呆冗記
呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。


竜の見る夢

 僕の名前はリュウ。凄まじくサバを読んでいる気もしないでもないが、16才。(大笑)
 この1000年も昔の災厄によって地上を追われ、地下に逃れた人々の世界の最底辺で生きるロウディだ。
 一応公務員らしいが、ぺえぺえのサードレンジャー。この世界ですべてを決める僕のD値は1/8192。これでは退職するまでにセカンドレンジャーにあがれるかどうか解らないD値だ。同僚のボッシュは1/64。ファーストはおろか、統治者も夢ではない。
 はあ、恨むぜ母ちゃん。
 といっても、両親はこの最下層地区の悪い空気のせいか、相次いで亡くなり、今は天涯孤独の身だ。
 D値が僕と同じ1/2の13乗か1/2の14乗のD値を持った女の子を嫁さんにして。
 なんとか手柄をたてて、ファーストレンジャーに昇進する。
 少しは空気のいい中層居住区に家を建て。
 2の12乗くらいのD値を持った子供に恵まれる。
 このくらいの夢はまだ、持っていても許されるだろう。
 むろん、僕程度のD値でファーストレンジャーはおろか、セカンドレンジャーにさえなった人間がいないのは知っている。でも、まだ僕は16なんだ。
 1/8192というD値のおかげで、僕は即座にレンジャーとしての教育を受けることになってしまい。16才の今日では一応卵の殻は脱いだレンジャーになっている。だから、そのぐらいの夢は持ってもいいだろう。16で人生悟ってしまっては哀しすぎる。

 そんなある日、僕達はバイオ公社の貨物の護衛に出た。
 ボッシュはそこで初めて本心を明かした。それは僕の甘っちょろい考えを打ち砕くに充分だった。
 「貴様のD値では出世はできない」
 「手柄をよこせ。その手柄で出世したら後ろ盾になってやる」
 僅かに持っていた彼への親しみも。夢も、すべては崩れてしまった。
 虚無。現実が僕を打ちのめした時、公社の貨物を反政府組織(トリニティ)の強襲ディクが襲った。
 僕は公社の貨物とともに、深い谷底へと落ちていった。そして、すべてが始まったのだ。

 その地下の底で、僕はサイクロプスに連れていかれようとしている色白の紅い翼を持った少女を見つけた。
 彼女を連れて自分の住む最下層地区に上がっていこうとしたら、ボッシュがレンジャー部隊を引き連れて出迎えてくれた。
 彼女を殺すために。そして、その手柄をよこせという。
 僕の中で何かが切れた。

 と言うわけで、はっきり言ってここまで感情移入できるゲームは最近みなかった。
 もう、完璧である。わずかな時間で主人公の状況と挫折。新たな希望と敵対者。これを描ききったのである。
 この動機付けが不完全ではもう、哀しいかな、このゲームのように2年間も未完のままほうっておかれてしまうのである。
 しかし、このVOFを今まで一回もしなかったのは痛恨の極みである。いやあ。凄いゲームもあったモノだ。
 いや、この不親切さもなかなかそそるモノがある。今までに3度、セーブポイントが、見つからないまま、1日分の成果がぱあになってしまったのだ。しかも、体力勝負の接近戦の殴り合いを得意とする私としては、回復手段がアイテムしかないのは辛すぎる。
 おそらくは最近のFFやDQでは、もう、やる気も起きなかったであろう。
 しかし、このVOFVは、更なる睡眠時間の減少を強要する。バックパックに山ほど回復アイテムを所持して突っ込むのである。
 おそらく、物語は悲劇的な中で、希望を持って終わるのだろう。それはゲームを始めてすぐの段階で暗示されている。
 しかし、それでもいいだろう。きれいな青空の下。紅い翼の少女がどこまでも駆けていく。その姿が、薄れゆく意識の中であっても見ることができるのならば。たとえ、それが、彼女を結局は悲しませることになるとしても。少なくとも、彼女には希望がある。
 そのためにも、私は睡眠時間削ってダンジョンに潜るのだ。
 さあ、来いモンスター野郎ども。人間一度は死ぬもんだ。(02,12,8)


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