ると、開園当時の様子がうかがい知れるだろう。